「利用者様から『手帳を取れますか?』と聞かれたとき、正直に答えられないかもしれない」——そう感じているセラピストは、少なくないのではないでしょうか。身体障害者手帳は訪問リハビリの現場でもたびたび話題になる制度ですが、等級の仕組みや指定医との役割分担について体系的に学ぶ機会は意外と少ないものです。
この記事では、OT・PTとして身体障害者手帳に関わるうえで必要な制度の全体像、障害種別と等級の考え方、申請の流れ、そして在宅の生活場面を見ているセラピストだからこそできる支援について、順を追って説明します。制度を「知っているつもり」から「使えるレベル」に引き上げることを目指して構成しています。
目次
身体障害者手帳とはどんな制度か
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付される公的な手帳です。都道府県・指定都市・中核市が認定と交付の事務を担っており、申請先は市区町村の福祉窓口になります。
手帳を取得すると、補装具費支給や日常生活用具の給付、各種税制優遇、公共交通機関の割引など、生活を支える多様なサービスを利用できる場合があります。サービスの種類や給付上限は市区町村によって異なるため、具体的な内容は各窓口でご確認ください。訪問リハビリのOT・PTにとっては、利用者様が使えるはずのサービスにつながるための「橋渡し役」として、この制度を把握しておくことが不可欠です。
令和5(2023)年度末時点で、身体障害者手帳の交付台帳登載数は約478万3千人にのぼります(出典:厚生労働省「令和5年度福祉行政報告例の概況」)。障害の種類別では肢体不自由が約233万人・48.8%と最多を占め、訪問リハビリが関わる方の多くが対象になりえることがわかります。
障害種別と等級のしくみ
身体障害者手帳の等級は、1級から7級まであります。1級が最も重く、数字が大きくなるほど障害の程度は軽くなります。ただし7級単独では手帳は交付されず、7級が複数該当する場合や他の種別の障害と重複する場合に限り対象になります。
OT・PTが日常的に関わる機会が多いのは、肢体不自由(上肢・下肢・体幹)の等級です。肢体不自由はさらに4つの区分に分かれており、上肢機能、移動機能(下肢)、体幹機能、そして乳幼児期以前の非進行性脳病変による運動機能障害がそれぞれ独立した基準で評価されます。
体幹機能については、1級が「座っていることのできないもの」、2級が「座位または起立位を保つことが困難なもの」「起立することが困難なもの」、3級が「歩行が困難なもの」とされています。等級判定は補装具などを外した状態での機能を基準とし、人工関節置換術後は術後の状態が安定した時点で評価されます。
内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・免疫機能など)については別の基準が設けられており、特に心臓機能障害でペースメーカーや人工弁を装着している方は一律1級として認定されます。視覚障害・聴覚障害・言語障害についても、OT・PTが関わる機会は少なくありません。
等級の仕組みを知ることは、利用者様が「自分には何級になるか」と聞いてきたときに適切に応答するためだけでなく、取得後に使えるサービスの選択肢を一緒に考えるうえでも重要な基礎知識です。
| 等級 | 上肢機能 | 下肢・移動機能 | 体幹機能 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 両上肢の機能を全廃したもの | 両下肢の機能を全廃したもの | 座っていることができないもの |
| 2級 | 両上肢の機能が著しく障害されているもの | 両下肢の機能が著しく障害されているもの | 座位または起立位を保つことが困難なもの/起立が困難なもの |
| 3級 | 両上肢の親指及び人差し指または中指を欠くもの等 | 一下肢の機能を全廃したもの等 | 歩行が困難なもの |
| 4級 | 両上肢の親指を欠くもの等 | 一下肢の機能が著しく障害されているもの等 | — |
| 5級 | 一上肢の機能が著しく障害されているもの等 | 一下肢の股関節または膝関節の機能を全廃したもの等 | 著しい障害があるもの |
| 6級 | 一上肢の親指を欠くもの等 | 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの等 | — |
申請の流れと指定医・OT・PTの役割分担
身体障害者手帳の交付申請にあたって欠かせないのが、身体障害者福祉法第15条に定められた「指定医」による診断書・意見書です。指定医は都道府県知事が指定した医師であり、一般の医師がこの診断書を作成することはできません。
申請の大まかな流れは次のとおりです。まず市区町村の障害福祉窓口で申請書と診断書用紙を受け取り、指定医の診察・評価を受けます。診断書が完成したら写真とともに窓口に提出し、通常1か月程度で手帳が交付されます。
OT・PTが担える役割は、「指定医に代わって診断書を書く」ことではなく、利用者様の機能状態を正確に評価し、指定医が判断する際に役立つ情報を提供することです。関節可動域(ROM)や筋力(MMT)の計測結果、ADL・IADLの観察記録、生活場面での動作の様子などを的確にまとめ、医師と連携しながら情報を伝えることが、チームとして申請を支える実践的な貢献になります。なお、OT・PTが評価補助として関与できる範囲は施設や地域の慣行によって異なるため、勤務先や都道府県の障害福祉担当課に確認することをおすすめします。
「病院では先生が全部やってくれていたけれど、在宅では自分が最初に気づく立場にある」——訪問リハビリのOT・PTはそういう役割を担っています。利用者様の機能変化を日常的に見ているからこそ、「そろそろ手帳の申請を検討してはどうか」と気づき、主治医や相談支援専門員につなぐことができます。
OT・PTの関与ポイント①:評価・情報提供
OT・PTの関与ポイント②:同行支援・書類確認補助
OT・PTの関与ポイント③:取得後の制度活用提案
手帳を取得すると何が変わるか
身体障害者手帳を取得することで、生活を支えるさまざまなサービスへのアクセスが広がります。OT・PTが「手帳取得後の生活設計」に関与できるという視点は、訪問リハビリの専門性を高める重要な観点です。
補装具費支給制度では、義肢・装具・車椅子・補聴器などの購入・修理にかかる費用の原則9割が公費で賄われます(自己負担1割)。利用者様のニーズに合った補装具の種類・仕様の選定はセラピストが最も貢献しやすい場面のひとつです。
日常生活用具の給付は、市区町村の地域生活支援事業として実施されており、入浴補助用具・特殊寝台・意思伝達装置など、障害の種類と等級に応じた用具の給付または貸付を受けられる場合があります。訪問場面で生活の困りごとを把握しているセラピストが「この方にはこれが使えるかもしれない」と気づくことが、制度活用の第一歩です。
そのほか、所得税・住民税の障害者控除、自動車税の減免、公共交通機関の割引、障害者雇用枠での就労など、生活全般にわたる支援が受けられる場合があります。税制上の控除など国が定める制度は全国共通ですが、地域独自の割引やサービスは自治体によって異なります。利用者様が「手帳を取ったらどう変わるか」を一緒に整理するだけでも、在宅生活の可能性が大きく広がることがあります。
OT・PTとして制度を「使える」レベルに引き上げるために
制度の知識は、持っているだけでは利用者様の生活を変えません。在宅の生活場面を見ているセラピストが「この方には手帳の申請が必要かもしれない」と気づき、主治医・相談支援専門員・ソーシャルワーカーへ適切につなぐことで、初めて制度が機能します。
大切なのは、等級基準を頭に入れたうえで、日々の訪問で利用者様の機能状態を評価・記録し続けることです。「この半年で機能低下が進んでいる」「等級変更の申請を検討してもいいのでは」という判断を、自信を持って伝えられる専門職であることが求められます。
また、手帳申請に限らず、「補装具が変わるべきタイミング」「日常生活用具が新たに必要になった」という場面でも、セラピストの目線は不可欠です。制度の出入り口に立ち、利用者様と家族が「知らなかったから損をした」と思わなくて済むよう、知識と行動をつないでいく——それが訪問リハビリのOT・PTに求められる制度活用力です。
すえひろ訪問看護ステーションでは、リハビリ職と看護師が連携しながら、利用者様お一人おひとりの生活全体を見据えた支援に取り組んでいます。「手帳のことで相談したい」「今の状態で何かサービスが使えるか知りたい」と感じることがあれば、専門職として責任を持って、誠実に向き合わせていただきます。
まとめ
身体障害者手帳は身体障害者福祉法に基づく制度で、令和5年度末時点で約478万人が所持しています。障害種別では肢体不自由が約半数を占め、OT・PTが関わる利用者様とも密接に関係します。等級は1〜7級(7級単独では非交付)で、肢体不自由は上肢・下肢・体幹ごとに異なる基準で評価されます。
申請には指定医による診断書・意見書が必要ですが、OT・PTは評価補助・情報提供・制度活用の提案を通じてチームの一員として貢献できます。手帳取得後は補装具費支給・日常生活用具給付・税制優遇など、生活を支える多様なサービスへのアクセスが広がります。
すえひろでは、在宅の生活場面に最も近い立場から、利用者様が使えるはずの制度に確実につながれるよう支援しています。制度のことでわからないことがあれば、まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 身体障害者手帳は誰でも申請できますか?
A. 身体の機能に一定以上の障害があると認められる方が対象です。具体的な対象要件は障害の種別と等級基準によって定められており、身体障害者福祉法第15条指定医が診断書・意見書を作成します。まずは主治医か、かかりつけの訪問リハビリスタッフにご相談ください。
Q. 訪問リハビリのセラピストが診断書を書くことはできますか?
A. できません。診断書・意見書を作成できるのは、都道府県知事が指定した「身体障害者福祉法第15条指定医」に限られています。OT・PTは機能評価・記録・情報提供を通じて、指定医の判断を補助する役割を担います。
Q. 等級の数字が小さいほど重い障害ということですか?
A. はい、1級が最も重く、数字が大きくなるほど障害の程度は軽くなります。肢体不自由のみ7級まで存在しますが、7級単独では手帳は交付されません。
Q. 手帳を取得したら毎年更新が必要ですか?
A. 原則として更新はありません。ただし、障害の状態が変化する可能性がある場合は、手帳交付から一定期間後に再認定が実施されることがあります。等級が変わる可能性がある場合は、主治医や市区町村の窓口にご確認ください。
Q. 等級が変わった場合、受けられるサービスはどう変わりますか?
A. 等級によって利用できるサービスの種類や自己負担額が変わる場合があります。たとえば補装具の種類や日常生活用具の対象品目は等級要件が設定されているものがあります。等級変更の際は市区町村の障害福祉窓口または相談支援専門員にご相談ください。

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