「台風が来るとき、訪問看護はキャンセルになるの?」——そんな不安を抱えたことのあるご家族は、足立区に少なくないと思います。荒川沿いに広がるこの地域は、大規模水害のリスクが全国的にも高く、在宅療養を続けながら台風や大雨にどう向き合うかは、切実な問いです。
訪問看護は、安全が確保できないと判断された場合、やむを得ず訪問を中止することがあります。しかし「来られなくなるかもしれない」とわかっていれば、事前に備えることができます。すえひろ訪問看護ステーションは、地域のリスクを正直にお伝えしたうえで、それでも最善を尽くす姿勢で利用者様・ご家族に寄り添いたいと考えています。
この記事では、足立区のハザードマップが示す浸水リスク、訪問看護の中止判断の仕組み、そして在宅療養者が今からできる備えについて、できるだけ具体的にお伝えします。

目次
足立区のハザードマップで確認する「浸水リスクゾーン」
足立区では、荒川が氾濫した場合に区のほぼ全域が浸水想定区域に含まれます。浸水深は最低でも0.5m以上(床上浸水レベル)、北千住駅周辺などでは最大5m以上に達する地点もあります。さらに、想定最大規模の降雨(72時間総雨量632mm)では、浸水が2週間以上続くエリアが存在し、在宅療養の継続が著しく困難になる状況が現実として想定されています。(出典:足立区「洪水・内水・高潮ハザードマップ」令和4年4月改訂・浸水継続時間図)
※実際の浸水深は地点によって異なります。必ず公式ハザードマップでご自宅の場所をご確認ください。
足立区が公開する「洪水・内水・高潮ハザードマップ(令和4年4月改訂)」は、荒川だけでなく綾瀬川・中川・芝川など複数河川の氾濫を想定しており、あらゆる角度から水害リスクを確認できます。(出典:足立区「足立区洪水・内水・高潮ハザードマップ」令和4年4月改訂)
ハザードマップは、スマートフォンからも足立区公式サイトで確認できます。まずご自宅の住所を調べ、「何色のゾーンか」「浸水継続時間はどのくらいか」を把握しておくことが、備えの第一歩です。
国土交通省の浸水想定区域図(想定最大規模)では、荒川が氾濫した場合の浸水深と浸水継続時間をピンポイントで調べられる「浸水ナビ」も公開されています。(出典:国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所)
台風・大雨で訪問看護が来られなくなるケース・来られるケース
台風や大雨が接近しても、すべての訪問が中止になるわけではありません。判断の基準は、行政が発表する「警戒レベル」と、訪問経路の安全性です。警戒レベル4(避難指示)以上が発令された地域では、スタッフの安全を確保するために訪問を中止せざるを得ない場合があります。
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出典:全国訪問看護事業協会「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)」
令和6年(2024年)4月から、訪問看護ステーションには業務継続計画(BCP)の策定が義務付けられました。(出典:厚生労働省・全国訪問看護事業協会)BCPには、災害時に「優先して継続する業務」「縮小する業務」「一時休止する業務」を事前に分類しておくことが求められています。
訪問が来られる可能性が高い状況としては、警戒レベルが3以下で訪問経路に安全が確保できる場合、台風が通過した後で水位が下がり始めた場合などが挙げられます。一方、警戒レベル4以上の発令時、道路の冠水・閉鎖、スタッフ自身が浸水想定区域内に居住している場合は、訪問が難しくなることをご理解いただく必要があります。
大切なのは「来られるか来られないか」を事前にすり合わせておくことです。台風の接近が予報された時点で、担当スタッフに連絡を入れておくことをお勧めします。
すえひろの緊急時対応フロー──中止判断の基準と連絡体制
すえひろ訪問看護ステーションでは、台風・大雨が予想される際には事前に利用者様・ご家族へご連絡し、訪問の可否について丁寧にお伝えするよう努めています。「突然来なくなった」ということがないよう、早めの情報共有を心がけています。
中止を判断する主な基準は、気象庁・足立区が発令する警戒レベル、訪問経路(道路)の安全確認、スタッフ・利用者様双方の安全確保の3点です。(出典:全国訪問看護事業協会「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)」)
訪問を中止せざるを得ない場合でも、電話での状態確認、担当医や居宅介護支援事業所への情報共有、緊急時の対処法のご案内など、できることを誠実に続けます。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
訪問再開は、行政の安全確認と現地の状況を総合的に判断したうえで、できるだけ速やかに行います。再開の見込みが立った時点で、優先的にご連絡します。
在宅療養者が事前にやっておくべき「備えリスト」
台風・大雨への備えは、梅雨や台風シーズンが来る前に整えておくことが大切です。在宅療養中の利用者様・ご家族にとって特に重要なのは、医療・衛生・通信・移動の4つの観点からの準備です。
人工呼吸器や在宅酸素療法など電力を必要とする医療機器を使用している場合は、停電への対応が最優先です。(出典:厚生労働省「在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業」令和5年度)電力会社への「人工呼吸器使用者」登録、バッテリーの充電状態の確認、停電時の連絡先(医療機器メーカー・訪問看護ステーション・主治医)を一覧にしておくことをお勧めします。
薬は、少なくとも3〜7日分の予備を手元に確保しておくと安心です。主治医に相談し、早めの処方をお願いしておくとよいでしょう。また、お薬手帳をわかりやすい場所に保管し、避難時に持ち出せるようにしておくことも大切です。
「避難するべきか、自宅にとどまるべきか」の判断は、あらかじめご家族・主治医・訪問看護ステーションで話し合っておくと、いざというとき慌てずに動けます。一緒に考えさせてください。
荒川流域に住むご家族へ──避難と在宅ケアの両立を考える
荒川が氾濫した場合、避難と在宅ケアの両立は非常に難しい局面を迎えます。しかし、「避難か、在宅か」の二択だけではありません。自宅の階数・構造・浸水深の想定によっては、上の階へ避難する「垂直避難」が有効な選択肢になります。
避難先と状況を連絡する
出典:足立区「水害時の避難について」
足立区では、警戒レベル3「高齢者等避難」の発令とともに水害時避難施設を原則開設しています。(出典:足立区「水害時の避難について」)区の水害時避難施設は通常の避難所とは異なり、水害に備えた施設が指定されているため、事前に場所を確認しておくことが重要です。
一方、移動が困難な利用者様の場合、避難所への移動自体がリスクになることもあります。その場合の「垂直避難」の判断については、ご家族・主治医・訪問看護ステーションで事前に話し合い、どの警戒レベルで何をするかを決めておくことを強くお勧めします。
荒川流域でご家族を支える皆様へ、すえひろは「諦めない」という姿勢を持ち続けます。台風の前も、最中も、通過した後も、できることを一つひとつ、誠実にお伝えしていきます。
まとめ
足立区は荒川・綾瀬川の浸水想定区域が広範囲に及び、大規模水害時には長期間にわたって在宅ケアの継続が困難になる地域です。訪問看護の中止判断は主に行政が発令する警戒レベルと経路の安全性によって決まり、令和6年4月からはBCPの策定が義務化されています。
すえひろ訪問看護ステーションは、台風・大雨の接近が予想された時点で早めにご連絡し、訪問の可否・代替対応を丁寧にお伝えします。訪問ができない場合でも、電話での状態確認や関係機関への情報連携を続け、利用者様・ご家族を一人にしません。
「去年の台風のとき、一人で乗り越えた」という経験をお持ちのご家族に、伝えたいことがあります。次の台風シーズンが来る前に、一緒に備えを整えましょう。梅雨の前のこの時期が、最もよいタイミングです。
よくあるご質問
Q. 台風が来るとき、いつ頃連絡をもらえますか?
A. 大型台風が接近している場合は、前日までを目安にご連絡するよう努めています。ただし、天候の変化が急な場合は当日の朝にご連絡することもあります。気になる場合は、早めにお電話でご確認ください。
Q. 訪問が中止になった日、緊急の処置が必要になったらどうすればよいですか?
A. 訪問中止の際でも、電話での相談を受け付けています。症状の変化や緊急の対処法についてお伝えできますし、状況によっては主治医や救急への連絡を一緒に判断します。「どこに電話していいかわからない」と迷う前に、まずすえひろにご連絡ください。
Q. 避難所に医療機器を持って行けますか?
A. 医療機器の種類や避難施設の設備によって異なります。足立区では水害時避難施設を指定していますが、電源の有無や対応可能な設備は施設ごとに違います。事前に区の担当窓口(足立区福祉部)と医療機器メーカーに確認しておくことをお勧めします。
Q. 人工呼吸器を使っています。停電への備えはどうすればよいですか?
A. 電力会社への「在宅医療機器使用者」の登録、医療機器メーカーへの連絡(停電時の対応確認)、外部バッテリーの準備が基本の3点です。主治医・訪問看護師にも相談し、停電時の連絡フローを書面で確認しておくと安心です。
Q. ハザードマップはどこで確認できますか?
A. 足立区公式サイト(足立区洪水・内水・高潮ハザードマップ、令和4年4月改訂)でオンライン確認できます。また、国土交通省の「浸水ナビ」(地点別浸水深シミュレーション検索システム)では、ご自宅の住所を入力するとピンポイントの浸水深を調べられます。

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