退院のとき、医師から「ご自宅での医療的ケアも視野に入れましょう」と告げられて、気持ちが追いつかなかったご家族は少なくありません。人工呼吸器や経管栄養、気管切開からの吸引など、聞き慣れない処置が並ぶと、暮らしの絵が描けなくなります。
医療的ケア児への訪問看護は、医療処置をご自宅で安全に続けるためのサービスであると同時に、ご家族の生活全体を支える役割を持ちます。本記事では、退院直後の在宅移行・学齢期の通学・レスパイトという3つの類型事例から訪問看護の関わり方を整理し、できること/できないことの線引きや、ご相談から訪問開始までの流れまでをご案内します。足立区で6年目を迎えた訪問看護ステーションから、現場感のある情報をお届けします。
| 年次 | 在宅の医療的ケア児(19歳以下) | 出典 |
|---|---|---|
| 2005年度 | 約9,987人 | 厚労省 医療的ケア児支援検討会(2024年) |
| 2015年度 | 約17,078人 | 厚労省 医療的ケア児支援検討会(2024年) |
| 2023年度 | 約21,100人 | 厚労省 医療的ケア児支援検討会(2024年) |
医療的ケア児とは——訪問看護が担う役割の全体像
医療的ケア児とは、人工呼吸器の装着や経管栄養、気管切開からのたんの吸引といった医療的ケアを日常的に必要とされるお子さまのことです。2021年9月に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」により、保育所・学校・地域での受け入れ体制づくりが国と自治体の責務として明確になりました。
訪問看護は、入院から在宅へ生活の場が変わる橋渡しの位置に立つサービスです。病院のように医師や看護師がすぐそばにいるわけではないご自宅で、医療処置の安全と発達の見守りを両立させる専門家、と考えていただくと近いかもしれません。
医療的ケア児の定義とおもな医療的ケアの内容
医療的ケア児支援法では、「日常生活および社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童(18歳未満。高等学校等に在学中であれば18歳以上を含む)」と定義されています。人工呼吸器管理・気管切開部の管理・たんの吸引・経管栄養(胃ろう/腸ろう/経鼻)・導尿・在宅酸素療法などが代表的な医療的ケアです。
実際には、必要なケアの組み合わせはお一人おひとりで異なります。たとえば、日中は経鼻胃管で栄養を注入し、夜間だけ人工呼吸器を使われるお子さまもいれば、常時人工呼吸器を装着しながら歩行や会話ができるお子さまもいます。医療的ケア児=「寝たきり」というイメージは、現場の実態とは必ずしも一致しません。
医療的ケア児支援法が示す社会の変化
同法は、「医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資する」ことを基本理念に掲げています。離職の防止が条文に明記された意味は小さくありません。これまで、保育所や学校での受け入れが整わず、ご家族(とくに母親)が仕事を辞めざるを得ない状況が全国で続いていた、という事実が国によって認められた、という転換点だと言えます。
各都道府県には「医療的ケア児支援センター」の設置が努力義務とされ、相談窓口の一本化が進みました。東京都では「東京都医療的ケア児支援センター」が総合相談を担っています。ご家族が複数の窓口を回らずに済むよう、まずそちらに連絡してから、訪問看護ステーションや相談支援事業所へつなぐ流れが整いつつあります。
訪問看護が担うポジション——退院後の生活を家で続けるために
訪問看護師は、医師の訪問看護指示書に基づいて、ご自宅で医療処置と健康状態の観察、ご家族への手技指導、多職種への情報共有を行います。すえひろ訪問看護ステーションでも、小児科クリニック・訪問診療医・大学病院の退院支援看護師と連絡を取りながら、お子さまの在宅生活をチームで支えています。
ポイントは、訪問看護が「代わりにケアをする人」ではなく、ご家族が主役のケアを支える伴走者である、という点です。ご家族が365日・24時間ケアを担われていることを前提に、どこを一緒に担い、どこで休んでいただくかを一緒に設計します。
事例から見る訪問看護の関わり方(3つの類型)
医療的ケア児への訪問看護は、お子さまの発達段階・医療的ケアの内容・ご家族のご希望によって中身が大きく変わります。本章では、個人が特定されないよう類型化した3つの事例を通じて、実際の訪問看護の関わり方をご紹介します。あくまで一般的なイメージであり、実際のケア内容は主治医の指示書とご家族・多職種のチームでお一人おひとりに合わせて設計されます。
事例A:NICU退院直後、在宅移行期のご家族への伴走
超低出生体重で生まれたお子さまが、退院前カンファレンスを経て、経鼻胃管と在宅酸素療法を続けながらご自宅に戻られたケースです。ご家族は、退院前の2週間、病棟で手技を練習されていました。それでも、ご自宅という慣れた場所で初めてひとりで注入するときの緊張は、病棟のそれとは別物でした。
訪問看護師は初回訪問を退院日当日に設定し、まず注入・吸引・酸素流量の確認を一緒に行いました。翌週は火曜・金曜の週2回、その後1か月を目安に週3回へ段階的に増やし、ご家族の疲労の様子を見ながら頻度を調整しています。初月は、ご家族が「どのタイミングで病院に連絡していいか分からない」と悩まれることが多く、連絡の判断基準をA4一枚にまとめて冷蔵庫に貼るという小さな仕組みが力を発揮しました。
退院直後は、ご家族が「訪問看護に来てもらっている間だけでも手を離せる時間」を意識的につくることが、長い在宅生活のスタートダッシュを支えます。訪問時間の一部を、ご家族がシャワーを浴びる・きょうだい児の送迎に行くといった用途に充てていただくのも、立派なケアの一部です。
事例B:気管切開・経管栄養のある学齢期のお子さまの通学サポート
小学校入学を機に、気管切開からの吸引と経管栄養を続けながら特別支援学校への通学を始められたケースです。文部科学省は、公立の特別支援学校における医療的ケア児の受け入れを段階的に拡充してきました。2023年5月時点で、公立の特別支援学校等に在籍する医療的ケア児は約1万2千人に上ります(文部科学省「学校における医療的ケアに関する実態調査」)。
訪問看護は、学校生活そのものには同行しませんが、通学前後の時間に合わせて訪問することで、学校での医療的ケアを安定させる役割を担います。たとえば朝の訪問で、呼吸状態・体温・分泌物の量を確認し、学校の医療的ケア担当看護師への申し送りシートに書き込むことで、学校側が安心して受け入れられる体制が整います。
学齢期は、通学・放課後等デイサービス・短期入所など、関わる場所が一気に増える時期です。情報共有のハブとして訪問看護が機能することで、ご家族が同じ説明を何度も繰り返す負担を減らせます。連絡ノート・医療的ケア手帳・SNSの連絡グループなど、学校ごと・事業所ごとに違う仕組みを、お子さまに合わせて一本化していくことが現場では大切です。
事例C:超重症児のレスパイト目的の長時間訪問
超重症児のスコアに該当する重度の医療的ケアを続けながら、ご自宅で過ごされているケースです。人工呼吸器・胃ろう・吸引を含む複数のケアを常時必要とされ、ご家族は24時間体制で見守りを続けておられました。
このようなケースでは、医療保険の「長時間訪問看護加算」の対象として、1回あたり90分を超える長時間の訪問が可能になります。訪問看護師が自宅で見守りを担うあいだ、ご家族は数時間まとまって休むことができます。実際、長時間訪問を導入した翌月から「久しぶりに夜に3時間続けて眠れた」とおっしゃったご家族がおられ、ケアの質を守るためのレスパイトの重要性を改めて感じました。
同時に、長時間訪問だけでレスパイトが完結するわけではありません。短期入所(ショートステイ)、医療型障害児入所施設、看護師による医療的ケア児シッターなど、複数のサービスを組み合わせて「ご家族が倒れないケア計画」を作ることが、相談支援専門員・訪問看護・主治医の共通の仕事になります。
| 観点 | A: NICU退院直後 | B: 学齢期・通学 | C: 超重症児・レスパイト |
|---|---|---|---|
| 主なお子さまの状態 | 経鼻胃管・在宅酸素療法 | 気管切開・吸引・経管栄養 | 人工呼吸器・胃ろう・吸引(常時) |
| 訪問頻度の目安 | 退院日当日 → 週2〜3回へ段階調整 | 週3回(登校前後の時間帯) | 週4回以上+長時間訪問(別表第8) |
| 訪問の中心的な役割 | 手技の確認・緊急時連絡の目安づくり | 体調確認・学校への申し送り | 見守り・ご家族のレスパイト確保 |
| 多職種連携のポイント | 退院支援看護師・MSW・訪問診療 | 学校の医療的ケア担当看護師・放課後等デイ | 相談支援専門員・短期入所・シッター |
| ご家族の主な負担 | 初めての手技への緊張・連絡判断の迷い | 同じ説明を複数機関にする疲労 | 24時間見守り・まとまった睡眠不足 |
医療的ケア児の在宅生活を支えるケアの中身
医療的ケア児への訪問看護では、医療的ケアの提供だけでなく、発達の見守りや、ご家族が安心してケアを続けられるためのサポートも大切な役割になります。本章では、訪問時に実際に行っているケアを3つの軸で整理してご紹介します。訪問看護師の1回60分の時間が、どのような内訳で動いているかを知っておくと、ご家族がケアプランを一緒に設計しやすくなります。
医療処置:吸引・経管栄養・人工呼吸器管理・服薬管理
訪問看護師は、医師の訪問看護指示書に基づき、気管切開部の管理・たんの吸引・経管栄養の注入・人工呼吸器の作動確認・服薬管理などを行います。処置そのものはご家族が普段から行っているケアと同じです。訪問看護師は、手技が安全に続けられているかの確認と、必要に応じた微調整を担います。
たとえば経管栄養では、注入速度・体位・胃残量の確認を定期的に見直します。お子さまの成長に伴って必要なエネルギー量が変わるため、主治医と相談しながら注入量や注入時間を調整することもあります。「同じやり方を続けていていいのか」という不安は、ご家族からよくいただく相談です。
生活・発達の支援:ポジショニング・入浴・遊びを通した関わり
医療的ケアと並んで大切なのが、生活のなかでの関わりです。訪問看護師は、理学療法士・作業療法士と連携しながら、関節拘縮の予防を目的としたポジショニングや、呼吸を楽にする姿勢の調整を提案します。入浴の介助も、安全な体位と医療機器のケーブル整理を踏まえて行います。
発達の支援では、お子さまの反応を見ながら、音楽・絵本・光るおもちゃなどを使った遊びを一緒に楽しむ時間を大切にしています。医療的ケア児であっても、遊びは生活の中心です。訪問看護師が「医療処置の人」ではなく「お子さまの日常の一部」として受け入れていただけるよう、関係づくりに時間をかけます。
ご家族への指導・相談:手技の確認と「困ったとき」の相談窓口
訪問看護の時間の一部は、ご家族への手技確認と相談対応にも使われます。退院直後は週1回、「先週からの困りごと」を言葉にしていただく時間を意識的に取ります。小さな困りごとが積み重なる前に表に出すことで、大きな疲労や事故を防ぐことにつながります。
24時間の電話対応(オンコール)も、訪問看護ステーションの重要な機能です。すえひろでは、担当の看護師が可能な限り電話対応に出られる体制を敷いています。「こんなことで電話していいのかな」とためらわれる内容こそ、まずご連絡ください。
ご家族の生活ときょうだい・就労を支える工夫
医療的ケア児のご家族は、24時間の医療的ケアに加えて、きょうだい児の育児やご自身の就労との両立に悩まれることが少なくありません。訪問看護は、お子さまへのケアを通じて、結果的にご家族全体の生活を支えるサービスでもあります。本章では、訪問看護の時間をどのように使うとご家族の負担が減らせるのか、具体的な工夫をご紹介します。
ご家族が「少し離れられる時間」を意図的につくる
訪問時間を「ケアの時間」ではなく「ご家族が離れられる時間」と位置づけ直すだけで、ご家族の疲労感は変わります。訪問看護師が見守っている間に、別室で休む・シャワーを浴びる・買い物に出る、といった過ごし方は、医療的ケア児の訪問看護の現場で日常的に行われています。
ご家族の心身の健康は、お子さまのケアの質に直結します。「自分が倒れたらこの子をみられる人がいない」というプレッシャーを一人で抱え込まないよう、離れる時間を計画の中に組み込むことが大切です。
きょうだい児への関わりとご家族のレスパイト
きょうだい児(医療的ケア児の兄弟姉妹)は、ご家族の関心がどうしても医療的ケアに集中するなかで、「自分も見てほしい」という気持ちを表しにくい立場に置かれやすい、と指摘されています。訪問看護師が訪問している時間は、ご家族がきょうだい児と二人で過ごせる貴重な時間になります。
学校行事・習い事の送迎・病院受診など、きょうだい児のための時間を訪問看護のスケジュールと重ねることで、ご家族が無理なく関われるようになります。短期入所(ショートステイ)や医療型障害児入所施設を定期的に利用し、ご家族がまとまった休みを取る選択肢もあります。
就労との両立に向けた保育所等訪問支援・短時間利用との組み合わせ
医療的ケア児支援法の施行後、保育所・認定こども園での医療的ケア児の受け入れが徐々に進んでいます。保育所等訪問支援(児童福祉法に基づく障害児通所支援)を使えば、児童発達支援事業所の職員が保育所を訪問し、集団生活の支援を行います。
訪問看護とこれらの通所系サービスを組み合わせることで、ご家族が週に数時間でも仕事に戻れる環境を整えられるようになってきました。働きたい気持ちを諦めずに、まず現在のケア体制で何が組み立てられるかを一緒に見てみるところから始めさせてください。
多職種連携——医師・ケアマネ・学校・相談支援専門員とのつながり
医療的ケア児の在宅生活は、訪問看護だけでは支えきれません。主治医・リハビリ職・相談支援専門員・保育所・学校・放課後等デイサービスなど、多職種のチームでお子さまとご家族を囲む形になります。本章では、連携でとくに重要になるポイントと、ご家族が窓口の多さに疲れないための工夫をお伝えします。
医師の指示書と訪問看護計画書のつながり
訪問看護を開始するためには、主治医が発行する訪問看護指示書が必要です。指示書には、必要な医療処置の内容・訪問頻度・緊急時の対応方針が記載されています。訪問看護ステーションは指示書をもとに訪問看護計画書を作成し、ご家族と共有したうえで訪問を始めます。
小児の場合、主治医は複数いらっしゃることが珍しくありません。小児科の主治医・在宅医・専門科(呼吸器内科・耳鼻咽喉科等)がそれぞれの立場で関わります。訪問看護師は、指示書の内容と、各科の意見のすり合わせの橋渡し役を担うことがあります。
相談支援専門員・ケアマネジャーとの役割分担
18歳未満の医療的ケア児には、障害児相談支援事業所の相談支援専門員がついて、障害児支援利用計画を作成します。18歳以降は、障害者総合支援法の相談支援専門員またはケアマネジャーに引き継がれます。訪問看護師は、相談支援専門員が集めたご家族の希望を踏まえながら、医療面での現実的なプランを一緒に考えます。
ご家族は、相談支援専門員と訪問看護師の役割の違いが分からずに「どちらに連絡していいか迷う」とおっしゃることがあります。生活全体の相談は相談支援専門員、医療的ケア・体調の相談は訪問看護と大まかに整理しておくと、連絡がスムーズになります。
保育所・学校・放課後等デイとの情報共有の工夫
保育所・学校・放課後等デイサービスには、お子さまごとの医療的ケアの手順書を提供することが現場では一般的です。すえひろ訪問看護ステーションでも、関係機関からご依頼があれば、手順書の作成・更新や、現場での医療的ケア担当看護師への申し送りに協力しています。
関係機関が増えるほど、ご家族が同じ説明を繰り返す負担も増えます。訪問看護ステーションが情報共有のハブ機能を担うことで、ご家族が「翻訳者」として疲弊する状況を減らせます。
医療的ケア児の訪問看護でできること・できないこと
訪問看護は医師の指示書に基づく医療サービスのため、できることとできないことの線引きがあります。あらかじめ知っておくことで、ご相談のときに「この相談で合っているのかな」と迷われずにすみます。ただし、制度上難しいことでも、ご家族の暮らしを支えるために何ができるかは一緒に考えさせてください。
訪問看護でできること
訪問看護師が医療的ケア児に対して提供できる主な内容は以下のとおりです。
- 医師の指示に基づく医療処置(吸引・経管栄養・在宅酸素・人工呼吸器管理など)
- 健康状態の観察と記録、主治医への報告
- 服薬管理の支援と服薬指導
- リハビリテーション(看護師によるROM訓練等。PT/OTは別途訪問リハで対応)
- ご家族への医療的ケア手技の指導
- 緊急時の判断と医療機関への連絡
- 多職種(主治医・相談支援専門員・学校・放課後等デイ)への情報共有
訪問看護では担えないこと(ヘルパー・医師・保育の範囲)
一方、訪問看護では担えない役割もあります。線引きを知っておくと、必要な別サービスを早めに手配できます。
- 家事援助(掃除・洗濯・調理):居宅介護・障害福祉サービスのヘルパーが担当
- お子さま単独での預かり・外出同行:保育・放課後等デイ・医療的ケア児シッターの範囲
- 医師の診察・診断・処方:主治医の訪問診療の範囲
- 学校での医療的ケア:学校配置の看護師または認定特定行為業務従事者の範囲
- ご家族の仕事中の留守番的な見守り:長時間訪問の要件に該当しない場合は保険適用外
「制度上難しい」で終わらせない私たちの姿勢
私たちは、まずお受けすることを基本にしています。もちろん、体制上お受けできない場合はあります。その場合も、「できません」の一言で終わらせず、対応できる事業所・サービスを一緒に探すことを責任の一部だと考えています。
「他の事業所で難しいと言われた」というご相談も、一度お聞かせください。制度上は難しくても、別の制度の組み合わせや、地域の社会資源を使うことで前に進める道筋が見つかることがあります。
ご相談から訪問開始までの流れ
医療的ケア児の訪問看護は、医療保険でご利用いただくケースが中心です。はじめての方にとっては手続きが複雑に感じられるため、ご相談から訪問開始までの標準的な流れを整理します。入院中のご家族は、退院前カンファレンスから参加させていただくこともできます。
ステップ1:主治医・医療ソーシャルワーカーに相談する
まずは、入院先の主治医・医療ソーシャルワーカー(MSW)・退院支援看護師に、在宅移行のご希望をお伝えください。病院側がお住まいの地域で対応可能な訪問看護ステーションの候補を挙げてくれることが多いです。すでにご自宅で療養されている方は、かかりつけの小児科医や訪問診療医にご相談ください。
ステップ2:訪問看護ステーションと面談・契約
候補の訪問看護ステーションと面談し、受け入れ可否・訪問体制・緊急時の対応について確認します。契約前に、医療的ケアの内容・ご家族のご希望・多職種の連携状況を共有させていただくと、計画書の精度が上がります。見学や事前の電話相談も可能ですので、気になる段階でお問い合わせください。
ステップ3:退院前カンファレンスと初回訪問
退院が決まったら、病院で退院前カンファレンスが開かれます。訪問看護師・主治医(在宅医)・相談支援専門員・ご家族が同席し、医療的ケアの手技・使用物品・緊急時連絡先を確認します。初回訪問は退院日当日または翌日に設定することが多く、ご家族のご不安が強い場合は、同行訪問も検討します。
費用の考え方(医療保険・自治体の医療費助成)
医療的ケア児の訪問看護は、原則として医療保険でご利用いただきます。小児慢性特定疾病医療費助成制度や、各自治体の乳幼児・子ども医療費助成制度の対象になるため、ご家族の自己負担は大幅に軽減されるケースがほとんどです。足立区の場合、18歳までの医療費助成(マル子・マル青)が訪問看護にも適用されます。詳しい自己負担額は、申請中の助成制度を踏まえて個別にご説明します。
すえひろ訪問看護ステーションの医療的ケア児への姿勢
すえひろ訪問看護ステーションは、2020年3月に足立区で開設した訪問看護ステーションです。看護師・理学療法士・作業療法士が同じチームで動き、医療的ケアが必要なお子さまとご家族のご相談にも向き合っています。本章では、私たちが医療的ケア児のご家族と関わるときに大切にしている3つの姿勢をお伝えします。
「どうすればこの子の暮らしがよくなるか」から逆算する
医療的ケアの手技や制度の説明から入るのではなく、まずお子さまとご家族がどんな暮らしを望まれているのかを伺うことを大切にしています。「保育所に通わせたい」「きょうだいと一緒に祖父母の家に行きたい」といった願いが出発点にあると、医療的ケアのスケジュールも自然と組み立てやすくなります。
ご家族の「少し休める時間」を一緒に設計する
ご家族が倒れないケア計画は、お子さまの在宅生活を長く続けるための前提です。訪問看護の時間のうち、どのくらいを「ご家族が離れる時間」に充てるか、短期入所やシッターをいつ組み合わせるかを、ご家族と相談支援専門員と一緒に設計します。「休むのが申し訳ない」とおっしゃらないで大丈夫です。
制度の枠を超えて、まず話を聞くところから始める
私たちの企業理念は「誰ひとりとり残さない社会」の実現です。制度の対象外で「当たり前の暮らし」ができていない方がいる、という前提に立って始まった事業所です。制度上難しいことでも、まずお聞かせください。できないことはできないとお伝えします。そのうえで、代わりに何ができるかをお示しします。
よくあるご質問
医療的ケア児の訪問看護は、何歳から何歳まで利用できますか?
医療的ケア児支援法の定義では、18歳未満(高等学校等に在学中であれば18歳以上も対象)とされています。訪問看護自体は、新生児・乳児期から成人まで年齢の上限はなく、主治医が訪問看護指示書を発行された方であればご利用いただけます。18歳を迎える前後での引き継ぎについても、ご相談ください。
訪問看護はどのくらいの頻度で来てもらえますか?
医療的ケア児の場合、医療保険の訪問看護基本療養費の仕組みにより、原則週3回・1日1回60分程度が基本です。人工呼吸器を装着されている方など、厚生労働省が定める「別表第8」に該当する場合は、週4日以上の訪問や、1日複数回・長時間訪問看護なども可能になります。詳しくは主治医と訪問看護ステーションにご相談ください。
入院中の病院からの退院に合わせて訪問看護を導入したいのですが、どう進めれば良いですか?
まずは入院先の医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援看護師に、在宅移行のご希望をお伝えください。訪問看護ステーションには、退院前カンファレンスから参加して、医療的ケアの手技・物品・緊急時の体制をご家族と一緒に確認する運用があります。足立区で退院を予定されている方は、すえひろ訪問看護ステーションにも直接ご相談いただけます。
きょうだいの育児で手が離せないとき、短時間でも相談できますか?
できます。訪問の時間帯や曜日の設定はご家族のご都合に合わせて相談可能です。きょうだい児の学校行事や、ご家族の体調不良時のレスパイト目的の訪問も、ケアプランや訪問看護計画書に位置づけることで対応できることがあります。「この相談で合っているのかな」と迷われる前に、まずお電話ください。
足立区外に住んでいますが、相談できますか?
すえひろ訪問看護ステーションの訪問エリアは足立区全域が基本です。隣接地域の方は一度ご相談いただければ、エリア内の信頼できる事業所をご紹介するなど、別の形でお手伝いできる可能性があります。「制度上難しい」「エリア外で無理」で終わらせず、できる相談から始めさせてください。
最後に——医療的ケア児のご家族へ
訪問看護は、ご自宅での療養生活を医療面から支えるサービスです。すえひろ訪問看護ステーションは、足立区で24時間365日の体制を取り、医療的ケアが必要なお子さまとそのご家族のご相談にも対応しています。
「こんなことを相談してもいいのだろうか」と迷われる内容こそ、一度お聞かせください。お受けできるかどうかも含めて、一緒に考えます。退院前のタイミングでも、すでに在宅生活を続けておられる段階でも、ご連絡をお待ちしています。
まずは、かかりつけ医や病院の医療ソーシャルワーカー、相談支援専門員にご相談いただくか、すえひろ訪問看護ステーションのサービス案内から直接お問い合わせください。訪問看護の制度や費用の全体像を先に確認したい方は、訪問看護の基本をまとめた記事もご参考にしてください。小児の訪問看護とあわせてリハビリ職の関わりを検討されている方は、訪問リハビリの対象疾患の記事もご覧いただけます。「誰ひとりとり残さない社会」の実現を企業理念に掲げる訪問看護ステーションとして、お子さまとご家族の暮らしに真摯に向き合わせていただきます。
参考文献・出典
- 厚生労働省「医療的ケア児の支援に関する検討会報告書関連資料」(2024年)
- 文部科学省「学校における医療的ケアに関する実態調査結果(令和5年度)」
- 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)
- 東京都医療的ケア児支援センター 公式サイト
- 足立区「子ども医療費助成制度」案内
