「D to P with N」という言葉を、改定のニュースで目にして気になっている方も多いのではないでしょうか。聞き慣れない英語の略称で、「自分の仕事にどう関係するのかピンとこない」という訪問看護師さんの声もよく耳にします。
2026年の診療報酬改定によって、訪問看護師が医師のオンライン診療を現場でサポートする仕組みが、初めて診療報酬として正式に評価されました。これは、在宅医療の形を大きく変えうる制度です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」という姿勢で、利用者様の在宅療養を支え続けてきました。この新制度も、利用者様のためにどう活かせるかを、現場の視点でしっかり考えていきたいと思っています。
この記事では、「D to P with N」の意味から、訪問看護師が実際に何をするのか、報酬の算定要件、どんな場面で使われるのか、そしてキャリアへの影響まで、わかりやすくお伝えします。
目次
「D to P with N」とは?3分で理解する新しい在宅医療の形
「D to P with N」とは、訪問看護師(Nurse)が利用者様のそばに同席した状態で、遠隔地の医師(Doctor)がオンラインで患者(Patient)を診察する仕組みです。2026年(令和8年)の診療報酬改定で初めて本格的に診療報酬として評価され、「訪問看護遠隔診療補助料」が新設されました。
アルファベットをそのまま読むと「ディー・トゥ・ピー・ウィズ・エヌ」、意味としては「医師が(看護師のサポートつきで)患者を診る」という形態を表しています。
(Doctor)
(Patient)
この制度が生まれた背景には、日本の在宅医療が抱える課題があります。医師が少ない地域では、訪問診療の回数を十分に確保することが難しい状況です。訪問看護師がすでに利用者様のもとに定期的に足を運んでいる実態を活かし、看護師の「目と手」を通じて医師が診療を行う仕組みが求められていました。
在宅医療においてD to P with Nが意味することを一言でまとめると、「看護師がその場にいることで、医師は画面越しに安心して診察ができる」という協働の形です。(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定 訪問看護ステーション向け資料 2026年3月)
訪問看護師は具体的に何をするの?現場でのイメージ
D to P with Nで訪問看護師が担う役割は、「医師の目と手の代わりになること」です。医師がオンラインの画面越しに確認できないことを、看護師が現場で補います。
具体的には、バイタルサイン(血圧・体温・酸素飽和度など)の測定と報告、皮膚の状態や傷の観察と医師への説明、医師の指示に基づく処置(投薬補助・点滴・吸引など)、そして医師の説明を利用者様・ご家族にわかりやすく伝えることなどが業務の中心になります。
「画面の前でただ見守るだけ」ではありません。看護師のアセスメント力が、オンライン診療の質を直接左右します。
例えば、電子聴診器を使って心音・呼吸音を医師に届けたり、傷の状態を適切な角度でカメラに映して報告したりといった専門的な関わりが求められます。これは、長年の訪問看護の経験が活きる場面です。
「利用者様の今の状態を誰より理解しているのは、定期的に訪問している私たちだ」という自負を持って、医師をサポートする——そのような新しい役割が、この制度では求められています。
算定要件・報酬額(2,650円/日)をわかりやすく解説
訪問看護遠隔診療補助料は1日につき2,650円(265点)で、月1回に限り算定できます。2026年(令和8年)診療報酬改定で新設された加算です。(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定答申)
算定のポイントをわかりやすく整理すると、以下の条件をすべて満たす必要があります。
まず、主治医から交付された有効な訪問看護指示書の期間内の利用者様であることが前提です。そのうえで、主治医が「緊急に診療を要する」と判断し、看護師に訪問を指示した場合に算定できます。あらかじめ計画された定期訪問では算定できない点が、特に注意が必要です。
また、同一の利用者様に対して算定できるのは1つの訪問看護ステーションのみです。医療機関側が診療報酬で同補助料を算定した場合は、訪問看護療養費での算定はできません。さらに、算定した日は訪問看護基本療養費などとの同日併算定はできません。
「緊急の指示による訪問」という性質から、普段の定期訪問とは別の場面での算定になります。ステーションとして運用ルールを整備しておくことが大切です。
なお、本補助料は医療保険の訪問看護指示書がある利用者様が対象です。介護保険のみ適用の利用者様には訪問看護ステーション側からは算定できません。ただし、その場合は医療機関側が診療報酬上の補助料を算定し費用分担する形で連携するケースがあります。(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定 疑義解釈2・2026年4月)
どんな場面で使われる?精神科・緩和ケア・皮膚科での活用例
D to P with Nは、利用者様が「すぐに医師に診てもらいたいが、来てもらうまでの時間が惜しい」という緊急性の高い場面で特に力を発揮します。精神科・緩和ケア・皮膚科などで活用が期待されています。
精神科では、服薬調整が必要なほど急変した利用者様の状態を、看護師がその場でアセスメントしながら医師に報告し、即時の指示を受けることができます。「様子を見てください」ではなく、「今この場で医師の判断をもらえる」という安心感は、ご家族にとっても大きな支えになります。
緩和ケアの場面では、看取り期に入った利用者様の疼痛コントロールや呼吸状態の変化について、看護師が細かな観察内容を医師にリアルタイムで伝え、鎮痛剤の量や投与方法を即座に調整してもらうことができます。夜間・休日でも医師の判断を仰ぎながら対応できることは、在宅での看取りを支える上で大きな意味を持ちます。
皮膚科的な問題、例えば褥瘡(床ずれ)の悪化や感染が疑われる創傷では、看護師が傷の状態をカメラで正確に映して医師に確認してもらうことで、適切な処置の指示をその場で受けられます。「訪問診療の予約まで待てない」という場面での迅速な対応につながります。
この制度で訪問看護師のキャリア・やりがいはどう広がる?
D to P with Nは、訪問看護師の専門性と存在価値が改めて制度として認められた出来事です。これまで「現場を知っている」という訪問看護師の強みは、報酬に直結しにくい面がありました。この新設加算は、その強みを正面から評価する仕組みです。
医師の目と手の役割
医師との連携が深まることで、看護師一人ひとりのアセスメント力・コミュニケーション力・報告力が磨かれます。「この看護師に任せれば、的確に状況を伝えてくれる」という信頼は、医師との関係性をより対等でチームらしいものにしていきます。
また、ICT機器を使った診療補助は、今後さらに広がっていく在宅医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)の中心的なスキルになります。D to P with Nの経験は、時代を先取りしたキャリアの一歩と言えるでしょう。
一方で、「機器の操作が不安」「どう医師に伝えればいいかわからない」という声があるのも当然です。すえひろ訪問看護ステーションでは、一緒に考えさせてください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。スタッフ一人ひとりが自信を持って新しい役割に臨めるよう、チームで準備を進めています。
まとめ
「D to P with N」とは、訪問看護師(N)が利用者様のそばに同席した状態で、医師(D)がオンラインで患者(P)を診察する在宅医療の新しい形です。2026年(令和8年)診療報酬改定で「訪問看護遠隔診療補助料(2,650円/日、月1回)」が新設され、看護師の診療補助が初めて正式に評価されました。算定には「主治医の緊急指示による訪問」という要件があり、精神科・緩和ケア・皮膚科など幅広い場面での活用が期待されています。
すえひろ訪問看護ステーションは、新しい制度や技術を「利用者様の暮らしにどう役立てるか」という視点で受け止めています。D to P with Nも、利用者様とご家族の安心を守るための手段として、しっかりと現場に取り入れていきます。
「新しい制度のこと、もっと知りたい」「我が家でも使えるの?」と思われた方は、まずはお気軽にご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q. D to P with Nは誰でも使えるの?
A. 有効な訪問看護指示書がある利用者様で、主治医が「緊急に診療が必要」と判断した場合に適用されます。利用者様が自らお申込みいただくものではなく、主治医・訪問看護師の判断で進める仕組みです。
Q. 訪問看護師にICTの知識は必要?
A. スマートフォンやタブレットを使った医師とのオンライン接続が基本です。特別な資格は不要ですが、機器の操作に慣れておくことが大切です。ステーション内での研修や練習を通じて、一緒に備えていきましょう。
Q. 通常の訪問と何が違うの?
A. 通常の訪問看護は事前の計画に基づいて行われますが、D to P with Nは主治医から「緊急に診療が必要」と指示を受けて行う訪問が対象です。また、医師がオンラインで診療を行う点が大きく異なります。
Q. 精神科の利用者様にも対応できる?
A. 精神科訪問看護の対象の利用者様にもD to P with Nは活用が期待されています。服薬調整や急な症状変化の場面での医師との連携に役立てられると考えられています。一般的な算定要件(有効な訪問看護指示書・主治医の緊急指示)の範囲内で対応できます。
Q. すえひろでは今後どう対応する予定?
A. 現在、制度の詳細を確認しながら、スタッフ全員が安心して対応できる体制づくりを進めています。利用者様やご家族からのご質問・ご相談はいつでも受け付けておりますので、お気軽にお声がけください。
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訪問看護に関するご相談・ご質問は、すえひろ訪問看護ステーションまでお気軽にどうぞ。「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」という姿勢で、専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

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