この記事の要点(30秒でわかる)
- 適性は性格ではなく「一人で判断して、あとで相談する」働き方に合うかで決まります
- 訪問看護ステーションは2026年4月時点で20,051件。初めて2万件を超えました
- 一方で廃止・休止の届出も増えており、事業所による差が大きい仕事です
- 「向いていない」と感じる原因が、その人ではなく職場側にあることがあります
この記事は、訪問看護に移ろうか迷っている看護師・セラピストの方に向けたものです。
「一人で判断できる自信がない」「病棟しか経験がないから無理かもしれない」——訪問看護に興味を持ちながら、そこで止まってしまう方は多くいらっしゃいます。
適性の話は、どうしても「明るい人」「コミュニケーションが得意な人」といった性格の話になりがちです。ただ実際に現場で続いているかどうかを見ていると、性格よりも働き方の構造に合っているかのほうがはるかに効いています。
この記事では、訪問看護という仕事の構造をまず説明し、そのうえで向いている人・向いていないと感じやすい人を整理します。そして「向いていない」と思ったときに、それが本当に自分の問題なのかを見分ける視点もお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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訪問看護は「一人で判断して、あとで相談する」仕事です
訪問看護の特徴を一言で言えば、その場に相談できる人がいないことに尽きます。
病棟なら、迷ったときに先輩を呼べます。医師も同じ建物にいます。訪問看護は利用者様のご自宅に一人で入り、その場で判断し、必要なら電話で主治医に連絡します。判断そのものは一人で下すことになります。
ただし「一人で完結する」わけではありません。訪問から戻れば記録を共有し、チームで相談し、主治医とケアマネジャーに報告します。判断は一人、責任はチームという形です。ここを誤解したまま入ると、実際とのずれに苦しみます。
この働き方を選ぶ人は増え続けています。訪問看護ステーションの稼働数は、2026年4月1日時点で20,051件となり、調査開始以来はじめて2万件を超えました。前年から1,297件、6.9%の増加です(出典:一般社団法人全国訪問看護事業協会 令和7年度訪問看護ステーション数調査)。2009年から17年連続で増え続けています。
病棟と訪問看護は、働き方の構造が違います
| 病棟 | 訪問看護 | |
|---|---|---|
| 判断の場 | その場に先輩や医師がいる | ご自宅に一人。その場で判断する |
| 相談のタイミング | すぐ呼べる | 電話で確認するか、戻ってからチームで |
| 担当のしかた | 複数の方を同時に受け持つ | 1回の訪問で1人にじっくり向き合う |
| 時間の使い方 | 勤務時間内に多数のケア | 移動を含めて1日4〜6件が目安 |
| 記録 | 共有の電子カルテ | 訪問ごとに作成し、主治医とケアマネへ共有 |
向いている人に共通していること
現場で長く続いている方に共通するのは、次のような点です。
分からないことを、その場で分からないと言える人。 一人で訪問する仕事なので、抱え込むと事故につながります。「調べて折り返します」「主治医に確認します」と言える人のほうが確実に続きます。知識量より、この一言が言えるかどうかです。
生活の中に医療を置ける人。 病棟では医療が中心ですが、ご自宅では生活が中心です。「本当は毎日入浴していただきたいが、この方の暮らしでは週2回が限界」という現実の中で、次善の策を組み立てられる人が向いています。
待てる人。 在宅の変化はゆっくりです。すぐに結果が出ないことに耐えられるかどうかは、思っている以上に大きな要素です。
移動が苦にならない人。 自転車や車での移動が1日の中で相当な割合を占めます。天候にも左右されます。ここは慣れの問題でもありますが、体力的な向き不向きは確かにあります。
「向いていない」と感じやすい人
正直にお伝えします。次のような場合は、しんどさを感じやすい傾向があります。
その場で答えが出ないと落ち着かない人。 訪問看護では「様子を見て次回に判断する」場面が多くあります。決着をつけたい気持ちが強いと、消耗しやすくなります。
手技を磨き続けたい人。 急性期の処置件数を積みたい方には、在宅は物足りなく感じられることがあります。これは向き不向きというより、目指す方向の違いです。
一人で車や自転車を運転することに強い不安がある人。 移動は業務時間の相当部分を占めます。ただしエリアによっては徒歩・自転車中心の事業所もあり、条件で解決できる場合もあります。
自分がどちらに寄っているか
- 分からないと言える
- 生活を中心に考えられる
- 結果が出るまで待てる
- 移動が苦にならない
- その場で答えを出したい
- 手技を積み上げたい
- 移動に強い不安がある
- 一人での判断に抵抗が大きい
右に当てはまっても、事業所の条件次第で解決することがあります。
「向いていない」と決める前に、次の項目をお読みください
ただし、ここに挙げた項目に当てはまったからといって「訪問看護は無理だ」と結論づけないでください。次の項目のほうが、実は影響が大きいのです。
「向いていない」の原因が、職場側にあることがあります
これは適性の話をするときに、必ず触れなければならない点です。
訪問看護ステーションは増え続けていますが、同時に廃止届・休止届の件数も年々増えています(出典:一般社団法人全国訪問看護事業協会 訪問看護ステーション数調査)。新しく開いた事業所が数年で閉じることも珍しくありません。つまり事業所ごとの差が非常に大きい業種です。
同じ「訪問看護」という言葉でも、次のような点はまったく違います。
同行訪問の期間が2週間の事業所と3か月の事業所。オンコールが月10回の事業所と月2回の事業所。困ったときに電話がつながる事業所と、つながらない事業所。緊急時に管理者が出てくる事業所と、来ない事業所。
「訪問看護が向いていなかった」のではなく「その事業所の体制が整っていなかった」というケースは、相当数あります。 消耗の原因がどこにあるのかについては、訪問看護を辞めたいと感じたら読む記事で詳しく書いています。
なお、病院看護職員の離職率は2024年度で正規雇用11.0%、新卒採用者8.4%、既卒採用者16.1%です(出典:日本看護協会 2025年病院看護実態調査)。既卒で入った人のほうが辞めやすいという傾向は、病院でも在宅でも共通して見られます。慣れた環境から移るときほど、受け入れ側の体制が効いてくるということです。
経験年数は、思われているほど関係ありません
「訪問看護は5年以上の経験がないと無理」と言われることがありますが、法令上そうした要件はありません。
実際には未経験から入る方も新卒で入る方もいます。すえひろでも、入職者の86%が訪問看護は未経験からのスタートです(2026年7月時点)。大切なのは経験年数そのものではなく、分からないことを聞ける体制が事業所側にあるかです。経験10年でも一人で放り出されれば潰れますし、経験2年でも同行と相談の仕組みがあれば育ちます。
見学や面接のときに確認していただきたいのは、同行訪問の期間、オンコールを持ち始める時期、そして困ったときに誰に連絡するのかの3点です。ここを具体的に答えられる事業所は、体制が整っている可能性が高いといえます。
見学・面接で確認する3つ
具体的に答えられる事業所は、体制が整っている目安になります
同行訪問は何か月ありますか
2週間で独り立ちの事業所も、3か月かける事業所もあります。期間が明示されるかを見る
オンコールはいつから、月に何回ですか
持ち始める時期と回数、手当の額は事業所ごとに大きく違います。回数と手当を数字で聞く
訪問中に困ったとき、誰に連絡しますか
連絡先と、つながる時間帯まで確認します。「誰か」ではなく「誰」で答えられるか
参考までに、すえひろの場合はこうです
確認していただきたい3点を挙げた以上、自分たちの答えも書いておきます(2026年7月時点)。比べるための材料としてお使いください。
- 同行訪問:4〜6週間。そのあと見守りのもとでのケアが3〜6週間あり、単独訪問まで7〜12週間かけます
- 教育体制:プリセプター制とチームでの教育を併用しています
- オンコール:一人あたり月4〜10回の担当。実際に緊急訪問が発生するのは事業所全体で月10〜20回です
- 待機手当:オンコール1(対応担当)1日6,000円/オンコール2(電話バックアップ)1日1,000円。緊急訪問には別途、30分で2,000円・60分で4,000円がつきます
- 夜勤:ありません
- 訪問中に困ったとき:第一に当日のリーダー、第二に管理者・主任、第三に主治医や連携医療機関へつなぎます
勤務は週4日から組めます。オンコールの免除や軽減の仕組みもあります。移動は電動自転車と原付一種で、1日の訪問はおおむね5〜6件です。年間休日は115日です。
これらは求人票に載せる数字であると同時に、入ってから話が違うと感じないための材料でもあります。他の事業所を見学されるときも、同じ項目を同じ粒度で聞いてみてください。
迷っているなら、一度同行してみるのが確実です
適性は、考えていても分かりません。実際にご自宅へ入ってみると、思っていたのと違ったという方向にも、思っていたより合っていたという方向にも、はっきり結論が出ます。
多くの事業所が見学や同行を受け付けています。半日でも同行すると、移動の実感、記録の量、利用者様との距離感が具体的に分かります。読んで悩む時間より、1回同行するほうが確実です。
すえひろ訪問看護ステーションでも、見学や同行のご相談を承っています。応募を決めていなくても構いません。「向いているか確かめたい」という段階でお越しいただいて大丈夫です。
まとめ
訪問看護の適性は、性格よりも「一人で判断して、あとで相談する」という働き方に合うかどうかで決まります。分からないと言える人、生活を中心に考えられる人、結果を待てる人が続いています。
一方で、「向いていない」と感じた原因が事業所側の体制にあることは少なくありません。ステーションは2026年4月時点で20,051件まで増えましたが、廃止・休止も増えており、事業所ごとの差が大きいのが実情です。同行訪問の期間、オンコールの回数、困ったときの連絡先——この3点を確認すれば、体制はかなり見えてきます。
すえひろ訪問看護ステーションは、制度上むずかしいと思われることでも、どうすればできるかを一緒に考える姿勢を大切にしています。迷っている段階でのご相談も、専門職として誠実に向き合わせていただきます。
よくある質問
Q. 病棟しか経験がなくても訪問看護に移れますか?
A. 移れます。法令上、経験年数の要件はありません。ただし同行訪問の期間や相談体制は事業所によって大きく違うため、そこを確認してから決めてください。
Q. 一人で判断するのが不安です。向いていないでしょうか。
A. 不安があること自体は問題ありません。訪問看護は判断を一人で下しますが、責任はチームで持ちます。むしろ不安を口に出せる方のほうが続いています。
Q. オンコールが心配です。避ける方法はありますか。
A. オンコールのない事業所や、回数を調整できる事業所もあります。月あたりの呼び出し回数と手当は事業所ごとに違うため、面接で必ず確認してください。
Q. 体力に自信がないのですが大丈夫でしょうか。
A. 移動が業務の相当部分を占めるため、体力は要素のひとつです。ただしエリアによっては徒歩・自転車中心の事業所もあり、条件で調整できる場合があります。
Q. 向いているか、入る前に確かめる方法はありますか。
A. 見学や同行訪問がいちばん確実です。半日でも同行すると、移動の実感や記録の量、利用者様との距離感が具体的に分かります。
参考資料
- 一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果」 https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r7-research.pdf
- 公益社団法人日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」 https://www.nurse.or.jp/home/assets/20260331_nl01.pdf
- 公益財団法人日本訪問看護財団「訪問看護データ集」 https://www.jvnf.or.jp/data/
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