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透析患者の在宅リハビリ|通院で体力を消耗する方が、自宅でできる運動と訪問PTの役割

週3回の透析通院は、体への負担が想像以上に大きいものです。「帰ってきたら動けない」「少しずつ脚が細くなってきた気がする」—そんな不安を抱えている利用者様やご家族は、決して少なくありません。しかし、透析をしながらでも、体力と筋力を保つための取り組みは確かに存在します。

透析患者様の筋力低下は、医学的に証明されたリスクです。適切な運動リハビリを取り入れることで、日常生活の動作を維持し、生活の質を守ることができます。在宅での自己管理と、訪問理学療法士(PT)による専門的なサポートを組み合わせることが、今もっとも現実的な対策として注目されています。

すえひろ訪問看護ステーションでは、透析を受けながら在宅生活を送る利用者様と共に、「できることを一緒に考える」姿勢で関わってきました。この記事では、透析患者様が在宅で実践できる運動の方法や注意点、そして訪問PTがどのように役立てるかを、専門職の視点からわかりやすくお伝えします。

透析患者に運動リハビリが必要な理由|透析と筋力低下の関係

透析患者様の筋力低下は、透析そのものの影響と、活動量の減少が重なって起こります。日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」によれば、国内の透析患者数は約33万7,000人で、平均年齢は70.27歳です。高齢化が進む中、筋肉量や体力の維持は在宅生活の継続にとって欠かせない課題となっています。

サルコペニア(筋肉減少症)有病率の比較
一般高齢者
6〜12%
透析患者
12.7〜33.7%
※複数の研究報告に基づく有病率の範囲。診断基準や対象集団により異なる場合があります。

透析患者様のサルコペニア(筋肉減少症)の有病率は12.7〜33.7%との報告があり、一般高齢者(6〜12%程度)と比べて著しく高いとされています。透析中に血液とともにアミノ酸や栄養素が失われること、透析後の疲労により活動量が減ること、透析関連の合併症(貧血・低栄養・心血管疾患など)が重なることが、主な原因です。

こうした背景から、日本腎臓リハビリテーション学会は2018年に「腎臓リハビリテーションガイドライン」を発刊し、透析期においても運動療法を推奨・提案すると明記しました。「透析しているから運動は控えるべき」という考えは、現在の医学的エビデンスとは一致しません。適切な強度で継続的に体を動かすことが、体力維持と合併症予防に有効と考えられています。

透析日と非透析日|それぞれ何に注意して動くべきか

透析患者様が運動を行う際は、透析日か非透析日かによって、体の状態が大きく異なります。日ごとのリズムを理解した上で運動に取り組むことが、安全な体力維持の基本です。

透析日
透析中

足首の屈伸・つま先上げなど
軽い運動のみ(医療スタッフ管理下)
透析直後

血圧・体液が不安定。
安静を優先
帰宅後

疲労・血圧変動が続く場合あり。
激しい運動は避ける
非透析日
起床後

血圧・体調を確認してから
運動を開始
日中

ウォーキング・椅子スクワット・
かかと上げなどを実施
透析前日

老廃物・水分が蓄積傾向。
過度な運動は控えめに

透析日について

透析当日は、透析によって体内の水分・電解質・老廃物が急速に変動するため、血圧や心拍数が不安定になりやすい時間帯があります。透析後は特に疲労感が強く、体への負担が大きいため、激しい運動は避けることが基本です。透析中に足首の屈伸運動や軽いつま先上げなどを行う「透析中運動」は、医療スタッフの管理のもとで行われるもので、在宅での自己判断による運動とは区別して考えてください。

非透析日について

非透析日は、体調が比較的安定しており、まとまった運動時間を確保しやすいため、運動療法に適した日です。ただし、透析を翌日に控えた日(透析前日)は、体内の老廃物や水分が蓄積している状態のため、過度な運動はかえって体への負担となることがあります。週3回透析を受けている方であれば、透析翌日から次の透析の前日の間が、最も運動しやすいタイミングと言えます。

運動を始める前には必ず体調と血圧を確認し、収縮期血圧が180mmHg以上の場合や、強い倦怠感・動悸・息切れがある場合は運動を中止してください。

自宅でできる透析患者向けリハビリ運動|強度・頻度・禁忌の目安

透析患者様が自宅で実践できる運動は、大きく「有酸素運動」「レジスタンス運動(筋トレ)」「ストレッチ」の3つです。いずれも、「話しながらできるくらいのゆっくりした強度」を目安に行うことが推奨されています。

自宅でできる透析患者向け運動メニュー
1
ウォーキング
週3〜5回・10〜30分
「話しながら歩ける」ペースで。室内の足踏みでも可。
2
椅子スクワット
週2〜3回・10回×1〜3セット
ゆっくり立って・ゆっくり座る。手すりを使っても可。
3
かかと上げ(ヒールレイズ)
週2〜3回・10回×1〜2セット
立位でかかとをゆっくり上下。バランスが不安な方は壁に手をついて。
4
ストレッチ
毎日・各部位20〜30秒
ふくらはぎ・太もも・股関節を呼吸を止めずにゆっくり伸ばす。

有酸素運動

ウォーキングが中心です。最初は10分程度から始め、無理なく20〜30分を目指します。週3〜5回が目標ですが、まず「続けられる頻度」から始めることが大切です。室内でのその場足踏みや、固定式自転車こぎ(エアロバイク)も安全に行いやすい選択肢です。

レジスタンス運動(筋力トレーニング)

下肢の筋力維持のために、椅子からのゆっくりした立ち上がり(椅子スクワット)や、かかと上げ(ヒールレイズ)が効果的です。10回を1セットとして、週2〜3回行うことが推奨されています。無理のない範囲で1〜3セット行いましょう。

ストレッチ

呼吸を止めずに、「気持ちよい」と感じる程度に筋肉を伸ばします。ふくらはぎ・太もも・股関節まわりを中心に、各部位20〜30秒を目安にほぐします。

絶対に守ってほしい禁忌・注意点

シャント(内シャント)が作られている腕への強い負荷や締め付けは避けてください。血圧が収縮期200mmHg以上、または拡張期120mmHg以上の場合は運動しないでください。運動中に胸痛・強い動悸・めまい・吐き気が出た場合は直ちに中止し、医療スタッフに連絡してください。

訪問リハビリは透析患者にも対応できるか?(条件と流れ)

訪問リハビリテーションは、透析患者様にも利用できるサービスです。「透析に通っているからリハビリは無理」と思われている方も多いのですが、在宅でのリハビリ支援は透析患者様にとっても対象となります。

訪問リハビリ利用開始までの流れ
1
主治医(透析クリニックの医師)に相談 「在宅でリハビリを受けたい」と伝え、指示書の必要性を確認する
2
リハビリテーション指示書を発行 介護保険:3か月に1回/医療保険:月1回
3
ケアマネジャーまたは訪問看護ステーションへ依頼 要介護認定をお持ちの方はケアマネジャーへ。認定なしの方は訪問看護ステーションへ直接相談も可能。
4
担当PTによる初回アセスメント 体力・生活状況・透析スケジュールを確認し、個別プログラムを作成
5
訪問リハビリ開始 週1〜2回を目安に自宅でリハビリを受けられます

利用できる保険の種類

65歳以上で要介護認定を受けている方は、原則として介護保険での訪問リハビリテーションが利用できます。40〜64歳の方の場合、介護保険の対象は16の特定疾病に限られます。透析患者様の原疾患が糖尿病性腎症の方は「糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症」として対象になりえますが、すべての透析患者様が自動的に対象となるわけではありません。詳しくは担当のケアマネジャーや主治医にご相談ください。要介護認定を受けていない方や40歳未満の方は、医療保険での訪問リハビリが対象となります。

利用の条件と必要な手続き

訪問リハビリを利用するには、主治医(透析クリニックの医師など)による「リハビリテーション指示書」の発行が必要です。介護保険では3か月に1回、医療保険では月1回の発行が求められます。訪問看護ステーションを通じた理学療法士・作業療法士によるリハビリは「訪問看護Ⅰ5」として算定されるケースも多く、まずは担当ケアマネジャーや訪問看護ステーションへご相談ください。

利用頻度の目安

介護保険の場合、訪問リハビリは1回20分・週6回以内が上限です。一般的には週1〜2回から始め、利用者様の体力や生活状況に応じて調整していきます。

訪問PTが在宅での生活動作・体力維持にどう関わるか

訪問理学療法士(PT)の役割は、単に運動メニューを指導するだけではありません。利用者様の生活環境・体力・透析状況を総合的に把握した上で、「その方に合った動き方」を一緒に作り上げることが本来の役割です。

訪問PTが在宅でできること
リスク評価
血圧・体力・転倒リスクを評価し、安全な運動の範囲を確認
個別プログラム作成
透析スケジュールと体調に合わせた、その方だけの運動メニューを作成
ADL(生活動作)改善
立ち上がり・歩行・入浴など、日常の動作を安全に行う練習
住環境のアドバイス
手すりの位置・家具の配置など、転倒を防ぐ住まいの工夫を提案
ご家族への指導
介助の方法・声かけの仕方を、ご家族の前で直接説明・練習
透析クリニックとの連携
体調の変化を共有し、医療チームと連携した安全管理を実施

アセスメントと個別プログラムの作成

初回訪問では、歩行能力・バランス・筋力・血圧変動の傾向・透析スケジュールを確認します。透析日と非透析日のそれぞれの体調の変化を把握した上で、安全に続けられる運動プログラムを一人ひとりに合わせて作成します。

日常生活動作(ADL)の改善サポート

「トイレまで歩くのがつらい」「入浴のときにふらつく」といった日常の不安も、訪問PTの重要な支援対象です。立ち上がり動作の練習・手すりの活用方法・転倒予防のための筋力訓練など、生活の中で実際に起きている困りごとに直接関わります。

ご家族への指導と連携

ご家族が運動のサポートをできるよう、介助方法や声かけの仕方をその場でお伝えします。透析クリニックの医療スタッフとの情報共有も行い、利用者様の体調に変化があった際にはすぐに連携できる体制を整えます。

透析を続けながら在宅生活を送ることは、体力と気力の両方を必要とする日々の積み重ねです。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

まとめ|透析患者様の体力を守るために、今からできること

透析患者様の筋力低下とサルコペニアのリスクは、医学的に明確に示されています。しかし、透析を受けながらでも、適切な運動を続けることで体力を維持し、日常生活の質を守ることは十分に可能です。透析日と非透析日でのリズムを理解し、シャントへの注意や血圧管理を守りながら、「続けられる運動」を積み上げていくことが大切です。

すえひろ訪問看護ステーションでは、「透析をしているから仕方ない」と諦めてほしくないと考えています。訪問PTが在宅に伺い、利用者様の生活の中でできる動きを一緒に見つけ、安全に体力を守るためのお手伝いをしています。透析のある生活の中でも、「もう少し動けるようになりたい」という思いがあれば、一緒に考えさせてください。

在宅でのリハビリに不安がある方、訪問PTの利用を検討されている方、まずはお気軽にご相談いただければと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. 透析をしていると、運動は禁止されているのですか?

透析をしているからといって、運動が禁止されているわけではありません。日本腎臓リハビリテーション学会のガイドライン(2018年)では、透析期においても運動療法が推奨されています。ただし、血圧やシャントの状態に注意しながら、主治医の指示のもとで行うことが大切です。

Q2. 透析の日は運動をしない方がよいですか?

透析当日、特に透析後は体の状態が不安定になりやすいため、激しい運動は避けることが基本です。非透析日で、体調が安定しているタイミングに運動を行うことを推奨します。

Q3. 訪問リハビリを使うには何が必要ですか?

まず主治医(透析クリニックの医師など)に「在宅でリハビリを受けたい」と相談し、リハビリテーション指示書を発行してもらう必要があります。介護保険をお持ちの方は担当ケアマネジャーへ、お持ちでない方は医療保険での利用が可能な場合があります。訪問看護ステーションへ直接ご相談いただくことも一つの方法です。

Q4. シャント(内シャント)がある側の腕は、どんな運動でも避けるべきですか?

シャント側の腕に強い圧迫や過度な負荷をかける運動は避けてください。ただし、シャント側の手を軽く握ったり開いたりする「掌握運動」はシャント血管の発達を助けるとされており、医療スタッフの指示に従って行うことができます。

Q5. 自宅でどんな運動から始めればよいですか?

椅子からのゆっくりとした立ち上がり(椅子スクワット)と、かかと上げ(ヒールレイズ)がおすすめです。各10回を1セットから始め、無理なく継続することを優先してください。運動の前後には必ず血圧を確認し、体調が優れないときは休むことも大切です。

訪問看護のご相談は、すえひろへ

「制度上難しいかも」と思われることでも、まずはご相談ください。
専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

📞 お電話でのご相談:03-5888-6375(平日 9:00〜17:00)

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