この記事の要点(30秒でわかる)
- 東京は9月から11月で朝の気温が平年値で約11℃下がります
- 下がるのは外より先に、廊下・脱衣所・寝室など家の中です
- 秋は血圧・呼吸・転倒の3つが変わりやすく、備えるなら10月です
- 朝晩の血圧と体重の記録が、主治医の判断を助ける材料になります
朝、起こしに行ったときに「手が冷たい」と感じる。日中は暑いのに、夕方になると急に寒がる。秋の入り口に、ご家族がそう気づく場面があります。ご本人は「もう秋だから」と言うだけで、体調の変化として口に出さないことも少なくありません。
秋の冷え込みは、夏の暑さのように分かりやすい形では来ません。気温がゆっくり下がるぶん、暖房を出すのも寝具を替えるのも後回しになりがちです。その「間に合っていない期間」に、血圧や呼吸、転倒のリスクが動きます。
訪問看護では、看護師がご自宅の室温や寝具、着ているものを見ながら、血圧や呼吸の状態と合わせて確認していきます。すえひろ訪問看護ステーションは、「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」という姿勢でご家族の不安に向き合っています。この記事では、秋の寒暖差で体に何が起きるのか、そしてご家族が10月のうちにできる備えをお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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秋の寒暖差はどのくらい?東京の平年値で見る9月から11月
秋の寒暖差の実態は、1日の中の差よりも「2か月で一気に下がる」ことにあります。気象庁の東京の平年値では、朝の最低気温は9月の20.3℃から11月の8.8℃へ、約11.5℃下がります。体が慣れる間もなく、季節が入れ替わります。
気象庁の平年値(統計期間1991〜2020年)では、東京の日平均気温は9月が23.3℃、10月が18.0℃、11月が12.5℃です(出典:気象庁 過去の気象データ 平年値)。ひと月ごとに5℃前後ずつ下がる計算です。足立区に気象庁の観測地点はないため、ここでは東京の平年値を目安としています。
春との違いは、変化の向きです。春は備えが遅れても、体への負担は軽くなる方向に進みます。秋は逆で、遅れるほど負担が増えていきます。同じ「気温差」でも対策の考え方が変わる点が、初夏の在宅療養で気をつけたいことをまとめた記事との違いです。
なお、大きな気温差で体がだるくなる状態は「寒暖差疲労」と呼ばれることがあります。奈良県医師会は、寒暖差で自律神経の働きが乱れ、肩こりや頭痛、倦怠感などが起こると解説しています(出典:奈良県医師会)。正式な病名ではないため、不調が続くときは自己判断せず主治医にご相談ください。
東京の秋は、朝の気温が2か月で約11℃下がります
気象庁 東京の平年値(統計期間1991〜2020年)
9月
10月
11月
朝の最低気温は、9月の20.3℃から11月の8.8℃へ、約11.5℃下がります。備えるなら、下がりきる前の10月です。
出典:気象庁 過去の気象データ 平年値(東京・1991〜2020年)/足立区に気象庁の観測地点はないため東京の値を目安としています
朝晩の冷え込みで体に起きること|血圧と血管の変化
冷え込みで最初に動くのは血圧です。寒さを感じると血管が縮み、血液を送り出す圧力が上がります。もともと血圧の高い方や、心臓・血管の持病がある方では、この時期の変化が体への負担になりやすいと考えられています。
家の中の温度が体に影響することは、国内の調査でも確かめられています。国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進調査事業では、断熱改修によって室温が上がると、居住者の起床時の最高血圧が有意に下がることが報告されました(出典:国土交通省 社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 資料4「住宅の温熱環境と健康の関連」2019年)。室温は、快適さだけの問題ではありません。
季節そのものの影響も数字に表れています。厚生労働省の人口動態統計(2014年)をもとにした集計では、12月から3月の月平均死亡者数は4月から11月に比べて全国で17.5%多く、東京都では約16%多くなっています(出典:同上)。この増加は12月に突然始まるものではなく、気温が下がり始める秋から負担が積み上がっていきます。
心臓についても、国立循環器病研究センターが2005年から2008年の約19万6千件の心原性心停止のデータから、10月から4月に発生が多いことを報告しています(出典:国立循環器病研究センター 2011年公表)。少し前のデータですが、寒い時期に心臓への負担が増える傾向を示しています。
寒さが血圧を上げるしくみと、手を打てる場所
できること:朝いちばんに居間を暖める。起きる前にタイマーで暖房を入れておく
できること:首・手首・足首を覆う。上着より、重ね着で調整できる形にする
できること:朝と晩、同じ条件で血圧を測って記録する。その日の室温も並べて書く
できること:入浴前に脱衣所と浴室を暖める。湯温41度以下・10分までを目安にする
参考:国土交通省 社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 資料4「住宅の温熱環境と健康の関連」(2019年)/消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」(2020年)
秋に変化が出やすい3つのこと|呼吸・感染・水分
秋に注意したいのは、呼吸器の症状、感染症の流行入り、そして水分不足の3つです。いずれも夏とは違う理由で起こります。持病をお持ちの方ほど、涼しくなってからの変化を「季節のせい」で片づけないことが大切です。
呼吸器では、秋は気温差とアレルゲンが重なります。独立行政法人環境再生保全機構は、10月から11月は1日の温度差が激しくなるためかぜをひきやすく、室内のダニなどのアレルゲン量も春と秋がピークになると説明しています(出典:環境再生保全機構 成人ぜん息Q&A)。慢性閉塞性肺疾患(COPD)をお持ちの方では、呼吸器の感染が症状の悪化につながることが日本呼吸器学会のガイドラインでも挙げられています。
感染症の流行も、そう遠くありません。国立健康危機管理研究機構によると、日本のインフルエンザは毎年11月下旬から12月上旬頃に流行が始まります(出典:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)。うがい・手洗いの習慣を立て直すなら10月です。予防接種の受け方は、かかりつけの医療機関にご確認ください。
見落とされやすいのが水分です。涼しくなると汗をかいた実感が減り、喉の渇きも感じにくくなるため、飲む量が自然に落ちます。見分け方は高齢者のかくれ脱水の見つけ方をまとめた記事でご説明しています。食欲が戻る季節でもあるので、汁物やお茶を食事に組み込むと続けやすくなります。
秋に変化が出やすい3つのこと
| 分野 | 秋に起きやすいこと | きっかけ | 家庭でできる手当て |
|---|---|---|---|
| 呼吸器 | せき・息苦しさが増える。持病の症状が動きやすい | 1日の温度差、室内のダニなどのアレルゲン、かぜ | 寝具を干して整える。室温と湿度を安定させる。うがい・手洗いを立て直す |
| 感染症 | インフルエンザの流行が11月下旬から12月上旬に始まる | 人の出入り、乾燥、体力の低下 | 流行入りの前に体調を整える。予防接種の受け方はかかりつけへ確認する |
| 水分 | 飲む量が自然に減り、不足に気づきにくい | 汗の実感が減る。喉の渇きを感じにくい | 汁物やお茶を食事に組み込む。飲んだ量を1日単位で見る |
参考:独立行政法人環境再生保全機構 成人ぜん息Q&A/国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト(インフルエンザ)/日本呼吸器学会 COPD診断と治療のためのガイドライン
家の中でいちばん寒いのは脱衣所と廊下です
冷え込みの本番は屋外ではなく家の中です。特に脱衣所・廊下・寝室は暖房が届きにくく、居間との差が大きくなります。この温度差が、入浴前後の血圧の急な変動につながります。
実際の室温は、思っているより低いことが分かっています。国土交通省の全国調査(改修前 約2,300軒・約4,100人)では、冬季の在宅中の居間の平均室温が16.7℃、就寝中の寝室が12.6℃、在宅中の脱衣所が12.8℃でした(出典:国土交通省 住宅宅地分科会 資料4)。平均室温が18℃を下回る世帯は、寝室・脱衣所ともに約9割にのぼります。
なぜ18℃かというと、WHO(世界保健機関)が2018年に公表した「住宅と健康に関するガイドライン」で、冬季の室内温度18℃以上を強く勧告しているためです。高齢者やお子さんには、さらに暖かい環境が望ましいとされています(出典:WHO Housing and health guidelines 2018)。まずは寝室と脱衣所に温度計を置いてみてください。
入浴については、消費者庁が5つの注意点を示しています。入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41度以下で10分までを目安にする、浴槽から急に立ち上がらない、食後すぐ・飲酒後・服薬後の入浴を避ける、入浴前に同居の方へ一声かける、の5点です(出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」2020年)。浴槽での事故は11月から4月に多く発生しています。
秋のうちに整える、家の温度チェックリスト
WHOは冬季の室内温度18℃以上を強く勧告しています。まず数字を見るところから始めてください
参考:WHO Housing and health guidelines(2018年)/国土交通省 住宅宅地分科会 資料4(2019年)/消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」(2020年)
秋に転倒が増えやすい理由|暗さ・厚着・寝具
秋の転倒には、この季節ならではの理由があります。日が暮れるのが早くなること、着るものが重くなること、寝具が変わること。どれも夏にはなかった条件で、体の動きを少しずつ変えていきます。麻痺や歩行の不安がある方の環境整備は、脳卒中で退院された方の転倒予防をまとめた記事でご紹介しています。
まず、日照時間の変化です。国立天文台によると、2026年の東京の日の入りは9月1日が18時09分、11月30日が16時28分で、3か月で約1時間40分早くなります(出典:国立天文台 暦計算室)。夕方の同じ時刻でも、9月と11月では部屋の明るさが違います。廊下やトイレへの動線に、早めに照明を足しておくと安心です。
転倒そのものの多さも数字に表れています。東京消防庁の集計では、令和6年(2024年)に日常生活の事故で救急搬送された高齢者は98,056人で、種別では「ころぶ」が8割以上を占めました。その多くは住んでいる場所で起きており、初診時に中等症以上と判断された割合は約4割です(出典:東京消防庁 救急搬送データからみる高齢者の事故)。
着るものと寝具も見直しどきです。厚手の上着は足元の見え方を変え、毛布や掛け布団が増えると、夜中にトイレへ起きるときの動作が重くなります。
秋に転倒が増えやすい4つの理由と、見直すところ
| 秋特有の条件 | 起きやすい場面 | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 暗さ | 夕方の廊下やトイレへの移動。同じ時刻でも9月と11月では明るさが違う | 動線に照明を足す。足元灯を置く。カーテンを早めに閉めすぎない |
| 厚着 | 上着を羽織って立ち上がるとき。裾が長いものを着ているとき | 裾丈と袖丈を確認する。重ね着で調整できる形にする |
| 寝具 | 夜中にトイレへ起きるとき。掛け物が重く、動作が重くなる | 軽くて暖かい寝具に替える。ベッド周りに手をつける場所をつくる |
| 暖房器具 | 器具を出した直後。コードや器具本体が動線に入り込む | コードの通り道を決める。器具の前後に物を置かない |
参考:国立天文台 暦計算室(東京の日の出入り 2026年)/東京消防庁 救急搬送データからみる高齢者の事故(令和6年)
血圧はいつ測る?秋の記録が主治医の判断を助けます
秋に血圧を測るなら、朝と晩を同じ条件で記録することが役に立ちます。1回の数字より、下がっていく気温の中でどう動いているかという「流れ」のほうが、主治医が薬や生活の調整を考える材料になります。
一般に推奨されている測り方は、朝は起床後1時間以内、トイレを済ませてから、薬を飲む前・朝食の前に、いすに座って1〜2分落ち着いてから測る方法です。晩は就寝前に同じように測ります。回数や目標の数値は持病や薬によって変わりますので、主治医の指示を優先してください。
秋に朝の血圧が上がりやすいのは、起きたときの部屋が冷えているからです。国土交通省の調査でも、就寝中の寝室の平均室温は12.6℃と低く、起床時の室温が高いほど血圧が低いという関係が報告されています(出典:国土交通省 住宅宅地分科会 資料4)。記録に「その日の室温」を並べて書くと、原因を切り分けやすくなります。心臓の持病がある方は体重も一緒に記録し、息切れやむくみと重なるときは次の受診を待たずにご連絡ください。
秋の血圧、いつ・どう測る
回数や目標の数値は持病や薬によって変わります。主治医の指示を優先してください
朝
晩
1回の数字ではなく、気温が下がっていく中での「流れ」が主治医の判断材料になります。息切れやむくみ、体重の増加が重なるときは、次の受診を待たずにご連絡ください。
ご家族が気づける「いつもと違う」と、訪問看護でできること
秋の不調は、はっきりした症状より先に「いつもと違う様子」として現れることがあります。毎日そばにいるご家族の違和感は、数値に出る前のサインであることも少なくありません。
見ていただきたいのは、いつもの生活と比べた変化です。朝起きるのが遅くなった、日中うとうとする時間が増えた、食事や水分の量が減った、玄関で息が上がるようになった、足のむくみが出てきた。こうした変化がいくつか重なるときは、季節のせいと決めつけずに一度共有してください。12月から3月の月平均死亡者数は他の月より全国で17.5%多く(出典:厚生労働省 人口動態統計2014年をもとにした国土交通省 住宅宅地分科会 資料4)、秋のうちの気づきがそのまま冬の備えになります。
判断に迷いやすいのが、どこで受診を考えるかという線引きです。強い息苦しさ、胸の痛み、意識がぼんやりする、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らないといった様子が見られる場合は、迷わず救急に相談してください。それ以外の「なんとなくおかしい」は、主治医や訪問看護師にお伝えいただければ一緒に整理できます。
訪問看護では、看護師がご自宅にうかがい、血圧や呼吸、むくみ、皮膚の状態を確認しながら、室温や寝具、着るものの状況も合わせて見ていきます。医師への報告や相談の橋渡しも役割のひとつです。「これは相談していいことなのか」という段階でのご連絡も歓迎しています。一緒に考えさせてください。
秋にご家族が確認したい「いつもと違う」
いくつか重なるときは、季節のせいと決めつけずに一度ご相談ください
すぐに救急へ相談してください
強い息苦しさ、胸の痛み、意識がぼんやりする、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らない。こうした様子が見られるときは、記録や連絡を待たずに救急にご相談ください。
まとめ
秋の寒暖差は、気象庁の東京の平年値で見ると、朝の気温が9月から11月にかけて約11.5℃下がる大きな変化です。下がるのは屋外だけでなく、廊下や脱衣所、寝室といった家の中でもあり、この温度差が血圧や呼吸、転倒のリスクにつながります。備えるなら、寒さが本格化する前の10月が動きやすい時期です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、訪問看護師が体の状態と暮らしの環境を合わせて見ながら、その方の生活に無理のない形で調整を一緒に考えます。数値を整えることより、その家で続けられる方法を見つけることを大切にしています。
「季節の変わり目でいつも体調を崩す」「暖房をいつから使えばいいのか分からない」。そう感じたら、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 暖房はいつから使い始めるのがよいですか?
決まった日付はありませんが、室温を目安にすると判断しやすくなります。WHOは冬季の室内温度18℃以上を強く勧告し、高齢者にはより暖かい環境が望ましいとしています。寝室と脱衣所に温度計を置き、18℃を下回る日が出てきたら使い始める決め方が現実的です。
Q2. 血圧が朝だけ高いのですが、受診したほうがよいですか?
まずは同じ条件で数日間記録し、その記録を主治医にお見せください。朝の血圧は起床時の室温にも左右されるため、1回の数値だけでは判断が難しいためです。強い頭痛や息苦しさ、しびれなどを伴う場合は、記録を待たずに医療機関へご相談ください。
Q3. 秋は転倒が増えるというのは本当ですか?
季節ごとの統計は確認できていませんが、日が暮れるのが早くなる、厚着や寝具で動きが変わるなど、秋特有の条件はあります。東京消防庁の令和6年の集計では、日常生活事故で救急搬送された高齢者98,056人のうち「ころぶ」が8割以上を占め、その多くが住宅内でした。照明と足元の見直しから始めてみてください。
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