この記事の要点(30秒でわかる)
- 高齢の方は平熱が低く、感染しても熱が上がらないことがあります
- 熱より先に「食べない」「動かない」「話がかみ合わない」が出ます
- 2026年は8月に流行入り。1999年以降で2番目の早さです
- 治療薬は発症48時間以内が原則。迷ったら早めにご連絡ください
「熱がないから、まだ大丈夫だと思っていました」。ご家族から、あとになってそう聞くことがあります。高齢の方の感染症は、私たちが思い浮かべる「高熱が出て寝込む」という形をとらないことがあります。
だからこそ、熱以外のサインを知っておくことが助けになります。いつもと違う小さな変化に気づけば、受診も治療も間に合います。訪問看護は、その「いつも」を知っている立場からお手伝いできます。
すえひろ訪問看護ステーションは、判断に迷う場面こそ一緒に考えたいと思っています。「これで連絡していいのだろうか」と迷われたときは、どうか遠慮なさらないでください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
この記事では、高齢の方で熱が出にくい理由、熱の代わりに現れるサイン、今シーズンの流行状況、受診までの時間の目安、訪問看護へ連絡する目安をお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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高齢者はインフルエンザでも熱が出ないことがあるのはなぜですか
高齢の方は、感染しても体温が上がりきらないことがあります。加齢によって平熱そのものが低くなっていることと、免疫の働きが弱まって発熱を起こす反応が出にくくなっていることが理由です。そのため感染に気づかず、治療が遅れることがあります。
厚生労働省も、高齢の方は細菌による肺炎を伴うなど重症化することがあると注意を促しています(出典:厚生労働省「インフルエンザとは」リーフレット)。熱が出ないことと、症状が軽いことは同じではありません。
平熱を知っておくことが、そのまま備えになります。もともと36.0度の方が37.0度になっていれば、体は1度分の反応を起こしています。基準は「37.5度」という数字ではなく、その方のいつもの体温です。
ご家族が普段から体温を測って記録しておくと、この判断がずっとしやすくなります。訪問看護でうかがったときにも、その記録が判断材料になります。
測るのは1日1回、同じ時間帯で構いません。起床後や食後は数値が動きやすいので、落ち着いている時間を選んでください。カレンダーの隅に書き込むだけでも、1か月続ければその方の平熱が見えてきます。
数字だけを見ると右のほうが高いのですが、体が起こしている反応は左のほうが大きいことになります。基準は37.5度という数字ではなく、その方のいつもの体温です。
熱が出ないなら、何を見ればよいですか
熱より先に、様子の変化が出ることがあります。食欲が落ちる、いつもより眠っている、立ち上がろうとしない、受け答えがかみ合わない。こうした変化は、高齢の方の感染症でしばしば最初に現れます。認知症のある方では、混乱や落ち着かなさとして出ることもあります。
とくに見ていただきたいのは、食事と水分の量です。食べない飲まないが続くと脱水につながり、脱水そのものが意識のもうろうや転倒を招きます。感染よりも先に、脱水で状態が悪くなることがあります。
呼吸も大切な手がかりです。会話の途中で息が続かない、じっとしているのに肩で息をしている、といった変化があれば、肺炎を起こしている可能性があります。
尿の量や色も手がかりになります。トイレの回数が減った、色が濃くなったという変化は、水分が足りていないことを示していることがあります。おむつを使われている方では、交換の回数や重さの変化として現れます。
「なんとなくおかしい」というご家族の感覚は、しばしば当たります。毎日見ている方だから気づける変化です。うまく言葉にできなくても構いませんので、そのままお伝えください。
高齢の方は発熱が出にくいため、これらが最初のサインになることがあります。ひとつでも当てはまれば、体温もあわせて確認してください。
今シーズンはいつから流行しているのですか
すでに流行しています。厚生労働省は2026年8月28日、第34週(8月17日から23日)の定点当たり報告数が1.11となり、流行開始の目安である1.00を上回ったと発表しました。感染症法が施行された1999年以降では、2009年に次いで2番目に早い流行入りです。
東京都も2026年8月27日に流行開始を発表しています。第34週の都内の定点当たり報告数は1.49人でした(出典:東京都保健医療局 報道発表 2026年8月27日)。例年より1か月以上早いタイミングです。
つまり、まだ夏の感覚でいるうちに、季節性インフルエンザはもう動き始めています。「そろそろ寒くなったら気をつけよう」では間に合わない年です。
在宅で療養されている方は、外出が少なくても感染します。訪問する人、同居のご家族、通われているデイサービス。人が出入りする以上、家の中も無関係ではありません。
流行の状況は、東京都感染症情報センターや足立区の公式ページで週ごとに公表されています。数字が上がってきた時期には、面会や外出の予定を見直す判断材料になります。
全国・東京都とも、流行開始の目安である1.00をすでに超えています。1999年以降では2009年に次いで2番目に早い流行入りです。(出典:厚生労働省 2026年8月28日発表/東京都保健医療局 2026年8月27日発表)
変化に気づいたら、まず何をすればよいですか
順番があります。体温を測る、水分がとれているかを確かめる、呼吸の様子を見る。この3つを確認したうえで、かかりつけ医か訪問看護ステーションに連絡します。判断を待つ間も、水分だけは少しずつ続けてください。
体温は1回で決めず、時間をおいて測ります。高齢の方は日内変動が大きく、朝は平熱でも夕方に上がることがあります。測った時刻と数字を書き留めておくと、電話でお伝えするときに役立ちます。
水分は、一度にたくさんではなく少量を繰り返します。飲み込みに不安がある方は、とろみをつけると安全です。食べられなくても、水分だけは切らさないようにしてください。
連絡するときは、いつからどう違うのかを具体的にお伝えください。「昨日の夕方から食事を半分残していて、今朝は呼びかけへの返事が遅い」という形です。数字と時刻があると、緊急性の判断がしやすくなります。
お薬をお持ちの場合は、手元に用意してからお電話いただけると話が早く進みます。解熱剤を自己判断で使ってよいかは、その方の状態や普段の処方によって変わります。使う前に一度ご確認ください。
迷った時点で連絡していただいて構いません。判断がつかないから連絡する、という使い方で正しいです。
受診はいつまでにすればよいですか
早いほうがよいと考えてください。抗インフルエンザ薬は、発症からおよそ48時間以内に使い始めることが原則とされています。ウイルスが増えるピークがこの時間帯にあたるためで、発熱している期間を平均して1日から2日短くする効果が期待できます。
ただし48時間を過ぎたら手がないわけではありません。高齢の方や基礎疾患のある方、免疫が下がっている方には、48時間を過ぎてから使われることもあります。過ぎてしまったから諦める、という判断はなさらないでください。
難しいのは、熱が出にくい方では「発症がいつだったか」がはっきりしないことです。だからこそ、食欲や様子の変化に気づいた時点を発症の目安として動くほうが安全です。
新型コロナウイルス感染症も同じ時期に流行します。症状だけで見分けることは難しいため、検査は医療機関の判断に委ねてください。ご家族が見分けようとする必要はありません。
訪問看護に連絡してよい目安はどこですか
迷った時点で連絡していただいて構いません。判断がつかないから連絡する、という使い方で正しいです。とくに、水分がとれない、呼びかけへの反応が鈍い、息づかいが荒い、この3つのいずれかがあれば、時間帯を気にせずご連絡ください。
24時間対応の体制をとっている訪問看護ステーションでは、夜間や休日も連絡を受けられます。多くの場合は電話でお話をうかがい、様子の確認と対応方法をお伝えすることで解決します。必要と判断したときには訪問します。
すえひろの受付時間は8時30分から17時30分で、看護は年中無休です。この時間以外にいただいたご連絡は留守番電話でお受けし、ご利用中の方には担当のスタッフが対応いたします。
「こんなことで電話してよいのか」と迷われる方は少なくありません。ですが、早い段階のご相談ほど、できることが多く残っています。一緒に考えさせてください。
すえひろの受付時間は8時30分から17時30分で、看護は年中無休です。この時間以外にいただいたご連絡は留守番電話でお受けし、ご利用中の方には担当のスタッフが対応いたします。
家の中でうつさないために何ができますか
同居のご家族が感染すると、介護そのものが止まります。ご本人を守ることと同じくらい、介護する側が倒れないことが大切です。手洗いとマスク、そして部屋の換気が基本になります。
個室にできない住まいも多くあります。その場合は、寝る場所を離す、食事の時間をずらす、共有部分に触れたあとに手を洗う、といった現実的な工夫で構いません。完全な隔離を目指すより、続けられる形を選んでください。
湿度を保つことも助けになります。空気が乾くと喉の防御が働きにくくなるためです。加湿器がなければ、濡れたタオルを室内に干すだけでも違います。
介護をされる方自身の予防接種も、結果としてご本人を守ることにつながります。接種については、かかりつけ医やお住まいの区市町村の窓口にご相談ください。
ご本人の接種を迷われている場合も、寝たきりの状態や持病があることが、そのまま受けられない理由になるとは限りません。判断は主治医が行いますので、まずは相談してみてください。
| 場面 | 個室がある場合 | 個室がない場合 |
|---|---|---|
| 寝る場所 | 体調が戻るまで部屋を分ける | 同じ部屋でも、頭の向きを逆にして距離をとる |
| 食事 | 部屋まで運び、別々にとる | 時間をずらす。同じ食卓なら向かい合わせを避ける |
| 共有部分 | 使用後に拭く | 触れたあとに手を洗う。ドアノブと手すりを重点的に |
| 空気 | 部屋ごとに換気する | 1時間に1回、数分の換気をまとめて行う |
完全な隔離を目指すより、続けられる形を選んでください。湿度を保つことも助けになります。加湿器がなければ、濡れたタオルを室内に干すだけでも違います。
今シーズンの流行状況については、インフルエンザの流行が例年より1か月早く始まりました|足立区の状況と在宅での備えで、東京都と足立区の数字をもとに整理しています。
まとめ
高齢の方は、インフルエンザにかかっても熱が上がらないことがあります。平熱が低く、免疫の反応も弱まっているためです。熱の代わりに、食べない、動かない、話がかみ合わないといった変化が先に出ることがあります。2026年は8月に流行入りし、1999年以降で2番目に早いシーズンとなりました。治療薬は発症からおよそ48時間以内が原則です。
すえひろ訪問看護ステーションは、その方の「いつも」を知っている立場から、変化に早く気づくお手伝いをしたいと考えています。ご家族が毎日見ているからこそ気づける違和感を、私たちは大切に受け止めます。
「これくらいで連絡してよいのか」と迷ったら、迷ったまま連絡してください。空振りで構いません。一緒に確かめさせてください。
よくある質問
Q1. 熱がなければ、インフルエンザではないと考えてよいですか。
いいえ。高齢の方は平熱が低く、免疫の反応も弱まっているため、感染しても体温が上がりきらないことがあります。食欲の低下や反応の鈍さなど、熱以外の変化も合わせて見てください。
Q2. 何度から熱があると考えればよいですか。
決まった数字より、その方の平熱との差で見てください。平熱36.0度の方が37.0度であれば、体は1度分の反応を起こしています。普段から体温を記録しておくと判断しやすくなります。
Q3. 発症から48時間を過ぎてしまいました。もう薬は使えませんか。
諦めないでください。48時間以内が原則ですが、高齢の方や基礎疾患のある方には、48時間を過ぎてから使われることもあります。医療機関にご相談ください。
Q4. インフルエンザと新型コロナは、家庭で見分けられますか。
症状だけで見分けることは難しく、検査が必要です。ご家族が見分けようとなさる必要はありません。医療機関の判断に委ねてください。
Q5. 夜間に様子がおかしくなったら、朝まで待つべきですか。
水分がとれない、呼びかけへの反応が鈍い、息づかいが荒い、このいずれかがあれば、時間帯を気にせずご連絡ください。24時間対応の体制で、まずは電話でお話をうかがいます。
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専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
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