当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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この記事の要点(30秒でわかる)
- 福祉避難所は、体育館などの一般の避難所では過ごせない方のための避難所です
- 足立区では「第二次避難所」と呼び、震災時用として84施設が公表されています(2026年5月1日時点)
- 震災時は原則として第一次避難所を経由します。直接向かう前提では考えないでください
- 水害時は、区が作成した個別避難計画で避難先に指定された方だけが直接避難できます
寝たきりの方、人工呼吸器や在宅酸素をお使いの方、認知症のある方にとって、体育館の床で夜を明かすことは現実的ではありません。避難したほうがよいと分かっていても、行き先が思い浮かばないために動けない。そうした状態のまま雨の季節を迎えておられる方もいらっしゃると思います。
訪問看護は、日々の療養だけでなく、災害が起きたときにどう動くかを一緒に考える役割も担っています。医療機器の電源、薬の残り、移動の手段。ご自宅の状況を知っている専門職だからこそ、具体的に詰められることがあります。
すえひろ訪問看護ステーションは、制度上むずかしいと思われることでも、まずは伺ったうえで一緒に考えさせていただきたいと思っています。避難のことでご不安があれば、訪問の時間にお声かけください。
この記事では、福祉避難所がどういう場所なのか、足立区ではどこへ、どういう順番で避難することになっているのかを、区の公表情報をもとに整理します。あわせて、2026年8月に千葉県で起きた豪雨で在宅療養の方に何が起きたのかも見ていきます。
福祉避難所とは、一般の避難所では過ごせない方のための避難所です
福祉避難所とは、高齢者や障がいのある方、乳幼児など、一般の避難所での生活に支障が出る方を受け入れるために開設される避難所です。災害対策基本法施行令第20条の6第5号で、避難所の指定基準の一つとして定められています。誰でも入れる場所ではありません。
国の考え方では、受け入れの対象になるのは「要配慮者」です。高齢者や障がいのある方のほか、妊産婦、傷病者、難病の方、そして医療的ケアを必要とする方が含まれます。内閣府のガイドラインは医療的ケアを「人工呼吸器や酸素供給装置、胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な者」と定義しています(出典:内閣府「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」令和3年5月改定)。
足立区では、福祉避難所を「第二次避難所」と呼んでいます。2026年5月1日時点で震災時用として84施設が指定され、施設名と所在地、電話番号が区の公式サイトで公表されています。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障がい福祉施設、地域学習センターなどが並びます。
区は同じページで「一般の方は福祉避難所に避難することはできません」と明記しています。特別な配慮が必要な方の生活環境を守るための線引きで、一般の方は最寄りの第一次避難所へ向かうよう案内されています。
足立区の第一次避難所と福祉避難所(第二次避難所)の違い
| くらべる点 | 第一次避難所 | 福祉避難所(第二次避難所) |
|---|---|---|
| 対象になる方 | 自宅で生活できなくなった区民の方 | 高齢者・障がいのある方・乳幼児など、避難所生活に特別な配慮が必要な方。一般の方は避難できません |
| 区内の数 | 122か所(区立小中学校・都立高校など) | 震災時84施設/水害時の直接避難先12施設 |
| 開設する人 | 近隣の町会・自治会を中心とした避難所運営本部 | 足立区が開設し、必要に応じて介護サービスなどを確保 |
| 向かう順番 | 地震のときは、まずこちらへ | 原則として第一次避難所を経由。水害時のみ、個別避難計画で指定された方が直接避難できます |
出典:足立区「福祉避難所(第二次避難所)のご案内」2026年5月1日更新、「第一次避難所」2025年8月13日更新。区の運用は変わることがあります。2026年8月時点の情報です。
足立区では、原則としてまず第一次避難所へ向かいます
地震のときの足立区の避難は、一時集合場所、避難場所、第一次避難所、第二次避難所という順に段階が分かれています。福祉避難所はこの流れの最後にあたる場所で、いきなり向かう場所としては想定されていません。ここを取り違えると、行った先が開いていないという事態になります。
第一次避難所は区立小中学校や都立高校などで、区内に122か所あります。開設するのは区ではなく、避難所の近隣の町会・自治会を中心とした避難所運営本部です(出典:足立区「第一次避難所」2025年8月13日更新)。つまり地域の方の手で開きます。
これに対して第二次避難所は、区が開設し、必要に応じて介護サービスなどを確保する、と区は説明しています。第一次避難所での生活が難しい方のための場所という位置づけです(出典:足立区「【震災時の避難】避難の流れをご確認ください」2022年9月1日更新)。
国のガイドラインも、直接の避難を想定していない福祉避難所では「支援者の到着が間に合わない等、災害発生後初日に開設が間に合わない場合もある」と書いています。施設が84か所あることと、地震の直後にその84か所が開いていることは、別の話だとお考えください。まずは足立区の避難の流れと発災直後の3手順を確認しておくと、当日の判断が早くなります。
地震のときの足立区の避難の流れ
地域の公園や神社など。町会・自治会ごとに決まっています。まず身近な人と合流する場所です。
大きな火災から命を守るための広い場所です。危険が落ち着くまで様子を見ます。
自宅で生活できないときに移って生活する場所です。区立小中学校や都立高校などで、近隣の町会・自治会が開設します。
第一次避難所での生活が難しい方のために、区が開設します。地震の直後から開いているとは限りません。
出典:足立区「【震災時の避難】避難の流れをご確認ください」2022年9月1日更新、「第一次避難所」2025年8月13日更新、「福祉避難所(第二次避難所)のご案内」2026年5月1日更新。2026年8月時点の情報です。
水害のときだけ、直接避難できる仕組みがあります
足立区で福祉避難所へ直接向かえるのは、水害のときに限られます。しかも対象は、区が主導して作成した個別避難計画書で「福祉避難所を避難先として指定した方のみ」です。この条件は区の公式サイトにはっきり書かれています(2026年5月1日時点)。
水害時の避難先として公表されているのは12施設です。総合スポーツセンター、障がい福祉センターあしすと、地域学習センター、都立特別支援学校、保健センターなどで、震災時の84施設とは顔ぶれが異なります。
計画書を作る対象になるのは、要介護3から5の方、身体障害者手帳1級・2級の方、身体障害者手帳3級で福祉タクシー等の受給がある方、愛の手帳1度・2度の方、障害支援区分4から6の方です。区は自宅の浸水リスク、自力歩行の可否、支援者の有無、介護や障がいの度合いをもとに優先区分AからEを設定し、AとBの方から区の職員が自宅を訪問して計画書を作っています(出典:足立区「水害時個別避難計画」2025年5月29日更新)。
ここで大事なのは、避難行動要支援者名簿への登録と、避難先が決まることは同じではないという点です。名簿は区が対象者を把握するためのもので、登録しただけでは避難先は指定されません。区は「個別避難計画書に基づく避難支援が必ず実施されることを保証するものではございません」とも明記しています。制度は用意されていますが、当日それが動く保証まではない、という前提で備える必要があります。
名簿の登録から、水害時に福祉避難所へ直接避難できるまで
要介護3から5、身体障害者手帳1級・2級、身体障害者手帳3級で福祉タクシー等の受給、愛の手帳1度・2度、障害支援区分4から6のいずれかに該当する方(長期の施設入所中の方などを除く)。
区から届く用紙に記入して、福祉管理課へ返送します。ここから区の手続きが動きはじめます。
自宅の浸水リスク、自力歩行の可否、支援者の有無、介護や障がいの度合いをもとに、区が判定します。
優先区分AとBの方から順に、区の職員が自宅を訪問し、ご本人やご家族の話を聞きながら作成します。ケアマネジャーなどと連携する場合もあります。
優先区分C・D・Eと判定された方には、自主作成用の「河川氾濫を想定した個別避難計画書」(複写式)が区から送られます。
この場合に限り、水害時は12施設のいずれかへ直接避難できます。名簿に登録されただけでは、この段階には進みません。
出典:足立区「水害時個別避難計画」2025年5月29日更新、「福祉避難所(第二次避難所)のご案内」2026年5月1日更新。区は「個別避難計画書に基づく避難支援が必ず実施されることを保証するものではございません」としています。2026年8月時点の情報です。
そもそも足立区でどのように浸水が起きるのかは、川があふれなくても起きる浸水と、その備えで先にご確認いただくと、避難の判断がしやすくなります。
医療的ケアが必要な方は、避難先より先に「持ち出すもの」を決めます
吸引や在宅酸素、経管栄養が必要な方の場合、どの施設で何ができるかは施設ごとに異なります。足立区は施設名と所在地は公表していますが、個々の施設で医療的ケアにどこまで対応できるかは公表していません。ここは推測で判断せず、区の窓口に問い合わせて確認していただく必要があります。
国のガイドラインは「医療的ケアが必要な者(難病患者を含む。)が避難する指定福祉避難所には、看護師等の医療的ケアが可能な人材を配置する」と定めています。これは市町村が目指すべき姿として書かれたもので、すべての施設に常時看護師がいるという意味ではありません。
現実には、避難先が決まっていても持ち出すものが足りなければ過ごせません。2026年8月の千葉県の豪雨では、8月15日9時の時点で県内の高齢者関係施設31施設に被害が報告され、うち床上浸水が17施設、停電が4施設、断水が2施設ありました(出典:内閣府「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」2026年8月15日10時時点)。同じ資料で、透析を実施できなくなった医療機関が2か所あったことも報告されています。
在宅の医療機器については、停電が続いたときの電源の備えに必要な準備をまとめています。お子さんの医療的ケアについては、医療的ケア児の在宅防災と機器の電源確保もあわせてご覧ください。
避難先へ持ち出すもの(在宅療養のご家庭向け)
避難先が決まっていない段階でも、まとめておけるものです。ひとまとめにして、玄関に近い場所に置いておきましょう。
最低でも数日分。手帳は写真に撮っておくと、紛失しても内容を伝えられます。
充電式の場合は満充電を保ち、モバイルバッテリーや車のシガーソケット用の変換器も一緒に。
流量の設定と携帯用ボンベの残り時間を紙に書いておくと、移動先で説明が要りません。
栄養剤、注入器具、シリンジ、白湯用の水。使う本数を1日分ずつ袋に分けておくと数えやすくなります。
主治医、訪問看護、ケアマネジャー、機器の販売業者。スマートフォンが使えない前提で紙にも書きます。
病名、ふだんの血圧や体温、できること・できないこと、声かけのコツ。初対面の方に伝わる言葉で。
避難先で同じ製品が手に入るとは限りません。使い慣れたものを数日分。
吸引や在宅酸素、経管栄養に施設がどこまで対応できるかは、施設ごとに異なります。足立区は個々の施設の対応範囲を公表していないため、必要なものはご自身で持ち出せるようにしておくことをおすすめします。
「避難所に行かない」も、立派な避難のかたちです
避難とは避難所へ行くことだと思われがちですが、足立区は自宅にとどまる在宅避難、浸水のおそれがない場所の親戚知人宅、そして避難所という3つに分ける「分散避難」を案内しています(出典:足立区「水害時の避難について」2020年10月8日更新)。移動そのものが負担になる方にとって、選択肢が3つあることは大きな意味を持ちます。
同じページで区は「障がいをお持ちの方、電気等ライフラインの寸断により大きな影響を受ける方などは、特に早めの浸水域外への避難を推奨します」と書いています。医療機器を使っておられる方は、早めに動くほど選べる手段が多い、ということです。
自宅の上の階に移る垂直避難については、荒川の氾濫と訪問看護の継続判断で詳しく説明しています。上階に移れば安全とは限らず、停電でエレベーターが止まる、水が引くまで数日出られないといった条件も一緒に考える必要があります。
なお2026年8月の千葉県の豪雨では、民間気象会社が浸水被害の報告約2万件を分析した結果、被害の約半数がハザードマップの浸水想定区域の外で起きていたと公表しています(出典:ウェザーニューズ 2026年8月14日公表)。ハザードマップで色が付いていないから在宅避難で大丈夫、とは言い切れないということです。
分散避難の3つの選択肢と、事前に決めておくこと
| 避難のかたち | 向いている場面 | 事前に決めておくこと |
|---|---|---|
| 在宅避難 | 自宅が浸水想定の区域外にある場合や、浸水しない階で安全に過ごせる場合 | 水と食料の量、医療機器の電源の確保、断水したときのトイレ、連絡が取れなくなったときの合図 |
| 親戚・知人宅、ホテル | 浸水のおそれがない場所に頼れる家がある場合。医療機器を使っておられる方は早めの移動が有利です | 受け入れをお願いする相手への事前の相談、移動の手段と所要時間、持ち出す物品の量 |
| 避難所 | 自宅が危険で、親戚や知人の家にも移れない場合 | 向かう先(地震のときは第一次避難所)、誰と一緒に移動するか、到着後に伝える体の状態 |
出典:足立区「水害時の避難について(「分散避難」をご検討ください)」2020年10月8日更新。区は「障がいをお持ちの方、電気等ライフラインの寸断により大きな影響を受ける方などは、特に早めの浸水域外への避難を推奨します」としています。
避難先から戻ったあとの手順も、あわせて知っておいていただけたらと思います。詳しくは水が引いた後、家に戻る前に確認することをご覧ください。
まとめ
福祉避難所は、一般の避難所では過ごせない方のための避難所です。足立区では第二次避難所と呼ばれ、震災時用として84施設が公表されていますが、地震のときは原則として第一次避難所を経由します。直接向かえるのは水害時に限られ、区が作成した個別避難計画で避難先に指定された方だけが対象です。
名簿に登録することと、避難先が決まることは別の段階です。名簿に登録されている方は、次に災害時安否確認申出書を提出し、優先区分の判定を受けるところから話が進みます。ご自身がどの段階にいるのか、一度確かめておかれることをおすすめします。
すえひろ訪問看護ステーションは、避難の準備を利用者様とご家族だけに任せてよいものだとは考えていません。医療機器の電源、薬の残り、移動の手段。ご自宅の状況を知っている立場から、専門職として責任を持って、誠実に一緒に考えさせていただきます。
どこへ避難すればよいか分からないまま止まってしまっている方も、いらっしゃると思います。答えがすぐに出ないことでも構いません。訪問の時間に、一言お声かけください。一緒に整理させてください。
よくあるご質問
Q1. 避難行動要支援者名簿に登録すれば、福祉避難所に行けますか。
名簿への登録だけでは避難先は決まりません。足立区の場合、水害時に福祉避難所へ直接避難できるのは、区が主導して作成した個別避難計画書で福祉避難所を避難先として指定された方に限られます(2026年8月時点)。名簿の対象となった方には災害時安否確認申出書が送られますので、まずはその提出からになります。
Q2. 災害が起きたら、いきなり福祉避難所へ行ってもよいですか。
地震のときは、足立区は第一次避難所を経由する流れを案内しています。福祉避難所は区が開設する第二次避難所という位置づけで、発災直後から開いているとは限りません。国のガイドラインも、初日に開設が間に合わない場合があると記しています。
Q3. 福祉避難所で吸引や在宅酸素は使えますか。
施設ごとに体制が異なり、足立区は個々の施設の対応範囲を公表していません。国のガイドラインは、医療的ケアが必要な方が避難する施設に看護師等を配置するよう求めていますが、すべての施設に当てはまるわけではありません。必要な機器や物品は、ご自身で持ち出せるよう準備しておくことをおすすめします。
Q4. どの福祉避難所に行くことになるのか、事前に知ることはできますか。
個別避難計画書を作成した方は、計画書に避難先が書かれます。作成の対象や進み方は区の運用によって変わることがありますので、2026年8月時点の情報として、足立区の公式サイトまたは担当窓口でご確認ください。訪問看護の担当者やケアマネジャーが同席したほうが話が早い場合もありますので、遠慮なくお声かけください。
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