この記事の要点(30秒でわかる)
- 訪問看護の記録は、ご本人が求めれば遅滞なく開示しなければならないと定められています
- 開示を断れるのは、権利利益を害するおそれなど3つの場合に限られます
- ご家族が代わって請求するには、法定代理人であるか、ご本人からの委任が必要です
- 亡くなった方の記録は個人情報保護法の対象外で、別の指針にもとづいて扱われます
「訪問看護師さんは、毎回何を書いているのだろう」——ご自宅に来る看護師がタブレットや用紙に記入している姿を見て、そう思われたことはありませんか。
自分のことが書かれているのに中身が分からない、家族として様子を知りたいけれど見せてもらってよいのか分からない。そうした気持ちは自然なものです。実は、訪問看護の記録はご本人が求めれば見られることが法律で定められています。
すえひろ訪問看護ステーションでは、記録は隠すものではないと考えています。気になることがあれば、まずは担当の看護師にお声がけください。
この記事では、記録に何が書かれているのか、誰と共有されているのか、そして見たいときにどうすればよいのかを整理します。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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訪問看護の記録には、何が書かれているのか
訪問看護記録には、訪問した日時、その日の体温や血圧などの状態、行ったケアの内容、ご本人やご家族から伺ったこと、そして次回に向けた申し送りが書かれます。
これとは別に、訪問看護計画書と訪問看護報告書という書類があります。計画書はこれから何をするかの計画、報告書は実際にどうだったかのまとめです。この2つは健康保険法などにもとづく厚生労働省令によって作成が義務づけられており、2年間の保存と、主治医への定期的な提出が必要とされています。
つまり記録は、看護師の個人的なメモではありません。制度の中で作られ、残され、共有される公的な性格を持つ書類です。
訪問看護で作られる3つの記録
| 種類 | 何が書かれるか | 誰が見るか |
|---|---|---|
| 訪問看護記録 | 訪問した日時/体温・血圧などの状態/行ったケア/伺ったこと/次回への申し送り | ステーション内のチーム全員 |
| 訪問看護計画書2年保存 | これから何をするか。指示書の内容を看護の言葉に落とし込んだもの | 主治医(定期的に提出)/ケアマネジャー |
| 訪問看護報告書2年保存 | 実際にどうだったか。状態の経過とケアの結果 | 主治医(定期的に提出)/ケアマネジャー |
記録は、すでに誰と共有されているのか
ご家族が驚かれることがあるのですが、記録はステーションの中だけにあるものではありません。
計画書と報告書は主治医へ定期的に提出されます。介護保険を使っている場合はケアマネジャーとも共有され、サービス担当者会議の資料になります。ステーションの中では、担当以外の看護師も記録を読みます。これは担当が休んだときや夜間の対応で、状況を知らない人が訪問することを防ぐためです。
共有されているからこそ、ご本人やご家族が中身を知っておく意味があります。 事実と違うことが書かれたまま関係者に回ると、その後の判断に影響します。
ご本人は、記録を見ることができます
個人情報保護法にもとづき、事業者は本人から求めがあれば、本人が請求した方法により、遅滞なく保有個人データを開示しなければならないと定められています(出典:個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」令和8年4月改正)。
訪問看護ステーションもこのガイダンスの対象です。「見せてください」とお願いできる、というより、事業者側に開示する義務があるというのが正確な理解になります。
方法は難しくありません。多くのステーションでは、まず担当の看護師か管理者に申し出るところから始まります。書面での手続きを求められる場合もありますが、それも法律にもとづいた正当な手順です。
開示を断られることがある3つの場合
ただし、どんな場合でも必ず全部が開示されるわけではありません。ガイダンスでは、次の場合に全部または一部の開示を拒否できるとされています。
本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合。 たとえばご家族が「本人には知らせないでほしい」と話された内容が記録に含まれているとき、それをそのまま開示すると関係が壊れることがあります。
事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合。
他の法令に違反することとなる場合。
記録を見たいときの流れ
担当の看護師か管理者に申し出る
まずは口頭で構いません。書面での手続きを案内されることもあります
ご本人であることを確認する
ご家族が代わって請求する場合は、法定代理人であるか、ご本人からの委任が必要です
事業者が内容を確認する
第三者の情報が含まれていないかを見ます
遅滞なく開示される
一部が伏せられる場合は、その理由の説明を求めることができます
開示を断れるのは、この3つの場合だけです
- 本人または第三者の生命・身体・財産その他の権利利益を害するおそれがある
- 事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある
- 他の法令に違反することとなる
一部だけが黒く塗られて出てくることもありますが、それは隠しているのではなく、第三者の情報を守るための処理であることがほとんどです。理由の説明を求めることもできます。
ご家族が見たいとき|代理と遺族で扱いが違います
ここが最も誤解の多いところです。
開示を請求できるのはご本人です。ご家族であっても、当然に見られるわけではありません。ご家族が代わって請求する場合は、成年後見人などの法定代理人であるか、ご本人からの委任が必要になります。同居しているというだけでは足りません。
一方で、亡くなった方の記録はまた別の扱いになります。死者の情報は個人情報保護法の対象外とされており、遺族からの求めには「診療情報の提供等に関する指針」にもとづいて対応することとされています。ガイダンスでは、ご本人の生前の意思や名誉を十分に尊重しつつ、特段の配慮が求められるとされています。
つまり、亡くなったから見られない、というわけでも、遺族なら必ず見られる、というわけでもありません。 事業者が生前のご本人の意思を踏まえて判断することになります。
手数料と、記録が残っている期間
開示にあたって、事業者は手数料を徴収できます。ただし実費を勘案して合理的であると認められる範囲内に限られます。コピー代や郵送代の実費程度が想定されており、高額な請求は認められません。
保存期間にも限りがあります。訪問看護計画書と報告書は2年間の保存が義務づけられています。それより前の記録は、事業者の判断で廃棄されている可能性があります。見たい記録がある場合は、早めに申し出るほうが確実です。
請求の前に、まず聞いてみるという方法もあります
制度の話をしてきましたが、実際には正式な開示請求まで進まずに解決することがほとんどです。
「先週の血圧はどうでしたか」「前回、母は何か話していましたか」——こうした質問には、その場で答えられます。記録を見たい理由が「日々の様子を知りたい」ということであれば、訪問のたびに口頭で確認したり、連絡ノートを置いていただいたりするほうが早く、続けやすい方法です。
正式な手続きが必要になるのは、事実関係をはっきりさせたい場合や、他の事業所・医療機関に情報を渡す必要がある場合です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、記録の内容について聞かれること自体を、遠慮していただく必要はないと考えています。制度上むずかしいと思われることでも、まずはご相談ください。
まとめ
訪問看護の記録は、ご本人が求めれば遅滞なく開示しなければならないと法律で定められています。断れるのは、権利利益を害するおそれ・業務への著しい支障・法令違反の3つの場合に限られます。
ご家族が代わって請求するには、法定代理人であるかご本人からの委任が必要です。亡くなった方の記録は個人情報保護法の対象外で、生前のご本人の意思を尊重しながら別の指針にもとづいて扱われます。
そして計画書と報告書の保存期間は2年です。気になる記録があれば、早めにお申し出ください。
私たちは、記録を見せられないものとは考えていません。どうすればご本人とご家族が納得して療養を続けられるかを、一緒に考えさせてください。
よくある質問
Q. 訪問看護の記録を見たいのですが、どこに言えばよいですか。
A. まずは担当の看護師か、ステーションの管理者にお申し出ください。書面での手続きを求められることもありますが、それも法律にもとづいた正当な手順です。
Q. 家族ですが、本人に代わって記録を見られますか。
A. 成年後見人などの法定代理人であるか、ご本人からの委任があれば請求できます。同居しているというだけでは足りません。
Q. 開示を断られることはありますか。
A. あります。本人または第三者の権利利益を害するおそれがある場合、業務の適正な実施に著しい支障がある場合、他の法令に違反する場合の3つです。理由の説明を求めることはできます。
Q. 費用はかかりますか。
A. 事業者は手数料を徴収できますが、実費を勘案して合理的と認められる範囲に限られます。コピー代や郵送代の実費程度が想定されています。
Q. 何年前の記録まで残っていますか。
A. 訪問看護計画書と報告書は2年間の保存が義務づけられています。それ以前のものは廃棄されている可能性があるため、早めにお申し出ください。
参考資料
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
- 同「ガイダンスに関するQ&A(事例集)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/iryoukaigo_guidance_QA/
- 厚生労働省「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html
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