この記事の要点(30秒でわかる)
- パーキンソン病では飲み込みの力が少しずつ低下し、むせや食事の不安が現れます。
- 水分や食事にとろみをつけ、姿勢と一口量を整えると誤嚥の予防につながります。
- 咳が出ない「不顕性誤嚥」もあり、口腔ケアと毎日の観察が肺炎予防の要です。
- すえひろの難病チームが嚥下評価・食事形態の助言・多職種連携でご家庭を支えます。
「最近、食事中にむせることが増えた」「水を飲むとせき込む」。パーキンソン病とともに暮らすなかで、こうした飲み込みの変化に気づき、不安を感じていらっしゃるご家族は少なくありません。食事は毎日のことだからこそ、心配は尽きないものです。
飲み込みにくさ(嚥下障害〈えんげしょうがい〉)は、工夫とケアでリスクを和らげることができます。食事の形態や姿勢を整え、毎日の口腔ケアを続けることで、誤嚥や肺炎を防ぎながら「食べる楽しみ」を守る取り組みが可能です。
すえひろ訪問看護ステーションには難病ケアに取り組むチームがあり、嚥下の評価や食事形態の助言、主治医や言語聴覚士との連携を通じてご家庭を支えています。難病があってもその人らしく生きる可能性を信じ、尊厳ある生を支えることを大切にしています。
この記事では、パーキンソン病で飲み込みにくさが出てきたときの在宅でのケア、食事の工夫、誤嚥性肺炎の予防、そして訪問看護ができることをわかりやすくお伝えします。なお、歩行や転倒予防の運動については別記事で詳しくご紹介しています。
目次
パーキンソン病で「飲み込みにくい」が起こる理由
パーキンソン病では、病気の進行に伴って飲み込みの動きがゆっくりになり、むせや食事の不安が現れます。これは飲み込みに関わる筋肉の動きが鈍くなるために起こり、決して珍しいことではありません。早めに気づき、備えることが大切です。
飲み込み(嚥下)は、口で食べ物をまとめ、のどへ送り、食道へ通すという一連の動きで成り立ちます。パーキンソン病では、舌の動きや飲み込みを始めるタイミングに障害が生じやすく、咀嚼期・口腔期・咽頭期それぞれの段階で飲み込みにくさが現れることが知られています(出典:日本神経学会「パーキンソン病における嚥下障害」)。
パーキンソン病の方では、嚥下障害が高い割合でみられることが報告されています(出典:国立病院機構 宇多野病院「パーキンソン病のリハビリテーション」)。ご本人が自覚しにくい場合もあるため、ご家族が日々の様子を見守ることが早期の気づきにつながります。
注意したいのは、症状が薬の効き具合で変動する点です。薬が効いている時間帯は飲み込みやすく、効きが切れる時間帯はむせやすくなることがあります。食事の時間を薬の効果に合わせることも、安全な食事を支える工夫の一つです。
飲み込み(嚥下)の3段階と障害が起きやすいポイント
① 口腔期(こうくうき)口の中
食べ物を噛んでまとめ、のどへ送る段階。舌の動きが鈍くなり、飲み込みを始めにくくなります。
② 咽頭期(いんとうき)のど
のどから食道へ送り込む段階。タイミングがずれると食べ物が気管に入り、むせの原因になります。
③ 食道期(しょくどうき)食道
食道から胃へ運ぶ段階。逆流が起こると、食後の誤嚥につながることがあります。
早めに気づきたい嚥下障害のサイン
食事中のむせ、飲み込みに時間がかかる、食後に声がガラガラするといった変化は、嚥下障害の初期サインです。これらは見過ごされやすいため、ご家族がチェック項目として知っておくことで、早めの相談や対策につなげられます。
とくに注意したいのが「不顕性誤嚥〈ふけんせいごえん〉」です。これは、食べ物や唾液が誤って気管に入っても、むせや咳が出ない状態を指します。咳反射が弱くなった方に多く、気づかないうちに肺炎につながることがあります(出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会関連資料・ディアケア「摂食嚥下ケア」)。
つまり「むせないから安心」とは限りません。食事中以外でも、原因のはっきりしない発熱、痰が増える、食欲が落ちる、体重が減るといった変化は、飲み込みのトラブルが隠れているサインのことがあります。
こうしたサインに気づいたら、早めに主治医や訪問看護に相談することをおすすめします。早期に対応することで、食事形態の調整や姿勢の工夫など、打てる手の選択肢が広がります。一人で抱え込まず、専門職と一緒に考えていきましょう。
こんなサインに気づいたら相談を
食事中によくむせる
食事に時間がかかる
食後に声がガラガラする
痰(たん)が増えた
原因のわからない発熱
体重が減ってきた
食べ残しが増えた
薬が飲み込みにくい
むせや咳が出ない「不顕性誤嚥」もあります。気になる変化は早めにご相談ください。
在宅でできる食事の工夫|形態・とろみ・一口量
飲み込みにくさが出てきたら、食事の形態・とろみ・一口量を整えることが基本のケアです。食べ物を飲み込みやすい状態にし、姿勢を安定させることで、むせや誤嚥のリスクを和らげながら、安全に食事を続けることが期待できます。
食事の形態は、舌でつぶせる程度のやわらかさにし、小さく切っておくと飲み込みが楽になります。焼くより煮るほうがやわらかく仕上がり、あんかけなどとろみのついた料理は食べやすくなります(出典:住友ファーマ「衣食住の工夫:食事」)。水分でむせやすい場合は、とろみ調整食品を活用します。
注意したい食品もあります。パサつくもの(パン・カステラなど)、粘り気のあるもの(もち・団子など)、かみにくいもの(こんにゃく・イカなど)は、むせたり詰まったりしやすいため工夫が必要です(出典:住友ファーマ「衣食住の工夫:食事」)。
一口量は少なめにし、口の中のものを飲み込んでから次を入れることが大切です。のどに残りやすいときは、ゼリーとおかずを交互に食べる「交互嚥下」や、続けて飲み込む「複数回嚥下」も有効とされています(出典:国立病院機構 宇多野病院「パーキンソン病のリハビリテーション」)。
なお、飲み込みの段階に応じた食事の目安として、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」があります。食事はコード0〜4の段階に、とろみは「薄い・中間・濃い」の3段階に分けられており、どの形態が合うかを選ぶ際の参考になります(出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」)。
食べやすい食品と注意が必要な食品
| 食べやすい食品 | 注意が必要な食品 |
|---|---|
| やわらかい煮物(舌でつぶせる硬さ) | パサつくもの(パン・カステラ) |
| あんかけなどとろみのある料理 | 粘り気のあるもの(もち・団子) |
| ゼリーやプリンなどまとまる食品 | かみにくいもの(こんにゃく・イカ) |
| とろみをつけた水分・スープ | サラサラの水分(お茶・水) |
誤嚥性肺炎を防ぐ|姿勢・口腔ケア・食後の習慣
誤嚥性肺炎の予防には、食事の姿勢を整えること、毎日の口腔ケア、そして食後の習慣づくりが欠かせません。飲み込みやすい体勢をつくり、口の中を清潔に保つことで、肺炎のリスクを下げる取り組みができます。
食事の姿勢は、かかとが床につく高さの椅子に座り、自然に少し前かがみになる姿勢が理想とされています。あごを軽く引くと、気管に入りにくくなります(出典:国立病院機構 宇多野病院「パーキンソン病のリハビリテーション」)。背もたれやクッションで体を安定させると、より飲み込みやすくなります。
誤嚥性肺炎を防ぐうえで最も重要なのが口腔ケアです。口の中を清潔に保ち、細菌の量を減らすことが、肺炎の予防につながるとされています(出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会関連資料・ディアケア「摂食嚥下ケア」)。食後の歯みがきや舌の清掃を習慣にしましょう。
食後すぐに横にならず、30分ほど座った姿勢を保つことも、逆流による誤嚥を防ぐ工夫になります。さらに、食事の前に口や舌を動かす「嚥下体操」を行うと、飲み込みの準備運動になり、むせの予防が期待できます。
誤嚥を防ぐ安全な食事の流れ
① 食前:嚥下体操で準備
口や舌を動かす体操で、飲み込みのウォーミングアップをします。
② 姿勢:あごを引いて座る
かかとが床につく椅子で、自然に少し前かがみ。あごを軽く引きます。
③ 食事:一口少なめ・ゆっくり
口の中を空にしてから次の一口へ。交互嚥下・複数回嚥下も有効です。
④ 食後:口腔ケア
歯みがきと舌の清掃で口の中を清潔に保ち、肺炎の予防につなげます。
⑤ 食後30分は座位を保つ
すぐ横にならず座った姿勢を保ち、逆流による誤嚥を防ぎます。
訪問看護ができること|嚥下評価と多職種連携
訪問看護は、ご自宅での嚥下の状態を評価し、食事形態の助言や誤嚥予防のケアを行い、主治医や言語聴覚士と連携してご家庭を支えます。専門職の目で日々の変化を見守ることで、安全に「食べる」を続ける環境づくりをお手伝いします。
訪問看護師は、食事の様子やむせの有無、痰や発熱の状態を観察し、飲み込みの変化を細やかに把握します。必要に応じて食事形態の調整や姿勢の助言を行い、ご家族ができる工夫を一緒に考えます(出典:あうるグループ「パーキンソン病の方に訪問看護ができること」)。
専門的な嚥下評価や訓練が必要な場合は、言語聴覚士(ST)と連携します。STは口や舌の体操、飲み込みのトレーニングを通じて、嚥下機能の維持を支えます(出典:あうるグループ「パーキンソン病の方に訪問看護ができること」)。訪問看護はその橋渡し役として、主治医や栄養士も含めたチームで関わります。
すえひろには難病ケアに取り組むチームがあり、嚥下評価、食事形態の助言、誤嚥予防のケア、主治医や言語聴覚士との連携に対応しています。「食べる楽しみ」を大切にしながら、その人らしい暮らしを支えることを理念としています。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。
在宅の嚥下ケアを支える多職種連携
診断・薬の調整・治療方針
嚥下評価・飲み込みの訓練
食事形態・栄養の助言
服薬しやすい形への工夫
まとめ
パーキンソン病では病気の進行とともに飲み込みにくさが現れ、むせや食事の不安につながります。食事の形態・とろみ・一口量を整え、姿勢を正しくし、毎日の口腔ケアを続けることが、誤嚥性肺炎の予防につながります。咳の出ない不顕性誤嚥にも注意し、日々の小さな変化を見守ることが大切です。
すえひろ訪問看護ステーションの難病チームは、嚥下評価や食事形態の助言、誤嚥予防のケア、主治医や言語聴覚士との連携を通じて、ご家庭での「食べる楽しみ」を支えています。難病があってもその人らしく生きる可能性を信じ、尊厳ある生を支えることを理念に、専門職として責任を持って誠実に向き合わせていただきます。
「むせが増えてきた」「食事が心配」と感じたら、お一人で悩まないでください。飲み込みや食事の不安は、まずはご相談ください。今できることを、一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 食事中によくむせます。すぐ受診したほうがよいですか。
むせが続く、食後に声がかすれる、原因のわからない発熱があるといった場合は、早めに主治医や訪問看護にご相談ください。早期に食事形態や姿勢を調整することで、誤嚥のリスクを和らげることが期待できます。
Q. とろみはどのくらいつければよいですか。
飲み込みの状態によって適したとろみの濃さは異なります。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類では「薄い・中間・濃い」の3段階があり、専門職が評価したうえで個別にお伝えします。自己判断で濃くしすぎると逆に飲み込みにくくなることもあるため、ご相談ください。
Q. むせないのに肺炎を繰り返します。なぜですか。
咳やむせが出ないまま誤嚥する「不顕性誤嚥」が起きている可能性があります。睡眠中などに少量ずつ気管へ入ることがあり、口腔ケアと毎日の観察が予防の要になります。気になる場合は専門職にご相談ください。
Q. 訪問看護で嚥下のケアは受けられますか。
はい。訪問看護では食事の様子の観察、食事形態や姿勢の助言、口腔ケア、誤嚥予防の支援を行い、必要に応じて言語聴覚士や主治医と連携します。すえひろの難病チームがご家庭に合わせてお手伝いします。
Q. 歩行や転倒が心配な場合はどうすればよいですか。
歩行や運動、転倒予防のリハビリについては、当ステーションの別記事で詳しくご紹介しています。嚥下のケアとあわせて、生活全体を支えるご相談を承りますので、お気軽にお声がけください。

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