「まだ5月なのに、今日は28度を超えた。父の部屋のエアコン、もう入れた方がいいのかな」——そんな不安を感じたことはありませんか。在宅で療養中の高齢の家族をお持ちのご家族や介護者の方にとって、初夏の急な気温上昇は見過ごせない問題です。
熱中症は真夏だけのリスクではありません。体温調節機能が低下した高齢の利用者様にとって、5月の「なんとなく暑い日」こそが最も危険な時期のひとつです。本格的な夏が来る前に、今できる対策を一緒に考えましょう。
すえひろ訪問看護ステーションでは、訪問のたびに利用者様の室温・水分状態・体調変化を確認し、ご家族と連携しながら熱中症の早期発見・予防に取り組んでいます。この記事では、足立区ならではの気候特性を踏まえた具体的な対策をご紹介します。
目次
「まだ5月なのに」が危ない:足立区の気温データと熱中症発生件数
足立区は東京23区の中でも気温が上がりやすい地域として知られています。5月でも真夏日(30℃以上)に近い気温になる日があり、「暑さに体が慣れていない時期」に高温にさらされることが熱中症リスクを一気に高めます。
足立区北部の江北・鹿浜エリアには気象庁のアメダス観測点があり、都内でも高温が記録されやすい地点として知られています(※要確認:気象庁 アメダス過去データ)。梅島・竹の塚・東和といった密集住宅地では、アスファルトや建物が蓄えた熱が地表付近の気温をさらに押し上げます。東京都環境局の観測では、足立区西部は都区部の中でも30℃を超える時間の割合が特に高い地域のひとつとされています(出典:東京都環境局 ヒートアイランド対策資料)(※要確認:最新年度データは東京都環境局にて確認を推奨)。
全国的にみても、2024年(令和6年)の熱中症による死亡者数は5月から9月の集計で2,098人と過去最多を記録しました(出典:厚生労働省 令和6年人口動態統計)。東京消防庁管内だけで2024年6〜9月に7,996人が救急搬送されており、こちらも過去最多です(出典:東京消防庁)。
5月は「暑さへの慣れ」がない分、同じ気温でも体への負担が大きくなります。 この時期の急な高温日こそ、対策を前倒しで始めるタイミングです。
実際の月別数値は東京消防庁の公表資料をご確認ください。
在宅療養中の高齢者が特に注意すべき理由
在宅療養中の高齢の利用者様が熱中症になりやすい理由は、加齢による体の変化にあります。高齢になると、暑さや喉の渇きを感じるセンサーが鈍くなります。「喉が渇いた」と感じた時点では、すでに体内の水分が不足し始めているのです(出典:環境省 熱中症環境保健マニュアル)。
また、汗をかく機能や皮膚から熱を逃がす機能も低下するため、外気温が少し上がっただけで体温が急上昇しやすくなります。筋肉量の低下で体内に蓄えられる水分の絶対量も少なくなっており、わずかな水分の出入りが脱水につながりやすい体質に変化していきます。
さらに、在宅療養中の利用者様には「エアコンが苦手」「電気代が心配」「体が動かしにくくてリモコンまで遠い」といった、施設入所者にはない固有の障壁があります。実際、屋内で熱中症により亡くなった方のうち、エアコンがオフ・未設置・故障の状態だった方の合計が約85%にのぼるという調査結果があります(出典:東京都監察医務院・東京大学大学院医学系研究科 2025年6月発表)。
2024年の熱中症救急搬送者のうち65歳以上の高齢者が57.1%を占めており、発生場所として「住居」が全体の約38%で最多となっています(出典:総務省消防庁 令和6年熱中症による救急搬送状況)。自宅こそが、最も熱中症リスクの高い場所のひとつなのです。
訪問看護師が訪問時にチェックしている熱中症サインとは
訪問看護師は、利用者様のご自宅を訪れた最初の数分間で、熱中症リスクを見極めるための確認を行っています。バイタルサイン(体温・血圧・脈拍・血中酸素飽和度)の測定はもちろん、室温計を目視確認したり、利用者様の表情・皮膚の状態・会話の様子を観察したりしています。
特に注意しているサインを挙げると、次のようなものがあります。
皮膚を軽くつまんで戻りが遅い「ツルゴール低下」は脱水のサインです。唇や口の中の乾燥、腋の下の汗が少ない状態も脱水を示します。「なんとなくぼーっとしている」「いつもより返事が遅い」といった意識レベルの変化は、熱中症の中等度以上のサインである可能性があります。体温が37.5℃を超え、かつ発汗が少ない場合も注意が必要です。
「今日は少し元気がない気がする」という家族の感覚も、大切な情報です。 訪問看護師に遠慮なく伝えてください。普段との違いを知っているご家族の気づきが、早期対応につながります。
家族・ヘルパーができる室温・水分管理のポイント
家族やヘルパーが日常的に取り組める対策の中で、最も効果的なのが「室温管理」と「声かけによる水分補給」です。
室温は28℃を超えたらエアコンのスイッチを入れることが環境省の推奨です。温湿度計を利用者様の部屋に置き、数値を目で確認できる環境を作りましょう。「28℃になったらつける」とシンプルなルールを決めておくと、訪問者が変わっても一貫した対応ができます。
水分補給は「喉が渇いてから」では遅いため、時間を決めた声かけが重要です。起床時・朝食時・10時・昼食時・15時・夕食時・就寝前のタイミングでコップ1杯(約200mL)ずつ飲んでいただくと、1日約1,400mLの摂取量が確保できます(出典:厚生労働省 高齢者のための熱中症対策リーフレット)。水やお茶のほか、経口補水液やスポーツドリンクを薄めたものを活用することも効果的です。
利用者様がエアコンを嫌がる場合は、「少しだけつけてみましょう」と低めの温度から始め、扇風機と組み合わせることで不快感を和らげる方法も試してみてください。制度上のお困りごとや介護保険の活用についても、ぜひすえひろにご相談ください。
1日の水分補給スケジュール
目安:1,000〜1,500mL(厚生労働省)
足立区の気候に合わせたエアコン開始の目安と注意点
足立区では、例年5月の連休明けから真夏日に近い気温の日が現れ始めます。気象庁は暑さに体が慣れていない5〜6月こそ熱中症に注意するよう呼びかけており、エアコンの使用開始を「暑くなってから」ではなく「暑くなる前」に検討することを推奨しています。
エアコンを久しぶりに使う前には、フィルターの掃除・動作確認を必ず行いましょう。フィルターが詰まっていると冷却効率が大きく落ちます。設定温度は26〜28℃を目安とし、室温計と照らし合わせながら調整してください。冷やしすぎると体への負担になるため、扇風機で空気を循環させることで体感温度を下げる工夫も有効です。
足立区では、外出先での暑さ対策として「涼み処」を設置しています。区内の地域学習センター・地区センター・健康づくりセンターなど106施設(2025年度実績)が涼み処として開放されており、エアコンのきいた空間で無料で休憩できます(2026年度の詳細は足立区公式サイトをご確認ください)(出典:足立区公式サイト 令和7年度情報)。通院や買い物のついでに休憩スポットとして活用することを、訪問看護師もご提案しています。
「まだ大丈夫」と思う気持ちは自然なことです。 しかし、足立区の気候では5月から実際に熱中症が発生するリスクがあります。制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。

まとめ:5月から備えることが、命を守る
熱中症は、本格的な夏が来る前の5〜6月に「暑さに慣れていない体」が高温にさらされることで発生しやすくなります。足立区のような都市部ヒートアイランドエリアでは、5月の気温上昇を軽く見てはいけません。
在宅療養中の高齢の利用者様が安全に夏を乗り越えるために大切なのは、①室温計を置いて28℃でエアコンをつけるルールを決めること、②時間を決めた水分補給の声かけを続けること、③いつもと違う様子に気づいたらすぐに相談すること、この3点に尽きます。
すえひろ訪問看護ステーションは、訪問のたびに利用者様の体調と生活環境を確認し、ご家族と一緒に熱中症を防ぐための支援を続けています。「エアコンを嫌がる」「水を飲まない」「どんなドリンクがいいか分からない」——どんな小さな疑問も、一緒に考えさせてください。
迷っている方へ。暑さのことで「これを聞いてもいいのかな」と思うことが、最もご相談いただきたいことです。あなたのご家族の「いつも通りの夏」を守るために、私たちがいます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 5月でも本当に熱中症になりますか?
はい、なります。特に足立区のようなヒートアイランドエリアでは、5月の連休明けから気温が急上昇する日があります。体が暑さに慣れていない時期は、気温が低くても熱中症のリスクが高まります。「まだ5月だから」と油断せず、室温管理と水分補給を早めに始めることが大切です。
Q2. エアコンは何℃になったらつければよいですか?
室温が28℃を超えたらエアコンをつけることが環境省の推奨です。設定温度は26〜28℃を目安とし、室温計と照らし合わせながら調整してください。高齢の利用者様が「寒い」と感じる場合は、扇風機と組み合わせて体感温度を調整する方法も効果的です。
Q3. 水分はどれくらい飲ませればよいですか?
1日1,000〜1,500mLが目安です(出典:厚生労働省)。一度に大量に飲むのではなく、起床時・食事時・10時・15時・就寝前など、時間を決めてコップ1杯ずつ飲んでいただくのが効果的です。喉が渇いてから飲むのでは遅いため、声かけがとても重要です。
Q4. 訪問看護師はどのように熱中症を予防してくれますか?
訪問のたびに、室温の確認・バイタルサインの測定(体温・血圧・脈拍など)・皮膚や口腔内の乾燥チェック・水分摂取量の確認を行っています。また、ご家族やヘルパーへの声かけ方法の提案や、エアコンの使い方についてのアドバイスも行っています。気になることがあれば、いつでもご相談ください。
Q5. 足立区の「涼み処」とは何ですか?自宅から出られない場合はどうすればよいですか?
涼み処は、区内の地域学習センター・地区センター・健康づくりセンターなどのエアコンのきいた施設で、誰でも無料で休憩できる熱中症対策拠点です(2025年度は106施設)。外出が難しい利用者様の場合は、自宅内での環境整備が最優先となります。室温管理・こまめな水分補給を徹底したうえで、訪問看護師と連携して体調を継続的に観察する体制を整えることが大切です。

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