「ケアマネさんから訪問看護も考えてみてはと言われたけれど、ヘルパーさんと何が違うの?」そんな疑問をお持ちのご家族は、とても多くいらっしゃいます。結論からお伝えすると、訪問看護は看護師が医療的ケアを行うサービス、訪問介護はホームヘルパーが日常生活を支援するサービスです。この記事では、両サービスの違いと「うちの親にはどちらが向いているか」を判断するポイントをわかりやすく解説します。
目次
訪問看護と訪問介護—根本的な違いは「誰が来るか」
訪問看護と訪問介護は、どちらも自宅に専門職が訪問するサービスです。しかし、誰が来て何をするかが大きく異なります。
訪問看護は、看護師・准看護師・保健師などの医療資格を持つ専門職が訪問します。主治医の指示書に基づき、病状の観察や医療処置、服薬管理、リハビリなど「医療的なケア」を提供するのが特徴です。
訪問介護は、介護福祉士やホームヘルパーが訪問します。要介護認定を受けた方の食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・調理などの生活援助が主な内容です。
「医療的ケア」と「生活支援」の違い
訪問看護と訪問介護の最も根本的な違いは、支援の目的にあります。訪問看護は「療養生活を医療面から支える」サービスです。点滴管理や床ずれ(褥瘡)の処置、在宅酸素の管理など、医師の指示がなければできない処置が含まれます。
訪問介護は「日常生活を継続できるよう支える」サービスです。身体介護では入浴介助や排泄介助、生活援助では買い物代行や掃除など、療養というよりも「生活そのもの」を支えることが目的です。
全国訪問看護事業協会の調査によると、2023年4月時点での全国の訪問看護ステーション数は15,697箇所となっており、2010年比でおよそ3倍に増加しています。在宅療養を選ぶご家族が増えていることを示す数字です。
「お風呂の介助」はどちらがしてくれるの?
よく寄せられるご質問が「入浴介助はどちらのサービスでもしてもらえるの?」というものです。
入浴介助は訪問看護・訪問介護のどちらでも対応可能です。ただし目的が異なります。訪問看護での入浴介助は、入浴時に傷の状態や皮膚の変化を観察したり、心疾患や呼吸器疾患のある方の体調を確認しながら行う、医療的な視点を伴うものです。訪問介護での入浴介助は、日常生活の継続のための身体介護として行われます。「心臓の病気があって入浴時が不安」という場合は訪問看護、「一人では入れなくなったが体に特別な問題はない」という場合は訪問介護が向いています。
できること・できないことの比較表
どちらのサービスに何を依頼できるかを整理しておくことが、サービス選びの第一歩です。
以下の比較表をご参考にご覧ください。
| サービス内容 | 訪問看護(看護師・PT/OT) | 訪問介護(ヘルパー) |
|---|---|---|
| 🏥 医療・健康管理 | ||
| 病状観察・バイタル測定 | ○ | × |
| 点滴・注射・医療処置 | ○ | × |
| 服薬管理・指導 | ○ | △ |
| 床ずれ(褥瘡)処置 | ○ | × |
| 在宅酸素・医療機器管理 | ○ | × |
| リハビリテーション | ○ | × |
| 🤲 身体介護 | ||
| 入浴介助 | △ | ○ |
| 食事・排泄介助 | △ | ○ |
| 🏠 生活援助 | ||
| 掃除・洗濯・調理 | × | ○ |
| 買い物代行 | × | ○ |
※ 利用者様の状態やケアプランによって異なる場合があります。詳しくはお気軽にご相談ください。
訪問看護でできること
訪問看護は、主治医の指示に基づいて次のようなケアを行います
- 血圧・体温・脈拍などバイタルサインの測定・記録
- 点滴、注射、傷の処置などの医療処置
- 服薬の確認・指導・管理支援
- 床ずれ(褥瘡)の予防処置・治療補助
- 在宅酸素や胃ろうなど医療機器の管理
- 理学療法士・言語聴覚士によるリハビリテーション
- 医療的配慮を伴う入浴・清潔ケア
- ご家族への介護指導
- 看取りの支援
訪問介護でできること
訪問介護(ホームヘルパー)は、次のような生活支援を行います。
- 食事・入浴・排泄の身体介助
- 着替えや体位変換の介助
- 掃除・洗濯・料理などの生活援助
- 買い物や薬の受け取り代行
- 通院の付き添い・乗降介助
どちらもできないことを知っておこう
訪問看護は医師が行う「診察・診断・処方」はできません。「看護師さんに来てもらえれば病院に行かなくていい」というわけではなく、あくまで医師の指示に基づいてケアを行います。
訪問介護は、医療行為(点滴・傷の処置など)を行うことができません。「ヘルパーさんがいれば何でもやってもらえる」と思っていると、いざというときに対応できないケースがあります。
「制度上難しい」と感じることがあっても、まずはご相談ください。利用者様の状況に合わせて、何ができるかを一緒に考えます。
両方を組み合わせて使うケースとは?
訪問看護と訪問介護は、どちらか一方だけ使わなければならないわけではありません。むしろ、両方を組み合わせることで在宅生活をより安全・安心に継続できるケースも多くあります。
組み合わせが効果的な例
たとえば、脳梗塞の後遺症がある80代の方のケースでは、週2回の訪問看護でリハビリと病状観察を行いながら、週3回の訪問介護で食事・入浴・排泄の介助をカバーする、という使い方がよく見られます。
また、糖尿病のある方で「インスリン注射の管理が心配」「食事制限があるので食事づくりが難しい」という場合は、訪問看護でインスリン管理と健康観察を、訪問介護で食事づくりをそれぞれ担うことで、安心して在宅療養を続けられます。
同じ日に両方利用する場合のルール
訪問看護と訪問介護を同じ日に利用する場合、原則として2時間以上の間隔を空ける「2時間ルール」があります(厚生労働省の定める要件による)。ただし、緊急訪問の場合や特別訪問看護指示書が交付されている場合などは例外もあります。具体的なスケジュールはケアマネジャーと相談しながら組み立てていきましょう。
組み合わせの判断も含め、「うちの親に何が必要か分からない」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。利用者様おひとりおひとりの状況に合わせて、一緒に最適なプランを考えます。
費用・保険の違い(介護保険・医療保険)
「どちらの保険が使えるのか」「自己負担はいくらになるのか」は、ご家族が最も気になる点のひとつです。
訪問看護の保険適用
訪問看護は、状況によって介護保険と医療保険のどちらかが適用されます。基本的には要介護(要支援)認定を受けている65歳以上の方は介護保険が優先されますが、厚生労働大臣が定める特定の疾病(末期がん・多発性硬化症・筋委縮性側索硬化症など)がある方や、精神科訪問看護の対象者、特別訪問看護指示書が交付されている方は、介護認定を受けていても医療保険が適用されます。
介護保険での自己負担は原則1〜3割です。1割負担の場合、訪問看護(30〜60分)で800〜900円程度が目安です(サービス内容・時間帯・加算の有無により異なります)。
医療保険の場合、訪問は週3回まで(1回30〜90分以内)が原則ですが、特別指示書がある場合は週4回以上も可能です。
| 介護保険 Care Insurance | 医療保険 Medical Insurance | |
|---|---|---|
| 適用条件 |
65歳以上
要介護・要支援認定あり
※40〜64歳は16特定疾病による 要介護認定がある場合も対象 |
要介護認定なし
または下記の例外に該当
▼ 厚生労働大臣が定める20疾病 (末期がん・ALS・多発性硬化症など) ▼ 精神科訪問看護の対象者 ▼ 特別訪問看護指示書が交付 |
|
保険の 優先順位 |
介護保険が優先
65歳以上の要介護・要支援者は 原則、介護保険を使用 |
例外的に優先適用
介護認定を受けていても 特定疾病等の条件を満たせば 医療保険が優先される |
| 訪問頻度 |
制限なし
ケアプランの支給限度額の 範囲内であれば自由に設定可 |
週3回まで(原則)
1日1回が基本
▼ 特別指示書がある場合: 週4回以上も可(有効期限14日間) |
|
1回あたり の時間 |
20分未満・30分未満 30〜60分・60〜90分 サービス内容に応じて設定 |
30〜90分以内 1日1回を基本とする |
|
自己負担 割合 |
1〜3割 所得に応じて変わる |
1〜3割
年齢・所得により異なる ・75歳以上:原則1割 ・70〜74歳:原則2割 ・69歳以下:原則3割 |
|
費用目安 󿂁割負担) |
看護師30〜60分 約900〜920円 ※令和6年6月改定後の目安 地域区分・加算により異なる |
管理療養費等を含め 月額で変動 加算・訪問回数・時間帯に より大きく異なる |
訪問介護の保険適用
訪問介護は介護保険のみが適用されます。要介護認定(要介護1〜5)を受けていることが条件です。要支援1・2の方は、介護予防訪問介護ではなく「総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)」として提供される場合があります。
自己負担は1〜3割で、1割負担の場合、身体介護(30〜60分)で270〜430円程度が目安です(内容・時間により異なります)。
費用についての注意点
上記の金額はあくまで目安です。実際の費用は、介護保険の支給限度額・事業所・サービス内容・加算の有無などによって変わります。詳しい費用については、ケアマネジャーまたは各事業所にお問い合わせいただくことをおすすめします。
「うちの親はどちらを使うべき?」判断フローチャート
どちらのサービスが向いているかを判断するために、以下のフローチャートをご活用ください。
以下の図でご確認いただけます。
または定期的な後观察察が必要か?
サポートが必要か? 入浴・'brush;事・手俱など
訪問看護が向いているのはこんな方
次のような状況であれば、訪問看護の利用を検討してみましょう。
訪問介護が向いているのはこんな方
次のような状況であれば、訪問介護の利用を検討しましょう。
どちらを使えばよいか迷ったときは、「まず医療的ケアが必要かどうか」を考えるのがポイントです。判断が難しい場合は、ケアマネジャーや主治医、または私たちのような訪問看護ステーションにご相談いただくのがおすすめです。
「こんなことを相談してもいいの?」と迷うことも、ぜひお気軽にお声がけください。利用者様が本当に望まれる在宅生活を実現するために、どうすればよいかを一緒に考えていきます。
まとめ
訪問看護と訪問介護の最大の違いは「誰が来て、何をするか」です。医療的なケアが必要な方には訪問看護(看護師)、日常生活のサポートが必要な方には訪問介護が対応します。そして多くの場合、両方を組み合わせることでより充実した在宅療養が実現します。
訪問看護ステーション数は全国訪問看護事業協会の調査によると2023年に15,697箇所に達し(2010年比約3倍)、在宅療養を支える体制は整いつつあります。しかし、制度を知るだけでは不安は解消されないものです。
すえひろ訪問看護ステーションでは、「どのサービスを使えばよいか分からない」「制度上難しいと言われたが諦めたくない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。利用者様おひとりおひとりが望まれる生活を実現するために、専門職として責任を持って向き合わせていただきます。
まずはかかりつけ医またはケアマネジャーにご相談いただくか、当ステーションまで直接ご連絡ください。
電話でのお問い合わせ:平日 8:30〜17:30 フォームでのお問い合わせ:24時間受付(お問い合わせフォームはこちら)
よくある質問
Q. 訪問看護と訪問介護は同時に(同じ日に)使えますか?
A. 同じ日に両方利用することは可能です。ただし原則として2時間以上の間隔を空ける「2時間ルール」があります。緊急時や特別指示書がある場合は例外もあるため、ケアマネジャーにご相談ください。
Q. 訪問看護でも入浴介助はしてもらえますか?
A. はい、訪問看護でも入浴介助は対応しています。特に心疾患や呼吸器疾患がある方、皮膚に問題がある方など、入浴時に医療的な観察が必要な場合は訪問看護での入浴介助が適しています。体に特別な問題がなく生活支援として入浴介助が必要な場合は、訪問介護が担当します。
Q. 訪問看護を利用するには何が必要ですか?
A. 訪問看護を利用するには、主治医による「訪問看護指示書」の交付が必要です。要介護認定を受けている方はケアマネジャー、まだ認定を受けていない方は主治医または地域包括支援センターに相談するところから始めましょう。
Q. 訪問看護は介護保険と医療保険のどちらが使えますか?
A. 原則として、要介護(要支援)認定を受けている65歳以上の方は介護保険が優先されます。ただし、末期がんや多発性硬化症など厚生労働大臣が定める疾病がある方、精神科訪問看護の対象者、特別指示書がある方は医療保険が適用されます。どちらが適用されるかは主治医・ケアマネジャーに確認しましょう。
Q. 訪問看護と訪問介護、どちらかだけ使わないといけませんか?
A. いいえ、どちらかだけを使わなければならないわけではありません。状態に応じて両方を組み合わせることが可能です。訪問看護で医療的ケア・健康観察を行い、訪問介護で日常生活の介助を担うという併用が多くの方に活用されています。

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