退院してから初めて外出しようとしたとき、玄関の段差や道路のでこぼこが気になって足がすくんでしまう——そんな経験をお持ちのご家族は、決して少なくありません。車いすや歩行器を使い始めたばかりの利用者様にとって、「道が安全かどうか」は外出の意欲そのものに直結します。
訪問看護師は、毎日足立区内の道を歩いて利用者様のお宅を訪問しています。地図には載らない段差の場所、意外と走りやすい抜け道、公園へのアクセス——そうした現場の肌感覚は、どんなバリアフリーマップにも書かれていない情報です。
この記事では、足立区のバリアフリー道路整備の現状を行政資料をもとに整理しながら、すえひろ訪問看護ステーションの看護師が現場で感じてきた「使いやすい道」の実態をお届けします。外出を諦めていた利用者様やご家族に、少しでも安心して一歩を踏み出していただけるよう、誠実にお伝えしていきます。
目次
足立区のバリアフリー道路整備はどこまで進んでいるか
足立区は、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)に基づき、「足立区バリアフリー推進計画」を策定し、重点整備地区を中心に道路・交通環境の整備を進めています。現在の重点整備地区は10地域で、北千住駅・綾瀬駅・六町駅・西新井駅・竹ノ塚駅・梅島駅・江北・総合スポーツセンター周辺・花畑・区役所周辺が指定されています(出典:足立区バリアフリー推進計画)。
各重点整備地区ではバリアフリー地区別計画が順次策定されており、綾瀬・北綾瀬周辺地区、江北周辺地区、六町周辺地区、花畑周辺地区などで計画が公表されています。六町周辺地区の計画は令和7年3月に策定されたばかりで、区全体の整備はまだ途上にあります(出典:足立区バリアフリー地区別計画・六町周辺地区編)。
重点整備地区の駅周辺では、歩道の段差解消やスロープ設置が進んでいます。一方、区内全域を網羅するには時間がかかるのが実情です。竹ノ塚・鹿浜・江北などの周縁部では、まだ歩道の段差や傾斜が残るエリアがあることを、現場の訪問看護師は日々感じています。整備が進む地域と課題が残る地域の差を知ったうえで外出計画を立てることが、安全につながります。
「足立区では、駅周辺を中心に10の重点整備地区を設け、バリアフリー化を段階的に推進しています。一方で区全域の整備完了には至っておらず、エリアによって道路環境に大きな差があります。」
車いす・歩行器で外出するときに現場で感じる「段差の現実」
車いすは、1cm以上の段差で前輪が引っかかり、自力での通過が難しくなるとされています。段差をそのまま乗り越えようとすると、前方に体が放り出される危険があるため、介助者と事前に確認を取ることが欠かせません。歩行器についても、車輪タイプは段差や敷居で立ち往生しやすく、持ち上げようとした瞬間にバランスを崩すリスクがあります。
傾斜にも注意が必要です。車いすでスロープを移動する際は、上りは前向き、下りは後ろ向きが原則です。前向きのまま下ると前方へ転落する危険があり、利用者様も強い恐怖を感じます。「ちょっとした坂道」に見えても、介助者がしっかり声をかけながら後ろ向きに押すことが大切です。
足立区の道路で訪問看護師がよく目にする課題には、次のようなものがあります。商店街の前後に残る歩道の段差、側溝をまたぐための細い板、電柱が歩道の中央に立ちはだかる区間、雨後にぬかるむ砂利道——こうした場所は地図では見えません。「行ったことがある道」の記憶が、最も頼りになる安全情報です。
訪問看護師が利用者に勧める足立区内の「走りやすいルート」
すえひろ訪問看護ステーションの看護師が日々の訪問で感じてきた「使いやすいエリア」をご紹介します。あくまでも現場の肌感覚に基づく情報ですので、事前の下見と組み合わせてご活用ください。
北千住駅周辺は、駅前から伸びる千住大通りや学園通りを中心に歩道の整備が進んでいます。段差の少ないフラットな区間が多く、車いすでの移動がしやすいエリアです。ただし、旧日光街道沿いの商店街では舗装の継ぎ目や段差が残る箇所もあるため、メインストリートを選ぶと安心です。
綾瀬駅東口から東綾瀬公園(足立区綾瀬)へのルートは、看護師のあいだでも「走りやすい」と評判です。東綾瀬公園は全長約2kmのU字型の公園で、せせらぎ沿いの遊歩道は段差が少なく、バリアフリーマップも整備されています(問合せ:03-3605-0005)。障がい者用駐車スペースも4台確保されており、車での来園にも対応しています。
舎人公園(足立区舎人)も、車いすや歩行器での外出先として人気があります。約65ヘクタールの広大な公園で、多くのエリアが舗装されています。バリアフリーマップはサービスセンター(03-3857-2308)に問い合わせると入手できます。
一方、竹ノ塚駅周辺から放射線道路方面、鹿浜地区の細街路などは、歩道幅が狭いまま残る区間や段差が点在するエリアが多いと感じています。初めての外出の際は、看護師や理学療法士と一緒に「下見」をすることを強くお勧めします。
外出前に確認しておきたいバリアフリーマップと区の相談窓口
足立区は「障がい者のしおり2025」を作成・公開しており、高齢者や障がいのある方が外出する際に必要な情報がまとめられています。区内の公共施設・交通機関のバリアフリー情報も掲載されており、電子ブックまたはPDFで閲覧できます(出典:足立区公式サイト)。紙版が必要な方は区役所窓口でご確認ください(※要確認:紙版の配布窓口の詳細)。
また、東京都福祉局は区市町村バリアフリーマップ一覧(令和7年2月現在)を公開しており、足立区のマップへのリンクも掲載されています(出典:東京都福祉局公式サイト)。外出前にデジタル版を確認しておくと、目的地までのルートをある程度イメージできます。
区の窓口では、道路・歩道の整備に関する相談も受け付けています。「この道路に段差がある」「歩道が狭くて通れない」といった情報は、区の都市建設部などに伝えることで改善の一助になります。また、介護保険サービスや訪問看護の利用に関する相談は、各地域包括支援センターが窓口になっています。「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」という姿勢で、すえひろの看護師も一緒に考えさせていただきます。
「足立区が配布するバリアフリーマップと、東京都福祉局が公開する区市町村バリアフリーマップ一覧を活用することで、外出前に道路環境の概要を把握できます。」
住宅から最寄り駅・公園までの安全な外出計画の立て方
外出計画は、「行きたい場所を決める」だけでは不十分です。自宅の玄関先から目的地まで、一連の動線を安全に確認することが大切です。訪問看護師や理学療法士が関わることで、利用者様の身体状況に合わせた無理のない計画を立てられます。
まず確認したいのは、玄関から道路に出るまでのルートです。段差・スロープの有無、玄関前の舗装状態などを介助者と一緒に確認しておきましょう。次に、目的地までの道順を実際に歩いて(または車で通って)確認します。歩道の段差・幅・傾斜・路面状態のほか、途中に休憩できるベンチや日陰があるかも重要なポイントです。
訪問看護師が屋外での歩行を支援する場合、①自立支援として利用者様の生活機能の維持・向上を目的とすること、②医師からの訪問看護指示書に具体的な指示が記載されていること、③ケアマネジャーと連携した訪問看護計画に位置づけられていること——この3つが算定の要件です。ケアマネジャーに相談しながら計画を整えることで、専門職が同行するかたちでの外出リハビリが可能になります(参考:令和6年度介護報酬改定。算定要件の詳細はケアマネジャーまたは保険者にご確認ください)。
季節の配慮も忘れずに。5月の外出シーズンは気候が過ごしやすい一方、急な雨で路面が滑りやすくなることがあります。外出前に天気予報と路面状態を確認し、無理のない時間帯・距離から始めることをお勧めします。「一緒に考えさせてください」——利用者様のペースで、一歩ずつ外の世界を広げていくお手伝いができることを、私たちは何より大切にしています。
まとめ
足立区のバリアフリー道路整備は、北千住・綾瀬などの重点整備地区を中心に着実に前進しています。しかし区内全域が均一に整備されているわけではなく、竹ノ塚・鹿浜などの周縁部では依然として段差や狭い歩道が残るエリアがあります。外出の安全は「どこを通るか」の選択から始まります。
すえひろ訪問看護ステーションでは、日々の訪問で培った足立区の道路の実態を、利用者様とご家族と共有しながら、外出計画のサポートをさせていただいています。「退院したけれど外に出る自信がない」「道路環境が心配で一歩が踏み出せない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
可能性を信じて、一緒に外の世界へ踏み出しましょう。

よくある質問(FAQ)
Q1. 足立区内で車いすでの外出に適したエリアはどこですか?
北千住駅周辺と綾瀬駅東口から東綾瀬公園にかけてのルートは、歩道の整備が比較的進んでいて走りやすいと感じています。舎人公園も舗装された広い遊歩道があり、外出先として人気があります。ただし道路状況は変わることもあるため、初めての外出は必ず事前の下見をお勧めします。
Q2. 訪問看護師は外出の練習に同行してもらえますか?
医師の訪問看護指示書に「屋外歩行訓練」などが記載され、訪問看護計画に外出支援が組み込まれた場合に、看護師や理学療法士が同行することができます。ご希望の方はまずケアマネジャーや訪問看護師にご相談ください。
Q3. 足立区のバリアフリーマップはどこで入手できますか?
足立区が作成する「やさしいまちあだちバリアフリーマップ」は、区役所の窓口や区公式サイトから入手できます。また、東京都福祉局のサイトでは都内各区のバリアフリーマップ一覧が公開されています。
Q4. 歩行器を使っていますが、段差はどの程度まで乗り越えられますか?
歩行器の種類や利用者様の体力によって異なります。車輪タイプの歩行器は特に段差が苦手で、小さな段差でも転倒のリスクがあります。正確な判断は理学療法士や訪問看護師にご相談いただくことを強くお勧めします(※要確認:公的ガイドラインによる具体的な数値)。
Q5. 雨の日の外出で注意することはありますか?
雨後の路面は滑りやすくなります。特に側溝の上、タイル張りの歩道、金属製のマンホール周辺は要注意です。また、歩行器・車いすのタイヤが水を含んだ路面では制動距離が延びます。可能であれば雨天・雨直後の外出は避け、天気予報と路面状況を確認してから外出計画を立ててください。

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