この記事の要点(30秒でわかる)
- 2027年4月施行。答申は2027年1月ごろで、中身はまだ決まっていません
- 訪問看護の収支差率は10.3%。全サービス平均4.7%の2倍以上です
- 10月ごろ公表の経営実態調査が、単価を決める材料になります
- 論点は処遇改善・LIFE・生産性向上・経営の協働化・在宅対応の5つ
この記事は、訪問看護ステーションの管理者・経営に関わる方、および制度の動きを追う専門職の方に向けて書いています。
2027年度の介護報酬改定に向けた議論が始まっています。ただ「何が決まったのか」を探しても、まだ答えは出ていません。基本報酬も加算も、この時点では何ひとつ確定していないからです。
それでも、いま見ておく価値のある材料はあります。どの数字が単価を決めるのか、どの論点が繰り返し挙がっているのか、いつ何が公表されるのか。この3つが分かっていれば、決まってから慌てずに済みます。
すえひろ訪問看護ステーションは、制度の変化を後追いで受け止めるのではなく、先に読んで備えたいと考えています。制度上むずかしいと思われることでも、まずは一緒に考えさせてください。
この記事では、2027年度改定のスケジュール、訪問看護の収支差率の現在地、議論されている5つの論点、そして10月に何が出るのかを整理します。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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2027年度改定はいつ決まって、いつ始まるのですか
2027年4月1日の施行が予定されています。改定案の諮問と答申は、その直前の2027年1月ごろに行われる見込みです。つまり中身が固まるのは施行の2〜3か月前で、それまでは審議の途中経過を追うことになります。
2027年度は介護報酬のみの改定です。診療報酬との同時改定ではありません。医療保険側の改定は2026年6月に施行されており、次は2028年度が予定されています。訪問看護は両方の保険にまたがるため、この時期のずれを押さえておく必要があります。
2026年7月の時点では、社会保障審議会の介護給付費分科会で論点の議論が始まったばかりです。基本報酬や加算の具体的な内容が決まった段階ではありません。この記事に書ける内容も、そこまでになります。
「まだ決まっていない」ことを正確に知っておくことにも意味があります。断定的に書かれた情報が出回りやすい時期でもあるためです。
2026年6月時点で、延期や変更を示す法改正の動きは確認されていません。予定どおり2027年4月に施行されるという前提で準備を進めて差し支えありません。
2027年度は介護報酬のみの改定です。診療報酬との同時改定ではありません。2026年6月時点で、延期・変更を示す法改正の動きは確認されていません。
訪問看護の収支差率はいまどうなっているのですか
他のサービスより高い水準にあります。厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査によると、令和6年度決算における訪問看護の収支差率は10.3%でした。全サービスの平均が4.7%ですので、2倍以上の開きがあります(税引前・物価高騰対策の補助金を除く)。
収支差率は、報酬の単価を検討するうえで非常に重要な指標とされています。数字が高いサービスは、報酬を引き下げる余地があると見なされやすくなります。訪問看護がその位置にいることは、事実として押さえておく必要があります。
一方で、この数字は事業所ごとの実態を平均したものです。規模の大きい事業所と小規模の事業所では収支の構造がまったく違います。平均が高いことと、自分の事業所に余裕があることは別の話です。
だからこそ、次の調査結果が重要になります。平均だけでなく、規模別・地域別にどう出るかで、議論の向きが変わります。
なお10.3%という数字は、物価高騰対策の補助金を除いた税引前の値です。補助金の扱いは年度によって変わるため、前の年度と単純に並べて比べることはできません。数字を引用するときは、この条件までセットで見ておく必要があります。
2倍以上の開きがあります。収支差率は報酬の単価を検討するうえで重要な指標とされており、数字が高いサービスは引き下げる余地があると見なされやすくなります。いずれも税引前・物価高騰対策の補助金を除いた値です。(出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査」)
10月に何が出るのですか
令和8年度の介護事業経営実態調査の結果です。調査票は2026年5月に対象事業所へ送付されており、結果は10月ごろに社会保障審議会の介護給付費分科会で公表される予定とされています。
この調査は、報酬改定の前年に行われる最も重要な材料です。前の項で触れた10.3%は概況調査の数字ですが、実態調査はより詳細な集計になります。ここで出る収支差率が、次の単価の議論の出発点になります。
訪問看護については、介護保険の収益と医療保険の収益、それぞれの利用者数と延べ訪問回数を分けて回答することが求められています。両方の保険にまたがるサービスだからこそ、集計の切り分けが難しく、回答の精度が結果に影響します。
つまり、調査に答えること自体が制度への関与です。自分の事業所の数字が、平均を形づくります。
公表された資料は厚生労働省のページに掲載されます。分科会の資料は当日または数日のうちに公開されるため、報道を待たずに一次資料を読むことができます。
| 経営概況調査 | 経営実態調査 | |
|---|---|---|
| 行う時期 | 改定の2年前 | 改定の前年 |
| 直近 | 令和7年度(令和6年度決算) | 令和8年度(2026年5月に調査票送付) |
| 結果の公表 | 公表済み。訪問看護10.3% | 2026年10月ごろの予定 |
| 詳しさ | おおまかな傾向をつかむ | より詳細な集計 |
| 位置づけ | 議論の前提づくり | 単価の議論の出発点 |
2つは名前が似ていますが別の調査です。数字を引用するときは、どちらの調査のものかを必ず確認してください。
議論されている論点は何ですか
現時点で繰り返し挙がっているのは5つです。介護人材の処遇改善、LIFEを活用した科学的介護、介護テクノロジーと生産性向上、経営の協働化、そして在宅介護への対応です。どれも2024年度改定から続いているテーマで、新しく現れたものではありません。
処遇改善は、訪問看護でも2026年6月に加算の見直しがありました。人材の確保が制度全体の課題である以上、次の改定でも中心に置かれると見てよいと考えられます。
LIFEと科学的介護は、データを提出して評価を受ける仕組みです。訪問看護は現時点でLIFEの対象が限られていますが、対象の広がりは論点として挙がっています。
介護テクノロジーと生産性向上は、記録や情報共有の仕組みが対象になります。訪問看護では、モバイル端末での記録やICTを使った多職種連携がこれにあたります。導入していること自体より、それによって何が変わったかを示せるかが問われる形になりつつあります。
経営の協働化は、事業所の規模に関わる論点です。人材の確保も、事務の負担も、小規模の事業所ほど一人あたりの重さが増します。複数の事業所が機能を共有する形が検討されており、小規模にとっては効率化の話ではなく経営のあり方そのものに関わります。
在宅介護への対応は、医療と介護の境目にある部分です。看取り、退院直後の受け入れ、夜間の対応。訪問看護がすでに担っている領域が多く、評価のされ方が変わる可能性があります。
いずれも2024年度改定から続いているテーマで、新しく現れたものではありません。なお、分科会がこの5つを公式に列挙しているわけではなく、審議で繰り返し挙がっている整理です。
いま事業所として何を準備しておけますか
記録を整えることです。改定の中身がどう転んでも、算定の根拠になるのは日々の記録です。加算の要件が変わったときに、すぐ対応できるかどうかは、普段の記録の粒度で決まります。
具体的には、訪問の記録に「何を観察し、何を判断し、何をしたか」が残っているかを確認してください。加算の新設や見直しがあったとき、要件を満たしていることを示せるのは記録だけです。後から書き足すことはできません。
経営の数字も、自分の事業所のものを把握しておいてください。平均が10.3%だとしても、自分の事業所がいくらなのかを知らなければ、改定の影響を見積もれません。
そして、情報源を絞ることをおすすめします。この時期は憶測を含む記事が増えます。社会保障審議会介護給付費分科会の資料は厚生労働省のページで公開されており、一次資料にあたるのが最も確実です。
職員への共有の仕方も、あらかじめ決めておくと混乱を防げます。確定していない段階の情報を現場に流すと、不安だけが広がります。「決まったら伝える」「決まっていないことは決まっていないと言う」を、事業所の方針として先に置いておくことをおすすめします。
改定の中身がどう転んでも、算定の根拠になるのは日々の記録です。準備の中心はここに置くのが確実です。
利用者様やご家族への影響はありますか
改定が決まるまで分かりません。基本報酬や加算が変われば、自己負担の額にも影響が出ますが、その方向も幅も現時点では確定していません。無責任な予測をお伝えするより、決まった段階で正確にお知らせするほうが誠実だと考えています。
はっきりしているのは時期だけです。2027年4月に何かが変わるという前提で、その2〜3か月前に内容が公表されます。ご不安な点があれば、決まり次第あらためてご説明いたします。
利用者様にお伝えするときは、決定事項と検討中の事項を分けることが大切です。「変わるかもしれない」と「変わることが決まった」は、受け取る側にとってまったく違う話になります。
負担割合や利用回数に関わる話は、ご本人だけでなくご家族の生活設計にも影響します。だからこそ、確定していない段階で数字を口にしないほうが、結果としてご迷惑をおかけせずに済みます。
すえひろは「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」という姿勢を大切にしています。制度が変わる時期こそ、一緒に考えさせてください。
| 決まっていること | 決まっていないこと |
|---|---|
| 2027年4月1日に施行される予定であること | 基本報酬が上がるのか下がるのか |
| 答申は2027年1月ごろであること | 加算が新設・見直し・廃止のどれになるか |
| 改定の対象が介護報酬のみであること | 利用者様の自己負担がどう変わるか |
| 10月ごろに経営実態調査の結果が出ること | 訪問看護の評価がどの方向に動くか |
利用者様にお伝えするときは、この2列を混ぜないことが大切です。「変わるかもしれない」と「変わることが決まった」は、受け取る側にとってまったく違う話になります。
ひとつ前の2026年6月の診療報酬改定では、訪問1回の実施時間の標準や、回数の決め方が明確になりました。その内容は訪問看護の時間や回数は誰が決めるのか|2026年6月の改定で明確になったことにまとめています。
まとめ
2027年度の介護報酬改定は2027年4月施行、答申は2027年1月ごろの見込みです。介護報酬のみの改定で、診療報酬との同時改定ではありません。2026年7月時点では論点の議論が始まった段階で、基本報酬も加算も決まっていません。
材料として押さえておきたいのは収支差率です。令和7年度の概況調査で、訪問看護は10.3%、全サービス平均は4.7%でした。10月ごろに公表される令和8年度の経営実態調査が、次の単価の議論の出発点になります。
いまできる準備は、記録を整えること、自分の事業所の数字を把握すること、一次資料の確認先を決めておくことです。決まってから動くのでは間に合いません。
すえひろ訪問看護ステーションは、制度の変化を先に読んで備えたいと考えています。迷う場面があれば、抱え込まずにご相談ください。
よくある質問
Q1. 2027年度の介護報酬改定は、いつ中身が分かりますか。
2027年1月ごろの諮問・答申で固まる見込みです。施行は2027年4月1日が予定されています。それまでは審議の途中経過を追うことになります。
Q2. 診療報酬も同時に改定されますか。
されません。2027年度は介護報酬のみの改定です。医療保険側は2026年6月に施行されており、次は2028年度が予定されています。
Q3. 訪問看護の報酬は下がりますか。
現時点では分かりません。ただし令和7年度の概況調査で訪問看護の収支差率は10.3%と、全サービス平均の4.7%を上回っています。収支差率は単価を検討するうえで重要な指標とされています。
Q4. 経営実態調査と経営概況調査は何が違いますか。
実施の時期と詳しさが異なります。概況調査は改定の2年前、実態調査は前年に行われ、実態調査のほうがより詳細な集計になります。10月ごろに公表されるのは令和8年度の実態調査です。
Q5. 決まっていない時期に、何を準備すればよいですか。
記録の粒度を確認しておくことです。加算の要件が変わったときに要件を満たしていたことを示せるのは記録だけで、後から書き足すことはできません。
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