この記事の要点(30秒でわかる)
- 入院の窓口払いは、マイナ保険証か資格確認書で自己負担限度額までに抑えられます
- 介護保険の申請は退院を待たず、入院中から始められます
- 40歳から64歳でも、脳血管疾患は特定疾病なので介護保険を使えます
- 障害年金は、脳血管障害なら初診から6か月経過後に請求できる特例があります
ご家族が脳梗塞で倒れたとき、最初の数日は治療のことで頭がいっぱいになります。落ち着いてくると、今度は「この先どうなるのか」「お金はどうすればいいのか」という不安が出てきます。
やるべき手続きはいくつもありますが、すべてを同時にやる必要はありません。 順番があり、入院中にしておくと後が楽になるものと、退院後や症状が落ち着いてからで間に合うものに分かれます。
すえひろ訪問看護ステーションでも、退院してから「あの手続きを入院中にやっておけばよかった」というお声を伺うことがあります。制度上むずかしいと思われることでも、まずはご相談ください。
この記事では、入院直後から順に、何をいつ手続きすればよいのかを整理します。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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まず、入院費の窓口払いを抑える手続きから
治療費の心配は、最初に手を打てます。日本には高額療養費制度があり、1か月の医療費の自己負担には所得に応じた上限(自己負担限度額)が決められています。
以前は、いったん窓口で3割を払ってから、あとで超えた分を請求して払い戻す仕組みでした。今は最初から限度額までの支払いで済ませる方法があります。
マイナ保険証を使い、医療機関の窓口で限度額情報の提供に同意すれば、事前の申請なしで窓口負担が限度額までになります。 オンライン資格確認を導入している医療機関であれば、この方法が使えます。
マイナ保険証をお持ちでない場合は資格確認書を使いますが、こちらも交付を申請するときに「任意記載事項」の記載を希望しておけば、別途「限度額適用認定証」を申請する必要がなくなります(出典:厚生労働省保険局「マイナ保険証と資格確認書について」)。
入院費の窓口払いを、限度額までにする
あとから払い戻すのではなく、最初から限度額までにできます
マイナ保険証を持っている事前申請なし
窓口で「限度額情報の提供」に同意するだけ。オンライン資格確認を導入している医療機関で使えます
資格確認書を使う認定証が不要に
交付を申請するときに「任意記載事項」の記載を希望しておけば、別途 限度額適用認定証を申請する必要がなくなります
医療機関がオンライン資格確認に未対応
従来どおり、加入している健康保険に限度額適用認定証を申請します
住民税非課税など低所得の区分を適用してもらうには、いずれの場合も事前の申請が必要です。自動では反映されません
限度額の金額は所得区分によって変わります。制度の見直しが続いているため、金額はご加入の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)に直接ご確認ください。 病院の医療相談室でも案内してもらえます。
なお、住民税非課税など低所得の区分を適用してもらうには、マイナ保険証を使う場合でも事前の申請が必要です。ここは自動では反映されません。
介護保険の申請は、入院中から始められます
「退院してから」と思われがちですが、介護保険の要介護認定は入院中に申請できます。 むしろ入院中に始めておくのが現実的です。
申請から認定結果が出るまでには時間がかかります。退院してから申請すると、サービスが使えるようになるまでの空白期間が生まれます。その間、ご家族だけで介護を担うことになります。
申請の窓口は、お住まいの市区町村です。足立区の場合は介護保険課の介護認定係、または地域包括支援センターが相談先になります。ご本人が動けなくても、ご家族が代わって申請できます。
40歳から64歳の方も、脳血管疾患なら対象です
介護保険は65歳以上の制度と思われがちですが、40歳から64歳の方でも、16の特定疾病に該当すれば利用できます。 脳血管疾患はその一つです。
働き盛りの年代で倒れた場合、この点を知らずに「まだ介護保険は使えない」と諦めてしまうことがあります。年齢だけで判断せず、窓口で相談してください。
手続きの順番
全部を同時にやる必要はありません
直後
窓口払いを限度額までに/傷病手当金の準備
マイナ保険証か資格確認書で。ご本人が会社員なら、会社と病院に傷病手当金の用紙を預けておきます
介護保険の要介護認定を申請
退院を待たずに申請できます。40歳から64歳でも脳血管疾患は特定疾病なので対象。窓口は市区町村(足立区は介護保険課・地域包括支援センター)
退院前カンファレンス
病院と在宅側が集まって自宅での過ごし方を決めます。ご家族も参加できます。訪問看護を使うなら主治医の指示書をこの時期に段取りします
落ち着いて
から
身体障害者手帳/障害年金
急ぐ手続きではありません。障害年金は脳血管障害の特例により、初診日から6か月経過後に請求できる場合があります
ご本人が働いていた場合|傷病手当金
ご本人が会社員などで健康保険に加入していた場合、病気で働けない期間の収入を補う傷病手当金があります。
申請には、事業主が記入する欄と、医師が記入する欄があります。入院中に病院へ用紙を預けておくと、退院時にまとめて受け取れます。会社の担当者に早めに伝えておくとやり取りがスムーズです。
支給される期間や金額の計算方法は、ご加入の健康保険によって案内が異なります。協会けんぽか健康保険組合かで問い合わせ先が変わりますので、保険証(またはマイナポータル)で確認してください。
なお、自営業などで国民健康保険に加入している場合、傷病手当金は原則としてありません。
手帳と年金は、症状が落ち着いてから
身体障害者手帳と障害年金は、急いで申請するものではありません。 症状がある程度固まってからの手続きになります。
身体障害者手帳は、麻痺などの障害が固定してから申請します。取得すると、医療費の助成、税の控除、公共交通機関の割引などが受けられます。申請は市区町村の障害福祉の窓口で、指定医師の診断書が必要です。
障害年金には、知っておいていただきたい特例があります。
通常、障害年金は初診日から1年6か月経過した日(障害認定日)以降でないと請求できません。ところが脳血管障害の場合は、初診日から6か月を経過した日以後に、医学的にそれ以上の機能回復が望めないと認められれば、その日を障害認定日とする特例があります(出典:障害年金の認定基準)。
ただし6か月経てば自動的に認められるわけではありません。 リハビリを続けても機能回復が望めないことを、医師が医学的に判断する必要があります。年金事務所か、街角の年金相談センターで相談してください。
退院の話は、思っているより早く始まります
治療が落ち着くと、病院から退院に向けた話が出ます。「まだ歩けないのに」と感じる時期に始まることも珍しくありません。
このとき開かれるのが退院前カンファレンスです。病院の医師・看護師・ソーシャルワーカー、そして在宅側のケアマネジャーや訪問看護師が集まり、自宅でどう過ごすかを詰めます。ご家族も参加できます。
不安なことは、この場で具体的に出してください。「夜中にトイレに起きたらどうするのか」「痰の吸引はできるのか」「お風呂は」——遠慮して聞かなかったことが、退院後にそのまま困りごとになります。
在宅側の準備は、この段階から動き始めます。訪問看護を使う場合、主治医の指示書が必要になりますので、退院前に段取りしておくと切れ目なく始められます。
まとめ
ご家族が脳梗塞で倒れたとき、手続きには順番があります。
入院直後は窓口払いを限度額までに抑える手続きから。マイナ保険証があれば事前申請なしででき、資格確認書でも交付申請時に任意記載事項を希望しておけば認定証は不要になります。
入院中には介護保険の要介護認定を申請しておきます。40歳から64歳でも、脳血管疾患は特定疾病なので対象です。ご本人が働いていたなら傷病手当金の準備も並行します。
身体障害者手帳と障害年金は、症状が落ち着いてからで構いません。ただし障害年金には、脳血管障害なら初診から6か月経過後に請求できる特例があります。
すえひろ訪問看護ステーションは、退院前の段階からご相談を承っています。「何から手をつければいいか分からない」という状態でも構いません。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
よくある質問
Q. 入院費の限度額の手続きは、いつまでにすればよいですか?
A. 入院した月のうちに済ませるのが基本です。マイナ保険証を使うなら窓口で同意するだけなので、その日にできます。間に合わなくても、あとから高額療養費として払い戻しを請求できます。
Q. 介護保険は退院してから申請するものではないのですか?
A. 入院中に申請できます。認定には時間がかかるため、退院後に申請するとサービス開始までに空白ができます。
Q. 本人が意識障害で申請できません。家族が代わりにできますか?
A. できます。介護保険の要介護認定は、ご家族による代理申請が認められています。地域包括支援センターやケアマネジャーに代行を頼むこともできます。
Q. 障害年金は1年6か月待たないと請求できませんか?
A. 脳血管障害には特例があります。初診日から6か月経過した日以後に、医学的にそれ以上の機能回復が望めないと認められれば、その日を障害認定日として請求できます。ただし6か月経てば自動的に認められるわけではありません。
Q. 退院前カンファレンスには家族も出られますか?
A. 出られます。むしろご家族の参加が前提の場になります。自宅での不安をその場で具体的に伝えてください。
参考資料
- 厚生労働省保険局「マイナ保険証と資格確認書について」 https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001576519.pdf
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 日本年金機構「障害年金」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/index.html
- 足立区「介護保険の申請手順」 https://www.city.adachi.tokyo.jp/kaigo/kurashi/hoken/kaigo-tejun.html
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