この記事の要点(30秒でわかる)
- 大腿骨の骨折は手術で終わりではなく、退院してからが回復の本番です
- 2回目の骨折は、最初の骨折から1年以内に起きやすいことがわかっています
- 骨粗鬆症の薬は、退院後も飲み続けないと再骨折を防げません
- 40歳から64歳の方でも、骨折を伴う骨粗鬆症なら介護保険を申請できます
転んで足の付け根を折り、手術を受けて入院した。もうすぐ退院だけれど、以前のように歩けるのだろうか。家で転んでまた折ったらどうしよう。親御さんの退院を前に、こうした不安を抱えておられるご家族は多くおられます。
大腿骨の骨折は、手術が済めば終わりという怪我ではありません。むしろ退院してからの過ごし方が、歩く力を取り戻せるかどうかを分けます。そして、一度折れた方が二度目を折らないようにすることも、同じくらい大切です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、退院後のご自宅に伺い、その方の生活に合わせたリハビリと体調の管理を行っています。「もう歩けないかもしれない」と思われていた方が、杖で買い物に行けるようになることもあります。
この記事では、退院後に何が起きるのか、自宅でできるリハビリ、再骨折を防ぐ方法、そして費用と制度についてお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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大腿骨の骨折は、退院してからが回復の本番
大腿骨の付け根(大腿骨近位部)の骨折は、高齢の方に多い怪我です。日本整形外科学会の全国調査では、2007年の推計発生数は男女合わせて148,100人でした。高齢化に伴って増え続けており、別の推計では2030年に30万人に達するとされています(出典:日本整形外科学会 骨粗鬆症委員会 全国調査/将来推計は別途の研究報告)。
治療は手術が基本です。 同じ調査では、内側の骨折の93.2%、外側の骨折の94.0%に手術が行われていました。折れたまま安静にしていると寝たきりにつながるため、早く手術をして早く動き出すことが標準的な考え方になっています。
ただし、手術で骨がつながっても、それだけで元の歩き方に戻るわけではありません。入院中は動く量が減るため、筋力と体力が落ちます。退院する時点では、まだ回復の途中にいる方がほとんどです。
回復の具合には個人差が大きく、同じ手術を受けても歩き方の戻り方は人によって違います。 年齢、骨折の前にどのくらい歩けていたか、ほかに持っている病気、そしてご本人の意欲によって変わります。だからこそ、退院後にその方に合った形で続けることが要になります。
自宅でのリハビリで取り戻せること
退院後のリハビリは、病院のリハビリ室で行うものとは目的が違います。ご自宅でのリハビリは、その家で実際に必要な動きを取り戻すことを目指します。
病院の廊下を歩けても、自宅の廊下は幅が違い、曲がり角があり、床にものが置かれています。トイレの位置も、ベッドからの起き上がり方も家ごとに違います。訪問リハビリでは、その方の家の中を一緒に歩きながら、どこでつまずくか、どの動作で痛みが出るかを確かめて組み立てます。
具体的には、脚の筋力を保つ運動、立ち上がりと座る動作の練習、杖や歩行器の使い方、階段や段差の越え方などです。痛みが残っている時期は、痛みの出ない範囲で動かすところから始めます。
動かずにいる時間が長いほど、筋力は落ちていきます。 骨折した脚をかばって動かさずにいると、反対の脚や腰にも負担がかかります。無理のない範囲で体を使い続けることが、結果として早い回復につながります。
ご本人が「もう歳だから」とあきらめかけているときこそ、専門職が関わる意味があります。できることから始めて、少しずつ範囲を広げていきます。
再骨折は1年以内に起きやすい
一度大腿骨を折った方は、二度目を折りやすい状態にあります。 これは運が悪いからではなく、骨がもろくなっている(骨粗鬆症)という原因がそのまま残っているためです。
2回目の大腿骨近位部骨折は、初回の骨折から2年以内に3.3〜3.5%の方に起きると報告されています。そして再骨折の多くは、最初の骨折から1年以内に生じています(出典:骨折二次予防に関する報告)。退院してからの1年が、いちばん注意が必要な時期です。
ここで問題になるのが、骨粗鬆症の薬です。骨折をきっかけに治療が始まっても、退院後に薬を飲み続ける方の割合が低いことが、国内の課題として指摘されています。痛みがなくなると「もう治った」と感じてやめてしまう方がおられますが、骨のもろさは治っていません。
国もこの問題に取り組んでおり、2022年には二次性骨折予防継続管理料という仕組みが診療報酬に新設されました。大腿骨近位部の骨折で手術を受けた方に、骨粗鬆症の検査と治療を計画的に続けるためのものです。退院後も外来で治療を続けることが、制度として位置づけられています。
骨と筋肉を保つ食事
骨を守るには、薬だけでなく食事も関わります。骨の材料になるカルシウムと、その吸収を助けるビタミンD、そして筋肉をつくるたんぱく質。この3つを意識していただくことが基本です。
高齢になると食が細くなり、必要な量を摂りきれないことがあります。骨折後は特に、食欲が落ちて体重が減る方がおられます。体重が減ると筋肉も減り、歩く力が戻りにくくなります。
ビタミンDは日光を浴びることでも体内でつくられます。室内で過ごす時間が長くなっている方は、短時間でも日の当たる場所で過ごせるとよいでしょう。外出が難しければ、窓際で過ごすだけでも違います。
訪問看護では、体重の変化を定期的に確認しながら、食べられる形や量を一緒に考えます。食事の量が落ちてきたときに早く気づけることが、在宅での強みです。
家の中の環境を整える
骨折のきっかけの多くは、家の中での転倒です。退院の前に、ご自宅を見直しておくことをおすすめします。
とくに注意したいのは、夜のトイレまでの動線、浴室、玄関の上がり口です。手すりがあるか、足元が暗くないか、床に敷物やコードが出ていないか。退院前に専門職が自宅を訪問して確認できる場合もあるので、病院の相談員に聞いてみてください。
住環境の整え方は、脳卒中で退院した親の転倒予防で詳しくお伝えしています。骨折後の方にも共通する内容なので、あわせてご覧ください。
費用と制度|40歳からでも介護保険が使えます
退院後に訪問看護や訪問リハビリを使うとき、まず確認したいのが介護保険です。65歳以上の方は、要介護認定を受けてケアプランに組み込む流れになります。
40歳から64歳の方も、あきらめる必要はありません。 介護保険の「特定疾病」16種類に骨折を伴う骨粗鬆症が含まれているため、要介護認定を受ければ介護保険のサービスを使えます。骨折の原因が骨粗鬆症であれば、この条件に当てはまる可能性があります。
申請の窓口は、お住まいの区市町村です。入院中から申請を進めておくと、退院後すぐにサービスを始められます。病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)に相談すると、手続きを進めやすくなります。足立区での申請の進め方は、足立区介護保険課の連絡先と申請の進め方にまとめています。
自己負担は介護保険で原則1割から3割です。医師が特別に必要と判断した場合などは医療保険での利用になります。どちらになるかはお一人ずつ状況が違いますので、制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。
| 年齢 | 使える保険 | 申請のタイミング | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 医療保険 | 入院中から主治医に相談しておきます | 主治医、病院の相談員 |
| 40歳から 64歳 |
骨折を伴う骨粗鬆症は特定疾病介護保険が使えます | 入院中に申請できます。退院前に認定が下りれば、すぐサービスを始められます | 区市町村の窓口、病院の相談員 |
| 65歳以上 | 原則として介護保険 | 入院中に申請できます。すでに認定がある方は区分変更も検討します | ケアマネジャー、病院の相談員 |
訪問看護・訪問リハビリでできること
ご自宅に伺って行うのは、リハビリだけではありません。傷の状態の確認、痛みの具合、薬が飲めているか、体重の変化、睡眠や食事の様子。こうしたことを合わせて見ていきます。
手術をした部分に赤みや腫れ、熱っぽさが出ていないか。痛みが強くなっていないか。こうした変化は、早く気づけば早く手を打てます。気になることがあれば主治医に連絡し、受診の判断を一緒に考えます。
ご家族への支援も大きな役割です。どこまで手を貸せばよいのか、転ばせないためにどう見守ればよいのか。はじめは判断に迷うことばかりだと思います。そのつど一緒に考えさせてください。
介護する側が疲れてしまわないことも、在宅を続けるうえで欠かせません。 無理が続いていると感じたら、遠慮なくお話しください。
まとめ
大腿骨の骨折は、手術が終わってからが回復の本番です。退院後に自宅でリハビリを続けることで、歩く力は取り戻していけます。同時に、再骨折を防ぐことも忘れないでください。2回目の骨折は最初の1年以内に起きやすく、骨粗鬆症の薬を飲み続けることが要になります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、その方の家での暮らしに合わせて、リハビリと体調の管理を行っています。「前のように歩きたい」という願いを、専門職として一緒に追いかけさせてください。
退院を前に不安が大きいときほど、早めにご相談いただくと準備が整います。入院中からでも構いませんので、どうぞお声がけください。
よくあるご質問
Q. 手術をすれば、元のように歩けるようになりますか。
A. 回復の具合には個人差が大きく、骨折する前にどのくらい歩けていたか、年齢、ほかの病気の有無などで変わります。ただ、退院後にリハビリを続けた方が、行動範囲を広げやすいことは確かです。まずは屋内で安定して動けることを目標に始めます。
Q. 骨粗鬆症の薬は、いつまで飲み続けるのでしょうか。
A. 自己判断でやめないことが大切です。痛みが取れても骨のもろさは残っています。薬の種類によって続ける期間の考え方が違うため、主治医にご確認ください。飲み忘れが続いているときは、訪問看護師にもお知らせください。
Q. 退院前に、家の中で準備しておくことはありますか。
A. 夜のトイレまでの動線、浴室、玄関の上がり口を見直してください。手すりの取り付けや段差の解消は、介護保険の住宅改修が使える場合があります。退院前に専門職が自宅を確認できることもあるので、病院の相談員にお尋ねください。
Q. 本人が「もう動きたくない」と言って、リハビリを嫌がります。
A. 痛みへの不安や、また転ぶことへの恐れが背景にあることが多くあります。無理に動かすのではなく、何が怖いのかを聞くところから始めます。できる動作から積み上げて、自信を取り戻していく進め方もあります。一緒に考えさせてください。
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「制度上難しいかも」と思われることでも、まずはご相談ください。
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