この記事の要点(30秒でわかる)
- 高次脳機能障害者支援法は2025年12月24日に公布され、2026年4月1日から施行されています
- これまで予算にもとづく事業として行われてきた支援が、法律にもとづく施策になりました
- 都道府県は中核となる支援センターを置き、家族への支援・相談体制の整備・専門人材の確保に取り組みます
- 施行の日を境に受けられるサービスが増えたわけではありません。変わったのは支援の土台です
「高次脳機能障害者支援法」という法律が、2026年4月1日から施行されています。2025年12月に国会で成立したばかりの新しい法律です。
脳卒中や事故のあとで記憶や注意、感情のコントロールに困りごとが残る高次脳機能障害は、外から見えにくく、ご家族が長い間ひとりで抱えてしまいやすい障害です。この法律は、その支援を国と自治体の責任として明確に位置づけました。
この記事では、法律で何が決まったのか、これまでと何が変わったのか、そして今すぐ使える相談先はどこかを整理します。「4月から何かが自動的に良くなったのか」という点についても、正直にお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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高次脳機能障害者支援法とは
高次脳機能障害者支援法は、議員立法として国会に提出され、2025年(令和7年)12月に成立した法律です。正式には令和7年法律第96号にあたります。
成立までの流れは次のとおりです。
高次脳機能障害者支援法 成立から施行まで
2025年12月5日
法案提出
議員立法として国会へ
12月16日
可決・成立
参議院本会議
12月24日
公布
令和7年法律第96号
2026年4月1日
施行
ここから動いています
施行から3年後をめどに、支援体制のあり方を見直すことが法律に定められています
法律の目的は、病気や事故によって脳が損傷し、注意障害や失語などが生じた方を支援することです。基本理念として、高次脳機能障害のある方の自立と社会参加を確保し、社会的な障壁を取り除く支援策を講じることが定められています。
これまでと何が変わったのか
高次脳機能障害への支援は、この法律ができる前からありました。都道府県が支援拠点機関を置き、ご本人・ご家族・関係機関からの相談に応じる仕組みは、障害者総合支援法にもとづく事業として続けられてきました(出典:東京都心身障害者福祉センター)。
変わったのは、その支援の「土台」です。
支援の土台がどう変わったか
- 障害者総合支援法にもとづく事業として実施
- その時々の予算や方針に左右されうる
- 自治体ごとの取り組みの差が見えにくい
- 高次脳機能障害者支援法という独立した法律にもとづく
- 国と地方公共団体の責務として規定
- 取り組みの内容を公表する
受けられるサービスがすぐ増えるのではなく、支援が続く土台が変わりました
事業として行われている支援は、その時々の予算や方針によって内容が変わりうるものです。法律に位置づけられると、国と地方公共団体の責務として継続して取り組むことが求められます。さらにこの法律では、取り組みの内容を公表し、実効性のある施策とすることが定められました。自治体が何をしているのかが、外から見えるようになるということです。
法律で定められた5つのこと
1. 基本理念|自立と社会参加、社会的障壁の除去
高次脳機能障害のある方の自立と社会参加を確保すること、そして社会的な障壁を取り除く支援策を講じることが、この法律の柱として掲げられています。
社会的な障壁とは、段差のような物理的なものだけを指すのではありません。「見た目には分からないので理解されない」「性格が変わったと誤解される」といった、周囲の受け止め方も含まれます。
2. 国と地方公共団体の責務
国と自治体は、総合的な支援策を講じることが責務として定められました。あわせて、その取り組みを公表し、実効性のある施策としていくことが求められます。
3. 都道府県に中核となる支援センター
都道府県は、支援の中核となるセンターを設置することとされています。相談の入口がどこなのかを、都道府県の責任ではっきりさせるという趣旨です。
4. 家族への支援
高次脳機能障害は、ご本人だけの問題ではありません。国の研究班の報告でも、この障害はご家族を含む周りの人との関係に長く影響が及ぶ点に特徴があるとされています(出典:厚生労働科学研究班「社会的行動障害への対応と支援」)。
法律では、家族への支援が施策の一つとして明記されました。ご家族が支えられる側でもある、ということが前提に置かれています。
5. 相談体制の整備と専門人材の確保
相談できる場所を整えることと、支援にあたる専門の人材を確保することも、取り組むべき施策として挙げられています。高次脳機能障害に対応できる支援者が限られている、という長年の課題に対応するものです。
家族にとって、実際に何が変わるのか
正直にお伝えすると、2026年4月1日を境に、受けられるサービスがすぐに増えたわけではありません。 相談窓口の電話番号が変わったわけでもありません。
法律が変えたのは、支援が行われる根拠と、その継続性です。予算にもとづく事業は年度ごとに形が変わりうるものですが、法律にもとづく施策はそう簡単には動きません。「今年はこの相談会がなくなった」という事態が起きにくくなります。
そしてもう一つ、取り組みを公表するという規定があります。お住まいの自治体が高次脳機能障害の支援に何をしているのかを、確認しやすくなっていきます。
なお、この法律には施行から3年後をめどに見直しを検討するという規定が置かれています。実際に運用してみて足りない部分があれば、そこで手直しされる仕組みです。
今すぐ相談できる窓口
法律の施行を待たずに使える窓口は、以前からあります。
高次脳機能障害の支援拠点機関は、全都道府県に設置されています(出典:厚生労働科学研究班「社会的行動障害への対応と支援」)。東京都の拠点は東京都心身障害者福祉センターで、高次脳機能障害の専用電話相談を受け付けています。
高次脳機能障害の相談先
ご本人からでもご家族からでも相談できます
東京都心身障害者福祉センター(都の支援拠点機関)
高次脳機能障害専用電話相談 03-3235-2955
月〜金曜 9時〜12時/13時〜16時(祝日・年末年始を除く)
生活・就労・診断がつく前の困りごとまで幅広く相談できます
お住まいの区市町村の障害福祉の窓口
足立区は障がい援護課の各援護係。精神障害者保健福祉手帳の申請、障害福祉サービスの利用申請はこちらです
かかりつけ医・ケアマネジャー・訪問看護
毎日の暮らしの中で起きている変化を相談する窓口。薬の調整や、家での関わり方の工夫につながります
相談は、ご本人からでもご家族からでも構いません。診断がついていない段階の「どうも様子がおかしい」というご相談も受け付けています。
研究班のマニュアルでは、一か所に頼りきりにならず、長く生活を維持できる体制をつくることが勧められています。拠点機関・区市町村の窓口・かかりつけ医・訪問看護を、それぞれ別の窓口として持っておくことが、結果的にご家族の負担を軽くします。
訪問看護はどう関わるか
訪問看護は、生活の場でご本人の様子を継続して見ることができる立場にあります。
高次脳機能障害は、求められることの水準が上がるほど表に出やすいという性質があります。介助のある入院生活では目立たず、退院して家庭の生活が始まってから初めて分かる、という経過をたどることが少なくありません。そのため早期の支援を逃してしまう例が、これまで一定数ありました(出典:厚生労働科学研究班「社会的行動障害への対応と支援」)。
自宅にうかがう職種は、その変化に気づける位置にいます。「先週より怒りっぽい」「薬を飲み忘れる日が増えた」といった日々の様子を主治医やケアマネジャーに伝えることで、診察室の短い時間では見えないことが支援につながります。
ご家庭での関わり方の工夫については、高次脳機能障害のある方への関わり方で詳しくまとめています。あわせてご覧ください。
すえひろ訪問看護ステーションでも、主治医の指示のもとで在宅での支援を承っています。ご希望の際はご相談ください。
まとめ
高次脳機能障害者支援法は、2025年12月24日に公布され、2026年4月1日から施行されている新しい法律です。基本理念、国と自治体の責務、都道府県の支援センター、家族への支援、相談体制と人材の確保が定められました。
施行の日を境に、受けられるサービスがすぐに増えるわけではありません。変わったのは、支援が続けられる土台と、取り組みが見えるようになったことです。3年後をめどに見直しが予定されています。
そして、相談できる窓口は法律の前からあります。「見えにくい障害」だからこそ、ご家族だけで抱えずに、外の窓口を早めに使っていただければと思います。
よくある質問
Q. 高次脳機能障害者支援法は、いつから始まったのですか?
A. 2025年(令和7年)12月24日に公布され、2026年4月1日から施行されています。議員立法として国会に提出され、同年12月16日の参議院本会議で可決・成立しました。
Q. この法律ができて、家族が申請すべき手続きはありますか?
A. この法律そのものに、ご家族が新たに申請する手続きはありません。精神障害者保健福祉手帳や障害福祉サービスの利用申請は、これまでどおり区市町村の窓口で行います。
Q. 支援センターはどこにありますか?
A. 都道府県が中核となるセンターを設置することとされています。東京都の場合は東京都心身障害者福祉センターが支援拠点機関にあたり、高次脳機能障害の専用電話相談(03-3235-2955)を受け付けています。
Q. 診断がまだついていませんが、相談してもよいですか?
A. 相談して構いません。拠点機関は、ご本人・ご家族・関係機関からの生活や就労に関するさまざまな相談に応じています。「診断名はないが様子が変わった」という段階のご相談も含まれます。
Q. 3年後の見直しでは何が変わるのですか?
A. 現時点では決まっていません。法律の附則に、施行から3年をめどとして支援体制のあり方や具体的な施策を検討し、必要な見直しを行うことが盛り込まれています。実際に運用してみて出てきた課題に対応するための規定です。
参考資料
- 参議院「高次脳機能障害者支援法案 議案審議情報」 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/219/meisai/m219090219010.htm
- 日本理学療法士協会「医療法等の一部を改正する法律および高次脳機能障害者支援法が国会で可決・成立」 https://www.japanpt.or.jp/info/20251219_729.html
- 福祉新聞「高次脳機能障害支援法が成立 施策の実効性を確保」 https://fukushishimbun.com/seiji/43802
- 厚生労働科学研究班「社会的行動障害への対応と支援」 https://www.rehab.go.jp/application/files/8215/6591/4352/201908_.pdf
- 東京都心身障害者福祉センター「高次脳機能障害の方の相談窓口一覧」 https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/shinsho/kojino/sodan
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