この記事の要点(30秒でわかる)
- 2026年6月1日施行の臨時改定で、訪問看護に処遇改善加算1.8%が新設されました。
- 看護師など現場スタッフの賃金を改善するための加算で、月1万円程度の底上げを目指します。
- 対象は介護保険の訪問看護分のみで、医療保険分は含まれないとされています。
- 利用者様の負担増はごくわずかで、その分が働き手の処遇に還元される仕組みです。
「いつもお世話になっている訪問看護師さんのお給料は、ちゃんと上がっているのだろうか」。そんな素朴な疑問を持つご家族は少なくありません。働く側にとっても、待遇の良い職場を見極めたいという思いは切実です。
2026年6月の介護報酬改定では、訪問看護に「処遇改善加算」が新しく設けられました。これは現場で働く看護師の待遇を支えるための制度です。
すえひろ訪問看護ステーションは、こうした制度を正しく活用し、スタッフの処遇に誠実に還元していきたいと考えています。働く人が安心できる環境こそが、利用者様への質の高いケアにつながるからです。
この記事では、2026年6月改定の処遇改善加算1.8%が「何のための制度か」「利用者様と看護師にどう影響するか」を、やさしく整理してお伝えします。
当コラムは、訪問看護に関する一般的な情報提供を目的としたものです。個別の症状・保険適用・制度のご判断についてお答えするものではありません。制度の運用は地域・保険者・個別のご状況により異なりますので、あらかじめご了承ください。
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2026年6月の介護報酬改定とは何ですか
2026年6月の介護報酬改定は、深刻な人材不足に対応するための臨時(期中)改定です。通常は3年ごとの見直しですが、それを待たずに実施されました。全体の改定率はプラス2.03%で、その中心が介護で働く人の賃金を底上げする「処遇改善」です。
改定率2.03%の内訳は、処遇改善がプラス1.95%、食費などの基準費用額の引き上げがプラス0.09%とされています(出典:厚生労働省 社会保障審議会・介護給付費分科会/GemMed解説)。今回は介護職員等処遇改善加算の引き上げが柱で、基本報酬の見直しは行わない設計です。
施行日は、処遇改善加算の見直しが2026年6月1日です。つまり2026年6月のサービス提供分から、新しい加算が反映されます。
なぜ臨時で行われたのでしょうか。介護・看護の現場では、他産業との賃金差や人手不足が深刻化しています。この状況を放置すれば、必要なケアを届けられなくなる恐れがあるためです。
自己負担全体の変化など改定の他のテーマについては、当ステーションの関連記事もあわせてご覧いただけます。本記事は「処遇改善加算1.8%=働く看護師の待遇」というテーマに絞ってお伝えします。
2026年6月 介護報酬改定の全体像
全体の改定率
+2.03%
臨時(期中)改定
内訳
1.95% + 0.09%
処遇改善 + 基準費用額
施行日
6月1日
柱は処遇改善加算
出典:厚生労働省 社会保障審議会・介護給付費分科会
訪問看護の処遇改善加算1.8%とは何ですか
訪問看護の処遇改善加算1.8%とは、訪問看護で働くスタッフの賃金改善に充てるための加算です。2026年6月1日から、訪問看護と介護予防訪問看護が新たに対象となりました。介護保険分の総単位数に1.8%(1000分の18)を上乗せして算定する仕組みです。
訪問看護は、これまで処遇改善加算の対象外でした。今回はじめて対象に加わった点が大きな変化です(出典:社会保障審議会・介護給付費分科会/GemMed解説)。
他のサービスと比べると、訪問看護は1.8%、訪問リハビリは1.5%、居宅介護支援等は2.1%、訪問介護は最大28.7%とされています。訪問介護に比べると1.8%は小さく見えるかもしれません。これは訪問看護が「新たに加わったサービス」という位置づけによるもので、今後の改定で見直される可能性も指摘されています。
ここで大切なのは、この加算が介護保険分のみを対象とする点です。医療保険のみで運営する訪問看護や、医療保険の訪問看護療養費はこの加算に含まれないとされています。訪問看護は医療・介護の両方を扱うため、加算の対象になるのは介護保険で訪問した分です。
サービス別 処遇改善加算率(2026年6月改定)
| サービス | 加算率の目安 |
|---|---|
| 訪問看護(介護保険分) | 1.8% |
| 訪問リハビリテーション | 1.5% |
| 居宅介護支援等 | 2.1% |
| 訪問介護 | 最大 28.7% |
訪問看護は新たに対象に加わったサービスです(出典:社会保障審議会・介護給付費分科会)
看護師の待遇はどう変わりますか
処遇改善加算は、訪問看護で働く看護師の賃金を底上げするための財源です。国は今回の臨時改定で、介護で働く人全体の月1万円程度の処遇改善を目指すとしています。定期昇給や生産性向上の取り組みを含めると、最大で月1万9,000円程度の引き上げを目指す設計です。
この賃上げは3層構造とされています。月1万円(全介護従事者対象)に加え、生産性向上などに取り組む事業所の介護職員へ月7,000円、さらに定期昇給2,000円程度を積み上げるイメージです(出典:厚生労働省 社会保障審議会・介護給付費分科会/GemMed解説)。
訪問看護にとって心強いのは、加算の配分が職種をまたいで柔軟である点です。看護師・准看護師はもちろん、リハビリ職や事務職にも配分できます。職種別の配分ルールは2024年度に廃止され、事業所内で柔軟に配分できるようになりました。
ただし、これらの金額はあくまで国が目指す水準の目安です。個々の看護師の実際の支給額を保証するものではありません。また、職務や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は認められないとされています。
求職中の方にとって、この制度は職場選びの一つの観点になります。処遇改善加算を算定し、それを誠実にスタッフへ還元しているかどうかは、働きやすさを測る目安になるからです。
介護従事者の賃上げ 3層構造(国が目指す目安)
① 全介護従事者対象
② 生産性向上等に取り組む事業所の介護職員
③ 定期昇給
あくまで国が目指す水準の目安で、個々の支給額を保証するものではありません
利用者様の負担はどうなりますか
処遇改善加算は介護保険サービスの単位数に上乗せされるため、利用者様の負担はわずかに増えます。とはいえ、その増加はごく小さく、増えた分はそのまま看護師など働き手の処遇改善に充てられます。
たとえば、ある月の介護保険分が9,000単位だった場合、9,000単位×1.8%に地域の単価を掛けると、加算は月あたり数百円から2,000円弱程度になる試算があります(出典:制度解説試算例)。実際の金額は、単位数・お住まいの地域単価・自己負担割合(1〜3割)によって変わります。
この負担は、ケアの質を支えるための投資という側面があります。働く人の待遇が安定すれば、経験豊富なスタッフが現場に長く定着しやすくなります。結果として、利用者様が受けるケアの継続性や安心感につながると期待できます。
ご請求金額に変化があった際は、明細をご確認いただくと加算の内容がわかります。ご不明な点があれば、遠慮なくお尋ねください。制度のことも含め、一緒に確認させていただきます。
負担増がケアの質として戻る循環
負担増は一方通行ではなく、ケアの質として戻る投資という側面があります
算定にはどんな要件がありますか
訪問看護が処遇改善加算を算定するには、一定の要件を満たす必要があります。新たに対象となるサービスでは、旧・処遇改善加算IV相当の要件が求められるとされています。具体的には、キャリアパス要件と職場環境等要件の整備です。
職場環境等要件では、定められた項目のうち複数を実施し、その内容をウェブサイト等で「見える化」することが求められるとされています(出典:制度解説/カイポケ訪問看護マガジン等)。賃金体系の整備や研修機会の確保など、働きやすい環境づくりが要件の中心です。
これらの要件は、単に加算を取るための事務手続きではありません。キャリアパスの整備は、スタッフが将来を描ける職場づくりそのものです。職場環境の改善は、長く安心して働ける土台になります。
すえひろ訪問看護ステーションは、こうした要件を形式で終わらせず、実際の働きやすさにつなげていきたいと考えています。制度を正しく使い、スタッフの処遇に誠実に還元する。それが利用者様への質の高いケアに直結すると信じています。
要件の細部は事業所の形態や算定区分によって異なります。算定の可否や具体的な手続きについては、専門職として責任を持って確認させていただきます。
処遇改善加算 算定までのステップ
事業所・管理者が加算を取りこぼさないための手続きと期限
ここからは、訪問看護を運営する事業所・管理者の方に向けた実務的な内容です。処遇改善加算は「要件を整える」だけでは算定できず、定められた期限までの届出と、その後の報告・記録の保存までが一連の手続きになります。新たに対象となった訪問看護では、はじめての算定で段取りに戸惑いやすいため、期限から逆算して準備することが大切です。
まず必要になるのが、加算を算定する体制を整えたことを示す体制等状況一覧表などの届出(体制届)です。2026年4月・5月に処遇改善加算を算定しておらず、6月から新たに算定する訪問看護などの居宅系サービスでは、原則として2026年5月15日までの提出とされています。自治体の判断により6月15日まで柔軟に取り扱われる場合もあるとされていますが、確実なのは早めの提出です(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」関係通知)。
あわせて、賃金改善の計画を示す処遇改善計画書を提出します。6月以降に新たに算定する事業者の計画書は、2026年6月15日までの提出とされています。計画書には、賃金改善の方法やキャリアパス・職場環境等要件への取り組みを記載し、提出前に職員へ周知することが求められます。
算定して終わりではありません。年度の終了後には、加算が実際にスタッフの賃金として支払われたことを示す実績報告書の提出が必要です。提出期限は、最終の加算の支払いを受けた月の翌々月の末日までとされています。計画どおりに賃金改善が行われたかを、後から確認できる形にしておくことが要点です。
2026年6月算定に向けた手続きカレンダー(居宅系・新規算定の場合)
期限は自治体により取り扱いが異なる場合があります。最終的な期日は管轄の指定権者の案内をご確認ください(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」申請様式・関係通知 2026年)
そして見落とされがちなのが、根拠資料の保存です。処遇改善計画書・実績報告書とその根拠資料は、2年間の保存が義務づけられています。実地指導などの際に、賃金改善が確かに職員へ支払われたかを確認できるよう、関連する書類を整理して残しておく必要があります。
2年間保存しておきたい主な根拠資料
| 区分 | 書類の例 |
|---|---|
| 届出・報告 | 処遇改善計画書、実績報告書、体制届の控え |
| 賃金の証憑 | 賃金台帳、雇用契約書・労働条件通知書 |
| 要件の記録 | 研修・キャリアパスの実施記録、職場環境改善の取り組み記録 |
| 周知の記録 | 計画内容を職員へ周知したことがわかる記録 |
該当書類は事業所の形態や算定区分により異なります(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」関係通知 2026年)
こうした手続きは煩雑に見えますが、一つひとつは「働く人の待遇を、約束どおり守る」ための仕組みです。すえひろ訪問看護ステーションは、制度を正しく使い、加算を確実にスタッフの処遇へ還元していくことを大切にしています。要件や期限の細部は事業所の状況によって異なりますので、判断に迷われたときは、専門職として責任を持って一緒に確認させていただきます。
まとめ
2026年6月の臨時介護報酬改定では、訪問看護に処遇改善加算1.8%が新設されました。これは介護保険分の単位数に上乗せされ、看護師など現場スタッフの賃金改善に充てられます。国は介護で働く人全体で月1万円程度、最大で月1万9,000円程度の底上げを目指すとしています。利用者様の負担増はごくわずかで、その分がケアの質として還元される仕組みです。
すえひろ訪問看護ステーションは、この制度を正しく活用し、スタッフの処遇に誠実に還元してまいります。働く人が安心できる環境こそが、利用者様への温かく質の高いケアの土台になると考えているからです。
利用者様やご家族は、ご請求の内容で気になる点があればいつでもお尋ねください。待遇の良い職場を探している看護師の方にとっても、処遇改善への姿勢は職場選びの大切な観点になります。制度のことも含め、迷われたときはどうぞお気軽にご相談ください。一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 訪問看護の処遇改善加算1.8%は、いつから始まりましたか。
A. 2026年6月1日施行で、2026年6月のサービス提供分から算定が始まりました。2026年4月・5月分は対象外とされています。
Q. 医療保険の訪問看護も対象になりますか。
A. いいえ。この加算は介護保険分の訪問看護が対象です。医療保険のみで運営する訪問看護や医療保険の訪問看護療養費は含まれないとされています。
Q. 看護師は本当に月1万円もらえるのですか。
A. 月1万円や最大月1万9,000円程度は、国が目指す処遇改善の目安です。個々の支給額を保証するものではなく、事業所の配分によって変わります。
Q. 利用者の負担はどのくらい増えますか。
A. 介護保険分の単位数に1.8%が上乗せされるため、月あたり数百円から2,000円弱程度の試算があります。実際の金額は単位数・地域単価・自己負担割合で変わります。
Q. 加算の対象は看護師だけですか。
A. いいえ。配分は職種をまたいで柔軟で、准看護師・リハビリ職・事務職などにも配分できます。ただし実態に見合わない偏った配分は認められないとされています。
Q. 6月から加算を算定したい事業所は、いつまでに何を出せばよいですか。
A. 新たに算定する居宅系サービスでは、体制届は原則2026年5月15日まで(自治体判断で6月15日までの場合あり)、処遇改善計画書は2026年6月15日までの提出とされています。算定後は年度終了後に実績報告書の提出が必要で、計画書・実績報告書とその根拠資料は2年間の保存が義務づけられています。期限の取り扱いは自治体により異なる場合があるため、管轄の指定権者にご確認ください。
