精神疾患のある方やそのご家族が、「訪問看護って使えるの?」「費用はどれくらいかかるの?」と疑問を抱えながら、なかなか相談できずにいるケースは少なくありません。答えから先にお伝えすると、精神疾患があっても訪問看護は利用できます。医療保険や自立支援医療制度を使って費用を抑えながら、ご自宅での生活を専門職がサポートできます。この記事では、精神科訪問看護の内容・費用・利用の流れをわかりやすく解説します。

目次
精神疾患でも訪問看護は使えるの?
精神科訪問看護は、精神疾患をお持ちの方が在宅で安心して生活できるよう、看護師や作業療法士がご自宅に伺う医療サービスです。利用できる方の範囲は広く、特別な条件は必要ありません。
対象となる疾患・状態
精神科訪問看護の対象となる主な疾患・状態は以下の通りです。
- うつ病・双極性障害
- 統合失調症・統合失調症型障害
- 不安障害・パニック障害・PTSD
- 摂食障害・強迫性障害・睡眠障害
- アルコール依存症・薬物依存
- 発達障害・適応障害
- 認知症など器質性精神障害
精神科や心療内科に通院中の方で、主治医が「訪問看護が必要」と判断した場合に利用を開始できます。診断があっても「外来通院だけでは生活が難しい」「ご家族の負担が大きくなっている」といった状況でも、ぜひ一度ご相談ください。
厚生労働省の令和5年(2023年)患者調査によると、推計入院患者数で最も多い傷病が「精神及び行動の障害」で21万3,100人。また外来を含む精神疾患の総患者数は、約603.0万人(厚生労働省「患者調査」令和5年/2023年)にのぼり、社会全体でメンタルヘルスへの支援ニーズが高まっています。精神科訪問看護は、そのニーズに応える重要な在宅支援の柱となっています。
利用開始に必要な3つの条件
精神科訪問看護を医療保険で利用するためには、以下の3点が必要です。
- 主治医(精神科担当の医師)から「精神科訪問看護指示書」が交付されること
- 指定を受けた訪問看護ステーションへの申し込み
- 精神科または精神疾患の訪問看護経験を持つ看護師等によるケア
指示書の手配は基本的に医療機関と訪問看護ステーションの間で直接やり取りできるため、ご家族が複雑な手続きをご自身でこなす必要はありません。
どんな支援が受けられる?具体的なケア内容
精神科訪問看護では、病院のような緊張感ではなく、ご自宅という安心できる環境でケアを受けられます。看護師は「体の状態を管理するだけ」ではなく、生活全体に寄り添い、その方が望む暮らしを支えることを大切にしています。
日々の健康観察と精神状態のモニタリング
訪問時には体温・血圧・脈拍などのバイタルサインを測定するとともに、コミュニケーションや表情・言動・生活の様子を観察し、精神状態のサインを見逃さないようにします。
不調のサインを早期に発見することで、症状の悪化を未然に防ぐことができます。「なんとなくいつもと違う」という小さな変化も、ご家族が一人で抱え込む必要はありません。看護師が専門的な目で状態を見極め、主治医への報告や連絡を適切に行います。
服薬管理と生活リズムのサポート
精神疾患のケアでは、薬を正しく・継続的に服用することが非常に重要です。精神科訪問看護では、服薬の確認や薬剤の管理方法の工夫、副作用の観察などを丁寧にサポートします。
また、生活リズムの乱れは症状の悪化につながることがあります。食事・睡眠・活動のバランスを一緒に整え、「やってみたいけれど自信がない」という方のペースに合わせながら支援します。ご本人が「自分でできること」を少しずつ増やしていけるよう、一緒に考えていくことが私たちの目標の一つです。
ご家族へのサポートと相談対応
精神疾患のある方のそばで支えているご家族は、本当に多くのことを抱えています。「どう接すればいいかわからない」「自分も追い詰められてきた」という声は、決して珍しいことではありません。
精神科訪問看護では、ご本人だけでなくご家族へのサポートも大切にしています。接し方のアドバイスや介護負担の軽減、必要に応じて地域の相談窓口や障害福祉サービスへのつなぎも行います。「こんなこと相談していいのか」と迷われることも、どうぞ遠慮なくお話しください。
医療保険・障害福祉サービスとの関係
費用面の不安は、利用をためらう大きな理由になります。精神科訪問看護は医療保険が適用されるため、思っているより経済的な負担を抑えることができます。
医療保険で利用する場合の自己負担
精神科訪問看護は、原則として医療保険が適用されます。自己負担割合は年齢や収入によって異なります。
- 6歳〜69歳:原則3割負担
- 70〜74歳:1〜3割負担(所得により異なる)
- 75歳以上:1〜3割負担(所得により異なる)
- 小学校就学前の乳幼児:2割負担(自治体の助成で無料になる場合あり)
訪問回数は原則、週3回まで(医師の指示により増やせる場合もあります)。なお、退院後3ヶ月以内の期間は週5回まで訪問可能です。また、急性増悪時などに主治医から「精神科特別訪問看護指示書」が交付された場合は、月1回・最大14日間に限り毎日の訪問も可能です。
自立支援医療制度を使うと費用が大きく下がる
精神疾患のある方が利用できる大きな制度のひとつが「自立支援医療(精神通院医療)」です。この制度を申請すると、医療費の自己負担割合が通常の3割から1割に軽減されます。さらに所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されるため、週2回の訪問を受けても月の費用が上限を超えることはありません。
自己負担上限額の目安(月額)は以下の通りです。
| 所得区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得Ⅰ(非課税・収入80万9千円以下)※1 | 2,500円 |
| 低所得Ⅱ(非課税・上記以外) | 5,000円 |
| 中間所得層〜一定所得以上(課税世帯)※2 | 10,000〜20,000円 |
※1 令和7年(2025年)7月1日以降の基準。
※2 課税世帯の方は、「重度かつ継続」(統合失調症・うつ病・てんかん等で長期的な治療が必要な方など)に該当するかどうかによって上限額が変わります。該当しない場合は月額上限が設定されないケースもあります。詳細はお住まいの市区町村窓口にご確認ください。
※上記は一般的な目安です。詳細はお住まいの市区町村窓口またはお問い合わせください。
申請はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行えます。主治医の診断書・保険証・所得証明書などが必要で、審査を経て「自立支援医療受給者証」が交付されます。
障害福祉サービスとの併用について
精神障害者保健福祉手帳を取得している場合や、障害福祉サービスを利用している場合、訪問看護はそれらと組み合わせて活用できます。ホームヘルプ(居宅介護)や生活介護などの障害福祉サービスは訪問看護とは目的が異なるため、並行利用が可能なケースも多くあります。
「どの制度が使えるかわからない」という場合も、まずはご相談ください。私たちすえひろ訪問看護ステーションは、制度の枠にとらわれず、利用者様お一人おひとりにとって最善の方法を一緒に考えることを大切にしています。
家族として何を準備したらよいか
「訪問看護を使いたいけれど、何から手を付ければいいかわからない」というご家族の声をよく伺います。まず大切なのは、一人で抱え込まないことです。
主治医への相談が最初のステップ
精神科訪問看護を利用するには、主治医による「精神科訪問看護指示書」の交付が必要です。かかりつけの精神科・心療内科の主治医に「訪問看護を使いたい」と伝えるだけでOKです。「こんなこと頼んでいいのかな」と遠慮する必要はありません。
主治医から指示書が発行されれば、あとは訪問看護ステーションへの申し込みに進めます。ケアマネジャーを介す必要はなく、直接ステーションへご連絡いただくことも可能です。
事前に確認しておきたいこと
訪問看護ステーションへ連絡する前に、以下の点を整理しておくとスムーズです。
- 本人の現在の状況(通院先・診断名・困っていること)
- 希望する訪問の頻度や曜日・時間帯
- 現在利用中の医療・福祉サービス
- 保険証・自立支援医療受給者証の有無
「まだよくわからない」という状態でも問題ありません。電話でご相談いただければ、状況をお聞きしながら一緒に整理していきます。
相談から利用開始までの流れ
精神科訪問看護の利用開始は、以下のステップで進みます。
STEP 1|主治医に相談し、指示書を依頼する
「訪問看護を使いたい」と主治医に伝え、「精神科訪問看護指示書」を発行してもらいます。
STEP 2|訪問看護ステーションへ連絡する
ご本人またはご家族から、利用を希望する訪問看護ステーションへ連絡します。すえひろ訪問看護ステーションへは電話でのご相談も歓迎しています。
STEP 3|初回面談(アセスメント)
担当の看護師がご自宅またはご指定の場所へ伺い、現在の状況や希望するサポート内容をお聞きします。不安なこと・確認したいことはこの段階で何でもお話しください。
STEP 4|訪問看護計画の作成・利用開始
面談の内容をもとに、お一人おひとりに合った訪問看護計画を作成します。計画が整い次第、訪問看護がスタートします。
まとめ
精神疾患のある方やそのご家族にとって、「どこに相談すればいいかわからない」という孤立感は、想像以上に重いものです。訪問看護は、そのような状況にある方のそばに専門職が定期的に寄り添い、生活と心を支え続けるサービスです。
医療保険が適用され、自立支援医療制度を活用することで自己負担を大きく抑えられます。利用のハードルは、思っているより高くありません。
すえひろ訪問看護ステーションには、精神科ケアの経験を持つスタッフが在籍しています。「制度上難しいと言われた」「どこに相談していいかわからなかった」という方も、ぜひ一度ご連絡ください。利用者様お一人おひとりが望まれる生活を実現するために、諦めずに一緒に考えていきます。
【お問い合わせ先】 すえひろ訪問看護ステーション
受付時間:平日 9:00〜17:00
まずはお気軽にお電話またはお問い合わせフォームからご相談ください。
よくある質問
Q. 精神疾患があっても訪問看護は使えますか?
A. 使えます。うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害など、多くの精神疾患が対象です。精神科担当の主治医が訪問看護の必要を認めれば、医療保険を使って利用できます。診断があるかどうかよりも「在宅で支援が必要かどうか」が判断の基準になります。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
A. 医療保険適用で原則3割負担です。ただし「自立支援医療(精神通院医療)」を申請すると1割負担に下がり、さらに所得に応じた月額上限が設けられます。生活保護受給世帯は自己負担が0円です。費用について不安な方は、お気軽にお問い合わせください。
Q. ケアマネジャーがいないと利用できませんか?
A. 精神科訪問看護は介護保険ではなく医療保険が優先されるため、ケアマネジャーを通さず利用できます。主治医の指示書を取得した後、訪問看護ステーションへ直接お申し込みいただく流れが一般的です。
Q. 家族も一緒にサポートしてもらえますか?
A. 対応できます。精神科訪問看護では、ご本人だけでなくご家族への支援も大切にしています。接し方のアドバイスや、ご家族が抱えている疲れや不安についての相談にも応じます。
Q. 訪問看護を始めるとき、何を準備すればよいですか?
A. まずはかかりつけの精神科・心療内科の主治医に「訪問看護を使いたい」と伝えてください。主治医から「精神科訪問看護指示書」が発行されれば、あとは訪問看護ステーションへご連絡いただくだけです。「何もわからない」という状態でも、電話でご相談いただければ一緒に整理します。
参考資料・相談窓口
精神疾患・在宅支援に関する情報
- 自立支援医療(精神通院医療)について(厚生労働省)
- 精神保健福祉センター全国一覧(厚生労働省)
- 令和5年(2023)患者調査の概況(厚生労働省)
- 厚生労働省 令和4年度 精神科訪問看護の実態調査 報告書

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