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脳卒中後の高次脳機能障害と在宅療養|家族が知っておくべき「見えにくい後遺症」と訪問看護の関わり

「退院してきたら別人みたいになった」「怒りっぽくなって何度も同じことを聞く」「麻痺はないのに、何もできなくなった」——脳卒中後にこうした変化を感じているご家族は少なくありません。これは「高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)」と呼ばれる後遺症かもしれません。身体的な麻痺と違って見えにくいために、本人も家族も気づかないまま対処に苦しむケースが多い障害です。この記事では、高次脳機能障害の種類・在宅での現れ方・訪問看護師との関わり方をわかりやすく解説します。「どう接すればいいか分からない」という不安を少しでも和らげる助けになれば幸いです。すえひろ訪問看護ステーションでも、高次脳機能障害のある利用者様とご家族に、専門職として寄り添わせていただいています。

高次脳機能障害とは?脳卒中後に起こる「見えにくい後遺症」

高次脳機能障害とは、脳卒中や交通事故などによって脳が損傷を受けた後に、記憶・注意・思考・言語・行動のコントロールなどの能力に障害が生じることをいいます(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)。「高次脳機能」とは、記憶・注意・言語・思考・感情コントロールといった人間らしい知的活動を支える脳の働きのことです。医師から高次脳機能障害と診断された方は全国で約22万7千人と推計されています(令和4年 厚生労働省 生活のしづらさなどに関する調査)。

身体の麻痺や言語障害は外から見てわかりやすいですが、高次脳機能障害は「外見では分からない」のが特徴です。一見して「元気そう」に見えても、本人の内側では多くのことが変化しています。このギャップがご家族との間に摩擦を生じさせることがあります。

主な症状の種類と在宅での現れ方

高次脳機能障害にはいくつかの種類があり、複数が重なって現れることもあります。

記憶障害は、新しいことを覚えられない、少し前のことをすぐ忘れる状態です。在宅では「何度も同じことを聞く」「食事をしたことを覚えていない」「薬を飲んだかどうか分からない」という形で現れます。

注意障害は、集中力が続かない、複数のことを同時にできない状態です。「テレビを見ながら話しかけると全く聞いていない」「調理の途中でガスをつけたまま席を離れる」といった場面に現れます。

遂行機能障害(すいこうきのうしょうがい)は、段取りを組んで物事を進める力の障害です。「料理の手順が分からなくなった」「買い物リストを作れない」「計画通りに動けない」という変化として見られます。

社会的行動障害は、感情のコントロールが難しくなる状態です。「些細なことで激しく怒る」「場の空気を読まない発言をする」「意欲が極端に低下する」などが該当します。介護する側の疲弊につながりやすい症状です。

高次脳機能障害の主な症状と在宅での現れ方
1
記憶障害
何度も同じことを聞く・食事をしたことを覚えていない・薬を飲んだか分からない
2
注意障害
話しかけても全く聞いていない・調理中にガスをつけたまま席を離れる
3
遂行機能障害
料理の手順が分からなくなった・買い物リストが作れない・計画通りに動けない
4
社会的行動障害
些細なことで激しく怒る・場の空気を読まない発言をする・意欲が極端に低下する

出典:国立障害者リハビリテーションセンター/複数の症状が重なって現れることもあります

なぜ気づかれにくいのか

高次脳機能障害が見過ごされやすい理由のひとつは、本人自身が障害を自覚しにくいことです。「自分は普通だ」と思っているため、支援を受け入れることに抵抗を示すことがあります。また、症状が「性格の変化」「やる気のなさ」「わがまま」として誤解されることも多く、ご家族が長期にわたって孤立した状態で対応してしまうケースがあります。

麻痺が軽く「歩ける」「話せる」状態であれば、退院後のサポート体制が薄くなりがちです。だからこそ、定期的に自宅を訪問する訪問看護師が「変化に気づく目」として機能することが重要になります。

訪問看護師が自宅でできること

訪問看護師は、医療的なケアを行うだけでなく、生活の中で症状がどのように現れているかを継続的に観察します。「先週より少し怒りっぽい」「最近薬を飲み忘れることが増えた」という変化を主治医や担当ケアマネージャーに報告し、対応策を一緒に考えます。

具体的な支援としては、服薬管理のサポート(薬カレンダーの活用・飲み忘れ確認)、日常生活のルーティン化を助ける声かけ、注意障害への環境調整の提案(物の定位置を決める・視覚的な手がかりを使うなど)があります。また、ご家族に対して「怒りやすさは障害の症状であること」「どう接すると落ち着くか」を伝え、介護の負担を和らげる働きかけも行います。

制度・手帳・サービスについて

高次脳機能障害のある方は、「器質性精神障害」として精神障害者保健福祉手帳を取得できます。取得要件は、初診日から6か月以上症状が継続していること、および精神障害等級(1〜3級)の基準を満たすことです。診断書は精神科医以外(リハビリテーション医・神経内科医・脳神経外科医など)でも作成可能です(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)。手帳を取得すると、障害者総合支援法に基づく自立訓練(生活訓練)や就労支援サービスを利用できるほか、各種公共料金の割引なども受けられます。65歳未満の方は障害福祉サービスが、65歳以上の方は介護保険サービスが優先されます。申請窓口は足立区の障がい援護課各援護係です。

まとめ

高次脳機能障害は、脳卒中後の「見えにくい後遺症」として、ご本人とご家族の両方を長期にわたって苦しめることがあります。「変わってしまった」と感じたときが、専門職に相談するタイミングです。訪問看護師は、医療・生活・ご家族支援の橋渡し役として、継続的な関わりを通じてその変化に寄り添うことができます。すえひろ訪問看護ステーションに、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 高次脳機能障害は回復しますか?

A. 脳の可塑性(かそせい)により、適切なリハビリと環境調整によって症状が改善する可能性があります。ただし完全回復が難しい場合もあり、「症状と上手に付き合う方法を見つけること」が支援の目標になることも多いです。

Q. 怒りっぽさや無気力は「わがまま」ではないですか?

A. 脳の損傷による症状であり、本人の意志や性格の問題ではありません。感情コントロールの障害は社会的行動障害の一つです。

Q. 訪問看護を利用するには何が必要ですか?

A. 主治医の「訪問看護指示書」が必要です。介護認定を受けている方は担当ケアマネージャーにご相談ください。

Q. 家族が限界に近いと感じています。どうすればいいですか?

A. 訪問看護師やケアマネージャーに率直に話してください。レスパイトケア(ショートステイなど)や家族支援の活用を一緒に考えることができます。

Q. 高次脳機能障害の診断はどこで受けられますか?

A. 脳神経内科・神経心理士がいるリハビリテーション科での評価が一般的です。かかりつけ医や地域包括支援センターにご相談ください。

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