この記事の要点(30秒でわかる)
- 2026年7月に法律が改正され、2027年4月に施行されます
- 18歳に達した後も切れ目なく支援を受けられると定められました
- 重症心身障害者の方も新たに支援の対象になります
- レスパイトや通学支援、就労支援が条文に加わりました
「18歳になったら、どうなるのでしょうか」。医療的ケアが必要なお子さんを育てておられるご家族から、この不安をうかがうことがあります。
小さいうちは、通える場所も相談できる先もありました。ところが成人に近づくにつれて選択肢が細くなっていく。「18歳の壁」と呼ばれてきた問題です。
2026年7月、この壁に向き合う法改正が行われました。医療的ケア児支援法が改正され、18歳に達した後も切れ目なく支援を受けられるようにすることが、法律の基本理念に書き込まれました。施行は2027年4月1日です。
すえひろ訪問看護ステーションは足立区で在宅の療養を支えています。医療的ケアが必要なお子さんとご家族が、大人になっても地域で暮らし続けられること。それは私たちが目指したい姿と重なります。
この記事では、何がどう変わるのかを、厚生労働省とこども家庭庁の資料をもとに整理します。まだ始まっていない制度ですので、いまの段階で分かっていることと、これから決まることを分けてお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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法律の名前そのものが変わります
今回の改正では、法律の題名が変わります。改正後は「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」となります(出典:厚生労働省・こども家庭庁「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について」令和8年8月19日)。
長い名前ですが、変化はここに表れています。「児」だけだった対象に、大人が加わったのです。
改正の背景として、資料はこう説明しています。令和3年に制定された法律により「医療的ケア児が保育園や学校へ通いやすくなるなど、18歳未満の児童に対する必要な支援は徐々に整ってきている」。一方で、支援対象の拡大、レスパイト・就労支援等の充実、支援センターの強化という新たな課題が明らかになった(出典:同)。
子どものための法律として始まったものが、その子が大人になることを前提に作り直された、という言い方ができます。
施行は2027年4月1日です。法律の施行後3年で見直すことも定められています(出典:同)。
何が変わるのか
| これまで | 改正後 | |
|---|---|---|
| 法律の題名 | 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 | 医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律 |
| 支援の対象 | 医療的ケア児 | 医療的ケア児等、および重症心身障害者 |
| 基本理念 | 18歳に達し、又は高校等を卒業した後も適切なサービスを受けられるよう「配慮」する | 18歳に達した後等も、切れ目なく適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けられるようにすることを「旨」とする |
| 支援センター | 医療的ケア児支援センター(都道府県知事が設置) | 医療的ケア児等支援センター(指定都市・中核市・特別区の長も設置可) |
| 協議の場 | (規定なし) | 医療的ケア児等支援地域協議会を新設(協議結果に尊重義務) |
施行は2027年(令和9年)4月1日。施行後3年で見直しが行われます。
出典:厚生労働省・こども家庭庁「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について」令和8年8月19日
18歳に達した後も、切れ目なく
改正でいちばん大きいのは、基本理念の一文が強められたことです。これまでの法律にも「18歳に達した後も」への「配慮」は書かれていました。改正で「切れ目なく」「希望する地域において」が加わり、支援の「旨」(基本の考え方)に引き上げられました。
「18歳に達した後等も、切れ目なく適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら、希望する地域において日常生活及び社会生活を営むことができるようにすること」(3条3項)(出典:同)。
あわせて、こうも書き込まれました。「基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい日常生活及び社会生活を営むこと」(3条1項)(出典:同)。
支援の対象も具体的に広がりました。「医療的ケア児等」として、医療的ケア児だった方であって、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である方が含まれます(出典:同)。
さらに、重症心身障害者が新たに支援の対象に加わりました。資料では「重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している者」と定義されています(出典:同)。
「18歳を過ぎたから対象外」という線引きが、法律の上ではなくなる方向です。 ただし、具体的にどんなサービスがどれだけ使えるようになるかは、これから決まります。
誰が支援の対象になるのか
医療的ケア児等
重症心身障害者新たに対象へ
重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している者(そのうち児童である者は重症心身障害児)
出典:厚生労働省・こども家庭庁 社会保障審議会障害者部会 第158回/こども家庭審議会障害児支援部会 第21回(令和8年8月19日)資料1-1
レスパイトや通学支援が、条文に入りました
支援の中身も具体的に書き込まれました。資料は3つの分野に整理しています(出典:同)。
生活・就労等では、①日常生活支援(レスパイト・通学支援等)、②切れ目ない医療の提供、③就労支援、④住居の確保、⑤ピアサポート。
保育・教育等では、①喀痰吸引等を行うことができる介護従事者の配置、②社会的養護体制の拡充、③生涯学習の推進。
人材確保等では、①支援に係る研修の実施方法の見直し、②医療的ケアの提供の在り方の見直し。
注目していただきたいのは、レスパイトと通学支援が条文に位置づけられたことです。ご家族が休める時間、そしてお子さんが学校へ通う手段。どちらもご家庭で切実に必要とされてきたものです。
国会の附帯決議にも、「保護者の付添いがなくても通学できるよう、引き続き必要な支援を行うこと」が挙げられています(出典:同)。付き添いのために仕事を続けられないという状況が、課題として認識されているということです。学校での医療的ケアの現状については、医療的ケア児の就学・通学を支えるには|学校での医療的ケアと訪問看護の関わりにまとめています。
住居の確保や就労支援まで入ったことは、大人になった後を見据えた構成です。
条文に加わった支援施策
生活・就労等
保育・教育等
人材確保等
出典:厚生労働省・こども家庭庁「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について」令和8年8月19日
相談先が、身近な自治体にも置けるようになります
相談の窓口についても変わります。これまで医療的ケア児支援センターを設置できるのは都道府県知事でしたが、改正後は指定都市、中核市その他の政令で定める市、特別区の長も設置できるようになります(出典:同)。
足立区のような特別区も、設置できる側に加わります。ただし、足立区が実際に設置するかどうかは、この記事の時点では決まっていません。
センターの名称も「医療的ケア児等支援センター」に変わり、業務も広がります。進行性の疾病を有する方等も相談支援の対象になり、災害時への備え・対応が加わります(出典:同)。
災害への備えについては、基本指針の改正で、センターの業務として個別避難計画の作成についての協力と、災害時における市町村と連携した情報の提供を追記するとされています(出典:同)。人工呼吸器や吸引器を使っておられるご家庭にとって、停電や避難は現実的な心配ごとです。いまできる備えは停電・災害に備える医療的ケア児の在宅防災|人工呼吸器・吸引器の電源確保でお伝えしています。
さらに、「医療的ケア児等支援地域協議会」が新設されます(18条の2)。関係機関が集まって協議する場で、その協議結果については尊重義務が定められています(出典:同)。
話し合いの結果が置き去りにされにくくなる仕組みだと理解しています。
相談窓口はどう変わるか
| これまで | 改正後 | |
|---|---|---|
| 名称 | 医療的ケア児支援センター | 医療的ケア児等支援センター |
| 設置できる主体 | 都道府県知事 | 都道府県知事に加え、指定都市、中核市その他の政令で定める市、特別区の長 |
| 相談支援の対象 | 医療的ケア児とその家族 | 進行性の疾病を有する者等も対象に |
| 業務に加わるもの | (規定なし) | 災害時への備え・対応/個別避難計画の作成への協力/災害時に市町村と連携した情報の提供 |
足立区のような特別区も設置できる側に加わります。ただし実際に設置するかどうかは、この記事の時点では決まっていません。
出典:厚生労働省・こども家庭庁「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の改正を踏まえた基本指針の改正等について」令和8年8月19日
いま、ご家族にお伝えしたいこと
ここまで読んで、「では明日から何が変わるのか」と思われたかもしれません。正直にお伝えすると、いますぐ変わるものはありません。 施行は2027年4月1日で、具体的なサービスの中身はこれから決まっていきます。
それでも、この改正には意味があると考えています。これまで「配慮」にとどまっていた「18歳を過ぎた後」を、国が支援の前提として書き込んだからです。
いまの段階でできることがあるとすれば、ひとつです。今後の情報が届く先を確かめておくこと。 お住まいの自治体の窓口、通っておられる医療機関、相談支援専門員。どこから情報が来るのかを整理しておくと、動き出したときに乗り遅れません。
すえひろは足立区で在宅の療養を支えています。小児のご相談についても、お受けしています。いま体制を整えている段階で、できることとできないことがあります。 ですが、まずはお話をうかがわせてください。
「うちの子は対象になるのだろうか」「相談先が分からない」。そうした段階のご相談で構いません。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
いまの段階で、できること
1施行日を覚えておく
2027年(令和9年)4月1日です。
2情報の届く先を整理する
自治体の窓口、通っている医療機関、相談支援専門員。どこから情報が来るかを確かめておきます。
3自治体の案内を確認する
お住まいの自治体がセンターや地域協議会を設置するかどうか、今後の案内を見ておきます。
418歳以降の見通しを相談する
いまの支援チームに、成人期に向けた見通しを話しておきます。
いますぐ変わるものはありません。準備しておく時期です。
まとめ
2026年7月に医療的ケア児支援法が改正され、2027年4月1日に施行されます。法律の題名は「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」となり、18歳に達した後も切れ目なく支援を受けられることが基本理念に書き込まれました。重症心身障害者の方が新たに対象に加わり、レスパイトや通学支援、就労支援、住居の確保が条文に位置づけられました。相談窓口となるセンターは特別区でも設置できるようになり、地域協議会も新設されます。
具体的なサービスの中身は、これから決まります。 いまお伝えできるのは、方向が定まったということまでです。
18歳という区切りに不安を感じておられるご家族にとって、少しでも先の見通しが立つ材料になればと願っています。
よくある質問
Q. いつから使える制度ですか。
A. 施行は2027年4月1日です。法律は2026年7月に改正されましたが、具体的なサービスの中身は基本指針などでこれから決まっていきます。現時点ですぐに使えるようになるものではありません。
Q. 18歳を過ぎたら、もう対象外ではなくなるのですか。
A. 基本理念に「18歳に達した後等も、切れ目なく適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら、希望する地域において日常生活及び社会生活を営むことができるようにすること」と書き込まれました。ただし個々のサービスの適用範囲は、今後の指針や制度の設計によります。
Q. 重症心身障害者とは、どういう方を指しますか。
A. 資料では「重度の知的障害及び重度の肢体不自由が重複している者」と定義されています。そのうち児童である方は重症心身障害児とされます。
Q. 足立区にも相談センターができるのですか。
A. 改正により、特別区の長も医療的ケア児等支援センターを設置できるようになります。ただし足立区が設置するかどうかは、この記事の時点では決まっていません。今後の区の案内をご確認ください。
Q. 災害のときの備えは変わりますか。
A. センターの業務に災害時への備え・対応が加わります。基本指針の改正では、個別避難計画の作成への協力と、災害時に市町村と連携して情報を提供することを追記するとされています。
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