この記事の要点(30秒でわかる)
- 高齢者がエアコンを嫌がる背景には、暑さを感じにくい体の変化があります。
- 熱中症の救急搬送は約4割が住居で起き、半数以上が高齢者です。
- 「寒くないですか」と体感を尊重する声かけが、納得につながります。
- 室温計の設置とご家族・訪問看護の見守りで、無理なく予防できます。
夏が近づくと、「エアコンをつけてと言っても、すぐ消してしまう」「電気代を気にして使ってくれない」と悩むご家族は少なくありません。離れて暮らすご両親のことを思うと、心配は尽きないものです。
訪問看護では、こうした「エアコンを嫌がる」というご相談を数多くお受けしています。大切なのは、無理に説得することではありません。なぜ嫌がるのかを理解し、ご本人が納得できる工夫を一緒に見つけることです。
すえひろ訪問看護ステーションは、足立区で暮らす利用者様お一人おひとりの生活に寄り添ってきました。「制度上難しい」「ご本人が頑固で」と思われることでも、まずはご相談いただきたいと考えています。
この記事では、高齢者がエアコンを嫌がる理由から、在宅でできる声かけや室温管理の工夫、認知症のある方への対応、ご家族と専門職の見守りまでを、出典とともにわかりやすくお伝えします。
目次
高齢者がエアコンを嫌がるのはなぜですか
高齢者がエアコンを嫌がる主な理由は、加齢で暑さを感じにくくなること、冷房の冷えがつらいこと、電気代やもったいない意識、そして認知症による判断の難しさです。本人にとっては「必要ない」と感じているため、頭ごなしの説得では納得が得られにくくなります。
加齢が進むと、皮膚にある温度のセンサーの感度が弱まります。そのため暑さや寒さが脳に正確に伝わりにくくなり、室温が高くてもエアコンの必要性を感じにくくなります(出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。
また、体内の水分量も減ります。成人の体内水分量は体重の約60パーセントですが、高齢者は50パーセント程度まで減るとされ、少ない汗でも脱水を起こしやすくなります(出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。
冷えへのつらさも見過ごせません。代謝が下がると体が温まりにくく、若い世代が快適と感じる温度でも、高齢者には「寒すぎる」と感じられることがあります。電気代への不安や、戦中・戦後を生きた世代の「もったいない」という価値観も、使用をためらわせる背景にあります。
これらは、ご本人のわがままではなく、体と心の自然な変化です。理由を理解することが、対応の第一歩になります。
高齢者がエアコンを嫌がる5つの理由
室温と熱中症にはどんな関係がありますか
熱中症は屋外だけでなく、室内でも多く発生します。2024年の救急搬送では、発生場所のうち住居が38.0パーセントと最も多く、65歳以上の高齢者が57.4パーセントを占めました。エアコンを使わず室内で過ごすことが、見えにくい危険につながります。
総務省消防庁によると、2024年5月から9月の熱中症による救急搬送人員は9万7578人で、調査開始以降で最も多い人数でした。このうち発生場所の最多は住居で38.0パーセント、年齢では65歳以上が57.4パーセントを占めています(出典:総務省消防庁「令和6年の熱中症による救急搬送状況」)。
さらに深刻なのが、室内での死亡事例です。東京都監察医務院と東京大学の研究では、東京23区で2013年から2023年に熱中症で亡くなった室内死亡例のうち、44.9パーセントはエアコンがオフの状態でした(出典:東京都監察医務院・東京大学大学院医学系研究科 2025年6月発表)。
つまり、「家の中なら安全」という思い込みは危険です。室温が上がりやすい昼間や、寝苦しい夜間こそ、適切な室温管理が命を守ります。屋内でもエアコンを正しく使うことが、何よりの予防策になります。
熱中症の発生場所(2024年・救急搬送)
最も多いのは「住居」。室内での発生に注意が必要です
出典:総務省消防庁「令和6年の熱中症による救急搬送状況」
エアコンを無理なく使ってもらう声かけのコツは
エアコンを使ってもらうコツは、説得ではなく「納得」を目指すことです。暑さを感じにくいご本人の体感を否定せず、「寒くないですか」「私が暑いので」と相手を立てる言葉が効果的です。数字や工夫を添えて、ご本人が安心して受け入れられる流れをつくります。
高齢者は暑さを感じにくいため、「暑いでしょう」と言われても実感が伴いません。そこで、「今日は室温が30度を超えていますよ」と温度計の数字を一緒に見ながら伝えると、客観的な根拠として受け止めてもらいやすくなります(出典:環境省「熱中症予防情報サイト」)。
冷えがつらい方には、「設定は28度にして、風が直接当たらないようにしますね」と具体的に伝えます。風向きを上に向けたり、除湿(ドライ)運転を使ったりすれば、寒さを抑えながら室温を下げられます。湿度が20パーセント違うと体感温度は約4度変わるとされ、除湿は冷えに弱い方に向いた方法です。
「私が暑いので、少しだけつけさせてください」と、自分のためにお願いする形にすると、相手の遠慮が和らぎます。電気代を気にされる方には、扇風機との併用で効率が上がることを添えると安心につながります。一緒に考えさせていただく姿勢が、何より大切です。
嫌がる理由別・そのまま使える声かけ例
在宅でできる室温管理の工夫を教えてください
在宅での室温管理は、「見える化」と「ルール化」が基本です。目につく場所に室温計を置き、室温28度・湿度70パーセントを超えたら冷房をつけるという目安を決めます。設定温度ではなく室温そのものを28度以下に保つことが、熱中症予防の要になります。
環境省は、熱中症予防の目安として室温28度以下を示しています。ただし、これはエアコンの設定温度ではなく、部屋の実際の温度です。設定温度を28度にしても、部屋が28度になるとは限らないため、温湿度計で室温を確認することが欠かせません(出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル」)。
温湿度計は、時計の隣やテレビの横、冷蔵庫の扉など、ご本人が日常的に目にする場所に置くのが効果的です。「数字が28を超えたらスイッチを押す」と単純なルールにすると、暑さを感じにくい方でも行動に移しやすくなります。
湿度の管理も重要です。同じ室温でも湿度が高いと熱がこもり、汗が蒸発しにくくなります。湿度が高い日は除湿運転を活用し、50から60パーセントを目安に保つと、体感が楽になります。風通しを意識し、扇風機を併用するのもよい方法です。
在宅でできる室温管理 4ステップ
認知症で室温調整が難しい場合はどうすればいいですか
認知症のある方は、暑さの自覚やリモコン操作が難しく、エアコンをつけても消してしまうことがあります。この場合は、「使っていると意識させない」工夫が有効です。風が直接当たらないようにし、目の前で操作しないなど、環境側を整える発想が安全につながります。
認知症があると、リモコンの冷房と暖房を間違えたり、リモコンの置き場所がわからなくなったりすることがあります。また暑さを感じにくいため、せっかくつけたエアコンを「寒い」「もったいない」と消してしまう場合もあります(出典:環境省「高齢者のための熱中症対策」)。
対策として、エアコンを意識させない工夫が役立ちます。風が体に直接当たらないよう風向きを調整し、ご本人の目の前で電源を入れないようにします。リモコンを見えない場所に保管し、ご家族や専門職が管理する方法もあります。
東京都監察医務院らの研究では、室内の熱中症死亡例の16.4パーセントが「エアコンを適切に使いこなせていなかった」ことが要因と推測され、その多くが一人暮らしや高齢者世帯でした(出典:東京都監察医務院・東京大学大学院医学系研究科 2025年6月発表)。一人で抱え込まず、見守りの体制を整えることが命を守ります。
認知症の方の熱中症を防ぐ工夫
ご家族と訪問看護にできる見守りは何ですか
ご家族と訪問看護による見守りは、熱中症予防の最後の砦です。離れて暮らす場合は、電話で室温や体調をこまめに確認します。訪問看護では、室温チェックや水分摂取の確認、体調の変化の早期発見を行い、ご本人とご家族の不安に寄り添います。
離れて暮らすご家族は、こまめな連絡が見守りの第一歩です。「今、部屋は何度くらい」「水分はとれている」と具体的に尋ねると、状況を把握しやすくなります。猛暑が予想される時期は、連絡の頻度を増やすことをおすすめします。
訪問看護では、訪問のたびに室温や湿度を確認し、エアコンの設定や風向きが適切かを点検します。脱水のサインである口の渇きや尿の量、皮膚の張りなどを観察し、熱中症の初期症状を早期に見つけます。必要に応じてかかりつけ医と連携します。
熱中症のリスクが高い夏場だけ、訪問の回数を増やすこともできます(出典:環境省「高齢者のための熱中症対策」)。一人暮らしや高齢者世帯では見守りの目が特に重要です。すえひろ訪問看護ステーションは、専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
まとめ
高齢者がエアコンを嫌がる背景には、暑さを感じにくくなる体の変化や、冷えのつらさ、電気代への不安、認知症による判断の難しさがあります。熱中症の救急搬送は約4割が住居で起き、半数以上が高齢者です。室温を「見える化」し、ご本人が納得できる声かけと工夫を重ねることが、無理のない予防につながります。
すえひろ訪問看護ステーションは、足立区で暮らす利用者様とご家族の毎日に寄り添い、室温の確認から体調の見守りまで、専門職として誠実に支えてまいります。「説得してもだめだった」「認知症で対応が難しい」と感じることでも、解決の糸口は必ずあります。
ご家庭だけで抱え込まず、一緒に考えさせてください。暑い季節を安心して越えられるよう、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. エアコンの設定温度は何度にすればよいですか。
A. 環境省は熱中症予防の目安として室温28度以下を示しています。これは設定温度ではなく部屋の実際の温度です。温湿度計で室温を確認し、28度を超えないよう設定を調整してください。冷えがつらい方は風向きや除湿運転で対応します。
Q. 高齢の親がエアコンをすぐ消してしまいます。どうすればよいですか。
A. 暑さを感じにくいことが背景にあります。室温計の数字を一緒に見せて伝えたり、「私が暑いのでつけさせてください」と頼んだりすると受け入れてもらいやすくなります。認知症がある場合は、風向きを工夫し操作を意識させない方法が有効です。
Q. 電気代が心配で使いたがりません。どう説明すればよいですか。
A. 扇風機との併用で効率が上がることや、除湿運転は冷房より消費電力を抑えやすいことを伝えると安心につながります。熱中症で入院や通院になる負担と比べ、予防の大切さを一緒に確認することも有効です。
Q. 室内にいても熱中症になりますか。
A. なります。2024年の救急搬送では発生場所の38.0パーセントが住居で最多でした(出典:総務省消防庁)。エアコンを使わずに室内で過ごすことが危険につながります。「家の中なら安全」という思い込みは禁物です。
Q. 訪問看護では熱中症予防にどんなことをしてくれますか。
A. 訪問のたびに室温や湿度を確認し、エアコンの設定や風向きを点検します。脱水や体調の変化を早期に見つけ、必要に応じてかかりつけ医と連携します。夏場だけ訪問回数を増やすこともご相談いただけます。

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