この記事の要点(30秒でわかる)
- 脊髄小脳変性症は、ふらつきやろれつの回りにくさがゆっくり進む病気です
- 集中的なリハビリで歩行やバランスが改善し、効果が続くことが報告されています
- 転倒を防ぐ住まいの工夫が、ご自宅での暮らしを長く支えます
- 訪問看護は医療保険の対象で、週4日以上の訪問も利用できます
まっすぐ歩けずに体が揺れる。言葉がもつれて聞き取ってもらえない。字がうまく書けなくなった。脊髄小脳変性症と診断され、これから先どうなっていくのかと不安を抱えておられる方やご家族は少なくありません。
この病気はゆっくり進むことが多く、診断された後も長い時間をご自宅で過ごされる方が大半です。だからこそ、転倒を防ぐ工夫や、体の機能を保つリハビリを早くから取り入れることが大切になります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、看護師とリハビリ職がご自宅に伺い、その方の暮らし方に合わせた支え方を一緒に考えています。病気が進んでも、できることを諦めずに探していきたいと考えています。
この記事では、脊髄小脳変性症の特徴、日常生活で起こりやすい困りごと、自宅でできる備え、そして使える制度についてお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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脊髄小脳変性症とはどんな病気か
脊髄小脳変性症は、体のバランスや動きの調整を担う小脳や、その周りの神経が少しずつ働かなくなる病気の総称です。主な症状は、ふらつき、ろれつの回りにくさ、手の動きのぎこちなさなどで、これらは運動失調(うんどうしっちょう)と呼ばれます。
国の指定難病に定められており、医療費助成を受けている方は全国で26,491人です(出典:難病情報センター 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数 令和6年度)。この数には、多系統萎縮症として別に指定されている方は含まれていません。
難病情報センターによると、遺伝によらずに発症する孤発性が67.2%、遺伝性が約3割とされています。遺伝性の中にも多くの型があり、症状の現れ方や進み方は型によって異なります。
ひとつの型だけを見ても、進み方には個人差があります。同じ診断名でも暮らしの困りごとは一人ずつ違うため、その方の今の状態を丁寧に見ていくことが欠かせません。
日常生活で起こりやすい困りごと
脊髄小脳変性症の困りごとは、歩くこと、話すこと、手を使うことの3つに現れやすいといえます。どれも毎日の暮らしに直結するため、早めに気づいて備えることが大切です。
歩くときのふらつきは、転倒につながる最も大きな困りごとです。 足を大きく開いて歩く、方向を変えるときに体が揺れる、といった様子がみられます。暗い場所や、足元が見えにくいときに特にふらつきやすくなります。
話すときには、言葉がゆっくりになったり、途切れたりします。手を使う場面では、字を書く、ボタンを留める、箸を使うといった細かな動作がしにくくなります。物をつかもうとすると手が揺れることもあります。
型によっては、手足のこわばりや、立ちくらみ、排尿の困りごとなど、運動失調以外の症状を伴うこともあります(出典:難病情報センター 脊髄小脳変性症)。気になる変化は、小さなことでも主治医にお伝えください。
転倒を防ぐ住まいの工夫
住まいを整えることは、転倒を防ぐうえで最も取り組みやすい対策です。 ふらつきそのものを今すぐ止めることは難しくても、転びやすい場所を減らすことはできます。
床に置いた物や、めくれやすいマットは、つまずきの原因になります。廊下やトイレ、寝室から出る場所には手すりを付け、夜間の移動に備えて足元を照らす明かりを置くと安心です。暗いと体の揺れが強まりやすいため、明るさはとても大切です。
浴室は、床が滑りやすく、立ったりしゃがんだりの動作が多いため、特に転倒が起きやすい場所です。シャワーチェアや滑り止めマットを使うと、動作が安定しやすくなります。
手すりの取り付けなどの住宅改修や、福祉用具の利用には、介護保険が使える場合があります。どこに何を付けるとよいかは、実際の動き方を見て決めるのが一番です。訪問看護のリハビリ職が、ご自宅の動線に合わせて一緒に考えます。
リハビリで保てること
リハビリは、脊髄小脳変性症の大切な治療のひとつです。 国内外の研究で、集中的なリハビリによって運動失調や歩行、日常生活の動作が改善し、その効果が半年から1年ほど続くことが報告されています(出典:Miyai I, et al. Neurorehabilitation and Neural Repair 2012)。
病院で数週間にわたって集中的に行うリハビリのほか、ご自宅でのリハビリも続けることが大切です。体を動かさない時間が長くなると、筋力が落ち、ふらつきがさらに強まるという悪循環に入りやすくなります。
ご自宅でのリハビリでは、バランスを保つ練習や、立ち上がり、歩き方の練習を、その方の状態に合わせて行います。実際の生活の場で、トイレまでの移動や入浴の動作を一緒に確かめられるのが、訪問リハビリの強みです。
「病気が進むならリハビリをしても意味がない」と感じられる方もおられます。けれども、できる動作を保つこと、転ばずに暮らせる期間を延ばすことには、大きな意味があると私たちは考えています。
話す・食べることへの支え
病気が進むと、話すことや飲み込むことにも影響が出やすくなります。言葉が聞き取りにくくなると、ご本人が話すことをためらい、人との関わりが減ってしまうこともあります。
食事中のむせは、誤嚥性肺炎の原因になるため注意が必要です。 食べ物や飲み物が気管に入ってしまうことで、肺炎を起こすことがあります。むせる回数が増えた、食事に時間がかかるようになった、といった変化は早めにお伝えください。
食べる姿勢を整える、とろみをつける、ひと口の量を減らすといった工夫で、飲み込みやすくなることがあります。言語聴覚士(ST)は、話し方や飲み込みの練習を専門とするリハビリ職です。
訪問看護では、食事の様子や体重、熱の有無を確かめながら、飲み込みの変化を主治医や言語聴覚士と共有します。話しにくさがある方には、文字盤など伝え方の工夫も一緒に考えます。
訪問看護で使える制度
脊髄小脳変性症の方の訪問看護は、介護保険の認定を受けていても医療保険で利用します。 厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる別表第7)に含まれているためです(出典:厚生労働省 診療報酬の算定方法 告示)。
医療保険での訪問看護では、週4日以上の訪問や、1日に複数回の訪問、複数の訪問看護ステーションの利用が認められています。状態に合わせて、必要な回数の訪問を組み立てられるのが特徴です。
あわせて、国の指定難病として医療費助成を受けられる場合があります。重症度の基準を満たすなどの条件があり、認められると自己負担の上限額が設けられます。訪問看護の費用もこの助成の対象になります。申請の流れは指定難病の医療費助成を受けるには|受給者証の申請の流れと自己負担で詳しくお伝えしています。
また、脊髄小脳変性症は介護保険の特定疾病にも含まれており、40歳から64歳の方でも介護保険の申請ができます。手すりや福祉用具、ヘルパーなどは介護保険で利用できます。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。
| 制度 | 使える保険・制度 | 主な内容 | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護 | 医療保険(介護認定があっても医療保険) | 週4日以上や1日複数回の訪問も可能。看護とリハビリ | 主治医・訪問看護ステーション |
| 指定難病の医療費助成 | 特定医療費(指定難病) | 自己負担に上限が設けられる。訪問看護の費用も対象 | 保健所 |
| 介護保険 | 介護保険(特定疾病のため40歳から申請可) | 手すり・福祉用具・ヘルパーなど | 地域包括支援センター・ケアマネジャー |
まとめ
脊髄小脳変性症は、ふらつきやろれつの回りにくさがゆっくり進む病気です。進み方には個人差があり、診断された後も長い時間をご自宅で過ごされる方が大半です。転倒を防ぐ住まいの工夫、体の機能を保つリハビリ、飲み込みへの備えを早くから取り入れることが、暮らしを守ることにつながります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、看護師とリハビリ職が連携して、その方が続けたい暮らしを一緒に支えたいと考えています。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
「まだ自分で歩けるから」と迷っておられる段階こそ、備えられることが多く残っています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 脊髄小脳変性症は治りますか。
A. 現在のところ、病気の進行を止める治療法は確立されていません。ただし、ふらつきなどの症状を和らげる薬や、集中的なリハビリで運動失調が改善したという報告があります。症状を和らげ、できる動作を保つことを目指します。
Q. 介護保険の認定を受けていますが、訪問看護は介護保険で使うのですか。
A. 脊髄小脳変性症の方は、介護保険の認定を受けていても、訪問看護は医療保険での利用になります。手すりや福祉用具、ヘルパーなどのサービスは介護保険で利用できます。
Q. 遺伝が心配です。どこに相談すればよいですか。
A. 遺伝性かどうか、ご家族への影響があるかどうかは、型によって異なります。遺伝子の検査はご本人だけでなく血縁の方にも関わるため、主治医や遺伝カウンセリングの窓口で、十分な説明を受けたうえで考えることが大切です。
Q. 訪問リハビリはどのくらいの頻度で受けられますか。
A. 主治医の指示と、ご本人の状態や希望をもとに決めます。医療保険の訪問看護では週4日以上の訪問も認められているため、必要に応じて組み立てられます。まずはお気軽にご相談ください。
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