この記事の要点(30秒でわかる)
- COPDは「坂道で息が切れる」から始まり、年のせいと思われて見逃されやすい病気です
- 痰の色が黄色や緑色に変わったら、急な悪化(増悪)のサインです
- 呼吸リハビリは悪くなってからではなく、診断された時点から始めるものです
- 40歳から64歳の方でも、COPDなら介護保険を申請できます(特定疾病に該当)
階段や坂道で息が切れる。少し動いただけで休まないと歩けない。咳と痰が何か月も続いている。こうした変化を「年のせい」「たばこを吸っていたから仕方がない」と受け止めて、そのまま過ごされているご家族は少なくありません。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、気づかないうちに進む病気です。息切れがつらくなって外出が減り、動かないことで体力がさらに落ちていきます。けれども、進み方をゆるやかにする方法も、急な悪化を防ぐ方法もあります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、呼吸の状態を見ながら、ご自宅で続けられる方法を一緒に探しています。息切れがあっても、その方が大事にしている暮らしを手放さずに済むように支えたいと考えています。
この記事では、COPDがどんな病気か、ご家族が気づける悪化のサイン、自宅でできる備え、そして費用と制度についてお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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COPDとはどんな病気か
COPDは、たばこの煙などを長年吸い込んだことで気管支や肺が傷み、息を吐き出しにくくなる病気です。主な症状は、体を動かしたときの息切れ、長引く咳、痰の3つです。一度壊れた肺は元に戻らないため、進行を抑えることが治療の中心になります。
厚生労働省の令和2年患者調査では、COPDを主な傷病として継続的に医療を受けている方は全国で26万9,000人と推計されています。一方で、国内の有病率を8.6%(全国で約530万人)とする推計もあり(2001年の調査に基づくもの)、実際には多くの方が診断されないまま過ごしているとみられます(出典:厚生労働省 令和2年患者調査/NICE study 2001年)。
COPDによる死亡者数は、令和3年の人口動態調査で16,384人でした。けっして珍しい病気ではありません。
息切れは、進むほど日常の動作に現れます。初めは坂道や階段だけだったものが、着替えや入浴、やがて会話でも息が上がるようになります。この変化に早く気づけるかどうかが、その後の暮らしを大きく左右します。
「年のせい」で見逃さないために
COPDが見逃されやすいのは、症状がゆっくり進むからです。息切れを感じると人は自然に動く量を減らすため、本人は「最近あまり疲れない」と感じてしまうこともあります。息切れが減ったのではなく、息が切れる動作を避けているだけという場合があります。
次のような変化があれば、一度呼吸器内科を受診されることをおすすめします。同年代の方と歩くと遅れるようになった、階段で途中休みが必要になった、咳と痰が3か月以上続いている、風邪が治りにくく長引く。喫煙歴のある40歳以上の方であれば、なおさらです。
診断には、肺活量などを測る呼吸機能検査(スパイロメトリー)が使われます。息を吐き出す力を調べる検査で、痛みはありません。
ご家族から見て「前より歩くのが遅くなった」と感じたことは、本人が気づいていない大切な情報です。受診の際には、いつ頃からどんな場面で息切れが出るようになったかを伝えていただくと、診断の助けになります。
急な悪化(増悪)のサインに気づく
COPDで最も気をつけたいのが、増悪(ぞうあく)と呼ばれる急な悪化です。安定していた状態から呼吸の働きが落ち、入院が必要になることもあります。急性呼吸不全に至り、命に関わる場合もあります。
増悪のサインは、普段との違いに現れます。息切れがいつもより強い、咳や痰の量が増えた、痰の色が透明から黄色や緑色に変わった、熱が出た、脈が速い、ぐったりして食欲がない。こうした変化は、風邪のように見えて実は増悪が始まっていることがあります(出典:日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会「COPD増悪予防と管理の実践」2024年)。
痰の色の変化は、ご家族が最も気づきやすいサインです。 普段の痰がどんな色かを知っておくと、変化に早く気づけます。
増悪は、早く手を打つほど軽く済みます。「様子を見よう」と数日待つ間に悪化することがあるため、いつもと違うと感じたら主治医か訪問看護師にご連絡ください。夜間や休日でも、判断に迷われたらご相談いただいて構いません。
自宅でできる増悪予防
増悪を防ぐ取り組みは、特別なことではありません。感染を防ぐこと、呼吸の仕方を身につけること、体力と栄養を保つこと。この3つが柱になります。
感染予防では、ワクチンの効果がはっきりしています。 インフルエンザワクチンはCOPDの急性増悪の頻度を有意に減らすことが示されており、肺炎球菌ワクチンと併せて接種した場合に増悪がより減少したという報告もあります(出典:日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会 2024年)。接種の時期や間隔は主治医にご相談ください。
呼吸の仕方では、口すぼめ呼吸が役立ちます。鼻から息を吸い、口をすぼめてゆっくり長く吐く方法です。息を吐き出しやすくなり、息切れが落ち着きやすくなります。動作の前に息を整える習慣をつけると、入浴や着替えが楽になることがあります。
栄養も見落とせません。COPDでは呼吸にエネルギーを使うため、体重が落ちやすくなります。やせが進むと呼吸する筋肉も細くなり、息切れがさらに強まります。少量をこまめに、たんぱく質を意識して摂っていただくことが望まれます。
- インフルエンザワクチンの接種
- 肺炎球菌ワクチンの接種
- 手洗い、人混みを避ける
- 口すぼめ呼吸を身につける
- 動作の前に息を整える習慣
- 呼吸リハビリを診断された時点から始める
- たんぱく質を意識して、少量をこまめに
- 体重をはかって記録する
- 椅子に座ったままできる運動から
ご自宅での暮らしを保ちやすくなります
呼吸リハビリは診断されたときから始める
呼吸リハビリテーションは、悪くなってから始めるものではありません。増悪や状態の悪化が起きた後ではなく、COPDと診断されて薬物療法を始める時点から、予防的に取り入れることが推奨されています。 増悪の予防と進行の抑制について、エビデンスが確立した標準的な治療と位置づけられています。
内容は、息切れを抑える呼吸法の練習、腕や脚の筋力を保つ運動、動作の工夫など、生活に合わせたものです。息が切れるからと動かずにいると、筋力が落ちてさらに息切れが強まる悪循環に入ります。この循環を断つことが目的です。
ご自宅での呼吸リハビリは、訪問看護師や理学療法士・作業療法士が伺って一緒に行えます。その方の生活動線に合わせて、どの動作でいつ息が切れるのかを確かめながら組み立てていきます。
「もう歳だから」と運動をあきらめる必要はありません。椅子に座ったままできる運動から始められます。
在宅酸素療法が必要になったら
病気が進み、血液中の酸素が足りなくなると、在宅酸素療法(HOT)が検討されます。保険が適用されるのは、動脈血酸素分圧が55Torr以下の場合、または60Torr以下で睡眠中や運動時に著しく酸素が下がり、医師が必要と認めた場合です。1984年から保険適用になっています。
酸素を使うことを「ここまで悪くなったのか」と受け止める方がおられますが、酸素は生活を広げるための道具です。酸素を使うことで外出できるようになった方も、入浴が楽になった方もおられます。
機器の扱い、外出時の携帯ボンベ、火気の注意など、始めるときには覚えることがあります。訪問看護では、こうした手順をご本人とご家族が無理なく続けられるところまで一緒に確認します。
在宅酸素療法の始め方や日常の注意点は、在宅酸素療法(HOT)を始める家族が知っておきたいことで詳しくお伝えしています。
費用と制度|40歳からでも介護保険が使えます
訪問看護を使うとき、COPDでは介護保険が使えるかどうかが年齢で決まりません。COPDは介護保険の「特定疾病」16種類のひとつに定められているため、40歳から64歳の方でも、要介護認定を受ければ介護保険のサービスを利用できます。
65歳以上の方は、原則として介護保険が優先されます。要介護認定を受けてケアマネジャーに相談し、ケアプランに訪問看護を組み込む流れです。40歳未満の方や、医師が週4回以上の訪問が必要と判断した場合などは医療保険での利用になります。
自己負担は、介護保険では原則1割から3割、医療保険では加入している保険の負担割合によります。在宅酸素療法を使う場合は、その費用が別に加わります。
どちらの保険になるか、いくらかかるのかは、お一人ずつ状況が違います。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、一緒に考えさせていただきます。
| 年齢 | 使える保険 | 必要な手続き | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 医療保険 | 主治医に訪問看護指示書を書いてもらいます | 主治医、訪問看護ステーション |
| 40歳から 64歳 |
COPDは特定疾病介護保険が使えます | 要介護認定の申請をします。認定が下りたらケアプランに訪問看護を入れます | お住まいの区市町村の窓口、地域包括支援センター |
| 65歳以上 | 原則として介護保険 | 要介護認定の申請をします。認定が下りたらケアプランに訪問看護を入れます | ケアマネジャー、地域包括支援センター |
まとめ
COPDは、息切れがゆっくり進むために見逃されやすく、国内では多くの方が診断されないまま過ごしているとみられます。けれども、進み方をゆるやかにする方法はあります。痰の色の変化など増悪のサインを早くつかむこと、ワクチンで感染を防ぐこと、診断された時点から呼吸リハビリを始めること。この3つが、ご自宅での暮らしを守ります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、呼吸の状態を見ながら、その方が続けてきた生活をできるだけ手放さずに済む形を一緒に探しています。息切れがあっても、行きたい場所に行き、したいことをする。そのために何ができるかを考えるのが私たちの役割です。
「まだ訪問看護を使うほどではない」と迷っておられる段階こそ、できることが多く残っています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. たばこをやめればCOPDは治りますか。
A. 一度壊れた肺の組織は元には戻らないため、治るわけではありません。ただし禁煙は、病気の進行を遅らせる方法として最も効果が確かめられています。何歳から始めても意味があります。
Q. 息切れがつらいので、安静にしていた方がよいのでしょうか。
A. 動かずにいると筋力が落ち、同じ動作でもさらに息が切れるようになります。呼吸リハビリでは、息切れを抑える呼吸法を身につけながら、無理のない範囲で体を動かすことを目指します。椅子に座ったままできる運動から始められます。
Q. 増悪かどうか迷ったときは、受診した方がよいですか。
A. 迷われた時点でご連絡ください。増悪は早く手を打つほど軽く済み、待っている間に悪化することがあります。痰の色が黄色や緑色に変わっていれば、特に急いでご相談ください。
Q. 在宅酸素を使うと外出できなくなりますか。
A. 携帯用の酸素ボンベがあるため、外出は続けられます。買い物や通院、旅行をされている方もおられます。むしろ酸素を使うことで動ける範囲が広がる場合があります。
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「制度上難しいかも」と思われることでも、まずはご相談ください。
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