「そろそろ施設を考えようか」——3月から4月にかけて、そんな言葉が家族の間でふと出ることがあります。転居・進学・就職など、生活環境が変わるこの時期は、在宅療養を続けることへの不安も高まりやすい時季です。しかし、施設入居と在宅療養のどちらを選ぶかは、費用・サービス・ご本人の希望など、さまざまな視点から整理することで、より納得のいく判断につながります。この記事では、フラットな視点で両方の選択肢を整理しながら、在宅療養を続けるために活用できるサービスと、転居時の訪問看護の引き継ぎ手順をご説明します。
目次
「そろそろ施設かな」と思ったとき立ち止まってほしい理由
在宅療養の継続を諦める前に、現状のサービス体制を見直すことが大切です。「家族の負担が大きい」「緊急時が不安」という理由で施設を検討し始めるご家族は少なくありませんが、それらの課題は訪問看護をはじめとするサービスの組み合わせで解決できる場合があります。
内閣府調査が示す「自宅で暮らしたい」という希望
内閣府の調査によると、介護が必要になった場合でも自宅で介護を受けたいと考える方は44.7%に上ります。施設への入居を希望する方(33.3%)を大きく上回っており、多くの方が「住み慣れた自宅で療養を続けたい」という気持ちを持っています。
ご本人の希望を尊重することは、療養生活の質を保つうえで非常に重要です。環境変化がストレスになりやすい方、特に認知機能の低下がある場合、住み慣れた場所で過ごすことが症状の安定につながることもあります。

「もう限界かも」と感じたら、サービスを見直すタイミング
家族の介護負担が大きくなっているとき、問題はしばしばサービスの組み合わせにあります。訪問看護・訪問介護・デイサービスを上手に組み合わせることで、ご家族の負担を大幅に軽減できます。
「今のサービスが合っていない」「もっと適切なサービスがあるのでは」と感じたときは、ケアマネジャーや訪問看護ステーションに相談することが最初の一歩です。制度の枠を超えた相談も、ぜひ遠慮なくお声がけください。
在宅療養を続けるために必要なサービスの組み合わせ
在宅療養は、訪問看護単体ではなく複数のサービスを組み合わせることで、安心した療養生活を支えられます。ご本人の状態・ご家族の生活スタイルに合わせて、最適なサービス体制を組み立てることが大切です。
訪問看護が担う医療的サポート
訪問看護とは、看護師や理学療法士などの医療専門職がご自宅を訪問し、健康管理・医療処置・リハビリテーションなどを行うサービスです。医師の指示のもとで提供されるため、医療的ニーズが高い方でも自宅での療養が続けられます。
具体的には、点滴管理・傷の処置・ストーマ(人工肛門)管理・服薬確認・体調観察など、病院でおこなわれていた処置を自宅で続けられるよう支援します。緊急時の24時間対応体制も整えているステーションが多く、「急な体調変化があった時にどうすればいいか」という不安にも応えられます。
訪問介護・デイサービスとの連携
訪問介護やデイサービスは、訪問看護と組み合わせることでより手厚い支援体制を築けます。
たとえば、週3回の訪問看護に加えて、週2〜3回のデイサービスを組み合わせると、ご家族が仕事をしている平日も安心して過ごせる体制が整います。ケアマネジャー(介護支援専門員)が全体のサービス調整を行うため、サービス間の連携もスムーズです。
以下の表で、在宅療養で利用できる主なサービスを整理しましょう。
訪問看護サービスで確認したいポイントを表でご覧ください。
| サービス名 | 役割・内容 | 利用頻度の目安 | 費用目安(1割負担) |
|---|---|---|---|
| 医療系 訪問看護 | 看護師が自宅を訪問し、医療処置・点滴管理・床ずれケア・リハビリ指導などを提供。医師の指示書に基づき、専門的な在宅看護が受けられる。 | 週1 〜 3回医師の指示による |
1回 約540円 〜 1,130円
30分未満: 約540円 30分〜1時間: 約820円 1時間〜1.5時間: 約1,130円 ※訪問看護ステーションの場合 |
| 生活支援 訪問介護 ホームヘルパー | ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴・排泄介助等)や生活援助(掃除・買い物・調理等)を提供。訪問看護と組み合わせることで総合的な在宅支援体制が整う。 | 週2 〜 5回ケアプランによる |
1回 約225円 〜 580円
身体介護1時間: 約580円 生活援助45分: 約225円 ※30分ごとに約84円加算あり |
| 通所系 デイサービス 通所介護 | 施設に日帰りで通い(送迎付き)、食事・入浴・機能訓練などを受けられる。家族以外との交流が生まれ、孤独感の解消や認知症予防にも効果的。 | 週1 〜 5回要介護度による |
1日 約720円 〜 2,250円
介護保険分: 約720〜1,250円(要介護1〜5) 食費等実費: 別途500〜1,000円程度 ※通常規模・7〜8時間未満の場合 |
| 短期入所 ショートステイ | 短期間だけ施設に宿泊し、介護・食事・入浴などを受けられる。家族の仕事・旅行・体調不良時の介護空白を補える。施設入所の待機期間にも活用される。 | 月数日〜連続30日以内30日超は全額自費 |
1泊 約1,370円 〜 2,080円以上
基本料: 約670〜980円(要介護1〜5) 食費+滞在費: 別途約700〜1,100円程度 ※併設型・従来型個室の場合 |
| 調整役 ケアマネジャー 介護支援専門員 | ケアプランを作成し、訪問看護・訪問介護・デイサービスなど全サービスの調整を一括して担う。医療・介護・行政との橋渡し役として在宅療養全体をコーディネートする。 | 月1 〜 2回モニタリング訪問 |
自己負担 0円
全額介護保険負担・利用者の自己負担なし ケアプラン作成・認定申請サポートも無料 |
※ 費用は2024年度介護報酬改定後の目安です。所得に応じて自己負担割合が1〜3割となります。
※ 地域・施設の種類・要介護度によって料金は異なります。詳細はケアマネジャーまたは各事業所にご確認ください。
夜間・緊急時の不安を減らす体制づくり
「夜中に急に具合が悪くなったら」という不安は、在宅療養を諦める大きな理由の一つです。しかし、24時間対応の訪問看護ステーションを選ぶことで、夜間でも電話で相談でき、必要に応じて看護師が訪問することができます。
また、かかりつけ医・訪問看護・ケアマネジャーの連絡体制をあらかじめ整えておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。「何かあったとき、誰に連絡すればいいか」を明確にしておくことが、ご家族の安心につながります。
転居した場合、訪問看護はどうなる?引き継ぎの流れ
転居後も在宅療養を続ける場合、訪問看護は「引き継ぎ」ができます。手続きを適切に行えば、サービスに空白期間が生じることなく、療養を継続できます。
介護保険の転入手続きは14日以内が鉄則
転居に伴う要介護認定は、転入先の市区町村で14日以内に手続きをおこなうことで引き継げます。転出の際に受け取る「受給資格証明書」を転入先の窓口に提出することで、要介護状態区分がそのまま継続されます。
14日を過ぎると改めて認定を受け直す必要があり、認定が出るまでの1〜2か月間は全額自己負担になる可能性があります。転居の際は、介護保険の手続きを最優先に進めてください。
転居先で新しい訪問看護ステーションを探す手順
転居先では、現在のステーションのサービスは原則として引き継げません。転居先エリアで新たに訪問看護ステーションを探す必要があります。
スムーズに新しい体制を整えるためには、以下のステップを参考にしてください。
- 転居の1〜2か月前から準備を開始する:現在のケアマネジャーに相談し、転居先のケアマネジャーや訪問看護ステーションの情報収集を始めます。
- サマリー(療養要約)を作成してもらう:現在の訪問看護ステーションから看護サマリーを発行してもらい、転居先に引き継ぎます。
- 転居先のケアマネジャーを決める:転居先の市区町村の地域包括支援センターに相談すると、適切なケアマネジャーを紹介してもらえます。
- 新しい訪問看護ステーションと契約する:ケアプランが作成され次第、利用開始の手続きを進めます。
訪問看護の引き継ぎステップ
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1転居決定 転居先・時期を確定する
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2現ケアマネに相談 転居の1〜2か月前から情報収集を開始
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3サマリー作成 現ステーションから看護サマリーを発行してもらう
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4転入手続き・ケアマネ選定 転居先の地域包括支援センターに相談
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5新ステーション探し・契約 ケアプラン作成後、新しい訪問看護ステーションと契約
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6利用開始 新体制で訪問看護サービスを受ける
転居先で「地域密着型サービス」が変わる点に注意
転居前に利用していた地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護など)は、原則として転居先の市区町村では利用できなくなります。転居先で同様のサービスが提供されているか、事前に確認することが重要です。
東京都は地域密着型サービスの整備が比較的進んでいますが、地域によって利用できるサービスの種類は異なります。転居が決まったら早めに転居先の市区町村窓口または地域包括支援センターに確認しましょう。
施設vs在宅、費用・生活の質を比較してみると
施設入居か在宅療養かを選ぶ際に、費用の比較は大切な判断材料です。一般的には在宅療養の方が費用を抑えられますが、ご本人の状態やご家族の事情によって最適な選択は異なります。フラットな視点で比較しましょう。
費用の目安——在宅と施設の差はどのくらい?
公益財団法人 生命保険文化センターの令和6年度全国実態調査によると、在宅介護にかかる月額費用の平均は約3.7万円です。一方、施設での介護にかかる月額費用の平均は約12.5万円となっており、月額で約9万円の差があります。
ただしこれは平均値です。要介護度が高い場合や、必要なサービスが多い場合には在宅での費用も増加します。また施設には住居費・食費が含まれるため、在宅との単純比較には注意が必要です。
| 在宅療養 | 施設入所 | |
|---|---|---|
| 月額費用 (平均) |
約 3.7万円 公的介護保険の自己負担を含む | 約 12.5万円 住居費・食費・介護費を含む |
| 初期費用 (目安) |
住宅改修・介護用品購入 平均 約47万円 |
入居一時金 施設・種別により異なる |
| 主に含まれる もの |
訪問介護・デイサービス等 介護サービスの自己負担 消耗品・医療費など |
住居費・食費 介護サービス費 日常生活費など |
| 単純比較の 注意点 |
要介護度が上がると 費用も増加する傾向 介護者の負担も考慮が必要 |
住居費・食費を含むため 在宅の生活費と 合算して比較する |
費用以外で在宅療養が持つ価値
費用の比較だけでなく、在宅療養ならではの価値も大切な判断基準です。自宅での療養は、住み慣れた環境で過ごせること・家族との時間が持てること・自分のペースで生活できることなど、生活の質(QOL)の面で大きなメリットがあります。
療養中も「食べたいものを食べる」「好きな時間に起きる」といった生活の自由度は、ご本人の意欲や気持ちに深くかかわります。在宅療養が「その人らしい暮らし」を続ける手段になり得るという視点は、選択を考えるうえで忘れてはならないポイントです。
施設入居が適している場合もある
施設への入居が適している場合もあります。たとえば、医療的ケアが頻繁に必要で在宅での対応が難しい状態になった場合、独居でご家族のサポートが得られない場合、認知症の進行によって安全な在宅生活の維持が難しくなった場合などです。
「施設が合っていない」「在宅を続けたい」という気持ちがあっても、安全が守れない状況では無理に続けることはできません。どちらが「その方にとってより幸せな選択か」を、専門職とともに誠実に考えることが大切です。すえひろ訪問看護ステーションでは、施設も選択肢の一つとしてフラットに考えながら、在宅継続の可能性を一緒に探っていきます。
迷ったときにすえひろに相談する方法
「在宅を続けたいけれど、本当にできるかどうか不安」「施設も視野に入れているが、まずは誰かに話を聞いてほしい」——そんなときは、ぜひすえひろ訪問看護ステーションにご相談ください。
まずは気軽にお問い合わせください
「こんなことを相談していいのだろうか」と遠慮される必要はありません。訪問看護の利用を決めていない段階のご相談も歓迎しています。状況をお聞きしたうえで、現在のサービス体制の見直し方や、在宅療養継続のための具体的な提案をさせていただきます。
かかりつけ医やケアマネジャーを通じてご紹介いただくことも、当ステーションへ直接お問い合わせいただくことも可能です。
すえひろの相談対応の姿勢
私たちが大切にしているのは、「利用者様が本当に望まれていることは何か」を一緒に考えることです。「制度上難しいと言われたけれど」「他のステーションでは対応できないと言われた」という状況でも、まずはご相談ください。専門職として責任を持って、可能な選択肢を誠実に検討いたします。

【お問い合わせ先】
すえひろ訪問看護ステーション(本店) 住所:〒120-0015 東京都足立区足立4-25-13-102 受付時間:平日 8:30〜17:30
足立西すえひろ訪問看護ステーション(2号店) 住所:〒123-0841 東京都足立区西新井2-9-19
電話でのお問い合わせ:平日 8:30〜17:30 フォームでのお問い合わせ:24時間受付(お問い合わせフォームはこちら)
まとめ
在宅療養を続けるかどうかは、「今すぐ施設に入らなければ」と急ぐ必要はありません。訪問看護・訪問介護・デイサービスなどを上手に組み合わせることで、医療的ケアが必要な方でも自宅での療養を続けられるケースは多くあります。転居が伴う場合も、14日以内の介護保険の転入手続きと看護サマリーの引き継ぎにより、サービスの空白期間を最小限に抑えられます。
費用面では、在宅介護の月額平均が約3.7万円(生命保険文化センター令和6年度調査)に対し、施設での介護は平均約12.5万円と差がありますが、最終的にはご本人とご家族の状況・希望に合わせた選択が大切です。「施設も一つの選択肢」としながら、在宅の可能性を諦めずに一緒に考えていきます。まずは、すえひろ訪問看護ステーションへお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 在宅療養と施設入居、どちらが費用的に安いですか?
A. 一般的には在宅療養の方が費用を抑えられます。生命保険文化センターの令和6年度調査では、在宅介護の月額費用の平均は約3.7万円、施設での介護は約12.5万円です。ただし要介護度や必要なサービスの量によって大きく変わるため、個別の見積もりをケアマネジャーと確認することをおすすめします。
Q. 引っ越した場合、今まで利用していた訪問看護は続けられますか?
A. 転居先エリアでは現在の訪問看護ステーションのサービスは原則として引き継げません。ただし、看護サマリー(療養の引き継ぎ書)を通じて情報が引き継がれるため、転居先の新しいステーションでもスムーズに在宅療養を続けられます。転居が決まったら早めに現在のケアマネジャーに相談しましょう。
Q. 転居後の介護保険の手続きはいつまでに行えばいいですか?
A. 転入先の市区町村への介護保険の転入手続きは、転入から14日以内に行う必要があります。転出時に「受給資格証明書」を受け取り、転入先の窓口に提出することで要介護状態区分が引き継がれます。期限を過ぎると認定のやり直しが必要になる場合があるため、早めの手続きをおすすめします。
Q. 在宅療養の継続が難しいかどうか、どのように判断すればいいですか?
A. ご家族の介護負担の程度・ご本人の安全が守られているか・緊急時の対応体制が整っているかなどを確認することが大切です。現在のサービス体制を見直すことで解決できる場合も多いため、まずはケアマネジャーや訪問看護ステーションへ相談してみてください。すえひろ訪問看護ステーションでは、現状の課題を一緒に整理するご相談も受け付けています。
Q. 訪問看護は医療保険と介護保険のどちらが適用されますか?
A. 訪問看護は、利用者様の状態によって医療保険または介護保険が適用されます。要介護認定を受けている方は原則として介護保険が適用されますが、特定の疾患や状態(末期がん・難病など)の場合は医療保険での利用となる場合があります。適用区分はかかりつけ医や訪問看護ステーションが確認しますので、ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。
【参考資料・相談窓口】
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