この記事の要点(30秒でわかる)
- 発達障害(ASD・ADHD)のあるお子さんも、主治医の指示書があれば医療保険で訪問看護を利用できます
- 訪問看護師は生活リズムの調整・不安への対処・外出への段階的チャレンジを自宅で支えます
- ご家族には「伝え方・ほめ方」など日常の関わり方を一緒に考え、具体的に助言します
- 東京都では高校3年生相当まで医療費助成があり、自己負担を抑えて利用できます
「何度言っても支度が進まない」「学校の集団生活になじめず、家でかんしゃくが増えた」。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)のあるお子さんを育てるご家族から、こうした悩みをよくお聞きします。通院や療育には通っているけれど、毎日の生活の困りごとは家庭の中で起きる。そのギャップに疲れてしまう保護者の方は少なくありません。
実は、発達特性のあるお子さんの「家庭での毎日」を支える仕組みとして、訪問看護があります。看護師がご自宅に伺い、お子さんの特性に合わせて生活リズムや不安への対処を一緒に整えていく支援です。すえひろ訪問看護ステーションでも、子ども支援の専任チームが発達特性のあるお子さんとご家族に伺っています。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談いただければ一緒に考えさせていただきます。
この記事では、発達障害のあるお子さんに訪問看護ができること、そしてご家族の関わり方のヒントをわかりやすくお伝えします。
目次
発達障害(ASD・ADHD)のあるお子さんも訪問看護を利用できます
訪問看護は高齢の方だけのサービスではありません。ASDやADHDなど発達特性のあるお子さんも、主治医が必要と認めて指示書を交付すれば、医療保険で看護師の訪問を受けられます。通院の合間の「家庭での毎日」を専門職が支える仕組みです。
発達障害は、発達障害者支援法で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害」と定義されています(出典:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害者支援法の解説)。生まれつきの脳の働き方の違いによるもので、しつけや愛情不足が原因ではありません。
決して特別なことではない、という点も知っていただきたい事実です。文部科学省の2022年調査では、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に、学習や行動の面で特別な教育的支援を必要とする可能性があると報告されました(出典:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」2022年)。35人学級なら1クラスに約3人いる計算になります。
発達障害のあるお子さんへの訪問看護は、精神科訪問看護という枠組みで行われます。精神科の主治医が「精神科訪問看護指示書」を交付し、その指示に基づいて看護師が定期的にご自宅へ伺います。診断名そのものよりも、「生活の中でどんな困りごとがあるか」が支援の出発点です。
訪問看護の対象となるお子さんの例
ASD・ADHDなどの発達特性があり、家庭での過ごし方に困りごとがある
不登校・行きしぶりが続き、生活が家中心になっている
昼夜逆転など生活リズムの乱れや、強い不安・緊張がある
かんしゃく・パニックへの対応に、ご家族が悩み疲れている
※主治医が必要と判断し、精神科訪問看護指示書を交付した場合に利用できます
訪問看護師がご自宅で行うこと|お子さんへの5つの支援
訪問看護師がご自宅で行うのは、お子さんとの安心できる関係づくりを土台に、生活リズムの調整、不安への対処スキルの練習、外出や活動への段階的なチャレンジを支えることです。医療処置よりも、「毎日の暮らしを整える」関わりが中心になります。
最初に大切にするのは、お子さんが「この人なら大丈夫」と感じられる関係づくりです。好きな遊びやゲームの話から始め、無理に話をさせることはしません。発達特性のあるお子さんは初対面の大人に強い緊張を抱きやすいため、関係づくりそのものが支援の第一歩です。
関係ができてきたら、生活リズムの調整に取り組みます。昼夜逆転しているお子さんと「まず昼に一度起きてみる」目標を一緒に決め、睡眠や食事の記録を見ながら少しずつ整えます。あわせて、不安やイライラが高まったときに自分を落ち着かせる方法(深呼吸、その場を離れる、好きな感触のものに触れるなど)を、遊びを交えて練習します。
外出が苦手なお子さんには、段階的なチャレンジを設定します。玄関まで出る、家の前を歩く、コンビニまで行ってみる、という小さなステップを本人と相談しながら進めます。すえひろ訪問看護ステーションの子ども支援チームは、「会話ができた」「昼に起きられた」という小さな変化を積み重ねることを何より大切にしています。
医療保険による精神科訪問看護は、原則として週3日まで利用できます(出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」平成20年告示第67号)。実際の頻度は主治医の指示とお子さんの状態に合わせて決まり、週1回から始める方も多くいらっしゃいます。
訪問看護師がご自宅で行う5つの支援
安心できる関係づくり
好きな遊びや話題から始め、無理に話をさせません
生活リズムの調整
睡眠・食事の記録を見ながら少しずつ整えます
不安への対処スキルの練習
深呼吸やクールダウンの方法を遊びを交えて練習します
外出・活動への段階的チャレンジ
玄関まで→家の前→近くのお店、と小さな一歩を重ねます
主治医・学校・放課後等デイサービスとの連携
家庭での様子を共有し、関わり方を支援者全体でそろえます
訪問看護のもう一つの役割が、多職種連携の橋渡しです。看護師は訪問のたびに主治医へ報告書を提出し、診察室では見えにくい家庭での様子を共有します。ご家族の同意のもと、学校や放課後等デイサービスと情報をすり合わせることで、お子さんへの関わり方を支援者全体でそろえていけます。
ご家族の関わり方|訪問看護師と一緒に考えられます
ご家族への助言も、訪問看護の大切な支援内容です。お子さんの特性に合った「伝え方・ほめ方・環境の整え方」を、ご家庭の実際の場面に沿って一緒に考えます。正しい知識を学ぶことで、ご家族の負担感が軽くなることもわかってきています。
発達特性のあるお子さんへの関わり方には、いくつかの共通するコツがあります。指示は短く一つずつ伝える、「ちゃんとして」ではなく「靴を靴箱に入れよう」と具体的に言う、できたらその場ですぐほめる、予定の変更は前もって視覚的に伝える、などです。訪問看護師は実際の生活場面を見ているからこそ、そのご家庭に合う形で提案できます。
こうした関わり方を体系的に学ぶ方法として、ペアレント・トレーニングがあります。ペアレント・トレーニングとは、行動の仕組みに基づいてわが子への関わり方を学ぶ保護者向けプログラムで、国の発達障害者支援施策の一つに位置づけられています(出典:厚生労働省「ペアレント・トレーニング支援者用マニュアル」2021年)。訪問看護師の助言も、この考え方を踏まえて行われます。
そして何より、頑張っているご家族自身が休めることも大切です。「私の育て方が悪かったのでは」と自分を責める保護者の方に、私たちは何度も出会ってきました。発達特性は育て方のせいではありません。困りごとを一人で抱え込まず、訪問のたびに気持ちを話していただくことも、立派なケアの一つです。
伝わりやすい声かけの言い換え例
早くして!
あと5分で出発だよ
ちゃんと片づけて
本は本棚、おもちゃは箱に入れよう
なんでできないの
ここまでできたね、次はこれをやろう
利用の流れと費用の目安|医療費助成で負担を抑えられます
利用開始の入り口は、かかりつけの児童精神科や小児科の主治医への相談です。主治医が精神科訪問看護指示書を交付し、訪問看護ステーションと契約すれば訪問が始まります。費用は医療保険が適用され、お子さんの場合は自治体の医療費助成でさらに負担を抑えられます。
東京都では2023年4月から、高校3年生相当の年齢まで医療費を助成する「高校生等医療費助成制度(マル青)」が始まりました(出典:東京都福祉局 高校生等医療費の助成)。足立区でもマル乳・マル子・マル青の医療証により、18歳到達後最初の3月31日までのお子さんが対象です(出典:足立区 子ども医療費助成制度)。東京都の制度では訪問看護の保険診療分も助成の対象で、通院時の一部負担金(1回200円)も訪問看護にはかかりません。足立区は保険診療の自己負担分を助成しており、自己負担を抑えて利用できます(出典:東京都福祉局 医療費助成/足立区 子ども医療費助成制度)。
通院治療を続ける方の医療費を軽減する「自立支援医療(精神通院医療)」も、訪問看護に適用できる制度です。自己負担が原則1割になり、所得に応じた月額上限が設けられます(出典:厚生労働省 自立支援医療(精神通院医療)の概要)。年齢が上がって医療証の対象から外れたあとも見据えて、知っておくと安心な制度です。
申し込みの具体的な手順や、足立区で相談できる窓口については、不登校のお子さんに訪問看護という選択肢|利用の流れと足立区の相談先で詳しくまとめています。利用の流れは発達障害のあるお子さんの場合もほぼ同じですので、あわせてご覧ください。
訪問看護を利用するまでの3ステップ
主治医に相談
かかりつけの児童精神科・小児科で相談し、精神科訪問看護指示書を交付してもらいます
訪問看護ステーションに連絡・契約
困りごとやご希望を伺い、訪問の曜日・時間・内容を一緒に決めます
訪問開始
週1回などから無理なくスタート。頻度や内容は様子を見ながら調整できます
まとめ|お子さんの特性に合わせた在宅支援を、一緒に
発達障害(ASD・ADHD)のあるお子さんも、主治医の指示書があれば医療保険で訪問看護を利用できます。看護師は安心できる関係づくりを土台に、生活リズムの調整や不安への対処、外出への段階的なチャレンジを支えます。ご家族には特性に合った関わり方を具体的に助言し、学校や放課後等デイサービスとの連携の橋渡しも担います。
すえひろ訪問看護ステーションでは、子ども支援の専任チームが発達特性のあるお子さんとご家族に伺っています。「昼に起きられた」「ひと言会話できた」という小さな変化を、ご家族と一緒に喜びながら積み重ねていく。それが私たちの大切にしている姿勢です。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
「うちの子の場合は対象になるのかな」と迷ったら、その疑問のままで構いません。お子さんの特性に合わせた在宅支援について、まずはご相談ください。制度上難しいと思われることでも、一緒に考えさせてください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 発達障害の診断が確定していなくても利用できますか?
診断名の確定よりも、主治医が訪問看護を必要と判断するかどうかがポイントです。精神科訪問看護指示書を交付してもらえれば利用できます。「特性の傾向はあるが診断は経過観察中」という段階でも、まずは通院先の主治医にご相談ください。
Q2. 何歳から利用できますか?
訪問看護に年齢の下限はなく、未就学のお子さんから高校生まで利用できます。すえひろ訪問看護ステーションの子ども支援チームも、幅広い年齢のお子さんに伺っています。年齢よりも、生活の中の困りごとの内容に合わせて支援を組み立てます。
Q3. 子どもが訪問を嫌がったらどうなりますか?
無理強いは決してしません。最初は短時間の訪問やご家族との会話だけから始め、遊びを通して少しずつ距離を縮めます。お子さんが部屋から出てこない日があっても、「家に味方が来る」状態を続けること自体に意味があると考えています。
Q4. 訪問の頻度はどれくらいですか?
医療保険の精神科訪問看護は原則週3日までとされており、実際は主治医の指示とお子さんの状態に合わせて決まります。週1回から始めて、様子を見ながら調整するご家庭が多い印象です。頻度のご希望も遠慮なくお聞かせください。

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