この記事の要点(30秒でわかる)
- 物忘れより先に、幻視や寝言、手足のこわばりが目立つ認知症があります
- 調子のよい日と悪い日の差が大きいのは、この病気の特徴のひとつです
- 薬への反応が強く出やすいため、飲み始めや変更の後は様子の変化に注意が必要です
- 40歳から64歳の方でも、介護保険で訪問看護を使える場合があります
「誰もいない部屋に子どもがいると言う」「昨日はしっかり話せたのに、今日はぼんやりしている」。認知症だと思っていたのに、よくある物忘れの様子とは違う。そう感じて戸惑っておられるご家族は少なくありません。
その違和感の背景に、レビー小体型認知症という病気が隠れていることがあります。症状の現れ方に特徴があるため、知っておくことで、ご本人への接し方も、受診のときに伝えることも変わってきます。
すえひろ訪問看護ステーションでは、ご本人の調子の波や体の変化を見ながら、ご家族と一緒にご自宅での暮らし方を考えています。
この記事では、レビー小体型認知症の特徴、アルツハイマー型認知症との違い、幻視が出たときの接し方、体の症状への備え、そして使える制度についてお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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レビー小体型認知症とはどんな病気か
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞の中に「レビー小体」という異常なたんぱく質のかたまりがたまり、神経の働きが損なわれていく病気です。アルツハイマー型、血管性と並んで、三大認知症のひとつに数えられています。
厚生労働科学研究の調査では、認知症の原因のうち、レビー小体型認知症とパーキンソン病による認知症を合わせた割合は4.3%と報告されています(出典:厚生労働科学研究「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」2013年)。ただし、症状が似ていることからほかの認知症と診断されている方も含まれる可能性があり、実際にはもっと多いと考える専門家もいます。
レビー小体はパーキンソン病の原因にもなるもので、この2つの病気は近い関係にあります。そのため、認知機能の低下に加えて、手足のこわばりや歩きにくさといった体の症状が出やすいことが特徴です。
アルツハイマー型認知症との違い
レビー小体型認知症は、物忘れよりも先に、幻視や体の症状が目立つことがある認知症です。 アルツハイマー型認知症では、初めのうちは新しいことを覚えられない物忘れが中心になります。一方でレビー小体型では、初期には記憶が比較的保たれていることも少なくありません。
2017年に改訂された国際的な診断基準では、中心となる特徴として次の4つが挙げられています。認知機能の変動、繰り返し現れる具体的な幻視、レム睡眠行動異常症(眠っている間に夢に合わせて大声を出したり手足を動かしたりする症状)、そしてパーキンソン症状です(出典:レビー小体型認知症の臨床診断基準 第4版、2017年)。
このほか、立ちくらみや便秘などの自律神経の症状、転びやすさ、薬への過敏さも、この病気を疑う手がかりとされています。「認知症にしては変わっている」と感じた様子は、どれも主治医に伝えていただきたい大切な情報です。
| 比べるところ | アルツハイマー型 | レビー小体型 |
|---|---|---|
| 初期に目立つ症状 | 新しいことを覚えられない物忘れ | 幻視や体の症状。記憶は比較的保たれることも |
| 調子の波 | 大きな波は少なく、ゆるやかに進む | 日や時間によって、しっかりしている時とぼんやりする時の差が大きい |
| 幻視 | 初期には少ない | 人や虫などが、はっきりした形で見える |
| 体の症状 | 初期には目立たない | 手足のこわばり、小刻みな歩き方、立ちくらみ |
| 睡眠中の様子 | 夜中に起きて歩き回ることがある | 夢に合わせて大声を出す、手足を動かす |
| 薬への反応 | 大きな違いはない | 過敏に反応しやすく、動きが悪くなることがある |
「認知症だと思っていたら違った」と気づくサイン
レビー小体型認知症の症状は、認知症の典型的なイメージと重ならないことがあります。そのため、最初は別の病気と考えられたり、気持ちの問題と受け止められたりすることもあります。
調子の波が大きいことは、レビー小体型認知症の大きな特徴です。 朝はしっかり会話ができたのに、昼過ぎには呼びかけへの反応が鈍くなる。こうした変化が、1日のうちや数日の間で繰り返されます。ご家族からすると「わざとなのでは」と感じてしまうこともありますが、病気による症状です。
幻視は、「部屋の隅に知らない人が座っている」「床に虫がいる」など、はっきりした形で見えるのが特徴です。ご本人にとっては本当に見えているため、話す内容が具体的になります。
睡眠中に大きな声で寝言を言う、叫ぶ、腕を振り回すといった様子は、認知症の症状が出る何年も前から始まっていることがあります。便秘や、においが分かりにくくなることも、早い時期から現れる症状として注目されています(出典:日本医療研究開発機構(AMED)2020年 研究成果発表)。
幻視が出たときの接し方
幻視が出たときは、否定も肯定もせず、ご本人の不安を受け止めることが基本です。 「そんなものはいない」と強く否定すると、ご本人は分かってもらえない不安や怒りを抱えやすくなります。
「見えているんですね」「怖かったですね」と気持ちに寄り添ったうえで、ご家族がそばに行って確かめたり、明かりをつけたりすると落ち着かれることがあります。話題を変える、場所を移るといった対応が役立つ場合もあります。
見え方には、部屋の環境が影響することがあります。壁に掛けた服が人影に見える、カーテンの模様が虫に見えるといった「見間違い」は、錯視と呼ばれます。薄暗い場所や、影ができやすい場所を減らすことで、幻視や錯視が和らぐことが期待できます。
幻視がいつ、どんな場面で出たかを記録しておくと、受診のときの判断材料になります。訪問看護では、こうした記録の付け方や部屋の整え方を、ご家族と一緒に考えていきます。
転倒・立ちくらみ・飲み込みへの備え
レビー小体型認知症では、認知機能だけでなく体の症状への備えが欠かせません。パーキンソン症状によって歩幅が小さくなったり、体の動きがゆっくりになったりすると、転びやすくなります。
立ち上がったときに血圧が下がる起立性低血圧は、転倒や失神の原因になります。 ベッドや椅子から立つときは、いったん座った姿勢で少し待ってから、ゆっくり立ち上がることが勧められます。食後や入浴後は血圧が下がりやすいため、特に注意が必要です。
便秘も多くみられる症状です。水分や食物繊維をとる工夫に加えて、排便の様子を日ごろから把握しておくことが大切です。病気が進むと飲み込む力が弱まり、むせやすくなることもあります。
訪問看護では、血圧や脈、排便、食事の様子を確かめながら、転びにくい家の中の動き方や、食べやすい姿勢をご家族と一緒に考えます。体の変化を早く主治医につなぐことも、私たちの大切な役割です。
薬への反応に気をつける
レビー小体型認知症の方は、薬への反応が強く出やすいことが知られています。 幻覚や興奮を抑える目的で使われる抗精神病薬に過敏に反応し、体のこわばりが強まったり、意識がぼんやりしたりすることがあります。
治療薬としては、2014年にドネペジルがレビー小体型認知症の治療薬として承認されました。レビー小体型認知症の効能を持つ薬としては世界で初めての承認でした(出典:エーザイ株式会社 2014年9月19日発表)。どの薬をどのくらい使うかは、症状を見ながら主治医が判断します。
ご家族にお願いしたいのは、薬を飲み始めたときや量が変わったときに、ご本人の様子をよく見ていただくことです。急に動きが悪くなった、ぼんやりする時間が増えた、と感じたら、自己判断で中止せずに主治医か訪問看護師にご相談ください。
訪問看護では、飲み忘れや飲みすぎが起きない仕組みを一緒に整え、薬の変更後の様子を主治医に伝える役割も担います。
訪問看護で使える制度
レビー小体型認知症で訪問看護を使う場合、多くの方は介護保険での利用になります。65歳以上の方は、要介護認定を受けてケアマネジャーに相談し、ケアプランに訪問看護を組み込む流れです。
40歳から64歳の方でも、介護保険を使える場合があります。 介護保険の「特定疾病」16種類のひとつに「初老期における認知症」が定められており、この年代で発症したレビー小体型認知症も対象になりえます(出典:厚生労働省 介護保険法施行令 第2条)。対象になるかどうかは、主治医の意見書をもとに判断されます。
なお、パーキンソン病は国の指定難病に含まれていますが、レビー小体型認知症は含まれていません。そのため、難病の医療費助成の対象にはなりません。状態が急に悪化した場合などには、主治医の指示によって一時的に医療保険で訪問看護を受けられることもあります。
どの制度が使えるかは、年齢や状態によって一人ずつ違います。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。
関連する記事として、認知症の方が自宅で暮らし続けるために|訪問看護師ができるサポートと家族の関わり方や、パーキンソン病の在宅療養|訪問看護でできるサポートと家族の関わり方もあわせてご覧ください。
まとめ
レビー小体型認知症は、幻視や調子の波、体のこわばり、睡眠中の異常な行動など、よく知られる認知症のイメージとは違う形で現れることがあります。「認知症にしては様子が違う」という気づきが、適切な診断と接し方につながります。幻視は否定せずに受け止め、転倒や薬の変化に気を配ることが、ご自宅での暮らしを支えます。
すえひろ訪問看護ステーションでは、日によって変わるご本人の様子を見守りながら、ご家族が抱える戸惑いや疲れにも寄り添いたいと考えています。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
「まだ診断がはっきりしていない」「訪問看護を頼むほどではないかもしれない」と迷っておられる段階でも構いません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 幻視があると言われたとき、話を合わせた方がよいのでしょうか。
A. 見えているものを無理に否定したり、逆に話を大きく膨らませたりせず、「見えているんですね」と気持ちを受け止める対応が基本です。ご本人が怖がっているときは、そばに行って安心していただくことを優先してください。
Q. 昨日はできたことが今日はできません。進行しているのでしょうか。
A. レビー小体型認知症では、1日の中や数日の間で調子の波が出ることが特徴です。一時的な変化の場合もあるため、様子を記録して主治医にお伝えください。ただし、急に動けなくなった、意識がはっきりしないといった場合は、早めにご相談ください。
Q. アルツハイマー型と診断されていますが、レビー小体型の可能性はありますか。
A. 症状が似ているため、経過の中で診断が見直されることもあります。幻視や睡眠中の大声、歩き方の変化などが気になる場合は、その様子を主治医に伝えてご相談ください。
Q. 40代、50代でも訪問看護を使えますか。
A. 40歳から64歳の方は、「初老期における認知症」として介護保険の対象になる場合があります。40歳未満の方でも、医療保険で訪問看護を利用できます。どちらが使えるかは状況によって異なりますので、お気軽にご相談ください。
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