「膝が痛くて、もう歩けなくなるのではないかと心配です」「病院で手術を勧められたけれど、踏み切れない」——そんな不安を抱えて検索されている方は、少なくないと思います。変形性膝関節症は日本で推計約2,530万人がX線上の変化を持つとされる、非常に身近な疾患です(出典:ROAD研究〔Research on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability〕2005〜2007年ベースライン調査)。しかし、痛みがあるからといって、じっとしているだけでは症状はむしろ悪化しやすいことが分かっています。
在宅で継続できるリハビリテーションには、痛みを和らげ、歩く力を維持し、手術を遅らせたり回避したりする可能性があります。すえひろ訪問看護ステーションでは、理学療法士(PT)が自宅に伺い、その方の生活環境や体の状態に合わせた個別のアプローチをご提案しています。
この記事では、変形性膝関節症とはどういう疾患なのかという基礎知識から、訪問PTが実際に何をどう評価し、どんなリハビリを提供するのかまでを、現場の視点で具体的にご説明します。「自宅でも何かできることがあるのか」と感じている方に、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
目次
変形性膝関節症とは|「骨がすり減る」だけじゃない在宅リハビリの視点
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が摩耗・変性し、関節の構造が変化していく疾患です。骨がすり減るイメージを持たれる方が多いのですが、訪問PTの視点では「なぜ膝だけを見ていては不十分か」が重要なポイントになります。変形性膝関節症は、膝単体の問題ではなく、股関節・足首・体幹のアライメント(骨や関節の並び)全体が影響し合って発症・進行する疾患です。
いつから・どこが・どんな状況で痛むか。生活上の困りごとと目標をお聞きします。
歩行・立ち上がり・階段昇降などの実際の動きを観察します。
膝の可動域・腫れ・圧痛、大腿四頭筋・臀筋の筋力、股関節・体幹の機能を評価します。
段差・手すり・床材・家具の配置など、自宅内の転倒リスクと動作負担を確認します。
ご本人・ご家族と一緒に目標を決め、個別のリハビリプログラムをご提案します。
日本整形外科学会が2023年に改訂した「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、運動療法が推奨グレードA(強く推奨)とされています。これは「動くことで症状の改善が期待できる」というエビデンスが、保存療法の中で最も強いことを意味します(出典:日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023)。
症状の進行と在宅ケアで対応できるステージ

変形性膝関節症は3段階で進行するとされています。初期は「立ち上がりや歩き始めに痛みが出るが、安静にすると治まる」段階です。中期では正座や階段の昇降が困難になり、末期になると安静時にも痛みが続き、著しい変形と歩行障害が生じます。
在宅リハビリが特に有効なのは初期から中期にかけての段階です。この時期に適切なアプローチを開始することで、進行を遅らせ、手術を回避・延期できる可能性があります。末期においても、手術前後の機能維持・回復目的での介入が有効です。
膝の痛みがある方への訪問PTのアセスメント|何を見て何をするか
訪問PTが初回訪問で行うアセスメントは、単に「膝が痛いかどうか」を確認するだけではありません。膝の状態を正確に把握するためには、膝関節だけでなく全身の動きと生活環境を総合的に評価する必要があります。すえひろの訪問PTが実際に確認するのは、大きく分けて「体の評価」と「生活環境の評価」の2つです。
体の評価で確認すること
膝関節そのものの評価として、可動域(曲げ伸ばしの角度)、腫れや熱感の有無、圧痛の部位、O脚・X脚の程度を確認します。次に周囲筋の評価として、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)の筋力とボリューム、ハムストリングス(太もも裏面)の柔軟性を確認します。
さらに重要なのが股関節と体幹の評価です。股関節の可動域が制限されていると、歩行中に膝への負担が増します。また、体幹の筋力が低下していると姿勢が崩れ、膝関節への集中した荷重が生じやすくなります。「膝だけ治しても再発する」最大の理由が、ここにあります。
生活環境の評価で確認すること
自宅の中で転倒リスクになる箇所(段差・滑りやすい床・手すりのない廊下)を確認します。また、椅子と床座(正座・あぐら)の使い分けや、トイレ・浴室など膝に負担のかかる動作の場面を把握します。生活の中で「どの動作が一番つらいか」を丁寧に聞き取ることが、目標設定の出発点になります。
訪問PTによるアセスメントの本質は、「その方の生活の中で、何が膝を痛めているのかを明らかにすること」です。病院のリハビリとは異なり、実際の生活空間で評価できることが、訪問リハビリ最大の強みと言えます。
自宅でできる膝リハビリ|筋力強化・動作改善・環境調整
在宅での膝リハビリは、大きく「筋力強化」「動作改善」「環境調整」の3つの柱から成ります。訪問PTはこれらを組み合わせ、その方の体力・生活スタイル・目標に合わせた個別プログラムを提供します。「膝に効く体操」の紹介で終わる情報が多い中、訪問PTが実際に重視するのは、体操そのものより「なぜその動きが必要か」の理解と継続のしくみです。
「痛みと付き合いながら動ける方法」を専門家が一緒に考え、自宅で継続できるリハビリを伴走します。
筋力強化:大腿四頭筋だけでは足りない
大腿四頭筋(太もも前面)の筋力強化は変形性膝関節症リハビリの基本です。椅子に座った状態でゆっくり足を伸ばして止める「セッティング運動」や、壁に背をもたれて膝を軽く曲げる「ウォールスクワット」などが代表的です。これらは膝に直接負担をかけずに筋力を高められます。
加えてすえひろでは、臀筋(お尻の筋肉)と中殿筋(股関節外側の筋肉)の強化を合わせて行います。これらの筋肉が弱いと歩行時に骨盤が傾き、膝に内反(O脚方向)のストレスが集中します。仰向けで片足をあげるヒップアブダクション(股関節外転運動)は、自宅でも安全にできる有効なアプローチです。
動作改善:日常生活の「膝を傷める動き方」を変える
リハビリの時間だけ良い動きをしても、日常生活で膝を傷める動作を続けていては意味がありません。訪問PTは「立ち上がり方」「歩行フォーム」「階段の降り方」などを実際の場面で観察し、膝への負担が少ない動き方を丁寧にお伝えします。
例えば、椅子からの立ち上がりでは「足を引いてから前傾して立つ」ことで、膝への負担を大幅に軽減できます。階段を降りるときは「痛い方の膝に体重を乗せる前に、良い方の足を先に下ろす」ことで転倒リスクと痛みを同時に減らせます。こうした動作の工夫は、体操より即効性が高いことが少なくありません。
環境調整:家の中を「膝にやさしい空間」に変える
手すりの設置場所、椅子の高さ、浴槽への出入り補助、床のマットの固定——こうした住環境の調整は、訪問PTが福祉用具専門相談員や住宅改修の専門家と連携しながら提案します。日常の動作の中で膝にかかる負担を減らすことが、リハビリの効果を最大化します。介護保険では住宅改修費用の一部が支給される制度もあり、まずはご相談ください。
「痛いから動かない」の悪循環を断ち切る訪問リハビリの役割
変形性膝関節症で最も危険なのは、「痛いから動かない」という選択の連鎖です。痛みが出ると動かなくなり、動かないと膝周囲の筋肉が萎縮し、筋力が低下するとさらに膝への負担が増し、痛みが強くなる——この悪循環は廃用症候群へとつながります。特に高齢の方では、この変化が数週間で急速に進行することがあります。
訪問リハビリが担う最も重要な役割のひとつは、「適切な動かし方を伴走しながら継続できる環境を作ること」です。病院や整形外科のリハビリは週1〜2回の通院が必要ですが、膝の痛みが強い方にとって、外出自体がハードルになることがあります。自宅に来てもらえることで、通院が困難な方でもリハビリを継続できます。
訪問PTが「動く理由」を一緒に作る
「どうせ治らない」「もう年だから」という諦めの気持ちは、変形性膝関節症の方に非常によく見られます。すえひろの訪問PTは、症状の改善だけでなく、その方が「何のために動きたいのか」という目標を一緒に見つけることを大切にしています。「孫の運動会を見に行きたい」「近くのスーパーまで自分で歩きたい」——そうした具体的な目標は、リハビリを続ける最大の原動力になります。
痛みがある状態でも、痛みと付き合いながら動ける方法は必ずあります。諦めずに一緒に考えさせてください。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談いただければ、専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
手術前後・保存療法中に訪問リハビリを活用するタイミング
「手術を勧められたが踏み切れない」というご相談は、すえひろにも多く寄せられます。変形性膝関節症の治療は、保存療法(手術以外)を原則として開始し、効果が不十分な中〜末期において手術(人工膝関節置換術など)を検討するという流れが基本です(出典:日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023)。
保存療法中に訪問リハビリを活用する
整形外科で「まだ手術の必要はない」と言われている段階でも、痛みや機能低下が日常生活に影響しているなら、訪問リハビリの活用が有効です。特に通院が難しい方、外来リハビリを終了した後の「その後」に課題を感じている方には、自宅での継続介入が重要な選択肢になります。
変形性膝関節症は「両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う」場合、40〜64歳の方でも介護保険の特定疾病として要介護認定の対象となります(出典:厚生労働省)。65歳以上の方は通常の介護保険利用の中で訪問リハビリを受けられます。
手術前後に訪問リハビリを活用する
手術(特に人工膝関節置換術)を決断した場合、術前の筋力・体力を高めておく「プレハビリテーション」が術後の回復に大きく影響することが知られています。訪問PTは術前から関わることで、手術後のリハビリもスムーズに進められるよう準備を整えます。
術後は入院中のリハビリに続いて、退院後の自宅でのリハビリが重要です。退院後に「何をすればいいかわからない」という状況にならないよう、入院中から退院後の生活を想定した訪問リハビリの準備を進めることが理想です。人工膝関節の耐用年数は一般的に15〜20年とされていますが、素材・技術の進化により20年以上問題なく使用できるケースも増えています(出典:各整形外科医療機関資料)。術後も継続的なリハビリによる関節保護が重要です。
まとめ|「痛みと付き合いながら歩ける体」をつくるために
変形性膝関節症は、適切なリハビリテーションによって痛みを和らげ、歩行機能を維持・改善できる可能性がある疾患です。重要なのは「膝だけを見ない視点」——股関節や体幹との連動性を含めた全身のアプローチ、生活環境の調整、そして「痛くても適切に動く」ための継続サポートです。
すえひろ訪問看護ステーションでは、変形性膝関節症のリハビリを担当する理学療法士が、利用者様の自宅に伺い、その方の生活と体に合ったオーダーメイドのプログラムを提供しています。手術を迷っている方も、通院が難しくなってきた方も、「何か自宅でできることはないか」と感じている方も、まずはお気軽にご相談ください。
諦めずに、一緒に「歩ける体」を作っていきましょう。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 変形性膝関節症でも訪問リハビリは受けられますか?
A. はい、受けられます。65歳以上で要介護認定を受けている方は介護保険で、40〜64歳で「両側の膝関節・股関節に著しい変形を伴う変形性関節症」の場合は特定疾病として介護保険の対象となります。主治医からの指示書が必要ですので、まずかかりつけ医にご相談ください。
Q. 手術を勧められていますが、まず訪問リハビリで様子を見ることはできますか?
A. はい、可能です。保存療法(手術以外の治療)は変形性膝関節症の基本であり、運動療法は診療ガイドラインでも強く推奨されています。まず在宅でのリハビリを試みることは、医学的にも有効な選択です。ただし、主治医と相談した上で進めることが重要です。
Q. 訪問PTはどのくらいの頻度で来てもらえますか?
A. 介護保険の場合、ケアプランに基づいて週1〜2回程度が一般的です(※要確認:保険区分・プランによって異なります)。状態や目標によって回数は変わりますので、ケアマネジャーとご相談ください。
Q. 痛みが強い時期にリハビリをしても大丈夫ですか?
A. 痛みが非常に強い時期(炎症が強い急性増悪期)は無理な運動を避ける必要がありますが、適度な動きは継続することが推奨されています。訪問PTが痛みの状態を確認しながら、その日に合った内容を調整しますので、ご安心ください。
Q. 家族が訪問リハビリの場に同席してもいいですか?
A. もちろんです。ご家族も一緒にリハビリの方針や自宅での練習方法を確認いただくことで、日常生活での継続サポートがしやすくなります。ぜひご同席ください。
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