この記事の要点(30秒でわかる)
- 車いすなどは原則、介護保険のレンタルが優先されます
- 既製品では体に合わない方は、補装具を作れる場合があります
- 身体障害者手帳をお持ちの方が対象です
- 2026年9月、この取り扱いを国が改めて整理しました
「借りている車いすが体に合っていない気がする」。そう感じておられるご家族から、ご相談をいただくことがあります。
座っているうちに体が傾いてしまう。足が床に着かない。背もたれが背中の形に合わず、長く座っていられない。それでも「介護保険で借りられるのはこれだけだから」と、あきらめておられる方は少なくありません。
実は、体に合わない場合には別の道があります。 オーダーメイドで作る「補装具」という制度です。そして2026年9月10日、国がこの取り扱いを改めて整理する事務連絡を出しました。
すえひろ訪問看護ステーションは、道具が体に合っているかどうかを、訪問のたびに見ています。合っていない道具は、床ずれや転倒、痛みにつながるからです。
この記事では、どういう場合に補装具を選べるのか、誰が判断するのか、そしてなぜ今その話が出てきたのかを、厚生労働省の事務連絡をもとに整理します。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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重複するのは「車いす・歩行器・歩行補助つえ」の3つです
まず整理が必要なのは、介護保険と障害福祉で、同じような道具が両方にあるという点です。
厚生労働省の通知にはこう書かれています。「介護保険で貸与される福祉用具としては、補装具と同様の品目(車いす、歩行器、歩行補助つえ)が含まれている」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具費支給制度と介護保険制度の適用関係等について」令和8年9月10日事務連絡)。
重なっているのは、この3品目だけです。介護用ベッドや手すり、入浴用の椅子などは、この話の対象になりません。
そして原則は決まっています。「それらの品目は介護保険法に規定する保険給付が優先される」(出典:同)。介護保険をお使いの方は、まず介護保険のレンタルから、ということです。
ここまでは、多くの方がご存じのとおりです。 問題は、その先に例外があることが知られていない点にあります。
重なっているのは、この3つだけです
車いす/歩行器/歩行補助つえ
| 介護保険の福祉用具 | 障害福祉の補装具 | |
|---|---|---|
| 作り方 | 標準的な既製品の中から選ぶ(貸与) | オーダーメイド等により個別に製作する |
| 原則 | こちらが優先されます | 原則としては介護保険が先 |
| 例外が認められる場合 | (該当なし) | 医師や身体障害者更生相談所等により、身体状況に個別に対応することが必要と判断された場合 |
| 対象の方 | 介護保険の被保険者 | 身体障害者手帳をお持ちの方 |
介護用ベッドや手すり、入浴用の椅子などは重複しないため、この話の対象にはなりません。
出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具費支給制度と介護保険制度の適用関係等について」令和8年9月10日事務連絡
既製品では合わない方には、例外があります
通知の中心は、ここです。原文を引きます。
「車いす等保険給付として貸与されるこれらの品目は標準的な既製品の中から選択することになるため、医師や身体障害者更生相談所等により障害者の身体状況に個別に対応することが必要と判断される障害者については、これらの品目については、法に基づく補装具費として支給して差し支えない」(出典:同)。
長い一文ですが、言っていることは単純です。介護保険で借りられるのは「標準的な既製品」なので、それでは体に合わない方は、補装具を作れるということです。
「個別に対応することが必要」とはどういう状態か。通知の中で、こう言い換えられています。「標準的な既製品ではなく、オーダーメイド等により個別に製作する必要がある障害者」(出典:同)。
たとえば、体の変形が強くて既製品の座面では姿勢が保てない方。左右で脚の長さが違う方。麻痺の程度によって支える位置を細かく決める必要がある方。こうした場合が想定されます。
⚠️ ただし、判断するのはご本人でもご家族でもありません。 通知に書かれているとおり、医師や身体障害者更生相談所等が「個別に対応することが必要」と判断した場合です。希望すれば通る、という制度ではありません。
どちらを利用できるか
判断するのは医師や身体障害者更生相談所等です。ご本人やご家族の希望だけでは決まりません。
出典:厚生労働省 令和8年9月10日事務連絡
2026年9月、なぜ国がこれを出したのか
この取り扱い自体は、新しいものではありません。平成19年の通知で既に示されていました(出典:同)。
ではなぜ、2026年9月になって改めて事務連絡が出たのか。運用が徹底されていなかったからです。
厚生労働省は一部の地方公共団体に調査を実施し、次のような事例を確認したと書いています(出典:同)。
- 「自治体において、相談者が介護保険被保険者になる前の補装具利用実績を確認していない」
- 「問合せのあった場合のみ、当該相談者に対し、介護保険優先原則に係る説明(介護保険被保険者であっても、法に基づく補装具費支給制度を利用できる場合がある旨の説明を含む)をしている」
- 「ケアプラン作成過程において、介護支援専門員や福祉用具専門相談員が補装具の適用が適切と判断した場合の対応(介護保険担当又は障害福祉担当のいずれに相談すべきか等)について、指導していない」
つまり、窓口で説明されないまま、選択肢を知らずに終わっていた方がいたということです。
この結果を受けて、国は留意事項を整理しました。そのひとつが、介護保険の窓口であっても、その方が介護保険になる前に補装具を使っていたかどうかを確認することが重要という点です(出典:同)。
以前に補装具を使っていた方は、介護保険に移ったあとも補装具が適している可能性が高い。 そういう趣旨です。
国の調査で分かったこと
一部の地方公共団体を調べた結果、確認された事例
| できていなかったこと | これからの留意事項 |
|---|---|
| 相談者が介護保険の被保険者になる前の、補装具の利用実績を確認していない | 確認することが重要。以前に補装具を使っていた方は、介護保険になった後も補装具が適している可能性を把握するきっかけになる |
| 問合せがあったときだけ、介護保険優先の原則を説明している | 要件を満たせば両方使えることをご本人に知っていただいたうえで、どちらを希望するか判断いただく |
| ケアプランを作る過程で、補装具が適切と判断したときの対応(どこに相談するか)を指導していない | 身体状況や利用意向を、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員といった関係職種で共有し、検討する |
出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具費支給制度と介護保険制度の適用関係等について」令和8年9月10日事務連絡
最後に決めるのは、ご本人です
もうひとつ、通知に明記されたことがあります。
「最終的に、補装具又は福祉用具のどちらの利用を希望するかは、相談者・利用者本人の判断となる」(出典:同)。
要件を満たしている場合、どちらを使うかを決めるのはご本人です。そして通知はこうも書いています。両方の対象になった場合、「補装具と福祉用具のどちらについても利用が可能であることについて、当該者本人に認識いただいた上で、どちらの利用を希望するか適切に判断いただく」ことが重要である(出典:同)。
選択肢があることを知らされたうえで選ぶ。 それが本来の形だということです。
そのために、通知はケアプランを作る過程での情報共有も求めています。「当該者の身体状況や利用意向等について、ケアプラン作成過程において、必要な情報として介護支援専門員や福祉用具専門相談員といった関係職種間で共有し、検討を行う」(出典:同)。
ケアマネジャーや福祉用具の相談員に伝えてよい、ということです。 遠慮なさらないでください。
決め方の順番
医師や身体障害者更生相談所等が、身体状況に個別に対応することが必要かを判断します
「補装具と福祉用具のどちらについても利用が可能であることについて、当該者本人に認識いただいた上で」
「最終的に、補装具又は福祉用具のどちらの利用を希望するかは、相談者・利用者本人の判断となる」
出典:厚生労働省 令和8年9月10日事務連絡
ご家族に確かめていただきたいこと
この記事を読んで「うちも当てはまるかもしれない」と思われたら、確かめていただきたいことがあります。
まず、身体障害者手帳をお持ちかどうか。 この話は、手帳をお持ちの方が対象です。
次に、介護保険を使う前に補装具を作っていたかどうか。 以前に体に合わせて作ったものがあるなら、いまも補装具が適している可能性があります。
そして、いまの道具が本当に体に合っているか。 座っていると体が傾く、足が床に着かない、長く座れない、痛みが出る。こうしたことがあれば、合っていないサインかもしれません。
⚠️ 窓口が分かれている点にも注意が必要です。介護保険の担当課と、障害福祉の担当課は別です。今回の事務連絡は、まさにそこの案内が整理されていなかったという話でもあります。もし「うちの担当ではない」と言われたら、この通知の話が出ていることを伝えてみてください。
すえひろでは、訪問のたびに道具が体に合っているかを見ています。気になることがあれば、担当の看護師にお声がけください。ケアマネジャーへの相談の仕方も、一緒に考えさせてください。
ご家族に確かめていただきたいこと
1身体障害者手帳をお持ちか
この話は手帳をお持ちの方が対象です。
2介護保険を使う前に補装具を作っていたか
以前に体に合わせて作ったものがあるなら、いまも補装具が適している可能性があります。
3いまの道具は体に合っているか
- 座っていると体が傾く
- 足が床に着かない
- 長く座っていられない
- 痛みが出る
4担当者に伝えているか
ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、担当の看護師。誰に言っても構いません。
窓口は、介護保険の担当課と障害福祉の担当課で分かれています。今回の事務連絡は、まさにその案内が整理されていなかったという話でもあります。
まとめ
車いす・歩行器・歩行補助つえは介護保険と障害福祉で重なる品目で、原則は介護保険のレンタルが優先されます。ただし介護保険で借りられるのは標準的な既製品なので、医師や身体障害者更生相談所等が「身体状況に個別に対応することが必要」と判断した方は、オーダーメイドの補装具を選べる場合があります。 2026年9月10日、国はこの取り扱いを改めて整理し、窓口での説明や、ケアプラン作成時の情報共有を求めました。
制度としては以前からあったものです。 ただ、説明されないまま選択肢を知らずにいた方がおられたからこそ、国が動きました。
道具が体に合っていないことは、我慢して済む話ではありません。姿勢が崩れれば床ずれや痛みにつながりますし、歩く道具が合わなければ転倒のもとになります。
制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
よくある質問
Q. 介護保険を使っていると、補装具は使えないのではないですか。
A. 原則は介護保険が優先されますが、例外があります。標準的な既製品では身体状況に合わず、医師や身体障害者更生相談所等が個別に対応する必要があると判断した場合は、補装具費として支給して差し支えないとされています。
Q. 対象になるのはどんな道具ですか。
A. 介護保険の福祉用具と重なるのは、車いす・歩行器・歩行補助つえの3品目です。介護用ベッドや手すりなどは重複しないため、この話の対象外です。
Q. 申請すれば作ってもらえるのですか。
A. ご本人やご家族の希望だけでは決まりません。医師や身体障害者更生相談所等が、身体状況に個別に対応することが必要だと判断する必要があります。まずは主治医やケアマネジャーにご相談ください。
Q. 身体障害者手帳がなくても対象になりますか。
A. 補装具費支給制度は障害者総合支援法に基づく制度で、身体障害者手帳をお持ちの方が対象です。お持ちでない場合は、介護保険の福祉用具でのご相談になります。
Q. どこに相談すればよいですか。
A. まずは担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員にお伝えください。今回の事務連絡でも、身体状況や利用意向をケアプラン作成過程で関係職種が共有し、検討することが求められています。区市町村では介護保険の担当課と障害福祉の担当課が分かれているため、窓口で迷うこともあります。その際は経緯をお伝えください。
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「制度上難しいかも」と思われることでも、まずはご相談ください。
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