「自分の理解で本当に合っているのか、自信が持てない」——2026年6月の診療報酬改定を前に、難病等複数回訪問加算の請求を担当するスタッフからそんな声が届くことが増えています。特に同一建物への訪問が多いステーションでは、算定ルールの変更が直接レセプト請求に影響するため、正確な理解がどうしても必要です。
この加算は、医療依存度の高い利用者様へのケアに真摯に向き合うステーションにとって大切な収益の柱です。すえひろ訪問看護ステーションでは、制度の変更をいち早く現場に届け、利用者様への質の高いケアを安定して続けられるよう支援したいと考えています。
この記事では、難病等複数回訪問加算の基本から、2026年6月改定で変わった同一建物の算定ルールの細分化、そして算定漏れ・過誤請求を防ぐための実務チェックポイントまでをわかりやすく解説します。
目次
「難病等複数回訪問加算」とは?制度のおさらい
難病等複数回訪問加算とは、医療保険の訪問看護において、対象となる利用者様に1日2回以上の訪問を行った場合に算定できる加算です。重症度が高く、医療的ケアを1日に何度も必要とする利用者様を在宅で支えるために設けられた評価です。
加算の対象となる利用者様
この加算が算定できるのは、次のいずれかに該当する利用者様です。
まず「別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)」に記載された疾患・状態の方が対象です。具体的には、末期悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症、パーキンソン病関連疾患、多発性硬化症、脊髄性筋萎縮症など、高い医療依存度を伴う19の疾病・状態が含まれます(出典:厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」)。
もう一つの対象が「別表第8」に該当する管理を受けている方です。在宅酸素療法、在宅人工呼吸指導管理、気管カニューレ使用、真皮を越える褥瘡など、在宅での高度な医療的ケアを要する状態にある方が含まれます。さらに、特別訪問看護指示書の交付を受けた利用者様も対象となります。
改定前(2024年度)の点数体系
2024年度時点の算定額は、1日の訪問回数と同一建物内の利用者様の人数によって決まっていました。1日2回訪問した場合は、同一建物内1〜2人なら4,500円、3人以上なら4,000円です。1日3回以上訪問した場合は、同一建物内1〜2人なら8,000円、3人以上なら7,200円となっていました(出典:厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」令和6年6月1日適用)。
このように「3人以上」という大まかな区分のみで算定額が変わる、比較的シンプルな体系でした。この「3人以上」の区分が2026年6月の改定で大きく変わります。
2026年6月改定で何が変わった?細分化の内容
2026年6月の診療報酬改定では、難病等複数回訪問加算について「同一建物内で同日に算定する人数」および「月あたりの算定日数」に応じた、きめ細かな評価体系へと見直されました。一言で言えば、同一建物への訪問集中度が高いほど算定額が段階的に下がる仕組みへの転換です。
| 訪問回数 | 同一建物内 1〜2人 | 同一建物内 3人以上 |
|---|---|---|
| 1日2回 | 4,500円 | 4,000円 |
| 1日3回以上 | 8,000円 | 7,200円 |
正式な改定後の点数は、厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」令和8年6月1日適用版でご確認ください。
人数区分が「2区分」から「複数区分」へ
これまでは「同一建物内1〜2人」と「3人以上」という2つの区分しかありませんでした。改定後は、「3人以上」だった大きな区分がさらに細分化され、同一建物内の算定人数が多いほど段階的に算定額が低くなる評価へと変わりました(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」)。
改定後の人数区分は、同一建物内の算定人数が「1〜2人」「3〜9人」「10〜19人」「20〜49人」「50人以上」の段階に細分化され、人数が多いほど算定額が段階的に低くなります(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版)。各区分の具体的な算定額は、令和8年厚生労働省告示第74号でご確認ください。
月算定日数による評価区分の追加
改定後は、人数による区分に加え、月あたりの算定日数による区分も設けられます。訪問頻度が高くなるほど月の算定日数も増えることから、1日3回以上の区分では、月20日までと月21日目以降の2区分が設けられます。月の後半になるほど算定額が低くなるため、建物ごとの月間累計算定日数の管理が不可欠です(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版)。
「同一建物」の定義が拡大
2026年改定では「同一建物」の定義も明確化されました。従来は文字通り「同じ建物」を指していましたが、改定後は同一敷地内の建物(別棟を含む)も同一建物として扱われます(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」)。
たとえばサービス付き高齢者向け住宅の本棟と別棟が同じ敷地内にある場合、両方で訪問した利用者様の人数を合算して算定区分を判断する必要があります。見落としが起きやすいポイントです。
訪問時間20分未満は算定不可に
同じく2026年6月改定から、20分未満の訪問については訪問看護基本療養費も加算も算定できなくなりました。難病等複数回訪問加算を算定するためには、各回の訪問が20分以上であることが必要です(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」)。
同一建物への訪問人数で算定額が変わる仕組み
この加算で最も注意が必要なのが、「人数カウントのルール」です。単純に「今日この建物に何人訪問したか」ではなく、いくつかの合算ルールがあります。
算定対象者
算定対象者
対象者(2026年新設)
精神科複数回訪問加算の対象者も合算する
同一日に同一建物で訪問看護を行う場合、精神科複数回訪問加算を算定している利用者様の人数も、難病等複数回訪問加算の人数カウントに加算します(出典:厚生労働省通知)。精神科の加算とは別物だからと切り離して数えると、人数区分の判定が誤ってしまいます。
包括型訪問看護療養費の対象者も合算する
2026年改定で新設された「包括型訪問看護療養費」の対象者も、同様に人数カウントに含めます。たとえば、同一建物で難病等複数回訪問加算の対象者が5人いて、そのうち2人が包括型に移行した場合でも、人数判定は「5人」として計算します(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」)。包括型に移行した利用者様をカウントから外すと、区分が低く見積もられ過誤請求のリスクがあります。
具体的なカウント例
すえひろ訪問看護ステーションが担当するAマンションに、難病等複数回訪問加算の対象者が6人いるとします。同日に全員を訪問した場合、そのうち1人が精神科複数回訪問加算対象者で、1人が包括型に移行していたとすると、難病等複数回訪問加算の算定区分を決める人数は「6人」として計算します。精神科や包括型の対象者を引いて「4人」と判断してしまうと、人数区分が変わる可能性があります。
算定漏れ・過誤請求を防ぐための確認チェックリスト
制度が複雑になるほど、実務でのチェック体制が重要になります。月次の請求前に次の項目を確認する習慣をつけることで、算定漏れと過誤請求の両方を防ぐことができます。
対象者の確認 まず、その利用者様が別表第7・別表第8の対象者か、または特別訪問看護指示書の交付を受けているかを確認します。指示書の有効期間が切れていないかも必ずチェックしてください。
同一建物の範囲の再確認 担当する建物が「同一敷地内」で複数棟になっていないか確認します。同一敷地内の別棟も同一建物として合算が必要です。
人数カウントの合算確認 同日に訪問する同一建物内の精神科複数回訪問加算対象者と包括型訪問看護療養費対象者を含めた、正しい人数を把握します。
訪問時間の記録確認 開始時刻・終了時刻を記録し、各回が20分以上であることを確認します。2026年改定から時刻記録が義務化されたため、記録の漏れ自体も指導対象になります。
月の算定日数の把握 同一建物への当月の算定日数を集計し、1日3回以上の算定では「月20日まで」と「月21日目以降」で算定額が変わるため、建物ごとの累計日数を正確に把握する(出典:令和8年厚生労働省告示第74号)。
難病ケアに力を入れるステーションが今やるべきこと
2026年6月を目前にした今、算定ルールの理解だけでなく、実際の業務フローの見直しが必要です。「加算が取れていなかった」「過誤請求になってしまった」という事態を避けるために、今のうちに手を打てることがあります。
担当利用者様の対象確認リストを更新する
まず、現在担当している利用者様の中で難病等複数回訪問加算を算定している方のリストを作り直します。包括型に移行した方や、精神科複数回訪問加算の対象者も含めて、同一建物ごとに整理します。一覧化することで、月ごとの算定区分の判定が格段に楽になります。
同一建物の範囲を地図で再確認する
担当するサービス付き高齢者向け住宅やマンションが、同一敷地内に複数棟ある場合は、建物の配置を地図や図面で確認し直します。新しい「同一建物」の定義に沿った範囲でカウントできているかを、訪問担当スタッフだけでなく事務スタッフとも共有することをおすすめします。
スタッフへの改定内容の周知と勉強会
算定ルールの変更は、訪問担当スタッフだけでなく請求事務スタッフも理解する必要があります。改定後の人数カウントのルール、訪問時間の最低基準、時刻記録の義務化について、小さな勉強会や回覧資料で共有しましょう。制度が複雑になった分、「知っているスタッフ」と「知らないスタッフ」の差が請求ミスに直結します。
請求ソフトの設定を確認する
使用している訪問看護記録・請求ソフトが2026年6月以降の改定に対応しているか確認し、必要であればアップデートを行います。算定区分の自動判定機能がある場合、同一建物の設定や対象者の分類が正しく入力されているかも再チェックが必要です。制度に詳しくない場合は、ソフトベンダーのサポートを活用することも一つの方法です。
難病等複数回訪問加算は、医療依存度の高い利用者様へのケアを評価する制度です。算定の正確さを高めることは、ケアの質を守ることにもつながります。「制度上難しいと思われることでも、まずはご相談ください」——すえひろ訪問看護ステーションでは、専門職として責任を持って、難病を抱える利用者様とそのご家族の在宅生活を誠実に支えてまいります。
まとめ
難病等複数回訪問加算は、1日2回以上の訪問を行った際に算定できる医療保険の加算であり、2026年6月の改定で同一建物内の算定人数に応じた細分化と、同一建物の定義拡大という大きな変更が加わりました。人数カウントには精神科複数回訪問加算対象者や包括型訪問看護療養費対象者も含める点が、最も見落とされやすいポイントです。
すえひろ訪問看護ステーションは、医療ニーズの高い利用者様が住み慣れた場所で安心して暮らし続けられるよう、制度の変化にも真摯に向き合い続けます。対象者リストの更新・同一建物の範囲確認・スタッフへの周知という三つのステップを今のうちから進めておくことで、6月以降の請求を安心して迎えることができます。
改定内容に不安を感じているご担当者様は、一人で悩まず専門機関や訪問看護支援センター、ソフトベンダーのサポートを積極的に活用してください。一緒に考えさせてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 難病等複数回訪問加算は介護保険でも算定できますか?
いいえ、難病等複数回訪問加算は医療保険の訪問看護基本療養費に対する加算です。介護保険の訪問看護では算定できません。介護保険と医療保険のどちらを適用するかは、利用者様の状態や主治医の指示によって異なります。
Q2. 特別訪問看護指示書が交付されていれば、別表第7に載っていない疾患でも算定できますか?
はい、算定できます。別表第7・別表第8のいずれかに該当すること、または特別訪問看護指示書の交付を受けていることがそれぞれ独立した要件であるため、指示書が交付されていれば対象疾患に関わらず算定の対象となります。
Q3. 同じ日に同じ利用者様を2回訪問したとき、それぞれの訪問記録に開始・終了時刻を記録する必要がありますか?
はい、2026年6月改定から全ての訪問看護において実際の訪問開始・終了時刻の記録が義務化されました。1日2回訪問した場合は、2回分それぞれの時刻記録が必要です。記録漏れは指導対象となりますので、ご注意ください。
Q4. 包括型訪問看護療養費に移行した利用者様がいても、難病等複数回訪問加算は引き続き算定できますか?
はい、包括型に移行していない利用者様については引き続き算定できます。ただし、包括型対象者は「難病等複数回訪問加算の算定人数カウント」には含めて計算します。包括型の利用者様は算定できませんが、人数区分の判定には入れるという点が注意ポイントです。
Q5. 複数回の訪問の間隔に制限はありますか?
2026年6月改定から、1日に複数回の訪問を算定するためには、前回の訪問終了時刻から次回の開始時刻まで2時間以上の間隔が必要です。開始・終了時刻の記録義務化により、この間隔が分単位で厳格に判定されます。記録上の間隔が2時間未満の場合、加算が不成立となり返戻の対象になるため注意が必要です(出典:令和8年厚生労働省告示第74号)。

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