面会のたびに「家に帰りたい」と言う親に、「無理だよ」とも言い切れず悩んでいませんか。施設から在宅復帰は、準備と体制さえ整えれば、多くのケースで実現できます。この記事では、在宅復帰を決める前に確認すべき条件、退所から初回訪問看護までの具体的な段取り、自宅で必要な準備の一覧、そして訪問看護がどう支えるかをお伝えします。「諦めるしかない」と感じている方も、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次
在宅復帰を決める前に考えておく3つの条件
施設から在宅に戻る前に、現実的に整理しておくべき条件があります。この3つを確認することで、準備の方向性がはっきりします。
医療・介護の必要度を把握する
在宅復帰が可能かどうかの最初の判断は、医療的なケアの内容と頻度によって決まります。たとえば、インスリン注射や経管栄養、吸引といった医療処置が必要な場合でも、訪問看護が対応できるケースは多くあります。
まずは施設の担当者や主治医に、現在どのような医療管理が行われているかを確認しましょう。「訪問看護で対応できるか」という視点で相談すると、具体的な答えが得やすくなります。
在宅介護を担える人・体制があるか
訪問看護は、1回の訪問時間が30分から1時間程度です。訪問していない時間帯のサポートを誰が担うかが、在宅復帰の現実的な鍵になります。
家族が常時介護できない場合でも、訪問介護(ホームヘルパー)やデイサービス、ショートステイなどのサービスを組み合わせることで対応できるケースがあります。ケアマネジャーと一緒に、1日の生活の流れを描いてみることが大切です。
住環境が本人の状態に合っているか
施設の生活と自宅の環境は大きく異なります。段差、浴室の構造、トイレの位置、ベッドのスペースなど、帰宅後に安全に暮らせるかどうかを事前に確認する必要があります。
厚生労働省「介護老人保健施設の在宅復帰支援に関する調査研究事業」によると、退所前に在宅環境のアセスメントを実施する施設は、在宅復帰率が高い傾向にあることが報告されています。自宅への「試験外泊」を施設と相談しながら行うことも、有効な方法のひとつです。
以下の表を参考に、自宅の状態を事前に確認しておきましょう。
在宅復帰前の住環境チェック(目安)を整理した図表をご参照ください。
在宅復帰前の住環境チェック(目安)
退所前に、ご自宅の各箇所を確認しておきましょう。担当のケアマネジャーや理学療法士と一緒に確認すると、より安心です。
退所から初回訪問看護まで|在宅移行のスケジュール感
在宅復帰を「いつ、どういう順番で進めるか」が分からないと、不安は大きくなります。一般的な流れを把握しておくと、動き出しやすくなります。
退所1〜2ヶ月前:関係者との調整を始める
退所の意思が固まったら、最初に動くのはケアマネジャーへの相談です。施設のソーシャルワーカーや相談員と連携しながら、在宅でのケアプランを作成していきます。
この時期に、訪問看護ステーションへの連絡も行います。訪問看護を利用するには主治医からの「訪問看護指示書」が必要です。指示書の作成には1週間程度かかることが多いため、早めに主治医に相談しておくことが大切です。
退所2〜4週前:自宅環境の整備を進める
福祉用具の手配(介護用ベッドや車椅子のレンタルなど)や住宅改修が必要な場合は、この時期に手続きを進めます。介護保険を使った住宅改修は、申請から工事完了まで数週間かかることもあります。
訪問看護ステーションとの契約・重要事項説明も、この時期に行うことが多いです。担当の看護師が事前に施設を訪問し、現在の状態や必要なケアを確認する場合もあります。
退所当日・直後:初回訪問でしっかり状態確認
2024年度の介護報酬改定では、退院や施設からの退所当日に訪問看護を実施した場合に算定できる初回加算(Ⅰ)が新設され、在宅移行初日からのサポートが受けやすくなりました。退所当日や翌日に訪問看護が入ることで、自宅での生活に安心してスタートを切ることができます。
初回訪問では、バイタルサインの確認や服薬状況の把握、ご家族への介護指導などを行います。自宅の環境を実際に見ながら、必要な医療材料の確認もこのタイミングで実施します。
在宅移行のスケジュール全体像は次の図をご参照ください。
2ヶ月前
1.5ヶ月前
1ヶ月前
直前
当日
継続
※ 上記スケジュールは目安です。ご本人の状態や施設・医療機関の方針によって異なる場合があります。担当のケアマネジャーにご相談ください。
環境整備・医療材料・緊急体制——自宅で必要な準備一覧
在宅復帰後に「思ったより大変だった」となる原因の多くは、事前準備の不足です。主な準備項目を3つのカテゴリーに分けて整理します。
自宅環境の整備
日本作業療法士協会の資料では、退院・退所後の環境整備について、住宅改修だけでなく人的支援や福祉用具の活用を含む包括的な調整が重要であると示されています。
具体的には、次のような整備が必要になることがあります。
玄関の段差解消(スロープや手すりの設置)、浴室・トイレへの手すり取り付け、ベッドと寝室の動線確保、吸引器や酸素機器を置くスペースの確保——これらは要介護度によって介護保険の住宅改修給付(上限20万円)が使える場合があります。
医療材料・福祉用具の準備
在宅での医療処置に必要な材料は、主治医の指示のもとで準備します。何が必要かは病状によって異なりますが、退所前にリストを作成して訪問看護ステーションと確認しておくと安心です。
介護用ベッド(特殊寝台)や車椅子などの一部福祉用具は、原則として要介護2以上であれば介護保険でのレンタルが使えます。要介護1以下の方は例外給付の申請が必要なケースもありますので、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員にご相談ください。歩行器(歩行車を除く)など一部品目については、2024年度の制度改定で貸与と購入の選択制が導入されています。いずれも福祉用具専門相談員に自宅の状況を見てもらいながら選ぶと、より適切なものを選びやすくなります。
緊急時の体制づくり
在宅生活で特に大切なのが、急変時の対応体制です。次の3点を事前に確認しておきましょう。
すえひろ訪問看護ステーションでは24時間対応体制を整えており、急な体調変化があった際も看護師が電話で相談に応じ、必要に応じて緊急訪問します。「夜中に急変したらどうしよう」という不安を抱えたまま在宅復帰を迎えることがないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。
「思ったより大変だった」と後悔しないための事前相談のすすめ
在宅復帰を後悔する方の多くが、「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃいます。事前相談を活かすことが、成功の分かれ目になります。
訪問看護との「退所前カンファレンス」を活用する
退所前カンファレンスとは、施設の担当者・主治医・訪問看護師・ケアマネジャー・ご家族が集まり、退所後の生活について話し合う場です。厚生労働省「介護老人保健施設の在宅復帰支援に関する調査研究事業」によると、退所前カンファレンスの実施割合が高い施設ほど、在宅復帰率が高い傾向があることが示されています。
このカンファレンスで訪問看護師が参加できると、在宅での具体的なケアイメージを施設側と共有できます。「退所前に訪問看護師も一緒に話を聞かせてほしい」と、施設に伝えることは珍しいことではありません。
ご家族だけで抱え込まずに「相談する」ことが大切
「施設から帰りたいという希望を叶えてあげたい。でも現実的に無理かもしれない」。そんなジレンマを一人で抱えているご家族は、少なくありません。
「制度上難しい」と言われたことがあっても、諦める必要はありません。私たちすえひろ訪問看護ステーションは、「どうすればこの方が自宅で幸せに暮らせるか」を本気で考えます。表面的なサービスの組み合わせにとどまらず、利用者様とご家族が本当に求めていることに向き合い、一緒に可能性を探していきたいと考えています。
訪問看護のコストも事前に確認する
訪問看護の費用は、介護保険または医療保険が適用されます。一般的な自己負担は、介護保険の場合は1割〜3割(要介護度・収入による)、医療保険の場合は1割〜3割です。施設の費用と比較すると、サービスの組み合わせによっては在宅の方が費用を抑えられる場合もあります。詳しくは、ケアマネジャーや訪問看護ステーションにお気軽にお問い合わせください。
在宅復帰後に多いトラブルと、訪問看護が先回りできること
在宅復帰後の最初の数週間は、様々なトラブルが起きやすい時期です。訪問看護師が「先回り」してフォローすることで、多くのトラブルを防ぐことができます。
よくあるトラブル①:服薬管理の乱れ
施設では看護師が服薬を管理していましたが、在宅では本人やご家族が担います。薬の種類が多かったり、認知症がある場合は、飲み忘れや飲み過ぎが起きやすくなります。
訪問看護では、訪問のたびに服薬状況を確認し、お薬カレンダーや一包化などの工夫を提案します。かかりつけ医や薬剤師とも連携しながら、安全な服薬管理をサポートします。
よくあるトラブル②:体調悪化のサインを見逃す
施設では24時間スタッフが近くにいますが、在宅では違います。体調の変化を早期に発見するためのポイントを、ご家族に事前にお伝えすることが重要です。
訪問看護師は毎回のバイタルサイン測定と観察を通じて、状態の変化を継続的にチェックします。「いつもと違う」に気づいたときには、主治医への情報提供や緊急対応につなげていきます。
よくあるトラブル③:ご家族の介護疲れ
施設から帰ってきた喜びが落ち着くと、介護の大変さが現実としてのしかかってくることがあります。特に最初の1〜2ヶ月は、介護者がいちばん消耗しやすい時期です。
訪問看護師は利用者様だけでなく、ご家族の状態にも目を向けます。「無理していないか」「困っていることはないか」を確認し、必要に応じてレスパイト(休息)のためのショートステイ利用など、ケアマネジャーと連携しながら提案します。
在宅復帰後に訪問看護が対応できる主な内容を次の図で確認できます。
| よくあるトラブル | 訪問看護の対応策 |
|---|---|
| 服薬管理 | |
| 薬の飲み忘れ・飲み間違い 複数の薬を管理しきれず、飲み忘れや誤った時間・量での服用が起こりやすい。 | 服薬管理の支援と残薬確認 服薬カレンダーや一包化の導入を支援。訪問のたびに残薬を確認し、異常があれば医師・薬剤師と連携する。 |
| 体調変化の観察 | |
| 発熱・血圧変動などの急変 施設と異なる生活環境で、体調の変化に気づくのが遅れることがある。 | 定期的なバイタル測定と早期対応 毎回の訪問で体温・血圧・脈拍などを測定。異常値を発見した場合は速やかに医師へ報告し、対応を調整する。 |
| 床ずれ・傷の悪化 自宅では適切な体位交換が難しく、褥瘡(床ずれ)が発生・悪化するリスクがある。 | 褥瘡ケアと予防指導 傷の処置・洗浄を実施するとともに、体位変換の方法や予防用クッションの使い方をご家族に指導する。 |
| 栄養・水分管理 | |
| 食欲低下・脱水のリスク 環境変化や体調不良により食欲が落ち、水分摂取量も減少しやすい。 | 栄養状態の評価と食事指導 体重・皮膚状態・食事内容を確認。必要に応じて管理栄養士や医師と連携し、食事形態や補助食品の提案を行う。 |
| 排泄ケア | |
| 排泄困難・失禁への対応 排泄に関するトラブルは介護者の負担が大きく、対応方法がわからず困ることが多い。 | 排泄ケアの実施と介護指導 排泄の状況を定期的に観察。適切なケア用品の選択や、ご家族が安心して対応できるよう具体的な方法を指導する。 |
| 介護者のサポート | |
| 介護者の精神的・身体的な消耗 特に退所直後の1〜2ヶ月は介護者が最も消耗しやすく、燃え尽きにつながることもある。 | 介護者の状態確認とレスパイト提案 「無理していないか」「困っていることはないか」を毎回確認。必要に応じてショートステイの利用など、ケアマネジャーと連携しながら休息を提案する。 |
※ 訪問看護のサービス内容は、医師の訪問看護指示書に基づき提供されます。詳しくは担当のケアマネジャーまたは訪問看護事業所にご相談ください。
まとめ
施設から在宅に戻ることは、「無理なこと」ではありません。条件を整え、適切な準備と体制を組めば、多くの方が実現しています。大切なのは、早めに関係者に相談し、一人で抱え込まないことです。
「帰りたい」という気持ちに向き合うとき、在宅療養を支える専門職として私たちすえひろ訪問看護ステーションは、制度にとらわれず「どうすればこの方が幸せに暮らせるか」を本気で考え、諦めずに一緒に取り組んでいきます。「こんなこと相談していいのかな」と思うことでも、どうぞお気軽にご連絡ください。専門職としての責任と誇りを持って、真摯に向き合わせていただきます。
まずはかかりつけ医やケアマネジャーにご相談いただくか、すえひろ訪問看護ステーションへ直接お問い合わせください。
【お問い合わせ先】 すえひろ訪問看護ステーション TEL: 03-5888-6375 受付時間: 平日8:30〜17:30
よくある質問
Q. 施設から在宅復帰するには、どのくらいの準備期間が必要ですか?
A. 一般的には退所の1〜2ヶ月前から準備を始めることが目安です。住宅改修や福祉用具の手配、訪問看護の契約、主治医による指示書の作成など、複数の手続きを並行して進める必要があります。早めにケアマネジャーや施設の相談員に相談することで、スムーズに段取りを整えられます。
Q. 施設で医療的なケアを受けていた場合も、在宅に戻れますか?
A. 多くの場合、訪問看護によって在宅でも対応できます。インスリン注射、吸引、経管栄養、点滴管理など、医師の指示のもとで訪問看護師が対応できる処置は幅広くあります。「この処置は在宅では無理」と決めつける前に、訪問看護ステーションに一度ご相談ください。
Q. 訪問看護は在宅復帰後、どのくらいの頻度で来てもらえますか?
A. 訪問頻度は利用者様の状態やケアプランによって異なります。介護保険では週1〜3回程度が一般的ですが、医療的必要性が高い場合は医療保険での利用により週4回以上の訪問が可能なケースもあります。詳しくはケアマネジャーや訪問看護ステーションにご相談ください。
Q. 在宅復帰後に体調が悪化した場合、どうすればよいですか?
A. 訪問看護ステーションの24時間緊急対応を利用できます。すえひろ訪問看護ステーションでは、夜間・休日の急変にも対応できる体制を整えています。「様子がおかしい」と感じたら、まず訪問看護ステーションに連絡してください。必要に応じて緊急訪問を行い、主治医への報告・対応につなげます。
Q. 施設を退所して在宅に戻ることを、施設側に相談しにくい場合はどうすればいいですか?
A. まず訪問看護ステーションやケアマネジャーに相談するのがおすすめです。外部の専門職から見た意見を踏まえたうえで、施設側との話し合いをスムーズに進めやすくなります。ご家族だけで抱え込まず、一緒に進める体制を作ることが大切です。
【参考資料・相談窓口】
制度・支援に関する情報

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