この記事の要点(30秒でわかる)
- 訪問1回の時間は30分から1時間30分程度が標準と明記されました
- 状態を見ずに一律で日数や回数を決めることは認められません
- 記録には実際の開始時刻と終了時刻を書くことになりました
- 訪問を減らす改定ではなく、中身を確かめるための改定です
「うちの訪問は、いつも20分くらいで終わってしまう」「回数はこちらの希望で決めていいのだろうか」。ご家族から、こうしたご相談をいただくことがあります。決まりが見えないぶん、聞いていいことなのかどうかも判断しづらいのだと思います。
2026年6月の改定で、その決まりがはっきりしました。訪問1回の時間の目安、誰がどう回数を決めるのか、記録に何を残すのか。これまで運用に任されていた部分が、国の通知として文章になっています。
すえひろ訪問看護ステーションは、この改定を「利用者様が確かめるための材料が増えた」と受け止めています。ご自身が受けているケアについて、遠慮なく尋ねていただきたいと思っています。聞かれて困るような訪問はしていません。
この記事では、何が明確になったのか、ご家族が確かめられることは何か、そして「訪問が減るのでは」という不安についてを、厚生労働省の資料をもとに整理します。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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訪問1回の時間は30分から1時間30分程度が標準です
厚生労働省の通知に、はっきりと書かれています。「指定訪問看護の実施時間は、1回の訪問につき、訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)については30分から1時間30分程度を標準とする」(出典:厚生労働省保険局医療課『令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進』)。
これは上限でも下限でもなく、標準です。その日の状態やご都合で短くなることは、当然あります。通知にも「利用者側のやむを得ない事情により標準の時間を下回る」場合は別と書かれています。1回短かったからおかしい、という話ではありません。
問題にされているのは、短い訪問が繰り返されるときです。通知はこう続きます。標準の時間を下回る訪問が「同一日に、同一の利用者に複数回又は複数の利用者に行われるなど、頻繁に行われている場合には、指定訪問看護を実施したとは認められない」(出典:同)。
つまり、たまたま短い日があることと、いつも短いことは、扱いが違います。前者は起こりうることで、後者は認められません。
「毎回15分で帰ってしまう」という状態が続いているなら、それは確かめてよいことです。理由があるのかもしれませんし、そうでないのかもしれません。尋ねること自体が失礼にあたるものではありません。
訪問1回の時間はどれくらいが標準か
| 標準 | 1回の訪問につき30分から1時間30分程度(訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)の場合) |
|---|---|
| 短くてよい場合 | 標準の時間に沿った計画で訪問したものの、利用者様側のやむを得ない事情で短くなったとき |
| 認められない場合 | 標準を下回る訪問が、同一日に同じ利用者様へ複数回、または複数の利用者様へ行われるなど、頻繁に行われているとき |
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進」
回数や日数を一律に決めることは認められません
もうひとつ、はっきり書かれたことがあります。「利用者の心身の状況等を踏まえずに一律に指定訪問看護の日数、回数、実施時間及び人数を定めること」は認められない、という一文です(出典:同)。
さらに、「定期的な指定訪問看護を実施していない者が指定訪問看護の日数等を定めること」も認められないとされています。訪問していない人が机の上で回数を決める、という形を戒めたものです。
その前提として、こう書かれています。訪問看護は「利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと」(出典:同)。
回数の根拠は、看護目標と訪問看護計画にあります。 「この方には何を目指して、そのために週何回必要か」が先にあり、そこから回数が決まる順番です。逆ではありません。
ですから、「なぜこの回数なのですか」というご質問には、答えがあるはずです。 説明できないまま回数だけが決まっている状態は、通知が想定していない形です。
訪問の回数はこの順番で決まります
認められない決め方
心身の状況を踏まえずに、一律で日数・回数・実施時間・人数を定める
定期的に訪問看護を実施していない者が、日数や回数を定める
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進」
記録に実際の開始時刻と終了時刻を書くことになりました
改定で、記録の書き方も明確になりました。訪問看護記録書に、実際の訪問の開始時刻と終了時刻を記載する必要があることが明記されています(出典:同)。
記録に残すのはそれだけではありません。訪問年月日、体温や脈拍などの心身の状態、病状、ご家庭での看護の状況、実施した内容、要した時間の概要。これらを毎回の訪問時に記入することとされています。
加えて、目標がどこまで達成できたか、その効果はどうかを評価し、評価の内容も記録書に残すこととされました。必要に応じて訪問看護計画書を見直すことも求められています(出典:同)。
つまり、「行った」だけでなく「どうだったか」を残す形になりました。時間が記録に残るので、実際にどれくらい訪問しているかは、あとから確かめられます。
この記録は、ご本人やご家族が見せてもらうことができます。何が書かれているのか、どう請求すればよいのかは、訪問看護の記録は誰が見るのか|開示請求のしかたとご家族が知っておくことにまとめています。
訪問看護記録書に残ること
評価の内容も記録書に残し、必要に応じて訪問看護計画書の見直しを行うこととされています。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進」
事業者に新しく禁止されたこと
今回の改定では、訪問看護ステーションの運営基準そのものも改正されました。事業者に対して4つのことが新たに義務づけられています(出典:同)。
ひとつめは適正な手続の確保です。届出や費用の請求に係る手続を適正に行うこと。ふたつめは健康保険事業の健全な運営の確保。
みっつめが経済上の利益の提供による誘引の禁止です。値引きなどの経済的な利益を提供して、自分のところを使うよう仕向けてはならない、というものです。条文にはこう書かれています。他の事業者やその従業員に対して、「利用者を紹介する対価として金品を提供すること」により誘引してはならない(出典:同)。
よっつめが特定の主治の医師や特定の事業者等への誘導の禁止です。特定の医師を主治医にするよう、あるいは特定の事業者を使うよう指示することの対償として、その医師や事業者から金品を受け取ってはならない、というものです。
病院や診療所の側のルール(療養担当規則)も同時に見直されました。保険医療機関が、特定の訪問看護ステーション等を利用するよう指示することの対償として、財産上の利益を受け取ることが禁止されました(出典:同)。
紹介にお金が動く形を、両側から止めたという改定です。ご家族の立場からすると、「なぜこの事業所を勧められたのか」に、金銭的な理由が入り込みにくくなった、ということになります。
訪問看護事業者に新しく義務づけられたこと
1適正な手続の確保
届出や費用の請求に係る手続を適正に行うこと。
2健康保険事業の健全な運営の確保
健全な運営を損なうおそれのある行為をしないこと。
3経済上の利益の提供による誘引の禁止
利用者様を紹介する対価として金品を提供し、自らのところを使うよう仕向けてはならない。
4特定の主治の医師・事業者等への誘導の禁止
特定の医師や事業者を利用するよう指示することの対償として、金品を受け取ってはならない。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進」
「訪問が減るのでは」という心配について
ここまで読むと、締めつけが強まったように感じられるかもしれません。ですが、この改定の資料につけられた見出しは「質の高い訪問看護の推進」です(出典:同)。減らすためのものではありません。
戒められているのは、状態を見ないまま回数や時間を決める運用と、極端に短い訪問を数多く重ねる形です。必要があって回数が多い方の訪問が減る、という話ではありません。
実際、同じ改定では支援が多く必要な方への評価を厚くする方向の見直しも同時に行われています。支援ニーズの高い精神科訪問看護の利用者様を受け入れ、地域の関係機関と連携する体制が整ったステーションを新たに評価する見直しがそのひとつです。重症の方や、様々な背景をお持ちの方への訪問看護をどう評価するかという項目も、同じ資料に立てられています(出典:同)。
ですから、必要な訪問は、これまでどおり必要なだけ受けられます。 もし回数や時間が変わるという説明を受けたら、その理由を聞いてください。状態が変わったからなのか、計画を見直したからなのか、理由があるはずです。
減らす改定ではありません
資料の見出しは「質の高い訪問看護の推進」です
| 戒められたこと | 評価が厚くされたこと |
|---|---|
|
|
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 9. 質の高い訪問看護の推進」
まとめ
2026年6月の改定で、訪問1回の時間は30分から1時間30分程度が標準と明記され、状態を見ずに一律で日数や回数を決めることは認められないとされました。記録には実際の開始時刻と終了時刻を残すことになり、目標の達成度も評価して記録します。事業者側には、紹介の対価として金品を提供することの禁止などが新たに義務づけられました。
これらは、訪問を減らすための決まりではありません。ご自身が受けているケアの中身を、確かめるための材料が増えたとお考えください。「なぜこの回数なのか」「今日は何をしたのか」は、聞いてよいことです。
すえひろ訪問看護ステーションでは、訪問のたびに何を見て何を判断したかをお伝えするようにしています。計画は目標から組み立て、状態が変われば見直します。聞かれて困るような訪問はしていません。
説明が足りないと感じられたときは、遠慮なくおっしゃってください。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
よくある質問
Q. 訪問が20分で終わった日がありました。おかしいのでしょうか。
A. 1回短かったこと自体は問題ではありません。通知にも、利用者側のやむを得ない事情で標準の時間を下回る場合があると書かれています。ただし短い訪問が繰り返し続いている場合は、確かめてよい状態です。
Q. 訪問の回数は誰が決めるのですか。
A. 心身の状態をもとに看護目標を立て、訪問看護計画をつくり、そこから必要な回数が決まります。状態を見ずに一律に決めることは認められていません。回数の理由は説明できるはずですので、お尋ねください。
Q. 訪問時間の記録は見せてもらえますか。
A. 訪問看護記録書には実際の開始時刻と終了時刻を記載することになっています。ご本人やご家族が記録の開示を求めることもできますので、手続きの進め方は担当の看護師にお尋ねください。
Q. この改定で訪問が減らされることはありますか。
A. 必要な訪問が減る改定ではありません。同じ改定では、支援が多く必要な方への評価を厚くする見直しも行われています。回数や時間が変わる説明を受けたときは、その理由をご確認ください。
Q. 事業所を紹介されたのですが、決めなければいけませんか。
A. 決める必要はありません。今回の改定で、紹介の対価として金品を提供することによる誘引や、特定の事業所への誘導が新たに禁止されました。ご自身で複数を比べて選んでいただいて構いません。
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「制度上難しいかも」と思われることでも、まずはご相談ください。
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