「来月から小学校に上がる。学校での吸引や注入は誰がやってくれるのか、今の体制で大丈夫だろうか」。春の入学・進級シーズン、こうした不安を抱えるご家族は少なくありません。小児訪問看護は、医療的ケアが必要なお子さまのご自宅に看護師が訪問し、医療処置・健康管理・家族支援を行うサービスです。 この記事では、訪問看護で受けられる具体的な支援の内容から、入学・進級前に見直すべき体制の整え方まで、わかりやすくお伝えします。
目次
子どもへの訪問看護は大人とどう違うの?
小児の訪問看護は、成人向けと目的が大きく異なります。成人では「現在の状態を維持する・悪化を防ぐ」ことが中心ですが、子どもでは「発達を支えながら、成長に合わせてケアを変えていく」視点が重要になります。
子どもの発達段階に合わせたケア
乳児期・幼児期・学童期では、身体の大きさも、できることも、必要な医療処置も変化し続けます。訪問看護師は成長に合わせて吸引の方法を工夫したり、経管栄養の注入量・速度を主治医と連携しながら調整したりします。「今日できなかったことが来月できるようになった」という小さな積み重ねを、ご家族と一緒に喜べるのが小児訪問看護の大切な場面です。
ご家族へのサポートも大きな柱
令和元年度厚生労働省委託「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査報告書」(2020年刊行)では、必要なサービスとして「訪問による在宅ケアの支援」を挙げた家族が60.9% にのぼりました。訪問看護師は、医療的ケアの技術指導や緊急時の対応方法をご家族に伝え、「一人で抱え込まなくていい」という安心感をつくることも大切な役割です。

医療保険が適用される
18歳未満のお子さまの訪問看護は、原則として医療保険が適用されます。主治医が「訪問看護指示書」を発行することで利用開始でき、自己負担は通常1〜3割です。さらに重症度によっては公費(小児慢性特定疾病医療費助成制度や自立支援医療制度)で自己負担がほぼゼロになるケースもあります。費用面の不安は、ぜひ一度ご相談ください。
医療的ケア児の在宅支援、実際に何をしてくれる?
医療的ケア児とは、人工呼吸器・気管切開・胃ろうなどの医療的な処置を日常的に必要とする18歳未満のお子さまのことです。厚生労働省・こども家庭庁の最新公式推計では、在宅の医療的ケア児(0〜19歳)は2021年時点で全国約2万人にのぼります(2005年の約1万人から約2倍)。訪問看護はその生活を支える中心的な仕組みです。
気管切開・人工呼吸器管理
気管切開をしているお子さまは、定期的な気管内吸引や、カニューレ(気管に入れるチューブ)まわりのケアが毎日必要です。看護師が訪問し、分泌物の性状・量の確認、皮膚トラブルの早期発見、そして保護者への技術指導を行います。「緊急時にどう対応すればいいか」の練習も、繰り返し一緒に確認します。
胃ろう・経鼻経管栄養の管理
胃ろうとは、お腹に小さな穴を開けてチューブで直接胃に栄養を届ける方法です。訪問看護師は、栄養剤の注入・チューブ周囲の皮膚ケア・固定の確認を行います。お子さまの体重の変化や体調に応じて、主治医に情報を共有しながらケア内容を調整することも重要な役割です。
- 気管内吸引(分泌物の除去)
- カニューレ周囲の皮膚ケア
- 気管切開部の状態確認
- 分泌物の性状・量の観察
- 保護者への技術指導
- 緊急時対応の確認・練習
- 栄養剤の注入管理
- チューブ周囲の皮膚ケア
- 固定・接続の確認
- 体重変化・体調の記録
- 注入量・速度の調整支援
- 主治医への情報共有・連携
- 呼吸状態・SpO2の確認
- 回路・機器の点検
- 設定値と実際の状態の確認
- 気道分泌物の管理
- アラーム対応の確認
- 緊急時対応の確認・練習
発作・急変時の対応と24時間体制
てんかん発作を持つお子さまでは、発作時の対応方法(座薬の使い方・救急要請の判断基準など)をご家族が安心して実施できるよう、具体的な手順を一緒に確認します。多くの訪問看護ステーションでは24時間対応のオンコール体制を整えており、夜間や休日の緊急相談にも対応しています。
入学・進級のタイミングで見直す支援体制
入学・進級は、お子さまの生活環境が大きく変わる節目です。これまで自宅中心だった生活に「学校」という場が加わることで、支援体制を全体的に組み直す必要が生じます。
今の訪問看護の回数・時間は十分か確認を
通学が始まると、在宅での療育時間が変わります。午前中の訪問から放課後の訪問への切り替えや、週あたりの訪問回数の調整が必要になることがあります。医療保険の訪問看護では、重症度・病状によって週3日以上の訪問や長時間の訪問(1日8時間超も可)が認められるケースもあります。現在の指示書の内容が実態に合っているか、主治医・訪問看護師と一緒に見直しましょう。
支援体制の見直しチェックリスト
医療的ケア児支援センターへの相談も選択肢に
2021年9月施行の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」により、各都道府県に医療的ケア児支援センターが設置されています(2024年2月現在、47都道府県すべてに設置済み)。訪問看護に限らず、福祉・教育・医療を横断した相談窓口として機能しています。「どこに相談すればいいかわからない」という方は、まずここに問い合わせることが一つの入口になります。
学校・放課後デイとの連携はどうなっている?
「学校での痰の吸引は誰がやるの?」これは多くの親御さんが感じる疑問です。訪問看護は直接学校に出向くわけではありませんが、学校との情報連携において重要な役割を担っています。
学校看護師・担任との情報共有
訪問看護師は、お子さまの現在の状態・必要なケアの方法・緊急時の対応方法をまとめた「サマリー(看護情報提供書)」を作成し、学校の看護師や担任に提供することができます。「家でこうしているから、学校でも同じ対応をお願いしたい」という橋渡し役です。文部科学省「令和4年度学校における医療的ケアに関する実態調査」(2023年3月)によれば、特別支援学校における医療的ケアは主に看護師が担当しており、医療的ケア児を安全に受け入れるうえで、在宅の訪問看護師との情報連携が重要とされています。
訪問看護師は「橋渡し役」として、在宅でのケア情報をサマリー(看護情報提供書)にまとめ、学校・放課後デイ・主治医など各支援者と共有します。多職種連携の要として、お子さまの安全と一貫したケアを支えます。
出典:文部科学省「令和4年度 学校における医療的ケアに関する実態調査」(2023年3月)
放課後等デイサービスとの役割分担
放課後等デイサービとは、障害のある学齢期のお子さまが放課後や休日に通う福祉サービスです。生活能力の向上や集団活動への参加を支援します。訪問看護はこれとは別に、医療的なケアや健康管理を担います。両者が連携してカンファレンスを行うことで、「デイでの様子」と「自宅・医療面での状況」を統合した支援ができます。
ケアマネジャー・相談支援専門員との連携
障害のあるお子さまのサービス全体をコーディネートするのが「相談支援専門員」です。訪問看護・放課後デイ・短期入所(レスパイト)など複数のサービスをバランスよく組み合わせるため、定期的に連絡を取り合う体制づくりが重要です。
訪問看護を使い始めるまでの手続きと費用
「手続きが複雑そう」と感じて利用をためらっている方もいらっしゃいます。実際の流れは、思っているよりもシンプルです。
利用開始までの3ステップ
ステップ1:主治医に相談する 訪問看護を希望することを主治医に伝えます。医師が必要と認めた場合、「訪問看護指示書」を発行してもらいます。
ステップ2:訪問看護ステーションを選ぶ 居住地域で小児の訪問看護に対応しているステーションを探します。地域の相談支援専門員や医療的ケア児支援センターに紹介を依頼するのも有効です。
ステップ3:契約・訪問開始 ステーションと契約を結び、初回アセスメント(状態確認)の後、訪問スケジュールを決めて開始します。多くの場合、相談から2〜4週間以内に利用を始められます。
費用の目安
小児の訪問看護は医療保険が適用されます。自己負担は通常1〜3割で、1回あたり数百円〜数千円程度が目安です(訪問時間・加算の有無により異なります)。小児慢性特定疾病医療費助成制度や、自立支援医療(育成医療)などの公費が適用される場合は、さらに自己負担が軽減されます。詳しい費用は、ステーションにご相談いただくと個別に試算できます。
まとめ
小児訪問看護は、医療的ケアが必要なお子さまとそのご家族の在宅生活を、医療の専門職として支える仕組みです。2023年時点で、医療保険での小児(0〜14歳)訪問看護の利用者数は全国で約1万人(2011年の2,850人比・約3.5倍)にのぼり(出典:訪問看護療養費実態調査)、ニーズは年々高まっています。
4月の入学・進級を前にしたこの時期は、現在の支援体制を見直す絶好のタイミングです。「今の訪問回数でいいか」「学校との連携はできているか」「費用負担は適正か」など、気になることは何でも相談してください。
私たちすえひろ訪問看護ステーションは、「どうすればお子さまが、ご家族が幸せに暮らせるか」を本気で考え、制度にとらわれずできる限りのことを一緒に探っていきたいと考えています。「こんなこと相談してもいいのかな」という小さな疑問も、どうぞお気軽にお声がけください。
まずは、かかりつけ医やケアマネジャー・相談支援専門員にご相談いただくか、当ステーションまで直接お問い合わせいただければと思います。
よくある質問
Q. 小児訪問看護は何歳から利用できますか?
A. 出生後すぐの新生児から、18歳未満のお子さままで医療保険での訪問看護を利用できます。NICU退院後に在宅移行するケースでも、退院前から訪問看護師と連携する仕組みがあります。まずは主治医にご相談ください。
Q. 訪問看護師が来てくれる時間は毎回どのくらいですか?
A. 標準的な訪問は30分〜1時間程度ですが、医療的ケアの内容や重症度によって長時間(1時間半以上)の訪問も可能です。医師の指示書の内容や保険適用の区分によって変わりますので、具体的な時間はステーションにご確認ください。
Q. 気管切開や胃ろうのケアは訪問看護師でも対応できますか?
A. はい。気管内吸引・気管切開部のケア・経管栄養の管理は、医師の指示書のもとで訪問看護師が対応できる処置です。また、保護者の方がご自宅で安全に実施できるよう、技術指導も行っています。
Q. 医療的ケア児支援法が施行されて、何が変わりましたか?
A. 2021年9月施行の「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」により、都道府県に医療的ケア児支援センターの設置が義務づけられました(2024年2月現在、47都道府県すべてに設置済み)。医療・福祉・教育を横断した相談窓口として機能しており、訪問看護の選び方や学校との連携方法なども相談できます。制度が変わっても、個別の状況は家庭によって異なりますので、具体的な相談はステーションや支援センターへ直接お問い合わせください。
お問い合わせ先
すえひろ訪問看護ステーション(本店) 〒120-0015 東京都足立区足立4-25-13-102 TEL: 03-5888-6375(FAX: 03-5888-6376) 東武伊勢崎線 五反野駅より徒歩約5分
足立西すえひろ訪問看護ステーション(2号店) 〒123-0841 東京都足立区西新井2-9-19 TEL: 03-5856-9666(FAX: 03-5856-9667)
電話でのお問い合わせ:平日 8:30〜17:30 フォームでのお問い合わせ:24時間受付(お問い合わせフォームはこちら)
参考資料・相談窓口
医療的ケア児の支援制度
- 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(こども家庭庁)
- 医療的ケア児等の支援施策(厚生労働省)
学校における医療的ケア
- 学校における医療的ケア実施支援資料(文部科学省)
費用・保険制度
- 小児慢性特定疾病医療費助成制度(こども家庭庁)
- 訪問看護のしくみ(厚生労働省)

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