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新卒で訪問看護師になれる|育成プログラムと職場選びの基準

この記事の要点(30秒でわかる)

  • 新卒で訪問看護ステーションに就職する道は開かれており、法令に病棟経験の規定はありません
  • ただし、実際に新卒を受け入れる事業所は限られているのが現状です
  • 受け入れ事業所は段階を踏んだ育成プログラムを備えています(看護協会等の指針も公開済み)
  • 事業所選びが結果を大きく左右します。求人票では分からない5点を見学と面接で確認してください

「新卒で訪問看護に行きたいけれど、まず病棟で経験を積むべきだろうか」。
実習で在宅の現場に触れた看護学生の方から、そうしたご相談をいただきました。

新卒で訪問看護師になる道は開かれています。
法令上、病棟経験を必須とする規定は置かれていません。
新人研修の実施は、訪問看護事業者を含む「病院等の開設者等」の努力義務として法律に定められました。

ただし、厚生労働省の統計で訪問看護に従事する看護師は全体の6.7%にとどまり、新卒はさらに少数派です。
この記事では、なぜ「まず病棟で3年」と言われてきたのかを整理します。
あわせて新卒で入ると何が身につき何が不足するのか、1年目の育成プログラムの中身もお伝えします。

職場選びで見るべき項目は5つです。
受け入れ実績、同行訪問の期間、訪問中の相談体制、スタッフの人数と年齢構成、そして外部研修の扱いです。
進路を決める材料としてお役立ていただけたら幸いです。

新卒で訪問看護師になれるのか|現状と法律の位置づけ

新卒で訪問看護ステーションに就職する道は開かれた状態です。
看護師免許を取得していれば、法令上の資格要件は充足します。
ただし、実際に新卒を受け入れる事業所は限られているのが現状です。

制度がどう定めているかを、先に確認します。

訪問看護で働く看護師の割合と、新人研修の法的な位置づけ 新卒が少数派である現状と、研修実施が求められている事実
訪問看護ステーション 91,022 全就業看護師の 6.7% 訪問看護ステーションで働く看護師の人数です。就業先としては少数派にあたります。
25歳未満の看護師 112,853 全体の 8.3% 就業看護師のうち25歳未満が占める人数です。若手層自体も全体では多くありません。
新人研修の実施 努力義務 看護師等の人材確保の促進に関する法律 第5条 訪問看護事業者を含む病院等には、新人看護職員への研修の実施が努力義務として定められています。
※ 新卒が少数派であることと、研修体制が求められていることは、別々の事実です。数の少なさは、受け入れる仕組みがないことを意味するものではありません。
出典: 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」/看護師等の人材確保の促進に関する法律 第5条

病棟経験を求める法令上の規定はない

訪問看護師として働くのに要るのは、看護師または保健師の免許です。
准看護師の方も看護職員として従事できますが、管理者に就くことはできません。
根拠は、平成11年厚生省令第37号の第60条です。

同条は、看護職員を常勤換算で2.5以上置くことを求めています。
常勤換算とは、勤務時間の短い職員を常勤職員の何人分にあたるかへ換算する数え方です。
例えば週20時間勤務の方は、常勤が週40時間の事業所では半人分と数えます。
この基準に、経験年数の条件は見当たりません。

つまり「病棟で3年」という慣行は、法令ではなく実務上の助言として広まったものです。
根拠が慣行である以上、事業所の体制次第で新卒の受け入れは成立します。
実際、都道府県単位の育成事業を通じて受け入れに踏み出す事業所が出てきました。

訪問看護で働く看護師は全体の6.7%という現状

厚生労働省の令和6年衛生行政報告例によると、訪問看護ステーションで就業する看護師は91,022人でした。
衛生行政報告例とは、看護職をはじめとする医療関係者の就業状況を国が2年ごとにまとめる統計です。
例えば、看護師が病院・診療所・訪問看護ステーションのどこで何人働いているかが分かります。
常勤換算では79,055.5人にのぼります。
就業看護師全体1,363,142人に占める割合は6.7%でした。

同じ調査で、25歳未満の看護師は112,853人(全体の8.3%)でした。
同調査に就業場所別の年齢構成は示されていませんが、両方の数字を重ねると若手が少ない状況がうかがえます。
周囲に同世代が少ない環境で働く可能性は、あらかじめ想定しておきたい点です

新人研修の実施は事業者の努力義務とされている

看護師等の人材確保の促進に関する法律の第5条第1項に、次の定めがあります。
「病院等の開設者等は……新たに業務に従事する看護師等に対する臨床研修その他の研修の実施……」。
「……その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と定めた条文です。

同法第2条第2項は「病院等」に指定訪問看護事業を行う事業所を含めると定めています。
つまり訪問看護ステーションにも、新人研修を実施する努力義務が課されています。
努力義務であって強制ではありませんが、研修体制を尋ねることは、法律に裏づけられた正当な質問です
面接で遠慮する必要はありません。

なぜ「まず病棟で3年」と言われてきたのか

「まず病棟で経験を積むべき」という助言には、明確な理由が3つ存在します。
その理由の一部は今も生きており、一部は状況が変わりました。
両方を正確に押さえておけば、判断の軸が定まります。

今も生きているのは、訪問看護という仕事の性質に根ざした理由です。
単独で判断する場面が多いこと、同時に複数を見る経験が積みにくいことです。
変わったのは、受け入れ側の体制に関する理由です。
都道府県単位の育成事業が整備され、事業所単独で抱えなくてよくなりました。
理由は大きく3つです。

「まず病棟で」と言われてきた3つの理由 今も生きている理由と、状況が変わりつつある理由を分けて整理
今も生きている理由 単独で判断する場面が多い 訪問先には医師も先輩もいません。その場で見て、聞いて、判断する場面が日常的に生じます。
今も生きている理由 複数の症例を同時に見る経験が積みにくい 1件ずつ完結する働き方のため、同じ時間帯に複数の状態を並べて比べる機会は多くありません。
状況が変わりつつある理由 指導体制が整った事業所が限られていた かつては受け入れ側の体制が課題でした。近年は都道府県単位の育成事業が整備されています。 ※ この点は状況が変わりつつある
3つのうち2つは訪問看護という仕事の性質に根ざした理由で、今も変わりません。変わったのは、事業所が単独で育成を抱えなくてよくなった点です。

単独で判断する場面が多いという訪問看護の性質

訪問看護は、看護師が単独で利用者様のご自宅へ伺う仕事にあたります。
その場に医師も先輩看護師もいない環境です。
状態の変化に気づいたとき、まず自分の目と手で評価しなければなりません。

病棟であれば、迷ったときに近くの先輩へすぐ相談できる環境です。
訪問先では、電話をかけるという一手間が挟まります。
この環境の違いが、経験を先に積むべきという助言の最大の根拠です
ただし、相談できないという意味ではありません。
電話やICTを使って連絡が取れる体制があれば、この差はかなり埋まります。

同時に複数の症例を見る経験が積みにくい

病棟では、複数の方を同時に受け持つ形が基本です。
優先順位をつけながら動く経験が、日々積み重なる環境です。
訪問看護は1件ずつ完結する働き方のため、この訓練は積みにくいでしょう。

また、病棟では同じ疾患の方を短期間に何人も担当する機会があります。
経過の違いを比較しながら理解を深められる点も特徴です。
訪問看護では、一人の方をじっくり見る代わりに、こうした比較の機会が限られます。

その代わり、同じ方の状態が季節や生活の変化でどう動くかを追えます。
短期間の横の比較か、長期間の縦の観察か。
得られる経験の質が違うと捉えていただくとよいと考えています。

指導体制が整った事業所が限られていた時期があった

かつては、新卒を受け入れる体制を持つ訪問看護ステーションが限られていました。
小規模な事業所が多く、教育に人手を割く余裕がなかったからです。
「新卒は無理」という助言は、この実態を映したものでした。

ただし、この状況は変わりつつある段階です。
都道府県の看護協会や訪問看護ステーション協会が、新卒訪問看護師の育成事業に取り組んでいます。
大阪府や富山県では、育成プログラムやガイドラインが公開されました。
事業所単独ではなく、地域全体で育てる仕組みが動き始めています

近年は新卒向け育成プログラムが各地で整備されている

大阪府訪問看護ステーション協会や富山県看護協会など、複数の団体が新卒者向けの育成プログラムを公開しました。
内容は、階層別の研修、病院での実習、地域施設での研修、技術研修の組み合わせが中心です。
参加する事業所は、このプログラムに沿って年間の育成計画を組み立てる流れです。

厚生労働省の新人看護職員研修ガイドライン(平成26年改訂版)も、研修設計の土台に据えられました。
新卒で訪問看護を目指す場合、こうした地域の育成事業に参加している事業所を探す方法が有効です。
お住まいの都道府県の看護協会へ問い合わせれば、実施状況が分かります。

新卒で訪問看護に入ると身につく力・不足しがちな経験

新卒で訪問看護に入った場合、病棟に入った同期とは違う力が育ちます。
一方で、この段階では積みにくい経験もはっきりしているはずです。

身につくのは、生活の場で情報を読み取る力と、人と人をつなぐ力です。
積みにくいのは、急性期の医療処置と同時進行の判断になります。
どちらが優れているという話ではなく、育つ順序が違うと捉えていただければと思います。
両面を正直に書かせてください。

まず、身につく力から見ていきます。

新卒で訪問看護に入ると、身につく力と不足しがちな経験 得られるものと、意識して補う必要があるものを並べて確認する
身につく力 不足しがちな経験
生活の場で情報を集める観察力/住まいや暮らしぶりから状態の変化を読み取る ご家族を含めた関係づくり/ご本人だけでなく支える方とも向き合う 多職種と直接やり取りする調整力/主治医やケアマネジャーと自分の言葉で話す 限られた物品で工夫する力/その場にあるもので方法を組み立てる 一人の方を長期間見守る継続性/月単位・年単位で経過を追う 急性期の医療処置の頻度/人工呼吸器や輸血などに触れる機会は限られる 同時に複数を受け持つ優先順位づけ/1件ずつ完結するため機会が少ない 同じ疾患を短期間に複数担当する比較の機会/症例を並べて学ぶ場面が持ちにくい 24時間の経過観察/訪問と訪問の間の変化は直接見られない
○ 訪問看護の日常業務のなかで積み重ねやすいもの / △ 意識して機会をつくらないと積みにくいもの
不足しがちな経験は、外部研修や提携病院での実習、事例検討会など、事業所の仕組みで補う設計になっているかどうかが確認どころになります。

身につく力1:生活の場で情報を集める観察力

訪問看護では、利用者様の生活の場に足を踏み入れる形になります。
玄関の靴の並び方、台所の様子、薬の置き場所。
病棟のベッドサイドでは得られない情報が、そこに詰まっています。

数値だけでなく、暮らしぶりから状態を読み取ります。
この視点は、新卒の早い段階から身につけておくと土台になります。
生活を見る目は、あとから病棟へ移ったときにも活きる力です
退院支援の場面で、ご自宅での暮らしを想像できるかどうか。

私自身、在宅で数年働いてから退院前カンファレンスに出た際、見るべき点が変わったと実感しました。
手すりの位置や玄関までの動線が、自然と頭に浮かぶようになったためです。

身につく力2:ご家族を含めた関係づくり

訪問看護では、ご家族と話す時間が長くなる傾向です。
介護の負担、生活の不安、これからの見通しが話題にのぼります。
医療の話だけでは終わらない会話が日常的に生まれます。

面会時間が限られる病棟と比べると、ご家族との距離は明らかに近くなります。
その分、信頼を得るまでの過程も丁寧に踏まなければなりません。
新卒から日々この経験を重ねれば、対人援助の力が着実に育ちます。
ご家族の疲れに気づいて声をかける場面もあります。
そうした場面は、教科書ではなく現場でしか学べません。

身につく力3:多職種と直接やり取りする調整力

訪問看護師は、主治医やケアマネジャー、薬剤師、リハビリ職と直接やり取りする立場です。
病棟のように、間に立つ人がいる環境ではないからです。
自分の言葉で状況を伝え、必要なことを依頼する場面の連続です。

最初は緊張するでしょう。
ただ、この経験を早くから積めば、他職種の視点を短期間で理解できます。
連携は訪問看護の中核であり、新卒から鍛えられる領域です
報告の型は、先輩の電話を横で聞いているうちに身についてきます。

私も新しく入ったスタッフには、まず自分の電話を横で聞いてもらうようにしています。
何をどの順で伝えるかは、実際のやり取りを見るのが一番早いためです。
最初は同行訪問の場で、やり取りの様子を観察させてもらってください。

不足しがちな経験:急性期の医療処置と同時進行の判断

正直にお伝えすると、積みにくい経験も存在します。
人工呼吸器の管理、輸血、急変時の一次対応が代表例です。
急性期病棟では日常的に触れる場面も、訪問看護では頻度が下がるでしょう。

同時に複数を受け持つ優先順位づけも、経験を積みにくい領域でしょう。
これらが必要になる職場へ将来移るつもりなら、あらかじめ意識しておきたい点です。
訪問看護の事業所によっては、提携病院での実習を育成計画に組み込む例も見られます。

新卒を受け入れる事業所の育成プログラム|何が用意されているか

新卒を受け入れる事業所は、段階を踏んだ育成プログラムを備えています。
都道府県の看護協会や訪問看護ステーション協会が作成した指針も公開済みです。
典型的な1年目の流れをお示しします。

入職から1年間の進み方には、おおまかな型が存在します。

新卒訪問看護師の1年目|標準的な育成の流れ(各地の育成プログラムより)
時期主な内容訪問の形
入職〜3か月事業所の体制と記録システムの習得、地域の理解、基本的な看護技術の確認同行訪問が中心
4〜6か月状態の安定した利用者様の担当を開始、報告と相談の型を身につける同行と単独の併用
7〜12か月担当する利用者様を段階的に増やす、医療処置のあるケースへ広げる単独訪問が中心
通年外部研修への参加、提携病院での実習、事例検討会での振り返り研修・実習

1年目の進み方を、時間軸で示します。

新卒訪問看護師の1年目 育成ロードマップ 入職から単独訪問が中心になるまでの、時間軸ごとの進み方
STEP 1 入職 ~ 3か月 同行訪問が中心
事業所の体制と記録システムの習得 担当する地域の理解 基本的な看護技術の確認
STEP 2 4 ~ 6か月 同行と単独の併用
状態の安定した利用者様の担当を開始 報告と相談の型を身につける
STEP 3 7 ~ 12か月 単独訪問が中心
担当する利用者様を段階的に増やす 医療処置のあるケースへ広げる
通年の取り組み(1年を通して並行) 外部研修への参加 ・ 提携病院での実習 ・ 事例検討会での振り返り
※ 期間は事業所と本人の習熟度により前後します。

1年目の標準的な流れ(同行訪問から単独訪問へ)

入職直後から一人で訪問させる事業所はないはずです。
最初の数か月は、先輩看護師との同行訪問が続きます。
道順、玄関先での挨拶、ご家族との関係づくり。
医療技術以外に覚える事柄が多く待っています。

単独訪問を始める時期は、本人の習熟度を見て決めるのが一般的です。
訪問看護師の一日のスケジュールを知っておくと、同行訪問で何を見るべきかが具体化します。
状態の安定した利用者様から担当を始め、慣れてきた段階で医療処置のあるケースへ広げる流れです。
この順序を丁寧に組める事業所かどうかが、新卒にとって最も大切な条件です

外部研修と病院実習を組み合わせる形

事業所内の育成だけでは、経験の幅に限りが出ます。
そのため、外部研修や提携病院での実習を組み込むプログラムが多く見られます。
急性期の場面に触れる機会を、意図的に確保する設計です。

都道府県の看護協会が実施する新人研修に参加する道も開かれています。
同じ時期に訪問看護へ入った同期と出会える点も、この仕組みの利点です。
一人職場のような孤立感を防ぐ効果が期待できます。

病院に就職した同級生と比べて焦る場面も出てきます。
同じ道を選んだ仲間がいる環境は、その意味でも支えです。

プリセプター制度と相談体制

多くの事業所が、新卒に対して担当の指導者を置く運用です。
訪問看護の研修制度がどう設計されているかは、事業所を選ぶ際の判断材料としてお使いいただけます。
プリセプターと呼ばれる先輩看護師が、日々の相談窓口になる形です。
訪問から戻ったあとに振り返る時間を、業務として確保する事業所も見られます。

大切なのは、訪問中に連絡が取れるかどうかです。
訪問先で判断に迷った場面で、その場で電話やICTを使って相談できる体制があるか。
ICTとは情報通信技術を指します。
例えばタブレットで記録を共有し、写真を送って助言をもらう仕組みが広がりました。

都道府県単位の育成事業という後ろ盾

事業所単独で新卒を育てるには、人手も知見も欠かせません。
そこで、都道府県の看護協会や訪問看護ステーション協会が育成事業を担う形が広がりました。
研修の企画、指導者の養成、事業所間の情報共有を担う仕組みです。

こうした事業に参加する事業所は、育成の型を備えています。
新卒で訪問看護を目指す場合、まず地域の看護協会へ問い合わせる方法が近道です。
受け入れ実績のある事業所を、地域単位で把握する窓口が存在します

職場選びで確認したい5点|新卒が失敗しないために

新卒で訪問看護に入る場合、事業所選びが結果を大きく左右します。
求人票だけでは分からない項目を、見学と面接で確かめておきたいところです。

特に大切なのは、同行訪問の期間を柔軟に延ばせるかという点です。
ここが決まっていれば、経験の浅い方でも見通しを立てられます。
見るべき項目を5つ挙げます。

面接でそのまま使える質問の形にまとめました。

見学・面接でそのまま使える 確認5項目 新卒で訪問看護ステーションを選ぶときに聞いておきたいこと
聞きにくいと感じる内容ほど、答え方に事業所の姿勢が出ます。チェックを付けながらご活用ください。
※ チェックの状態は画面を読み込み直すと元に戻ります。記録を残す場合はお手元にお控えください。

1:新卒の受け入れ実績があるか

最初に確かめたいのが、過去の受け入れ実績です。
何人受け入れたか、その方たちが今も在籍しているか。
この2点を尋ねれば、育成の実態がかなり見えてきます。

実績がない事業所が悪いという話ではないでしょう。
ただし、その場合は育成の型を一から作ることになるでしょう。
自分が第一号になる覚悟があるかどうか、事前に考えておきたいところです。

熱意のある事業所であれば、一緒に型を作る面白さも生まれます。
管理者がどこまで具体的に育成の構想を語れるかで、判断していただければと思います。

2:同行訪問の期間をどう設計しているか

同行訪問の期間は、事業所によって大きく違います。
数週間で単独訪問へ移る事業所もあれば、半年以上かける事業所も見られます。
新卒であれば、長めに確保できる事業所を選びたいところです。

さらに大切なのは、期間を柔軟に延ばせるかという点でしょう。
「予定では3か月ですが、不安が残れば延ばせますか」と尋ねてみてください。
この質問への答え方に、事業所の姿勢が表れます

3:訪問中に相談できる体制があるか

訪問先で判断に迷ったとき、誰にどう連絡するのか。
新卒にとって、これが最も切実な問いです。
面接では「訪問中に迷ったとき、どういう手順で相談しますか」と具体的に聞いてください。

管理者や先輩が電話に出られる体制があるかどうか。
タブレットなどで写真を共有して助言をもらえるか。
即座に答えが返ってくる事業所は、この点を日常的に運用しています。

逆に「その場で考えてもらいます」という答えが返ってきたら、注意が必要です。
新卒の段階では、一人で抱え込む状況を避けたいところです。

4:スタッフの人数と年齢構成

スタッフ数が少ない事業所では、指導に割ける時間も限られます。
また年齢構成が偏っていると、相談しやすさにも響いてきます。
見学の際に、事務所の様子を見てみてください。

人数を求人票に書いている事業所もあります。
書かれていなければ、面接で尋ねて構いません。
「何人の事業所ですか」という質問は、失礼にはあたりません

年齢の近い先輩がいるかどうかも、聞いておくと安心材料として残ります。
世代が離れていても相談しやすい職場はありますが、事前に知っておくに越したことはありません。

5:外部研修に出る時間と費用の扱い

外部研修は、新卒にとって貴重な学びの機会です。
勤務時間として扱われるか、費用は事業所が負担するか。
この2点で、研修への出やすさが変わってきます。

「研修は業務扱いですか」「費用の補助はありますか」と確認してください。
就業規則や研修規程に定めを置く事業所も見られます。
制度として整っているかどうかが、継続的に学べる環境かを映します。

訪問看護は、経験を積むほど判断の幅が広がる仕事です。
学び続けられる環境かどうかは、5年後10年後の自分に直結します。

新卒で入るか、数年病棟を経てから入るか

どちらの道を選んでも、訪問看護師として働けます。
判断の分かれ目は、自分がどんな環境で伸びるかという点です。

動機がはっきりしていて一人で考えて動ける方は、新卒からでも進めます。
技術を先に固めたい方や同期と学びたい方には、病棟からの入り方が向きます。
どちらを選んでも訪問看護師にはなれますので、順序の違いと捉えてください。
選ぶ際の視点をお伝えします。

タイプ別に見ていきます。

新卒で訪問看護へ / 病棟を経てから訪問看護へ 優劣ではなく、ご自身の状況と希望に合うかどうかで考える
新卒で訪問看護に入るほうが向いている方 当てはまる項目が多いほど検討しやすい
在宅で暮らす方の生活を支えたいという動機がはっきりしている 一人で考えて動くことに抵抗が少ない じっくり関係を築く働き方を望んでいる 受け入れ体制のある事業所を見つけられた
病棟を経てから入るほうが向いている方 当てはまる項目が多いほど検討しやすい
医療処置の技術を先に固めたい 同期と一緒に学ぶ環境で伸びるタイプだと感じている 急変対応の経験を積んでおきたい 通える範囲に新卒受け入れの事業所がない
どちらを選んでも訪問看護師になれます 違いは道のりであって、行き先ではありません。ご自身の動機と、通える範囲の受け入れ体制を照らし合わせてお考えください。
※ 向き不向きは目安です。同じ方でも時期によって当てはまる項目は変わります。

判断の目安を、タイプ別に整理しました。

新卒で訪問看護へ進むか、病棟を経るか|4タイプ別の目安
・縦軸 : 一人で判断して動くことへの抵抗(少ない / 大きい)
・横軸 : 在宅で暮らす方を支えたいという動機の明確さ(これから固める / 明確)
動機 : これから固める
動機 : 明確
抵抗
少ない
抵抗 少ない × 動機 これから固める
訪問看護でも病棟でも可
どちらの現場にも適応しやすいタイプです。見学へ足を運び、実際の空気を見てから決める進め方が合います。
抵抗 少ない × 動機 明確
新卒から訪問看護が向く
動機と適性が重なるタイプです。新卒の受け入れ実績がある事業所を探し、同行訪問の期間を確認して進みます。
抵抗
大きい
抵抗 大きい × 動機 これから固める
まず病棟で経験を積む
病棟で数年を過ごし、判断の土台と動機の輪郭を固めてから訪問看護へ移る選択が現実的です。
抵抗 大きい × 動機 明確
教育体制の厚い事業所を選ぶ
同行訪問の期間が長く、訪問中に相談できる手順が整った訪問看護ステーションを選ぶと、無理なく進められます。
← 動機 これから固める    動機 明確 →

新卒で入るほうが向いている方

在宅で暮らす方の生活を支えたい——その思いがはっきりしている方には、新卒からの選択が向いています。
目的意識が明確なほど、環境の違いを乗り越えやすくなるからです。

一人で考えて動くことに抵抗が少ない方にも合うでしょう。
指示を待つより、自分で判断して確認するほうが性に合っているという方もいらっしゃいます。
そうした方であれば、訪問看護の働き方は早い段階から馴染みます。

病棟を経てからのほうが向いている方

医療処置の技術を先に固めたい方には、病棟からの入り方が向いています。
点滴、採血、吸引といった技術を、指導者が近くにいる環境で数多く経験できるためです。
同期と一緒に学ぶ環境で伸びるタイプの方にも、病棟のほうが合うでしょう。

また、近くに新卒受け入れの事業所がないという現実的な問題も生じます。
無理に遠方の事業所を選ぶより、まず病棟で経験を積む選択のほうが結果的に良いこともあるでしょう。
環境が整わないなら急がない、という判断も立派な選択です

「3年」という数字に根拠はあるのか

よく言われる「3年」に、法令上の根拠はありません。
一般的な新人看護職員研修が1年程度で組まれること、そして一通りの経験を積むまでの体感的な期間。
この2つから慣習的に語られてきた数字です。

大切なのは年数ではなく、何を経験したかでしょう。
2年で必要な力を身につける方もいれば、5年経っても不安が残る方もいらっしゃるでしょう。
「3年」を目安として扱うのは構いませんが、唯一の条件と受け取る必要はありません

すえひろの新卒採用に対する考え方

私たちは、新卒の方の応募を一律にお断りする方針をとらずにきました。
ただし受け入れには条件があり、そこは正直にお話ししておきたいところです。

判断しているのは資格や年齢ではなく、責任を持って育てられる体制を組めるかどうかです。
中途半端な受け入れは、ご本人にとっても利用者様にとっても不利益です。
在学中の見学やご相談は、時期を問わずお受けしています。
考え方をお伝えします。

受け入れを判断する流れを示します。

すえひろが新卒の受け入れを判断する流れ
STEP 1
ご応募・ご相談
在学中の見学・ご相談も含みます
STEP 2 / 判断
同行訪問の期間を確保できるか
指導にあたるスタッフの時間が取れるか
STEP 3 / 判断の結果は次の2つに分かれます
○ 確保できる場合
受け入れの検討へ
同行訪問の期間と担当スタッフを組み、具体的な受け入れの検討へ進みます。
△ 確保が難しい場合
時期を改めてご相談
体制が整う時期の見通しをお伝えし、改めてのご相談をお願いしています。見学は引き続き歓迎しています。

受け入れの可否は体制を組めるかで判断します

新卒の方を受け入れるには、同行訪問の期間を十分に確保する体制が欠かせません。
指導にあたるスタッフの時間も、まとまって必要です。
そのため、その時々の人員体制によって受け入れの可否が変わってきます。

「新卒だから」という理由でお断りする運用はとっていません。
判断の基準は、責任を持って育てられる体制を組めるかどうかです。
中途半端な受け入れは、ご本人にとっても利用者様にとっても不利益になると考えています

資格取得の支援は勤続年数で区切りません

すえひろでは、認定看護師・専門看護師の資格取得を支援する体制を整えました。
この支援に、勤続年数の条件は設けておりません。
専門職として常に学び続けることを、個人の努力だけに任せたくないと考えているためです。

私たちが理想とするスタッフ像は「志が高い、愛ある開拓者」です。
新卒であるかどうかで、その姿勢に線を引くことはありません。

新卒で入られた方にも、早い段階から学ぶ機会が開かれた形です。
働きながら認定看護師を目指す方法は、別の記事で詳しくお伝えしました。

見学と相談は在学中からお受けします

就職活動の時期に限らず、在学中の見学やご相談も歓迎します。
実習で在宅に触れて興味を持たれた段階のご連絡でも構いません。
訪問看護がどんな仕事なのか、実際に見ていただくのが最も確かな判断材料でしょう。

「無理かもしれない」と諦める前に、様々な可能性を一緒に探っていきましょう。
専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

ここまでの内容を、行動に移すためのチェックリストにまとめました。

在学中から進められる準備 6項目
※ 各項目はクリックでチェックできます(ページを再読み込みすると元に戻ります)

新卒の訪問看護に関するよくある質問

新卒でも訪問看護ステーションに就職でき、最初から一人で訪問することもありません。
看護学生の方から実際にいただくご質問を、6つにまとめました。
就職の可否、その後の転職、単独訪問、給与、技術の習得、すえひろの方針が中心です。

新卒の訪問看護に関するよくある質問
※ 質問をクリックすると答えが開きます
Q1新卒で訪問看護ステーションに就職できますか
就職できます。看護師免許があれば、法令上は病棟経験を求められません。
ただし新卒の受け入れには育成体制が必要なため、募集している事業所は限られます。都道府県の看護協会や訪問看護ステーション協会が新卒育成事業を実施する地域もありますので、そちらから情報を集める方法も有効です。
Q2新卒で入ると、あとで病院に転職できなくなりますか
そうした心配は要りません。訪問看護から病院へ移る方は実際にいらっしゃいます。
ただし急性期病棟では、人工呼吸器の管理など同時進行で判断する場面が多くあり、その経験を求められることもあるでしょう。訪問看護で身につく観察力や多職種との調整力は、どの職場でも評価される力です。
Q3新卒でも一人で訪問することになりますか
最初から一人で訪問する流れにはなっていません。
育成体制のある事業所では、数か月から1年程度をかけて同行訪問を重ね、段階的に単独訪問へ移ります。開始時期は本人の習熟度を見て決めるのが一般的です。面接では「単独訪問はいつから始まりますか」と具体的にご確認ください。
Q4新卒訪問看護師の給料は病院より低いですか
訪問看護と病院を直接比べた公的な統計はなく、事業所ごとの差も大きいため一概には言えません。
参考として、看護師(男女計)のきまって支給する現金給与額は月額365,900円、年間賞与その他特別給与額は856,400円でした。これは全国・全就業形態を含む平均値で、新卒に限った数字ではありません。
訪問看護は夜勤がないぶん夜勤手当がつきません。一方で、オンコール手当や訪問件数に応じた手当を設ける事業所も見られます。求人票では基本給と手当の内訳、固定残業代が分離して記載されているかをご確認ください。
出典 : 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」
Q5訪問看護に必要な技術は、新卒でも身につきますか
身につきます。ただし習得の順序が病棟とは異なります。
訪問看護では、状態の安定した利用者様から担当を始め、医療処置の多いケースへ段階的に広げていく進め方が一般的です。技術面よりも、限られた情報から判断し、必要なときに相談できる力を先に育てる事業所が多く見られます。
Q6すえひろは新卒を採用していますか
新卒の方のご応募を、一律にお断りする方針はとっていません。
ただし受け入れには同行訪問の期間を確保できる体制が必要ですので、その時々の状況によって判断させていただいています。在学中の見学やご相談は歓迎していますので、まずはお問い合わせいただければと思います。

Q. 新卒で訪問看護ステーションに就職できますか。

就職できます。
看護師免許があれば、法令上は病棟経験を求められません。
ただし新卒の受け入れには育成体制が必要なため、募集している事業所は限られます。
都道府県の看護協会や訪問看護ステーション協会が新卒育成事業を実施する地域も存在します。
そちらから情報を集める方法も有効です。

Q. 新卒で入ると、あとで病院に転職できなくなりますか。

そうした心配は要りません。
訪問看護から病院へ移る方は実際にいらっしゃいます。
ただし急性期病棟では、人工呼吸器の管理など同時進行で判断する場面が多くあります。
その経験を求められることもあるでしょう。
訪問看護で身につく観察力や多職種との調整力は、どの職場でも評価される力です。

Q. 新卒でも一人で訪問することになりますか。

最初から一人で訪問する流れにはなっていません。
育成体制のある事業所では、数か月から1年程度をかけて同行訪問を重ね、段階的に単独訪問へ移ります。
開始時期は本人の習熟度を見て決めるのが一般的です。
面接では「単独訪問はいつから始まりますか」と具体的に確認してください。

Q. 新卒訪問看護師の給料は病院より低いですか。

訪問看護と病院を直接比べた公的な統計はなく、事業所ごとの差も大きいため一概には言えません。
参考として、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(職種別第1表)を見てみます。
看護師(男女計)のきまって支給する現金給与額は月額365,900円でした。
これは残業代などを含めて毎月決まって支払われる給与で、基本給そのものではありません。
年間賞与その他特別給与額は856,400円です。
ただしこれは一般労働者(短時間労働者を除く)・企業規模10人以上・産業計の全国平均で、新卒に限った数字ではありません。

訪問看護は夜勤がないぶん夜勤手当がつきません。
一方で、オンコール手当や訪問件数に応じた手当を設ける事業所も見られます。

オンコール手当とは、夜間や休日に緊急の連絡を受ける待機当番に対して支払われる手当を指します。
例えば待機1回あたりの金額と、実際に出動した場合の金額が別に設定されます。
求人票では基本給と手当の内訳、固定残業代が分離して記載されているかをご確認ください。

Q. 訪問看護に必要な技術は、新卒でも身につきますか。

身につきます。
ただし習得の順序が病棟とは異なります。
訪問看護では、状態の安定した利用者様から担当を始め、医療処置の多いケースへ段階的に広げていく進め方が一般的です。
技術面よりも、限られた情報から判断し、必要なときに相談できる力を先に育てる事業所が多く見られます。

Q. すえひろは新卒を採用していますか。

新卒の方のご応募を、一律にお断りする方針はとっていません。
ただし受け入れには同行訪問の期間を確保できる体制が必要ですので、その時々の状況によって判断させていただいています。
在学中の見学やご相談は歓迎していますので、まずはお問い合わせいただければと思います。

まとめ

新卒で訪問看護師になる道は開かれており、法令に病棟経験の規定はありません。

この記事の要点 3つ
POINT 01
法令上の位置づけ
病棟経験の規定なし
看護師免許があれば、法令上は病棟経験を求められません。新人研修の実施は、訪問看護事業者を含む事業者の努力義務と定められています。
※ 出典 : 看護師等の人材確保の促進に関する法律 第5条
POINT 02
訪問看護で働く看護師の割合
6.7%
訪問看護ステーションで就業する看護師は91,022人で、就業看護師全体1,363,142人の6.7%にあたります。まだ少数派の進路です。
※ 出典 : 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」
POINT 03
職場選びで確認したい5点
5つの確認項目
・新卒の受け入れ実績
・同行期間と延長の可否
・訪問中の相談体制
・スタッフの人数と年齢構成
・外部研修の扱い
※ 見学と面接の場で、一つずつご確認ください。

厚生労働省の統計では、訪問看護で働く看護師が全体の6.7%にとどまりました。
「まず病棟で」と言われてきたのは、単独で判断する場面が多いこと、同時に複数を見る経験が積みにくいことが理由です。
ただし近年は、都道府県単位の育成事業が整備されてきました。

職場選びでは5点を確認してください。
新卒の受け入れ実績、同行訪問の期間と延長の可否、訪問中の相談体制、スタッフの人数と年齢構成、外部研修の扱いです。

訪問看護は、ご自宅での療養生活を医療面から支えるサービスです。
私たちすえひろ訪問看護ステーションは、利用者様お一人おひとりが望まれる生活の実現を目指してきました。

制度にとらわれず、「どうすればこの方が幸せに暮らせるか」を本気で考え、諦めずに実行していきます。

「こんなこと相談してもいいのかな」「制度上難しいと言われたけれど…」と迷われることも、どうぞお気軽にご相談ください。
専門職としての責任と誇りを持って、真摯に向き合わせていただきます。

在学中の見学のご希望も含め、当ステーションのお問い合わせ窓口までご連絡いただければと思います。

本記事は、訪問看護の現場に長く携わるすえひろ訪問看護ステーションの看護師が、制度と現場の両面から確認のうえ作成しました。

参考文献・出典

本記事の数値と法令の記述は、以下の一次資料に基づいています。
制度は改正によって内容が変わりますので、実際に手続きを進められる際は最新版をご確認ください。

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