「親の様子が心配になってきたけれど、どこに相談すればよいか分からない」。足立区で介護が始まるご家族が、最初に突き当たる壁です。制度は多岐にわたり、窓口も分散しているため、全体像をつかむのに時間がかかります。
足立区の高齢者支援は、大きく分けて介護保険サービス・区独自の生活支援制度・地域包括支援センターによる相談支援の3層で成り立っています。この3層を押さえておけば、必要な支援にたどり着く順番が見えてきます。
本記事では、足立区にお住まいの高齢者ご本人とご家族を対象に、介護保険の申請手順、区独自の支援制度、地域包括支援センターの使い方、訪問看護の役割、認知症の方への地域サポートまでを順に整理しました。情報を集める方の手助けになれば幸いです。
足立区の高齢者支援|在宅生活を続けるための制度と相談先ガイド
介護保険・区独自制度・地域包括支援センターの3層をまとめて把握できる、ご家族のためのガイド
※出典:足立区「足立区の人口」令和6年9月/足立区高齢福祉課
足立区で暮らす高齢者の現状|数字で見る地域の姿
足立区の65歳以上人口は約18万人で、区民の約4人に1人が高齢者です(足立区「足立区の人口」令和6年9月)。単身世帯や高齢夫婦のみ世帯が増えており、介護の相談件数も年々増加傾向にあります。この地域の姿を把握しておくことが、ご自身の家庭に合った支援を選ぶ出発点となります。
足立区の高齢化率と単身高齢者世帯の割合
東京都全体の高齢化率は約22%ですが、足立区は約26%と高めに推移しています(令和6年時点)。23区の中でも高齢化が早く進んでいる地域のひとつです。筆者も介護サービスの現場で、足立区内のご家庭に伺うなかで「身近に相談できる親族がいない」というお声を頻繁に伺います。
単身高齢者世帯の割合も上昇しており、ご本人が自ら制度を調べにいくことが難しいケースが珍しくありません。だからこそ、ご家族や近所の方、ケアマネジャーが橋渡しをする役割が重みを増しています。
在宅療養を選ぶ方が増えている背景
病院での長期入院が難しくなり、在宅での療養を選ぶ方が全国的に増えています。厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」でも、訪問看護ステーションの利用者数は右肩上がりで推移しています。「家で過ごしたい」という希望をかなえるには、地域の支援を組み合わせる必要があります。
| 項目 | 足立区 | 東京都 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上人口 | 約18万人 | 約317万人 | 足立区「足立区の人口」令和6年9月/東京都総務局「東京都の人口(推計)」令和6年 |
| 高齢化率 | 約26% | 約22% | 足立区・東京都総務局(令和6年) |
| 地域包括支援センター数 | 25カ所 | 約400カ所 | 足立区高齢福祉課・東京都福祉局(令和6年公表) |
介護保険サービスの申請から利用までの流れ
高齢者支援の中心は介護保険制度です。要介護認定を受けると、訪問介護・デイサービス・訪問看護など複数のサービスを組み合わせて利用できます。申請から利用開始までの標準的な流れは、申請→訪問調査→主治医意見書→認定審査→結果通知→ケアプラン作成→利用開始という7段階です。ご家庭に必要な支援の中身は、認定結果とケアマネジャーとの相談で決まっていきます。
足立区役所の介護保険課での申請手続き
介護保険の申請窓口は、足立区役所の介護保険課、または最寄りの地域包括支援センターです。ご本人が窓口に行けない場合は、ご家族の代理申請も可能で、郵送による申請を受け付けている自治体もあります。
必要書類は介護保険被保険者証、医療保険証(第2号被保険者の場合)、本人確認書類などが基本です。認定結果が出るまでは通常30日程度かかりますが、入院中や退院直後は暫定ケアプランでサービスを先に始められる場合があります。
ケアマネジャーの選び方とケアプラン作成
認定結果が「要支援1〜2」であれば地域包括支援センター、「要介護1〜5」であれば居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成します。ケアマネジャーとは、介護サービス全体の調整役を担う国家資格の専門職のことです。
ケアマネジャーを選ぶときは、担当エリア・得意分野・連絡の取りやすさを確認しましょう。初回面談のときに、生活上の困りごと・ご本人の希望・ご家族の事情を率直にお伝えいただくほど、ケアプランの質が高まります。
自己負担の目安と上限額
介護保険サービスの自己負担は、所得に応じて1〜3割です。要介護度ごとに1カ月に使えるサービスの上限(区分支給限度基準額)が決まっており、超えた分は全額自己負担となります。詳細は厚生労働省「介護保険制度の概要」で随時更新されています。
住民税非課税世帯には、負担軽減のための補足給付や高額介護サービス費などの仕組みが整っています。申請主義のため、該当しそうな場合は区の介護保険課へご相談ください。
介護保険サービス|申請から利用開始までの7ステップ
申請
区役所・地域包括
訪問調査
認定調査員が訪問
主治医意見書
区から医師へ依頼
認定審査
介護認定審査会
結果通知
約30日で郵送
ケアプラン作成
ケアマネジャーと
利用開始
サービス事業所と契約
足立区独自の高齢者支援制度|制度の枠を超えて使える仕組み
介護保険だけではカバーしきれない「生活の細部」を支えるのが、足立区の独自事業です。紙おむつ給付、緊急通報システム、配食サービス、介護用品の購入費助成など、暮らしに密着した制度が複数あります。要介護認定を受けていない方でも、年齢や世帯状況などの条件を満たせば使える制度があるため、把握しておく価値があります。
紙おむつ給付と購入費助成
おおむね65歳以上で、常時失禁の状態にある在宅の高齢者を対象に、紙おむつの現物給付または購入費の助成を行う制度があります。所得制限や介護度の条件は年度ごとに見直されるため、最新の案内は足立区高齢福祉課のサイトでご確認ください。
申請は原則としてご本人またはご家族が行います。訪問看護やヘルパーを利用されている方の場合、担当者から申請の流れをご案内できることがあります。
緊急通報システム(あんしん電話)
ひとり暮らしの高齢者や、日中お一人になるご家庭を対象に、緊急時に通報装置のボタンを押すだけで民間の受信センターに繋がる仕組みです。発信を受けると、状況確認のうえ救急要請や協力員への連絡を行います。要介護認定の有無は問われないのが特徴です。
ひとり暮らし高齢者への配食サービス
買い物や調理が難しくなった高齢者に、栄養バランスを考えた食事を自宅まで届ける仕組みです。足立区は週3〜5回程度を目安に、配達時の安否確認を兼ねた見守りも行っています。食事の提供だけでなく、顔を合わせる機会を定期的に確保する点がこの制度の価値です。
介護用品の購入費助成
要介護1以上の在宅高齢者を介護するご家族に対し、介護用品(紙おむつ・尿取りパッド・使い捨て手袋など)の購入費を助成する制度があります。月額上限や品目は年度ごとに変わる可能性があるため、申請前に高齢福祉課で詳細をご確認ください。
ここまでが制度に沿った選択肢です。しかし、制度の対象外になるご事情も現場では珍しくありません。「要介護認定を受けていないが見守りだけが欲しい」「夜間だけ不安がある」といったとき、制度上は難しくても、何ができるかを一緒に考えるのが地域の役割だと私たちは考えています。
地域包括支援センターの使い方|まず相談する最初の窓口
「どこに相談すればよいか分からない」というとき、最初に訪ねていただきたいのが地域包括支援センターです。足立区は区内25カ所に設置しており、担当エリアごとに保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが常駐しています。無料で相談でき、制度の案内から事業所の紹介まで一括で対応します。
担当エリアの地域包括支援センターを調べる方法
地域包括支援センターは、お住まいの住所によって担当センターが決まっています。足立区のサイト「地域包括支援センター一覧」で、丁目単位の担当表が公開されています。初回は電話で予約を取り、面談または訪問を調整する流れが一般的です。
センター名が分からない場合でも、足立区役所の高齢福祉課に電話すれば担当センターを案内してもらえます。ご相談の内容によっては、センターの職員が自宅まで来てくれることもあります。
相談の際に用意しておくと話が早いもの
初めてのご相談で用意しておきたいのは、介護保険被保険者証、お薬手帳、かかりつけ医の情報、現在お困りの点を書いたメモの4点です。すべて揃っていなくても構いませんが、現状を順を追って説明できる材料があると、センター側も次の一手を提案しやすくなります。
本人が相談できない場合のご家族からの連絡
ご本人が受診や相談を嫌がる、認知機能の低下で状況を説明できないといったケースでも、ご家族だけからの相談を受け付けています。センターは守秘義務のもと、本人の状況を聞いたうえで、どのように関係を築いていくかを一緒に考えます。無理にご本人を連れていく必要はありません。
筆者が足立区のご家庭に伺う現場でも、「本人は『まだ大丈夫』と言うが、ご家族は限界に近い」という声をよくお聞きします。この段階で地域包括支援センターに相談しておくと、本人が受け入れやすいタイミングで介入する準備ができます。
足立区の地域包括支援センター|エリア別の相談拠点
お住まいの住所から担当センターが決まります。無料で相談でき、面談または訪問にも対応
北部
5
カ所
中央部
5
カ所
南部
5
カ所
西部
5
カ所
東部
5
カ所
足立区の地域包括支援センター総数
25カ所
※エリアごとの拠点数は概念配分です。担当地区の確認は足立区高齢福祉課または地域包括支援センター一覧ページでご確認ください(出典:足立区高齢福祉課)。
医療と介護の間をつなぐ訪問看護|在宅療養を続ける選択肢
退院後の生活、通院が難しくなってきた方、医療処置が必要になった方。この「医療と介護の間」を担うのが訪問看護です。主治医の指示のもとで看護師がご自宅に伺い、健康状態の観察から医療処置、ご家族への介護指導までを行います。訪問介護(ヘルパー)とは役割が異なるため、違いを押さえておきましょう。
訪問看護でできること
- 医師の指示に基づく医療処置(点滴管理、褥瘡の処置、カテーテル管理、服薬管理など)
- 健康状態の観察(血圧・脈拍・呼吸・体温のチェックと体調変化の早期発見)
- リハビリテーション(理学療法士・作業療法士との連携)
- 服薬管理支援(お薬カレンダーの確認、飲み合わせの相談)
- ご家族への介護指導(介護負担を減らすコツや夜間の対応方法)
- 看取り期の支援(主治医・ケアマネジャーと連携した在宅看取り)
利用者様お一人おひとりに合わせて、必要な医療面のサポートを組み立てます。
訪問看護でできないこと(他サービスとの線引き)
- 家事援助(掃除・洗濯・食事の支度などは訪問介護の業務です)
- 買い物代行(原則として対応していません)
- 医師の診察・処方(主治医の役割です)
- 24時間常駐型の見守り(施設サービスとは異なります)
できないことは、できないとお伝えします。そのうえで、代わりに何ができるかをケアマネジャーや主治医、薬剤師と共有し、ご家庭の支え方を再構築していきます。
介護保険と医療保険の使い分け
訪問看護は、介護保険の対象になる方(要支援・要介護の認定を受けた65歳以上の方など)と、医療保険の対象になる方(厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方、精神科訪問看護の対象の方など)で、使う保険が異なります。どちらを使うかは主治医の判断と制度上の区分で決まるため、ケアマネジャーや訪問看護ステーションにご相談ください。
すえひろ訪問看護ステーションは、2020年3月に足立区で開設し、6年目を迎えました。24時間365日の体制で、腹膜透析(PD)の在宅療養など医療依存度の高い方の受け入れにも対応しています。
認知症の方とご家族への地域サポート
認知症の方の在宅生活は、ご家族だけで抱え込むと行き詰まりやすい領域です。足立区は見守りネットワーク・認知症カフェ・家族介護者教室など、ご家族の負担軽減を目的とした仕組みを整えています。厚生労働省「認知症施策推進大綱」(令和元年策定)に基づき、各自治体が整備を進めてきた流れの一環です。
認知症高齢者等SOSネットワーク
徘徊などで行方不明になる可能性のある高齢者をご家族が事前に登録しておき、万一のときに警察・区・協力機関が連携して捜索する仕組みです。写真や特徴、よく立ち寄る場所などを登録しておくと、早期発見につながります。
登録は無料で、お住まいの地域包括支援センターや足立区高齢福祉課で手続きできます。実際に行方不明になってから登録するのではなく、兆候が見えた段階での早めの登録が大切です。
認知症カフェと家族介護者の居場所
認知症カフェとは、認知症の方・ご家族・地域の方が気軽に集まれる場所のことです。参加費は低額または無料で、医療職や介護職も加わって相談に乗ります。足立区内でも複数のカフェが運営されており、曜日ごとに雰囲気が異なります。
同じ立場の家族介護者と話せる場があるかどうかで、介護を続ける気力はずいぶん違ってきます。筆者が訪問するご家庭でも、カフェに通い始めたご家族から「同じ悩みを抱える方の話を聞けて肩の力が抜けた」というお声を伺うことが少なくありません。
受診につながらないときの相談先
「本人が受診を嫌がる」「病院に行く話を切り出せない」というときは、地域包括支援センターのほか、足立区の認知症相談窓口に電話で相談できます。保健師や社会福祉士が、関係づくりのコツや受診勧奨のタイミングを一緒に考えます。
訪問診療を行っている医師と連携することで、自宅で初期評価を受けられる場合もあります。ケアマネジャー・主治医・訪問看護師・薬剤師の多職種で、本人が納得できる形を探っていくやり方です。
認知症の方とご家族を支える地域サポート
厚生労働省「認知症施策推進大綱」に基づき、足立区も見守り・相談・多職種連携を整備
認知症の方・ご家族
在宅生活を続けるための支援ネットワーク
地域包括支援センター
25カ所・無料で相談
SOSネットワーク
徘徊時の捜索・事前登録制
認知症カフェ
ご家族の情報共有の場
主治医・訪問診療
自宅での初期評価も可
ケアマネジャー
ケアプランで全体を調整
訪問看護師
服薬管理・体調観察
本人・ご家族だけで抱え込まず、複数の窓口と多職種で支える仕組みです。まずは地域包括支援センターに電話してみることが最初の一歩になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護保険の申請はどこに行けばよいですか?
足立区役所の介護保険課、または最寄りの地域包括支援センターで申請できます。ご本人が窓口に行けない場合は、ご家族の代理申請や郵送申請も受け付けています。認定結果が出るまでは通常30日程度かかりますが、入院中や退院直後は暫定ケアプランでサービスを先に開始できるケースもあります。
Q2. 介護認定を受けていなくても使える高齢者支援はありますか?
あります。足立区の緊急通報システム(あんしん電話)や配食サービス、ひとり暮らし高齢者の見守り事業は、要介護認定の有無にかかわらず、年齢・世帯状況などの条件を満たせば利用できます。詳細は地域包括支援センターにお問い合わせください。
Q3. 本人が相談を嫌がる場合、家族だけで相談できますか?
はい、ご家族からの相談も受け付けています。地域包括支援センターは守秘義務のもと、ご本人の状況をお聞きしたうえで、どのように関係を築いていくかを一緒に考えます。無理にご本人を連れていく必要はありません。
Q4. 退院後に訪問看護を使いたい場合、どのタイミングで動けばいいですか?
入院中、退院が見えてきた時点でご相談いただくのが理想です。病院の退院支援担当(医療ソーシャルワーカー)やケアマネジャーを通じて訪問看護ステーションに連絡が入り、退院当日から訪問を開始できる場合もあります。すえひろでも入院中からのご相談を伺っています。
Q5. 遠方に住む家族が、足立区の親の介護について相談することはできますか?
できます。足立区内の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所は、遠方のご家族からの電話相談にも応じています。ご実家の住所から担当センターを特定し、まずはお電話で状況をお伝えください。必要に応じて、センターの職員が訪問して現状を確認し、ご家族と情報を共有します。
Q6. 介護費用がどれくらいかかるか不安です。相談できる窓口はありますか?
地域包括支援センターやケアマネジャーが、介護保険サービスの自己負担額・各種助成制度・高額介護サービス費などを含めた見通しをご説明します。所得や世帯状況によっては負担軽減制度の対象になることもあります。遠慮せずご相談ください。
まとめ|制度を知ることが、在宅生活を続ける第一歩
足立区の高齢者支援は、介護保険サービス・区独自の生活支援・地域包括支援センターの相談支援という3つの層で構成されています。制度は複雑ですが、まずは地域包括支援センターに電話をしてみることで、どの制度が使えるかを一緒に整理できます。
訪問看護のサービス内容や健康相談については、当ステーションのサービス案内ページでも詳しくご紹介しています。退院後の在宅療養や、医療依存度の高い方の在宅生活については、これまでの事例もあわせてご参照ください。
訪問看護は、ご自宅での療養生活を医療面から支えるサービスです。すえひろ訪問看護ステーションは、足立区で2020年3月に開設し、24時間365日の体制を取っています。
「こんなことを相談してもいいのだろうか」と迷われる内容こそ、一度お聞かせください。お受けできるかどうかも含めて、一緒に考えます。制度上は難しくても、何ができるかを主治医やケアマネジャーと一緒に探ります。
まずは、かかりつけ医やケアマネジャーにご相談いただくか、お住まいの地域の地域包括支援センター、または当ステーションまで直接お問い合わせください。
