「去年の夏、エアコンをつけるのを嫌がって、気づいたら顔が真っ赤になっていた」——そんなご経験をお持ちのご家族は、少なくないのではないでしょうか。在宅で療養を続ける高齢の利用者様は、体の変化によって熱中症のリスクが特に高く、早めの対策が命を守ることにつながります。
訪問看護師は、夏の暑さが本格化する前から、利用者様の体調を見守り、熱中症を予防するためのサポートを行っています。すえひろ訪問看護ステーションでも、「まだ5月だから大丈夫」という時期から、環境整備や生活習慣のアドバイスを始めています。
この記事では、在宅療養中の高齢者に熱中症が起こりやすい理由と、今からできる具体的な予防策をお伝えします。ご家族が「今年の夏は安心して過ごせた」と感じられるよう、一緒に考えさせてください。
目次
なぜ在宅療養中の高齢者は熱中症になりやすいのか
在宅療養中の高齢の利用者様が熱中症になりやすい背景には、加齢による体の変化と在宅という療養環境の特性が重なっています。原因を正しく知ることが、的確な予防の第一歩です。
体温調節機能が低下する理由
人の体は、暑くなると汗をかいて体温を下げようとします。しかし高齢になると、この体温調節機能が低下します。汗腺の働きが弱まり発汗量が減るため、体に熱がこもりやすくなります(出典:テルモ体温研究所・環境省 熱中症環境保健マニュアル)。
加齢とともに体内の水分量も減少します。若い頃は体重の約60%が水分ですが、高齢になると50〜55%程度まで低下するとされています(出典:健康長寿ネット等 各種医学文献)。もともと水分が少ない状態で夏を迎えるため、少しの水分不足でも脱水になりやすいのです。
感覚の鈍化で暑さに気づきにくい
高齢の利用者様の多くは、「暑い」という感覚が鈍くなっています。室温が上がっていても「涼しい」と感じることがあり、自分から冷房を入れたり水を飲んだりするタイミングが遅れがちです。
口の渇きを感じにくくなることも、熱中症リスクを高める要因のひとつです。喉が渇いたと感じる前にすでに脱水が進んでいることがあり、「飲みたい」という感覚だけを目安にすることが難しくなっています。
寝たきりや動けない方が抱えるリスク
自分で動くことが難しい利用者様は、暑くなってもエアコンのリモコンに手が届かなかったり、窓を開けに行けなかったりします。環境の変化に対して自分で対処できないことが、熱中症のリスクをさらに高めます。
服を着替えたり薄着になったりする動作が制限される場合もあります。体を動かす機会が少なくなると体温調節全体に影響を及ぼすことも指摘されており(⚠️ 要注意:筋肉と体温調節の関係は諸説あり)、日頃からの活動量の維持が重要です。
今からできる住環境・生活習慣の見直し
熱中症の予防は、暑さが本格化してからでは間に合わないことがあります。4月〜5月のうちに住環境と生活習慣を整えておくことで、夏を安全に乗り越える準備ができます。
エアコンを安全・効果的に使うコツ
室内の熱中症は、エアコンを使っていない、または設定温度が高すぎることで起こります。室温の目安は28℃以下に保つことが推奨されています(出典:環境省 熱中症環境保健マニュアル 2022年版)。利用者様が「寒い」と感じる場合でも、適切な温度設定を維持することが大切です。
夏前にエアコンのフィルター掃除を行い、動作確認をしておきましょう。長期間使っていないエアコンは冷えが弱くなっていることもあります。訪問時に一緒に動作確認を行うことも、訪問看護師のサポートのひとつです。
エアコンが苦手な利用者様には、扇風機と組み合わせて風を通す方法を提案することがあります。ただし、気温が35℃を超えるような猛暑日は、扇風機だけでは体温を下げる効果が期待できないため、エアコンとの併用をおすすめしています。
室温と湿度の管理ポイント
温度だけでなく、湿度の管理も重要です。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもりやすくなります。室内の湿度は目安として60%以下に保つことが望ましいとされています(⚠️ 要注意:数値は情報源により若干異なる)。
温湿度計を居室に置いておくと、客観的に環境を確認できます。スマートフォンと連携して確認できる電子式の温湿度計は、ご家族が離れた場所から見守るためのツールとしても有用です。こうした機器の選び方についてもご相談を承っています。
生活リズムを整えて体への負担を減らす
夏の日中は、特に14時〜15時頃に気温が最も高くなります(出典:気象庁データ)。入浴・リハビリ・外出などの活動は、なるべく午前中か夕方以降に調整することをおすすめしています。
入浴後は体温が一時的に上がります。入浴後30分ほどは水分補給と休息を優先し、活動量を抑えることが大切です。訪問看護や訪問入浴のスケジュールも、夏の時期には見直しを検討するといいでしょう。
水分補給が難しい方への具体的な工夫
水分補給は熱中症予防の基本ですが、嚥下(えんげ)機能の低下や認知症、または「水を飲むのが面倒」という理由から、十分に水分を摂れていない利用者様は少なくありません。難しい状況だからこそ、個別の工夫が重要です。
1日の水分摂取量の目安と補給のタイミング
1日に必要な水分量は、食事からの摂取を含めて約2リットルが目安とされています(出典:東京都健康安全研究センター等 各種保健指導資料)。夏は発汗による水分損失が増えるため、意識的に補給量を増やすことが必要です。
「まとめて飲む」より「少量を頻繁に」が基本です。食事のたびに必ず水やお茶を飲む習慣をつけること、起床時・就寝前・入浴前後といったタイミングを決めて補給することが、習慣化のポイントです。訪問看護師は毎回の訪問時に水分摂取量を確認し、主治医に報告しています。
経口補水液・とろみ剤の活用
経口補水液は、水・塩分・糖分が体に吸収されやすいバランスで配合されています。熱中症が疑われるときや、下痢・嘔吐で脱水気味のときに有効です。ただし塩分を多く含むため、腎臓病や高血圧の利用者様は使用前に必ず主治医へご確認ください。
嚥下機能が低下している利用者様には、水分にとろみをつけることが誤嚥(ごえん)予防になります。とろみ剤の種類や使い方は、言語聴覚士や訪問看護師と相談しながら決めることが大切です。むせが気になる方は、早めにご相談ください。
食事で水分を補う方法
食事からも水分を補給できます。スイカ・きゅうり・トマトなどの夏野菜は水分含有量が高く、食欲が落ちる夏でも食べやすい食材です。汁物(みそ汁・スープ)を毎食取り入れることも、水分補給の面で有効です。
食事量が少ない利用者様ほど、汁物の量を意識的に確保することが水分補給に役立ちます。体の状態に合わせた食事内容については、管理栄養士や訪問看護師にご相談いただくことができます。
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訪問看護師が行う夏の体調管理サポート
訪問看護師は、医療と生活の両面から利用者様の夏を支えます。熱中症を「起きてから対処する」のではなく、「起きないように備える」ためのサポートを、訪問のたびに積み重ねています。
バイタルサインの確認と熱中症リスクの把握
毎回の訪問時に体温・血圧・脈拍・SpO2(血中酸素濃度)を測定します。夏は脱水による血圧低下や脈拍の上昇が起きやすく、日々の変化を記録することが異常の早期発見につながります。
体重の変化も重要なサインです。短期間での体重減少は、脱水や食欲不振を示している可能性があります。訪問看護師は毎回の記録をもとに、主治医やケアマネジャーへ情報を共有します。
熱中症の初期サインを見逃さないために
熱中症の初期症状には、めまい・立ちくらみ・筋肉のけいれん(こむら返り)・強い倦怠感・頭痛などがあります。「なんとなく元気がない」「いつもより口数が少ない」といった変化も見逃せないサインです。
訪問看護師は、こうした微妙な変化に気づくために、毎回同じ方法で観察・記録を続けています。ご家族にも観察のポイントをお伝えし、訪問と訪問の間の変化を報告いただけるよう連携しています。
ご家族との情報共有と緊急時の連携
「いつもと違う」と感じたとき、すぐに連絡できる体制を整えておくことが重要です。すえひろ訪問看護ステーションは24時間365日対応の緊急連絡体制を整えており、夜間・休日でも看護師に相談できます。
熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所への移動と水分補給を行います。意識障害や嘔吐がある場合はすぐに救急車を呼ぶことが必要です。緊急時の対応手順をご家族と共有しておくことも、訪問看護師の大切な役割のひとつです。
暑くなる前に相談しておきたいこと
熱中症対策は「暑くなったら考える」では遅いことがあります。4月〜5月のうちに関係するスタッフや機関に相談しておくことで、夏を安心して迎えられます。
主治医・ケアマネジャーとの連携
暑さに備えた内服薬の調整が必要なケースがあります。利尿剤や一部の降圧剤は、脱水や低血圧を引き起こしやすくする可能性があるため、主治医への確認をおすすめします(⚠️ 要注意:薬の影響は個人差が大きく、必ず主治医に確認が必要)。
ケアマネジャーには、夏に向けたサービス調整の相談ができます。訪問頻度の変更・訪問入浴の導入・デイサービスの利用拡大など、必要なサービスを夏前に整えておくことが大切です。
訪問看護の利用を検討するタイミング
「まだ訪問看護は早い」と感じている方も、夏の体調管理を目的とした利用を検討する価値があります。医療保険・介護保険いずれかを利用することで費用の一部が給付される場合があります(⚠️ 要注意:保険適用は利用者様の状態・要介護度・主治医の指示書等により異なる)。
訪問看護師が定期的に自宅に入ることで、住環境のリスクにも気づきやすくなります。「暑くなる前に一度相談してみたい」という方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
すえひろへの事前相談について
すえひろ訪問看護ステーションでは、利用前の事前相談を承っています。「今の状態でどんなサポートが受けられるか知りたい」「熱中症が不安で、夏に備えたい」というご相談から、一緒に考えさせてください。
制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
よくあるご質問
Q. 室内でも熱中症になりますか?
はい、なります。消防庁の令和6年データでは、住居が熱中症による救急搬送の発生場所として最も多く、室内での対策が欠かせません(出典:消防庁 令和6年 熱中症による救急搬送状況)。エアコンをつけていない部屋や、日当たりの強い部屋では特に注意が必要です。
Q. 「水分は十分飲んでいる」と言っているのに脱水になることがありますか?
あります。高齢の利用者様は口の渇きを感じにくく、実際には水分が足りていない場合があります。体重の変化やバイタルサインで客観的に確認することが大切です。
Q. 訪問看護は夏だけ利用することができますか?
夏の体調管理を目的として利用を始めることは可能です。保険適用には主治医の指示書が必要ですので、まずはご相談ください。
Q. エアコンを嫌がる利用者様への対応はどうすればよいですか?
設定温度を少し高めにしつつ扇風機と組み合わせる方法が有効なことがあります。訪問看護師がご本人とお話しながら、快適に過ごせる環境を一緒に探していきます。
Q. 訪問看護師はどんな熱中症対策をしてくれますか?
バイタルサインの確認・水分摂取量の把握・住環境のアセスメント・ご家族への指導を行います。必要に応じて主治医やケアマネジャーへの報告・連携も行います。
まとめ
在宅療養中の高齢の利用者様は、体温調節機能の低下・感覚の鈍化・自力での環境調整の難しさから、熱中症のリスクが高い状況にあります。エアコンの活用・水分補給の工夫・生活リズムの調整を、暑くなる前から始めておくことが大切です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、夏の暑さが本格化する前から、利用者様一人ひとりの状態に合わせた体調管理のサポートを行っています。「ちょっと心配」という段階から、遠慮なくご相談ください。
「去年の夏は大変だったけど、今年こそは安心して過ごしてほしい」——そう願うご家族のお気持ちに、私たちは誠実に応えたいと思っています。一緒に考えさせてください。
すえひろ訪問看護ステーション(本店)
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